暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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それから高評価と誤字・文脈修正ありがとうございます!

今回もなんとか捻り出せたので私の妄想に付き合ってやってください。

——追記——

どひゃーとか言ってひっくり返りたいくらい誤字報告が……!みなさま、ご報告下さりありがとうございます……!



27話 触手の時間

 

 暴れる白い触手。

 唖然とする俺たち生徒と教師陣。

 何の事情も理解できない俺たちを置いていくように殺せんせーが低い声を発した。

 

「……何処だ……。何処で手に入れた……、その触手を…………っ!!」

 

 今まで聞いたことのないような低い声。

 今まで見たことがない程にドス黒い怒りで染まったその顔で分かる。殺せんせーはイトナが触手を持っていることに本気でキレている。

 

 しかし、何故だ? 

 何故、イトナが触手を持っている? 

 

 以前までの考察を交えて再び思考する。

 

 殺せんせーは何らかの目的で地球を救うためのプロジェクトの被検体になった。そのプロジェクトの内容は恐らくエネルギー問題。

 来年の3月に地球を滅ぼすそのエネルギーが本来は地球を救うためのものだったら、と浅野理事長がこの教室に来た時に俺は考察した。

 

 今、触手を生やしたイトナの登場は俺の中の考察を再び加速させることになる。

 

「キミに答える義理はないよ、殺せんせー。だが分かっただろう? 両親も違う、育ちも違う。だが……この子とキミは兄弟だ」

 

 シロが今、言った。

 親も育ちも違うと。つまり、遺伝的なものではない。そんな言葉から察するに、あの触手は第三者に後付けされたものだったとしたら? 

 

 いや、決めつけるには早い。

 

「律」

 

『はい?』

 

 俺は皆んなの後ろ側に回りながら、スマホの中の律に話しかける。俺の考察に足らないパーツを埋める為に。

 

「堀部イトナという人物が実在するか調べられるか?」

 

『……可能です。実行しますか?』

 

「頼む」

 

 まず疑うべきは堀部イトナという人物が実在するのかどうか。つまり、ここにいる彼が非公式な実験で生み出されたデザインベイビーである可能性。

 それによって殺せんせー元人間説の信憑性が大きく変わる。

 

「しかし怖い顔をするねぇ。なにか、嫌なことでも思い出したかな」

 

「どうやら、あなたにも聞かなければならないことが多そうだ。シロさん」

 

「聞けないよ、だってキミは死ぬから」

 

 考察している時に彼らの会話を聞くとどうしてもその言動の全てが意味深なものに感じてしまう。

 俺が考察している間にも触手とその保護者の戦いは進んでいた。シロが袖を持ち上げると何かの光線を放つ。俺たちにとっては眩しい程度。だったのだが、殺せんせーにとっては違ったらしい。

 

「この光線を浴びるとキミの細胞はダイラタント挙動を起こし、一瞬全身が硬直する」

 

 何故だ? 

 

「知っているんだよ、全部。キミの弱点なら全てね」

 

 何故、コイツはそんなことまで知っている? 

 

 俺の思考は目の前で繰り広げられる超戦闘よりもこのシロとかいう男の正体に向いた。もしかして、この男は全ての事情を知っているんじゃないだろうか? 

 

 これまで俺が繰り広げてきた考察が全て合っていたのなら、という過程で考察を進めよう。

 

 国や星の将来を左右するエネルギー補完プロジェクト。その実験で殺せんせーやその同種が生まれ、月で彼の同種の実験が行われた結果、被検体は暴走して死亡。月の7割が蒸発した。

 被検体の暴走により、同じく殺せんせーの自然死によりエネルギーが暴走、地球が滅亡するってシナリオが俺の妄想じゃなければ? 

 いや、人体実験やらエネルギー補完プロジェクトの件は俺の妄想に過ぎなくても、殺せんせーの自然死による世界滅亡の可能性は合っているはずだ。他ならない殺せんせーが俺にそう教えたのだから。

 

 考えろ、乃咲圭一。お前の目の前にいる教師が何者なのか。正解に一番近い位置にいるのは俺のはずだろ。殺せんせーからヒントまで貰っているのだから! 

 

 考えていると、イトナについて調べ終わったらしい律が声を掛けてきた。

 

『乃咲さん。堀部イトナは実在します。小さな工場の社長の息子さんだったようですね』

 

「そうか、ありがとう。律」

 

 堀部イトナは公的に実在する人物だ。

 無論、律が調べてくれた堀部イトナが彼であるとは限らないが、彼であると仮定した場合、触手は人間に移植できる、ということになるのではないか? 

