暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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みなさんご愛読ありがとうございます!

今後も妄想垂れ流していきますのでよろしくお願いします!

——追記——
誤字修正ありがとうございます!
岡田……×
奥田……〇
——追記——
どうやらキャラ同士の呼び方を間違えてたらしい。これは原作読み直し案件かもしれん……!
訂正、ありがとうございます!


19話 旅行の時間 その3

 

「ダメだったねぇ」  

 

「だな。弾丸止めるとかマジかよ」

 

 倉橋さんに同意しながら、俺は殺せんせーの止めた弾頭を指で弾いて遊んでいた。

 この弾頭に対先生弾を詰め込む方式、ぱって見て弾丸に無駄な空気抵抗を作ると思うんだけどこれであんなに真っ直ぐ飛ぶのか? 

 いや、真っ直ぐ飛ばなくても狙って直撃コースを取ったのか。プロの狙撃ってとんでもない精度だな。

 

 ちなみに殺せんせーはと言うと2班の方へ飛び立っていた。何かあったら呼んでくれ、とのことだが、修学旅行中に何が起こると言うのか。

 とか思ったが、新幹線の中で不良に絡まれたことを思い出して、何が起こるか分からないと思い直す。

 

「はぁ……。少し早いけど清水寺行くか」

 

「だな、いつまでも引きずってても仕方ないし」

 

 気落ちした空気を変えるように提案した木村に磯貝が同意しながら駅のベンチに座る俺たちを立たせる。

 暗殺に失敗したが、修学旅行は終わった訳じゃないし。ゆっくりの殺せんせーを殺すプランでも考えながら自由行動をエンジョイしますか。

 

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⬜︎

 

⬛︎

 

「ねぇ、凄い景色だね〜」

 

「そうだな」

 

 俗に言う清水の舞台から素晴らしい絶景を見下ろすと忌憚ない感想を溢す倉橋さんに素直に同意する。

 なぜ、こんなことになっているのか。それは単純に、清水寺を進む内に人混みに飲まれて他の面子と分断されてしまったからだ。

 

 一応、はぐれたあとにLINEはしたのだが、集合時間と場所を決めていれば問題ないだろうとなり、俺たち1班はバラバラに行動している。

 たが、折角の修学旅行。せめて友人と行動したいと思っていた矢先に運良く倉橋さんと遭遇し、俺たちは一緒に行動することになったのだ。

 

「いや〜、良かったよ。乃咲くんと会えて」

 

「俺もだ。流石に京都に来てまでボッチなのは勘弁願いたい所だったから」

 

「えぇ? 乃咲くん、学校でも言うほどボッチかな?」

 

「ボッチじゃない?」

 

「少なくとも磯貝くん達と一緒にはいるし、ボッチじゃないと思うよー?」

 

「……そっか」

 

 言われて見ると確かに最近はボッチではない気がする。教室では磯貝や前原、あとはカルマに渚と杉野なんかと話すことも増えたし。

 天国のお母さん、貴女の息子はいつの間にかボッチを卒業したらしいです。

 

「ねぇねぇ、巫女さんいるかなぁ」

 

「一応清水寺自体は神社じゃないから流石に巫女さんはいないんじゃないかなぁ」

 

「そっか、残念。巫女さんのカチコミカチコミ物申すって実際に聞いてみたかったんだけどなぁ」

 

「倉橋さんの中の巫女さん武闘派すぎない!?」

 

「お、乃咲くんのツッコミだ」

 

 普段はあまりツッコミに回らない俺だが、倉橋さんの中の巫女のイメージに思わずツッコミを入れた。

 ちなみに、巫女さんのアレはカチコミではなく、かしこみ。確か、恐れ多くも申し上げますが、みたいな意味合いだった筈だ。知らんけど。

 

「でもさ、社務所みたいな所でお守りみたいなの売ってたよ」

 

「……まぁ、確かに」

 

 言われて俺は数分前に売店で買った学業成就のお守りを何気なく取り出して見る。

 あ、そう言えば清水寺自体はお寺だけど敷地の中に神社があるんじゃなかったか? 

