暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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それから高評価、誤字修正ありがとうございます!

土曜日なのでなんとか投下します!

まあ、いつもより短いですが……。

——追記——
誤字修正、ありがとうございます!


34話 寺坂の時間

 

 E組の夏は暑い。

 ひたすらに暑い。

 暑すぎて亡者になりそう。

 

 そんな俺たちを見かねた殺せんせーがE組の裏山に俺たちを連れ出した。なぜだか、水着に着替えさせられて。

 

「乃咲くん、歯、大丈夫?」  

 

「うん。早速生え変わってるから気にしないで。心配してくれてありがとうね、倉橋さん」

 

「うん。……あっ、話題変わるけどさ、この前の烏間先生とのツーショットなに!?羨ましすぎるよ〜」

 

「へへ、役得役得」

 

「なにそれ〜」

 

 倉橋さんに絡まれるのをのらりくらり躱しながら歩くこと数分。俺たちの目の前には貯水槽を改造したプールが鎮座していた。ただ小さな沢を堰き止めただけじゃなく、しっかり整備されたプールが。

 そんなプールを見て得意気に触手を組み、背一杯背伸びして高らかに笑う殺せんせー。

 

「水が溜まるまで1日、移動で1分!さ、あと1秒あれば飛び込めますよ」

 

 皆のひゃっほうー!という歓喜の声と殺せんせーのヌルフフフフという笑い声が重なり合う裏山の中で、今日も始業のベルがなった。

 

 水の中とは俺にとってある意味で隔離された孤独な空間である。1人になりたい時、何か考え事をしたい時、水の中に沈んで考えると上手く物事を整理することができるから。

 最近はゾーンに入れることも相まって、水の中の心地よさが増したといっても過言じゃない。

 一瞬が数時間かも感じられるこの力を使って水底に沈み、水面上に浮かぶ太陽を眺めているといろんなことがどうでも良くなるというか、自分もこの星の小さな生命体の一つでしかないんだなぁ、なんて真理めいた思考が脳裏を過ぎる。

 

 そろそろ息も苦しくなってきたので水から上がろうかと思い、ゾーンから抜けるとすぐ近くに誰かの足があった。この白い肌と無駄に筋肉のついてない脚から察するに女子だな、なんて思いながら水から顔を出すとそこにいたのは案の定、倉橋さんだった。

 

「乃咲くん、烏間先生が水中での訓練の仕方教えてくれたんだけどやらない?」

 

「やるぅー!」

 

 まさかそんなやりとりをしていたとは。俺は水中でくつろぐことしか考えてなかったのに。いやほんと、倉橋さん天使やわ。

 などと思っていると殺せんせーがホイッスルを吹いた。

 

「ピー!こら!木村くん!プールサイドを走らない!転んだら危ないでしょう!?」

 

「あ、す、すんません」

 

「ピッピッピー!乃咲くん、中村さん、原さんも潜水遊びも程々に!あんまり長く潜っていると溺れているのかと心配になりますから!」

 

「はーい」

 

「ピー!岡島くんもカメラも没収!」

 

「ピー!狭間さんも本ばかり読んでないで泳ぎなさい!」

 

「ピー!菅谷くん!ボディーアートは普通のプールなら禁止ですよ!」

 

 事あるごとにピーピーホイッスルを鳴らす殺せんせー。皆んなの『小うるせぇ』って呟きが鼓膜を叩く中、悪戯っぽく笑った倉橋さんが殺せんせーに近づいてゆく。

 

「そんなにカタいこと言わないでよ、殺せんせー!水かけちゃえ!」

 

 パシャっと上がる小さな飛沫が殺せんせーに命中する。てっきり、こら!監視員に水をかけちゃいけません!みたいな反応が来るかと思いきや、殺せんせーが出た反応は……。

 

「きゃぁん!?」

 

 女子もビックリな甲高い悲鳴だった。

 これには流石にその場にいた全員の手が止まった。

 

「え、なに」

 

「今の悲鳴……」    

 

 倉橋さんと顔を見合わせる。

 

「乃咲くんにも水かけちゃえ!」

 

「きゃぁん!?」

 

 彼女に水を掛けられたので殺せんせーと同じリアクションを取ってみる。 

 

「こんなリアクションだったよねぇ……」

 

「だったよなぁ……?」

 

 俺は今度はカルマと顔を合わせる。

 あーあ、悪い顔してらぁ。けどまあ、そんなカルマの意図を理解出来てしまう自分も同類か。

 

 俺たちは示し合わせたように水中に潜り、気配を消して、殺せんせーの座る監視台に近づき、同時に骨組み部分を掴むとガッチャンガッチャンと2人で台を揺らしてみる。

 

「きゃぁっ!?カルマくん、乃咲くん!?揺らさないでください!?落ちる、落ちちゃいます!?頼んます!!?」

 