 もし、イトナが律の調べてくれた人物と同一人物ならそれはただの人間に触手を移植できることを裏付けてしまう。つまりは、俺の殺せんせー元人間説を肯定出来てしまうかもしれないってこと。

 

 ……なのに、なんだろう。考察は進むのに、ちっとも良い気がしない。

 

「死ね、兄さん」

 

 イトナの容赦ない一撃が殺せんせーを貫く。

 だが、俺は見逃さなかった。貫かれる直前、殺せんせーが脱皮して天井に逃げたことを。

 

「脱皮か、そういえばそんな手もあったか」

 

「でもね、殺せんせー。その脱皮にも弱点があることを知っているよ。その脱皮は見た目以上にエネルギーを消費するのさ。よって自慢のスピードも低下する。そしてイトナの初撃で失った触手を再生したね? 触手の再生にも体力を使うんだ。二重に落ちたパフォーマンスでどれだけの力を発揮できるかな?」

 

 あぁ、そうか。理解した。

 考察が進んでいるのに、嬉しくない理由。それは俺の力では何も暴けていないからだ。

 こうて考察している間にも新しい情報が後出しジャンケンのようにポンポンと出てくる。

 それが気に食わないんだ。

 

 そう、悔しいんだ。

 

 このままイトナが上手くやれば地球は救われる。なのに、ちっとも嬉しくないのはそれは俺たちの手でやり遂げたかったことだからだ。

 

 悔しさで下唇を噛んでいると殺せんせーの足が2本切断された。

 

「これでまたなお一層体力が落ちたね。殺りやすくなってこっちとしては助かるよ」

 

「兄さん、俺はお前より強い」

 

 イトナが勝利を確信した様に宣言をする。

 殺せんせーがこれ以上ないまでに追い詰められていた。あと押し、あと一歩で地球が救えるのにやはり俺の気分は晴れない。

 

「足の再生も終わった様だね。触手を失うと動揺し、触手の扱いは精神状態に左右される……さ、次のラッシュに耐えられるかな」

 

 シロの言葉に俺たちは思わずナイフを握ってしまった。なにか、出来ることはないのか、このまま殺せんせーを殺させていいのか? そんな自問が頭の中で回る。

 そんな中で殺せんせーは言った。

 

「ここまで追い込まれたのは3度目です。一見愚直な試合形式の暗殺ですが実に周到に計算し尽くされている」

 

 殺せんせーから出たのは率直な賞賛。

 しかし、口調の端からは譲れない決意の様なものが感じ取れた。

 

「あなた達に聞きたいことは多いですが、まずは試合に勝たねば喋りそうにないですねぇ」

 

「まだ勝つつもりかい? 負けタコの遠吠えだね」

 

「シロさんこの暗殺方法を考えたのは貴方でしょうが、一つ、計算に入れ忘れているものがあります」

 

「ないね、私の計算は完璧だから。殺れ、イトナ」

 

 シロからの淡々とした命令にまずなく触手を振り下ろすイトナ。しかし、殺せんせーはそれを紙一重で避けながら余裕の笑みを浮かべた。

 そして、俺たちの手元から消える対先生ナイフ。あのタコ、俺たちから対先生物質を奪ってイトナの触手を破壊しやがった。

 

「おやおや、落とし物を踏んづけてしまった様ですねぇ」

 

 煽る殺せんせー。しかし、イトナはそれどころではない。触手を破壊されて動揺している。

 そこが、勝負の分かれ目だった。

 触手の扱いは精神の状態に大きく影響すると、シロは言った。ならば、それは同じく触手を持つイトナにも同じことが言えるだろう。

 

「同じ触手なら対先生ナイフが効くのも同じ。そして、触手を失うと動揺するのもまた同じことです」

 

 殺せんせーはイトナが動揺している隙に脱皮した皮で彼を包んでしまうと窓から外へと放り投げてしまった。

 

「でもね、触手の扱いに関しては先生の方が少しだけ老獪です」

 

 放り出されたイトナの脚は地面についていた。つまり、シロの考えたルール上イトナは死刑になるということ。彼の負けだ。

 