 殺せんせーのしおりにそんな感じのことが書いてあった気がする。もしかするとこのお守り買った場所が神社部分だったのかな。

 

「なにそれ、お守り?」

 

「そ。学業成就のお守り」

 

「学業成就か〜、あとで私も買っておこうっと」

 

「……なんなら今から買いに行くか。そろそろ集合時間だし、待ち合わせ場所に行くついでにってことで」

 

「いいねぇ。そうしよ!」

 

 2人でお守りを買った場所に向かう。

 やたら広い敷地だが、場所は何となく覚えていたので俺が先導するように歩く。

 

「そう言えば乃咲くん。この前は凄かったよね」

 

「この前?」

 

「テストとか。一気に順位上がってたけど何かコツとかあるの?」

 

 小首を傾げる倉橋さん。聞かれた俺は考える。

 俺のしている勉強のコツってなんだろ。ゾーンに入って時間と集中力が許す限りペンを持ち続けることです、とか言えばいいんだろうか? 

 最近は俺もほぼ自在にゾーンに入れるようになったのだが、テスト期間中の殺せんせーの言い分だと入れるやつの方が珍しいんだよな? 

 俺の勉強のコツ、なんて説明すれば良いんだ? 

 

「うーん……。まずは集中すること」

 

「ふむふむ」

 

「時間の許す限り集中すること」

 

「ふむふむ……んー?」

 

「んで、ひたすらに集中することかな」

 

「集中しかしてないよね!?」

 

 だって、ゾーンとかどうこう言っていても俺がやっていることを簡単に一言で言うなら『超集中して勉強している』だけなのだ。

 ただ、数分が何時間にも感じるなんて言っても信じてはもらえないだろうしな。

 

「えっと、集中して勉強の質を高めるのが一番な近道じゃないかな」

 

「まあ、それもそっか」

 

 うん、間違った事は言ってない。

 集中するのが一番の近道であることは間違ってない筈だ。たぶん。事実、少なくとも俺はそうやって勉強してることだしね。

 

 なんて思いながら歩き続けるが、やはり観光名所。人が多い。気を付けてはいるが、他人と体の一部がぶつかりそうになったり、実際にぶつかる。

 一応、俺が先頭に立って歩いているので後ろは幾分か歩きやすい筈だが。なんて思って振り返る。

 案の定、倉橋さんは歩き辛そうだった。

 もう少し歩くペースを落とすか、と今更ながらな気遣いをしようとした矢先、俺と彼女の間にあった僅かなスペースを知らん人が横切る。

 

「あ、乃咲くん!?」

 

「倉橋さん!?」

 

 人が無理矢理通った結果、俺と倉橋さんの間には人が通れるだけのスペースが出来てしまい、先を急いで歩く人達が次々に俺たちの間を抜けてゆく。

 都会の人間はせっかちだなぁ、なんて他人事みたいな感想を溢しながら、少し回り込んで人混みを掻き分けながら辛うじて倉橋さんの横に着く。

 人混みの先に俺がいると思っているのか、必死に背伸びしてキョロキョロと辺りを見回して誰かを探しているようだったので声を掛ける。

 

「凄い人混みだな」

 

「わっ!? いつの間に!?」

 

 横に着いて声を掛けるとビクッと肩を跳ねさせた倉橋さんが裏返った声で驚きを露わにする。

 まあ、無理もない。この人混みで逸れた同級生を探していたら横に居ました、なんて状況に遭遇したら俺もビックリすると思うし。

 

「よくこの中掻き分けて来れたね」

 

「烏間先生に鍛えられてるからね」

 

「それ、関係ある……?」

 

「あるさ。多少揉みくちゃにされても動じる事なく動けるぞ。多少ならな」

 

「多少を2回言ってるけど!?」

 

「大事な事だからな」

 

 因みに、多少の許容量を超えるとキレるかもしれない。『さっきから肩やら脚が当たっとるんじゃぁぁぁ!』とブルドーザーばりに人を薙ぎ倒して進むかもな。実際にそんなレベルでキレるかはさて置き。

 

「それはそうと行こう。待ち合わせに遅れる」

 

「うん……あっ、乃咲くん。お願いあるんだけど」

 

「ん? なんじゃらほい」

 

「袖、掴んで良いかな。また逸れるかもだし」

 

「良いよ。また逸れるのは危ないしね」

 

 女子が1人で歩くのは危ないだろう。この人混みに女子が揉みくちゃにされるのは普通に怪我する危険性があるだろうから断ることはない。

 断る事はないけど……。

 

「……」

 

「…………」

 