 ゼーハーゼーハーと息切れする殺せんせー。その異様に水を恐れる様子から俺たちは察した。恐らくはこれまで判明した中で最も使えるであろう弱点を。

 

「……いや、別に泳ぐ気分じゃないだけだし〜。水中だと触手がふやけて動けなくなるだとか、そんなん無いし〜」

 

「殺せんせー、それ、自白してるようなもんですよ」

 

「にゅやぁ!?」

 

 殺せんせーは泳げない(・・・・)

 そんな殺せんせーの弱点はこの一夏の課題になりそうだと俺たちはこの時に直感した。

 

「手にビート板もってるからてっきり泳ぐ気満々なのかと……」

 

「これはビート板じゃありません!ふ菓子です」

 

「おやつかよ!?」

 

 殺せんせーの新たな弱点発覚と共にまた一つ活気立つ俺たち。そんな俺たちから孤立した位置にいる男が1人……。

 

「ふっ……下らねぇ……」

 

 寺坂はそんな俺たちを見下していた。

 

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⬜︎

 

⬛︎

 

 さてE組専用プールが開かれてから数日。俺たちの知る限りでは表だった問題はなく数日が経過したのだが……時折、妙なことが起きる様になった。

 まあ、主にE組プールが荒らされたくらいなんだが。

 本当に俺の認知する事件はこれくらい。あ、でも片岡が面倒な奴に絡まれたとかそんな話を聞いたが、いつも通り、殺せんせーが解決したのだろう。

 

「な、乃咲!バイクもいいだろ!?」

 

「そうです乃咲くん!目指せ大型バイク乗り!漢字の漢とかいて男の中の男!男に生まれたからにはこれくらいの趣味は是非に嗜みましょう!」

 

「お、おう」

 

「何やってるんだ?吉田……」

 

「あ、て、寺坂……」

 

 と、そこに明らかに機嫌の悪い寺坂登場。なんだか妙に機嫌悪いな、コイツ。

 何かあったのか?

 

「い、いやぁ。この前、コイツらとバイクの話で盛り上がってよ、うちの学校じゃこう言うのに興味ある奴いないからつい話し込んじまって」

 

「ヌルフフフフ、そう言うことです。しかもこのバイク最高で時速300kmまで出るんですって。先生も一度でいいから本物に乗ってみたいもんです」

 

「いやアホか!抱き抱えて飛んだ方が速いだろうが」

 

 吉田と殺せんせーの漫才じみたやり取りにクラス内で笑いが起こる。しかし、寺坂はそれすら居心地悪いとは言いたげに一度大きく鼻で笑いとばすと殺せんせーが作ったバイクの模型を蹴り倒した。

 

「にゅやぁっ!?」

 

「あ、おい!?何すんだよ寺坂!?」

 

 唐突な横暴で傲慢な態度に思わず吉田が声をあげ、そんな彼に続くようにクラスメイトたちが非難の言葉を浴びせる。

 

「お前らもぶんぶんハエみたいにうるせぇな!退治してやんよ!」

 

 それが鬱陶しかったのか、寺坂は机の中から殺虫剤の缶を取り出すと地面に思いっきり、力一杯叩きつけて破裂させた。

 そんな寺坂の横暴に流石に怒った殺せんせー。けれど、寺坂は殺せんせーを鬱陶しがるばかりで反省の色は一向に見られない。

 

「寺坂くん!ヤンチャをするにも限度っていうものが——」

 

「触んじゃねぇよ!モンスターが!気持ち悪りぃんだよ、テメーも、モンスターに操られて仲良しこよししてるお前らも!」

 

 寺坂の言葉にムッとする面々。そんな中でカルマだけがいつもの調子で言い放った。

 

「何がそんなに気に食わないのかねぇ。気に食わないなら殺しゃぁ良いじゃん。折角それが許可されてる教室なんだからさ」

 

 そんなカルマにも当然、反発する寺坂。

 

「なんだテメー。カルマ。お前も俺に喧嘩売ってるのか?上等だよ、大体テメーは最初から——」

 

「ダメだよ、寺坂。喧嘩するならまずは口より先に手を出さないと」

 

 だが、ただのガキ大将の逆ギレがカルマに通じるはずもなく……。ガタガタと文句を抜かす口はカルマの手によって物理的に封じられてしまった。

 

「……ッ、離せよ!くだらねぇ!」

 

 カルマの手を振り解くと寺坂はそのままの勢いで教室を出て行ってしまった。

 

「なんなんだ、アイツ」

 

「一緒に平和にやれないもんかな」

 

 苦悩が隠し切れていない我らが学級委員に同情を禁じ得なかった。

 

⬛︎

 

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⬛︎

 

「……」

 

 シロの野郎に頼まれた対タコへの工作をしながら何気なく考える。

 