「先生の抜け殻で包んだからダメージはないはずです。ですが、キミの足はリングの外に着いている。先生の勝ちですねぇ。ルールに照らせばキミは死刑。2度と先生を殺れませんねぇ」

 

 ここぞとばかりに顔色を緑のしましまに変えて煽る殺せんせー。そんな彼に倒してイトナは分かりやすく顔を怒りで歪めていた。

 

「生き返りたいのならば、この教室でみんなと学びなさい。性能計算で測れないもの。それは経験の差です。君たちよりも少しだけ長く生き、少しだけ知識が多い。先生が先生になったのはね、経験(それ)を君たちに伝えたいからです。この教室で先生から経験を盗まなければ私には勝てませんよ」

 

 殺せんせーがいいことを言っている、その横でシロに焦りの相が見えた。何かと思うとイトナが触手を真っ黒に染めて教室に飛び掛かってくる。   

 

「勝てない……俺が、弱い……!?」   

 

 ブツブツと何かを言いながら飛び出したイトナ。その触手が向かう先は無論、殺せんせーなんだろうが、その前にたくさんの生徒がいた。

 

「……うそっ!?」

 

「倉橋さん!」

 

 すぐ近くにいたのは倉橋さんだ。 

 そうと分かったその瞬間、ヤバい、と認知すると同時に俺は瞬時にゾーンに入った。

 

 倉橋さんが襲われることはないだろう。だが、触手を真っ黒に染めるほどの怒りに身を任せたイトナが周囲の被害を考えるとは思えない。

 俺は、ゾーンに入り、体を必死に動かした。

 イトナが窓縁まで到達するまであとコンマ数秒、俺が倉橋さんの前に出るまで残り7メートル程。

 

 このままだと倉橋さんどころか暴れ狂ったイトナに教室が滅茶苦茶にされてクラスメイトたちが死傷するかもしれない。そんな危機感に襲われる。

 以前見た、カルマの投身自殺紛いの暗殺。あの時と同じくらいに全身の感覚が研ぎ澄まされ、世界が遅く感じる。

 あの時と違うのは殺せんせーが万全ではなく、満身創痍であること。今の彼に皆を助けられるかは分からない。

 そんな極限状況下で俺は自分の内側の()を聴いた。

 

《……何が欲しい?》

 

 身体(・・)が聞いてくる。今までこんなこと感じたことは無かった筈なのに、俺は、今、自然に願ってしまった。身体からの問い掛けに対して、一言。

 

《速く動きたい》

 

 倉橋さんやみんなを助けられるように。と。

 その瞬間、極限状態の中で俺の中で何かが弾けた。

 

「くっ……ぁっ……!」

 

 視界の全てがほとんど止まって見えるほどのスローモーションの中で俺は、自分以外の全てよりも、ほんの少しだけ早く動くことができた。

 いつも通り体にまとわりつく硬い粘液の様な空気の重さも今は緩く感じる。

 俺はゾーンの中でまともに動くことが出来た。

 

「もっと、周りを見ろやぁぁぁぁ!」

 

 周りの誰よりも早く動けた俺はイトナが飛び掛かってくるのを受け止めて、地面に叩き付けるようにイトナを投げ飛ばした。

 イトナを受け止めると同時にゾーンから抜け出し、怒鳴りつけながらイトナを叩き付ける。

 

「がっ……」

 

 火事場の馬鹿力的なものが爆発したのか、俺はゾーンで動けない縛りを突破して、イトナの意識を刈り取ることに成功したらしい。

 

「はぁ……はぁ……。大丈夫? 倉橋さん」

 

「う、うん! 平気だよ」

 

 自分でも予想以上の動きをしたせいか、身体が酷く怠く感じた。息も切れてるし、ゾーンの中で動くなんて事をした所為か、普段以上に頭が疲れた。倒れそうなくらいに疲れたし、頭痛もする。膝が笑って言うことを聞かない。

 

「……驚いた。随分と生きがいい生徒さんだね、殺せんせー」

 

 誰もが唖然とする中で、シロだけが飄々としていた。飄々と俺を生きが良いとか評価して、伸びてるイトナを背負った。

 

「ありがとう、乃咲圭一くん。お陰で手間が省けたよ」

 

「……なんで俺の名前を?」

 

「さて、どうしてだろうね。あ、それと殺せんせー。すまないね、この子はまだ登校できる精神状態じゃなかった様だ。転校初日で何ですが、しばらく休学させて頂きます」

 