 何だか、空気がむず痒くなった。

 右手の袖が引っ張られる感覚は違和感があるが、何より、倉橋さんの小さな手が俺の袖を引いてると思うと緊張感が増してくる。

 なんだろう。暗殺前やこの前の烏間先生との組み手とは違った緊張感だ。

 

「あはは……。なんか変な感じするね」

 

「……だな」

 

 倉橋さんも同じことを思っていたらしい。

 女子とこんなことになっているのは不思議というか、不快ではないが、思わず頭を掻きむしりたくなる様なむず痒さを感じてしまう。

 だが、むず痒さと引き換えに出来るだけ気を使ってやらないと、なんて紳士染みた思考が湧き出る。

 

「乃咲くん。もう少し早く歩いても大丈夫だよ」

 

「そ、そうか」

 

 女子は歩くのが遅い、なので並んで歩く時は合わせてやるべきだとネットで見たことがあるので、実践してみたのだが、どうやら、気を張り過ぎたようだ。

 気遣いの振り幅が難しい。ある程度ゆっくり歩かないと倉橋さんを置いて行ってしまうが、遅く歩き過ぎると帰って歩き辛くなるし、歩く時に手を動かすと倉橋さんと逸れてしまいそう。

 もはや、女子と歩くのは精密作業染みた気遣いが必要だと感じる。緊張がえげつない。

 

 やばい。女子と歩くの難しいぞ!? 

 

「そう言えばさ、乃咲くん。この前凄かったよね」

 

「この前?」

 

「烏間先生との組み手」

 

「……あー」

 

 俺の間が保たないことを察したのか、倉橋さんが適当な話題を振ってくる。

 倉橋さんが話しやすいと感じるのはこう言う風に自然に空気を読んで、空気が悪くなる前にある程度の流れを作ってくれるからなんだろう。

 

「まだまだだよ。烏間先生、全然本気じゃないだろうし、小細工ばっかりだったからね」

 

 二刀目を袖の中に隠したり、ゾーンに入ったり、勝利の決定打が猫騙しだったり。

 

「んー、まあ、猫騙しは少しアレだったけど、でも烏間先生に攻撃当てられたのって初めてだったじゃん? 私は凄いと思うけどなぁ〜」

 

「だからこその意気込みかな。今度は小細工抜きで勝ちたいよ」

 

「志し高いねぇ。頑張って」

 

「頑張る。目指せ、烏間先生みたいな大人! が俺のスローガンみたいな所あるからな」

 

「だよね〜、烏間先生カッコいいもん!」

 

 その後、倉橋さんと烏間先生談義で盛り上がっているうちにお守りを購入、話題が途切れることなく話を続けているうちに待ち合わせ場所に着いたらしい。

 既に集合していた他の面子が手を振っていた。

 

「陽菜ちゃ~ん、乃咲くーん!」

 

「あっ、おーい!」

 

 その後も俺たちは修学旅行を満喫する。

 俺たちはその後の自由行動終了まで京都を満喫した。

 

「……なあ、圭一。お前、倉橋となにかあった?」

 

「いや、別にないけど」

 

「乃咲。それはないだろう!? だってさっき倉橋、お前の袖掴んでたじゃん! 木村も見たよな!?」

 

「うん、見た」

 

 京都を満喫したのだが、コイツらの前まで倉橋さんに袖を掴まれていたのを見られてしまい、ちょっと揶揄われる事になった。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

 自由行動が終わると今度は旅館で過ごすことになる。AからD組はホテルで個室らしいが、俺たちE組は男女大部屋が一室ずつ。

 なんだか、うちの学校らしいこって。

 

「イビキうるさいヤツ居たら男子全滅だな」

 

「ははは、寝れないのは困るけどいいじゃんか。それはそれでいい思い出になるだろ」

 

「磯貝の優等生はここでも発動するか」

 

 風呂上がり、俺たちは旅館名物の卓球に興じていた。たまたま近くにいた杉野や竹林も交えてのリーグ戦。俺と杉野で決勝を争い、俺が勝った。

 途中で今日の暗殺について上司に報告を終えたらしい烏間先生も交えて対戦したのだが、烏間先生にはまるで歯が立たなかった。

 烏間先生みたいな人を超人というんじゃないだろうか。基本的に隙がなさ過ぎるんだ、この人。

 

 んで、そろそも部屋で大人しく過ごすか、という空気になった頃、喉が渇いたので俺は自動販売機と向き合っていた。

 