 E組は居心地が良かった。誰にも期待されない劣等生の集まり。勉強できない奴、俺みたいに素行が悪い奴が落とされる終着点。

 そんな掃き溜めの様な場所は居心地が良かった。誰にも期待されないクズの集まり。そんなE組が居心地良かった。

 

 だが、そんなE組をあのモンスターは変えちまった。地球を救う、なんて大きな目標をみんなに作りやがったせいでやる気と活気が溢れた。

 あのモンスター、殺せんせーが来てからのアイツらは大したもんだった。本校舎の連中からの妨害が入ったとはいえ、平均点自体は大幅に上がったし、この前の球技大会でも野球部に勝ちやがった。

 

 

 大したもんだ。本当に。だけど、そんなE組の明るい雰囲気が居心地悪くてしょうがなかった。

 地球を救うだとか、暗殺の為の自分磨きだとか、落ちこぼれからの脱却とか、正直なところ、そんなことはどうでも良かった。その日その日を適当に生きたいだけなんだよ。俺は。

 

 だから俺は……。

 

「ご苦労様、寺坂くん。プール破壊、薬剤散布、薬剤混入、君のおかげで効率よく準備ができた——はい、報酬の10万円」

 

 こっちの方が居心地が良い。

 

「キミの様な内部の協力者がいてくれると助かるよ、寺坂くん。なにせ、ヤツは鼻が効く。外部の者が動き回れば直ぐに察知してしまう。だから寺坂くん。キミの様な内部の者に協力を仰いだのさ」

 

 触手を宿した改造人間、堀部イトナ

 その保護者を名乗る、シロ。

 

「イトナ、おまえなにか変わったな。……目と髪型か?」

 

「お?よく気がついたね。髪型が変わった、それは触手が変わったことを意味する。前回の反省を活かして綿密な育成計画を立ててより強力に調整したんだ」

 

 言ってることはよくわからねぇが、イトナがより強力になったってことなんだろう。

 そんな風に考えているとシロがわかった様な口を聞いてきやがる。

 

「寺坂竜馬。私にはキミの気持ちが分かる。あのタコにムカつくあまりクラスの中でもキミは孤立を深めている。たから、キミに声をかけたんだ。安心しなさい。私の計画通りに動いてくれれば直ぐにでもヤツを殺し、奴が来る前のE組に戻してあげよう。その上、お小遣いまで貰えるんだ、悪い話じゃないだろう?」

 

 そう言われてみると確かに悪い気はしない。そう思いながら受け取ったばかりの金を見ているとイトナが不意に覗き込んで来た。

 

「な、なんだよ?」

 

「お前は……あの赤髪の奴と銀髪の奴より弱い。馬力も体格も奴らよりも優っているのに、だ。何故だか分かるか?」

 

 唐突で無神経な問いかけに口を開かずにいるとイトナがすかさず口を開いて言い放ってきやがった。

 

「お前の目にはビジョンがない。勝利への意志も、手段も情熱もない。目の前の草を漠然と食っている牛は……牛を殺すビジョンを持った狼には勝てない。ビジョン……それだけでいい」

 

 いつぞやみたいに言いたいことだけ言ってさっさと居なくなってしまったイトナに腹が立つ。

 

「なんなんだ!?あのヤロウ!相変わらず……!脳みそまで触手なんじゃないのか!?」

 

「ごめんごめん、私の躾が行き届いてなくてね。仲良くしてくれ、なんせ我々は戦略的パートナーなんだから」

 

 機嫌が悪くなった俺に取り入る様に言い放つシロ。

 

「クラスで浮きかけているキミなら不自然な行動でも自然にできる。我々の計画を実行するのに適任なんだ。決着は明日の放課後だ」

 

 そう言いながらシロは見慣れた銃を手渡してくる。

 

「これは?」

 

「これは銃の形をしているけど、実は発信機なんだ。我々に合図を送る為のね。作戦はこう——」

 

 1、E組の連中をプール内に配置する。

 

 2、配置が終わったタイミングでイトナが駆けつける。

 

 3、イトナがタコをプールに落とす。

 

 4、E組、イトナ、俺で総攻撃して殺す。

 

 シンプルな作戦だった。

 

「そんなんでアイツが殺せるのかよ?」

 

「大丈夫さ。その為のイトナのパワーアップなんだから。私たちを信じて欲しい。実はキミが今日散布した薬は奴にだけ効くスギ花粉症みたいなものでね。粘液が底をついた頃に作戦を決行する。やっかいなんだよ、あの粘液は」

 

 ごたくはどうでもいい。殺せさえすればそれでいい。だから俺はシロの言葉に頷き、俺は発信機を受け取った。

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

はい、後書きです。

イケメグ回はカットしました。
理由は修学旅行編同様、圭一では解決できない、圭一にやれることがないからです。なのでアニメ準拠で進めてみました。楽しみにして下さった方々、申し訳ありません。
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