「待ちなさい! 担任としてその子は放っておけません。一度E組に入ったからには卒業するまで面倒を見ます! それにシロさん。貴方にも聞きたいことが山ほどある!」

 

「嫌だね、帰るよ。それとも力ずくで止めてみるかい?」

 

 俺の問い掛けに答えることなく、イトナを背負って颯爽と去ってゆくシロ。そんな彼を殺せんせーがみすみす逃す訳もなく、触手を伸ばして彼の肩を掴む。が……。

 パシャ、と音を立てて彼の肩を掴んだ殺せんせーの触手は壊れてしまった。

 

「対先生繊維。キミは私に触手一本触れることすら出来ないよ。それに心配せずとも直ぐに復学させるよ、殺せんせー。3月まで時間はないからね。責任を持って私が家庭教師を務めた上でね」

 

 そう言って立ち去ろうとするシロ。

 そんな彼に俺は半ば回答はないだろうと思いながら一つの問いを投げた。

 

「シロさん。イトナも触手をもってるけど、来年の3月には地球を爆破するんですか?」

 

 それが俺の気になる問い。

 触手を持ってる殺せんせーが来年には地球を破壊するほどのエネルギーを持つなら、触手を持ってるイトナも同じことが言えるだろう。

 そう思ったから問い掛ける。

 

 しかし、意外にも返答は来た。短くはあるが、明確な答えで。

 

「この子はそんなことないよ」

 

 そう言い残して今度こそ立ち去ろうとするシロさん。しかし、何を思ったのか、朝、イトナが明けた穴から出る直前にこっちを振り返り、短く告げた。

 

「あ、そうそう。お父さんによろしくね。乃咲くん」

 

「なっ……!?」

 

 言い残すと今度こそシロは立ち去った。

 俺の中には幾つかの疑問が残ってしまったが。

 最後、彼はなぜ、親父のことについて触れたのだろう。単なるブラフだろうか? 

 俺のことを知ってるのはよくよく考えてみれば烏間先生の報告書を見ているのであれば不思議でもなんでもないし……。

 

 現状はほとんど何も分かってない。ほぼ考察の域を出ていないのが現状だが、あのシロという男が、殺せんせーや触手にまつわる秘密を握っているのは間違いないだろう。

 

 だが、今考えても確認しようがない。

 シロと堀部イトナという転校生は俺たちを引っ掻き回すだけ引っ掻き回して退場してしまった。

 

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 イトナが去ったあと、教室の復旧をしていると殺せんせーは悩んでいる様だった。普段は掴みどころのない天然キャラを計算して演じていたらしい。

 そんなどうでも良い情報求めてないんだけどなぁ、なんて思ってるとビッチ先生が口を開いた。

 

「にしても驚いたわ。あのイトナって子、触手を出すだなんて」

 

 その核心に触れた言葉にクラスメイトたちがここぞとばかりに食いつく。

 

「ねぇ、殺せんせー。あの2人との関係について教えてよ」

 

「私たち、生徒だよ? 先生のこと、もっと知る権利あると思う」

 

「いつもは適当にはぐらかされてきたけどさ、あんなの見せられたら聞かずにはいられないぜ」

 

 皆の言葉と視線が殺せんせーに集中する。

 流石に逃げ切れないと観念したのか、殺せんせーはゆっくりと真実を語り出した。

 

「しかたない……話さなばならない様ですね。先生の正体について。実は……実はね……」

 

 誰もが息を呑む中、真実が告げられた。

 

「実は先生、人工的に作られた生命体なんです!」

 

「だよね? で?」

 

「反応薄っす!?」

 

 クラスメイトたちがごく当たり前の様に殺せんせーが人工的に作られた生命であると推理する中、俺は考察を振り返っていた。

 

 地球を救う英雄になるはずだった。

 

 地球を滅ぼす巨悪に成り果てた。

 

 触手は人間に移植できる。

 

 殺せんせーは3月に自然死する。その際に地球を巻き込んでしまう可能性がある。

 

 シロという人物が謎を握っている。

 

 今わかっているのはこれだけだ。

 殺せんせーは本当に謎が多すぎる。

 

「知りたいのはその先だよ、殺せんせー。どうして、さっきは怒ったの? イトナくんの触手を見て。先生はどうして生まれて、何を思ってここに来たの?」

 

 渚の実に核心を射抜いた言葉に殺せんせーは不敵に笑った。

 