「あれ、乃咲クンじゃん」

 

「ん? カルマか」

 

 風呂上がりらしいカルマがいた。何となく、いつもイチゴオレとか甘い飲み物ばかり飲んでるイメージがあるので、適当にカルマの好きそうなジュースを買って、投げ渡す。

 

「なにコレ、貰っていいの?」

 

「この前のお礼。ほら土下座の時の」

 

「気にしなくていいのに。まあ、貰えるものは貰っておくけどさ」

 

 ジュース片手に古い旅館のギシギシ鳴る床を歩く。俺たちの話題は自然と今日の自由行動の時になにがあったのかに流れて行ったが、カルマたちの班で起こったトラブルが衝撃的過ぎた。

 

「神崎さんと茅野が拉致られた!?」

 

「そ、流石に頭に来たよね」

 

「大丈夫だったのかよ?」

 

「まあね。電車の中で目をつけられたんだってさ」

 

「あー、そう言えば高校生くらいの人にぶつかったって言ってたわ。昨日」

 

 となると、俺に絡んできた連中がバカをやったってことか。どうやら脅し方が少したらなかったらしいな。

 というか、もしかすると昨日、軽くあしらった所為で気が悪くなっている時にたまたま神崎さんがぶつかってターゲットになった可能性もあるのか。そう思うと彼女たち申し訳ないな。

 

「いやー驚いたよね」

 

「そりゃあ班員が拉致られ——」

 

「赤い悪魔とか呼ばれてたんだ、俺」

 

「そっちかよ」

 

「ね、銀の死神とか呼ばれてるんだって?」

 

「黙らんと泣くぞ?」

 

 などと話しながら部屋に入ると、なにやら珍しく男子全員が集まって何かを話してた。

 

「みんなでなに話してんの?」

 

「あ、カルマに乃咲。いい所に来た。いま、みんなの気になる()について話してたんだ」

 

「お前らは? 気になる娘いる?」

 

「恋バナって、修学旅行か」

 

「修学旅行だからな?」

 

「もうみんな話してるからな? お前らだけ逃げられると思うなよ〜?」

 

 木村の言葉が終わると同時に磯貝が何やらランキングを渡して来た。カルマと半分ずつ持って中身を見ると、どうやら気になる女子ランキングなるものを作っていたらしい。

 因みに一位は神崎さん、二位に矢田さん、三位に倉橋さんという具合のランキングだ。

 

「面白そうな事してるじゃん」

 

「まあ、確かに」

 

 ふーん、と言いながらランキングを見下ろして少し考えるカルマ。コイツ、女子にそう言う感情持ってるんだろうか? などと思っていると案外、あっさり答えた。

 

「俺は奥田さんかな」

 

「意外なところ来たな」

 

「乃咲の言う通りだな……」

 

「だってほら、彼女、クロロホルムとか作れそうじゃん? 俺の悪戯の幅広げられそうだし」

 

「絶対にコイツらくっつけちゃダメだわ」

 

「乃咲に賛成だわ……」

 

 カルマのえげつない悪戯が更に強化されるとか悪夢兼地獄以外の何者でもない。

 つか、奥田さんの毒にカルマの悪戯が加わるとか下手したら普通に死者が出るレベルじゃないだろうか? 

 

「そう言う乃咲クンは?」

 

「確かに。それ気になるわ。なんか普段は女子に興味ないです、みたいな顔してるもんな」

 

「そんな顔してる?」

 

 菅谷の指摘に首を傾げる。

 俺、普通に女の子が好きだけどな。恋愛対象が男ってこともないし、今日だって倉橋さんといてかなりドキがムネムネして……。っと、倉橋さんか。

 

「俺は倉橋さんかな」

 

 カルマの問いに対して俺は率直に頭の中に出た名前を口に出してみる。

 今日、一緒に居て楽しかったし、袖を掴まれている間はドキドキしたのは事実だ。

 女子と歩くのは精密作業だとか思ったが、なんだかんだ嫌だったわけではないし、烏間ファンクラブの仲間だし。それと話しやすいし。

 

「へぇー。なんか意外」

 

「そう? なんか無難に選んだ感じないか?」

 

「まあ、良いじゃんか。理由まで追求しなくてもさ」

 

 理由まで追求されそうになったところで磯貝からの助け船が来る。

 

「いいか、皆んな。この投票結果は内緒な? 男子の秘密だ。知られたくない奴が大半だろーし、女子や先生には特に……」

 

 話を締めようとした磯貝が停止する。

 どこか唖然とした顔をしていたので視線の先を追うと、この大部屋の手前の入り口手前で座った殺せんせーが何かメモを取っていた。

 

「なるほどなるほど…………」

 

 メモ取って殺せんせーは凄い自然体で部屋を出ると旅館の中居さんもビックリな丁寧さで襖を締めた。

 凄い。気配も感じなかったし、動きも何もかも自然体だった。なんならビッチ先生バリに動きが自然。

 

「って感心してる場合じゃねぇ!?」

 

 あのタコがいつからいたか知らないが、もしかしなくても今の気になる女子ランキングで倉橋さんに投票した部分を聞かれていた可能性がめちゃめちゃ高い。

 

「奴を殺せぇ! あの音速ストーカーをぶっ殺せぇー!!」

 

「の、乃咲に続けぇ!!」

 

「待てゴラぁぁぁぁぁ!!」

 

 流石に恥ずかしいので殺せんせー殺害音頭を取って俺は男子たちの先頭にたって走り出した。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

 圭一たちが走り出す少し前。女子の部屋でも似たようなやり取りが繰り広げられていた。

 

「え? 好きな男子?」

 

「そ、修学旅行の鉄板でしょ?」

 

「はいはーい! 私は烏間先生」

 

「それは皆んな同じでしょうが。同じクラスの男子の中でよ」

 

「え〜……」

 

 中村の振った話題に怪訝な顔をする岡野とノリノリで烏間の名前を出す倉橋。中村からの烏間殿堂入り指定に倉橋はあからさまにテンションが下がった。

 

「うちのクラスでマシなのは磯貝と前原くらい?」

 

「え? そうかなぁ」

 

「まあ、前原はタラシだから残念だとして磯貝は優良物件じゃない?」

 

「顔だけならカルマくんとかもカッコいいよね」

 

「素行さえ良ければねぇ」 

 

「「「そうだねぇ」」」

 

 カルマの素行が悪いのは女子の間でも共通認識らしい。しかし、そんなカルマにも茅野と奥田からフォローが入る。

 

「そんなに怖くないですよ?」

 

「うん、普段は大人しいし」

 

「……野生動物か」

 

 速水の鋭いツッコミに苦笑を禁じ得ない女子の面々が他に目ぼしい男子を洗う。その中には渚や杉野の名前も出た。

 

「あと、素行はともかく乃咲も優良物件じゃない? 顔も悪くないし、最近は不良っぽくないしさ」

 

「あ、確かに。烏間先生が体育教えるようになった辺りから社交性出てきたよね? 結構ぶきっちょなところあるけど放課後に烏間先生に訓練してもらってたり、根が真面目というか」

 

「言われてみるとそうだね。烏間先生から一本取った時はかっこいいというか、感動したよね」

 

「たまに変な性癖出るのさえなければねぇ」

 

「「「そうだねぇ」」」

 

「うーん、でも性癖はともかく結構紳士だよ?」

 

「あれ陽菜ちゃんが烏間先生以外にそんなこと言うなんて意外だね」

 

「うーん、今日一日はほぼ一緒に居たからね。意外な一面もいっぱい見れたしね」

 

「へ〜!」

 

 その後も女子の間で男子に関する話題が出る。ある程度、会話が盛り上がると戯れ合う者も出て来て、声が部屋の外に漏れ始めた頃、イリーナが女子たちの部屋を訪れる。

 

「餓鬼ども、一応、消灯時間を知らせにきたわよ」

 

「一応って」

 

「どうせ電気消してもしばらくはお話ししてるんでしょ。そんじゃあおやすみ——」

 

「あ、ビッチ先生お酒持ってる。先生だけずるい〜」

 

「はぁ?」

 

 倉橋の指摘に少し不服そうな顔をするが、何だかんだ、矢田と倉橋に乗せられてイリーナも女子の輪に混ざる。

 彼女たちの話題は自然とイリーナに関するものに変わって行った。

 

「えぇ!? ビッチ先生まだ20歳(ハタチ)ぃ!?」

 

「経験豊富だからもっと上だと思ってた……」

 

「ね、毒蛾みたいなキャラしてるのに」

 