「残念ですが、それを今、君たちに話しても無意味です。先生が来年地球を爆破してしまえば皆さんが何を知ろうが塵になってしまう」

 

 まただ。殺せんせーは俺たちが核心に近づこうとするたびにこうして地球がなくなれば無意味理論を展開して真実に俺たちを近づけさせてくれない。

 きっと、俺が考察した内容を全て語り聞かせても『そんなこともあるかもしれませんねぇ』としか言われないだろう。

 

「逆に君たちが地球を救えばその後に真実を知る機会は幾らでもある」  

 

 そう、結局はそこに帰結する。

 

「もう分かるでしょう? 知りたいのなら殺してみなさい」

 

 そのあとでなら真実を知るチャンスはいくらでもあるのだから、と。

 

暗殺者(アサシン)暗殺対象(ターゲット)。それが私と君達を結びつけた絆の筈です。先生の中の大事な答えを知りたいのなら、君たちは暗殺で聞くしかないのです。……質問がないのなら今日はここまで!」

 

 殺せんせーはそう言い残すと悶えながら教室を出て行ってしまった。

 

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 放課後なので俺は教室の片付けもそこそこに切り上げると烏間先生の元に向かう。だが、いつもとは違い、今日は複数名でだ。

 元に向かう。たが、いつもとは違い、今日は複数名でもだ。

 

「烏間先生、今日もお願いします」

 

「乃咲くん……? 今日はいつもよりも人数が多いがどうかしたのか」

 

 いつもは俺くらいしかいなかった放課後暗殺訓練に今日はクラスメイトの大半が同行して来たので流石の烏間先生も驚いたらしい。首を傾げて聞いてくる。

 

「あの、もっと暗殺のこと、教えてくれませんか?」

 

「……? 今以上にか」

 

「今まで"誰かが殺る"んだろうってどっか他人事だったけど」

 

「今日のイトナみて思ったんだ。俺たちの手で殺りたいって」

 

「他の誰でもない。俺たちの手でって」

 

 なんだか少し複雑な気分だ。クラスメイトたちのやる気が上がったことを喜ぶべきなのか、それとも烏間先生を独占できなくなることを嘆くべきなのか。

 まあ、みんなの意見を聞いている烏間先生もどこか嬉しそうだし、ここは素直に喜ぶとしようか。

 

「もしも今後、強力な殺し屋に先を越されちまったらさ、今日まで俺たちが何をして来たのか分からなくなる」

 

「だから、殺れるだけのことを殺れる限りだけやりたいんです! 私たちの手で!」

 

「俺たちの疑問の答えは殺して、俺たちの手で見つけたい」  

 

 磯貝がそう締めくくる。

 

「とか言ってるんで、みんな連れて来ちゃいました。よかったですか、烏間先生?」

 

 俺が返ってくる答えを知りつつそういうと烏間先生は笑ってくれた。

 

「分かった。では希望者には放課後も追加で訓練を行う! 今後、ますます厳しくするからそのつもりで!」

 

「「「はいっ!」」」

 

「それじゃあ早速、新設した20メートル垂直ロープ昇降開始!」

 

「「「厳っ!!?」」」

 

 クラスメイトたちの答えを聞いて思った。

 やっぱり、手っ取り早いのは殺せんせーを殺して真実を知ることなんだろう、と。

 今後も考察を止めるつもりはないが、今日覚えた悔しさを忘れない様に、俺もより一層暗殺に励もうと思った。

 

「乃咲くん」

 

「ん?」

 

「さっきは助けてくれてありがとね」

 

「……たまたまだよ」

 

 ゾーンに入ってまで駆け出してしまった照れ隠しに俺は倉橋さんからそっぽ向くしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ねぇ、あなた」

 

「……どうした?圭」

 

「声が聞こえたわ」

 

「声?」

 

「ええ。『何が欲しい?』って」

 

「なにが、欲しかったんだ?」

 

「『時間』って答えたの。そしたら時々、1分が何時間にも感じられて驚いちゃった」

 

「……」

 

「私が欲しい時間は、そういう意味じゃなかったのだけどね」

 

 銀髪の妊婦は寂しそうに呟くと命の宿った自らの腹をそっと撫でた。

 

 




後書き

はい、後書きです。 

圭一、ついにゾーン中に動き出す、と。
ただしこれには相応の代償が……。

果たして圭一の中から聞こえた声は何だったのか。
続きはまたいずれ………。
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