「それはね、濃い人生が作る色気が——誰だ!? いま毒蛾っつたの!」

 

「ツッコミが遅いよ」

 

 女が3人寄れば姦しいと言うが、10名以上いると賑やかになるもの。わいわいと女子たちが騒ぐ中、1匹のタコが彼女たちの間に混ざる。だが、それに気付くものはまだ居ない。

 

「女の賞味期限は短いの。アンタらは争いのない平和な国に生まれたんだから、環境に感謝して、全力で女を磨きなさい」

 

「ビッチ先生が珍しくまともなこと言ってる〜」

 

「なんか生意気……」

 

「なめくさりおってガキども!!」

 

 まだ、気付かない。

 

「じゃあさ、じゃあさ、ビッチ先生がこれまでオトして来た男の話、聞かせてよ!」

 

「あ、それ興味ある〜!」

 

「ふふ、良いわよ。ガキには刺激が強いから覚悟しなさい……。そう、あれは17の時…………」

 

 イリーナが話を仕掛けた時、彼女は気付いた。自分たちの部屋に1匹のタコが体色をピンク色に染めて、イリーナの猥談をメモ帳片手に混ざっていることを。

 

「おい、そこぉ!」

 

「「「えっ!!?」」」

 

「さりげなく紛れ込むな、女の園に!」

 

 たまらずツッコミを入れるイリーナ。対照的に殺せんせーは悪びれもせずにニヤニヤと笑いながら口を開く。

 

「良いじゃないですか。私も混ぜて下さいよ」

 

 だが、それを生徒たちは許さなかった。

 

「そういう殺せんせーはどうなのよ!」

 

「そーだよ! いつも私たちのことは知ってるくせに自分のこと全然話してくれないじゃん!」

 

「先生は恋バナとかない訳!? 巨乳好きだし、エロいし、片想いくらいはあるでしょ!?」

 

「にゅ、やぁ…………退散!」

 

 殺せんせーは逃げた。

 

「追いなさい! 捕らえて、吐かせて、殺すのよ!」

 

 結果、殺せんせーは女子たちも敵に回した。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

「居たぞ、殺せえ!」

 

「皆んな、こっちに居たわよ!」

 

「にゅやぁっ!? 男女挟み撃ちに!?」

 

 追いかけた末、殺せんせーを見つけたので男子に指示を出し、退路を塞ぐが、俺たちとは反対方向から女子たちも殺せんせーを追っかけて来た。

 どうやら、殺せんせー、女子の部屋でも盗み聞きをしていたらしい。

 

「ちょっと乃咲、そっちはどうしたの!?」

 

「えっと…………男子の知られたくない秘密を殺せんせーに全員が握られたのさ」

 

 片岡が聞いて来たので全て話さない程度に答える。すると、興味を持ったらしい倉橋さんが暗殺の輪から外れてこっちに来た。

 

「知られたくない話って?」

 

「…………イエナイヨ」

 

 倉橋さんを見て、つい思考が止まる。

 あ、浴衣似合ってる、とか。寝る前の姿って普段と違う印象受けるよね、とかいろいろ思うところはあったが、それ以上になんて答えれば良いのか分からなくなった。

 

 だって、気になる女子ランキングで俺は倉橋さんに投票したよ! なんてこと恥ずかしくて言えるはずがない! 

 

「ちょっと気になるよー!」

 

「話せないってば!」

 

 倉橋さんと言う言わないの問答になるうちに、俺たちの横で繰り広げられてる暗殺は激化する。

 結局、俺たちの行動は最終的に暗殺に行き着くんだな、なんて思いながらもこの修学旅行を振り返る。

 クラスメイトや自分の知らない一面を知る良い機会を得た良い旅行だったと思う。

 

 こうして俺たちの修学旅行は幕を閉じたのだった。

 

「乃咲くん!」

 

「ごめん、話せないんだってば!」

 

 

 




後書き

はい、後書きです。
良かったな、圭一!今回はトラブルに巻き込まれなかったぞ!

と言うわけで、圭一は渚たちのトラブルに巻き込まれませんでした。いや、巻き込ませるかどうか前話から考えていたのですが、原作の磯貝達がどこを散策してるか分かりませんし、別の班とそんな近くで行動してるのが想像できなかったんです……。

不良高校生とうちの不良児の熱いバトルを望んでいた方、申し訳ありません……!
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