UA67000、お気に入り1050件突破!
加えて高評価、ここすき、しおりに加えて誤字脱字の修正、ありがとうございます!
今回も無事に書き終わりましたので私の妄想にお付き合いください……。
——追記——
誤字修正、ありがとうございます!
その日、殺せんせーは朝から泣いていた。
目から黄色い体液を流しっぱなし。超生物の涙は黄色いのか、鼻水みたいな色してんなとか思っていたらビッチ先生がツッコミを入れた。
「なによ、さっきから意味もなく涙を流して」
「あいえ、これは鼻から出ているので鼻水です。目はその隣の小さい方」
「まぎらわしい!!」
うわっ、やっぱり鼻水なのか、あれ。そう思うと風邪なのか?と心配する反面、どんな症状ですか、とツッコミしたくなる。あれか、花粉症的な奴なのか?
「昨日から体の調子が変です。夏カゼですかねぇ」
「風邪とか引くのか、超生物」
とかなんとか言っていると今日はまだ登校してきてなかった寺坂がやって来た。
「おお!寺坂くん!今日はもう来ないのかと心配でしたよ!?昨日、キミがキレたことならもう誰も気にしてませんから!ねぇ!皆さん、ね!」
寺坂の顔をベットベトにしながら心配する殺せんせー。しかし、俺たちの心配は寺坂が昨日のことを気にしているかどうかではなく、現在進行形で顔が殺せんせーの鼻水でべちゃべちゃになって行く寺坂の機嫌の方に向いていた。
けれど意外なことに冷静な寺坂は殺せんせーの服で粘液を拭き取ると高らかに宣言した。
「おいタコ、そろそろ本気でぶっ殺してやるよ。放課後プールまで来いよ、苦手なんだってな、水が?」
おっと、そう来たか。
殺せんせーはこう言う誘い系は断らない。それにこんな公衆の面前で宣言するくらいだから余程自信のある作戦なんだろう。
どれ、どんな暗殺をするのかな?と多少興味があったので見守るつもりで傍観を決め込んでいると。
「テメーらも全員手伝え!俺がコイツを水ん中に叩き落としてやるからよぉ!」
今度はそう来たか。
「寺坂!お前、みんなの暗殺には協力してこなかった癖によ、それをいきなりお前の都合で命令されて……はい、やります、って言うと思うのか?」
前原のもっともな反論に全員が頷く。
言われてみると確かに寺坂が協力したのは俺が授業中にねじ込んだ暗殺だけだからな。
そう思えば個人での暗殺に協力云々の話は当然出るだろう。不満が出るのはよく分かる。
「けっ、別に来なくても良いぜ?そんの時ゃ賞金百億独り占めだ!」
いってんねぇ。んじゃあ俺は高みの見物と……。
「おい、そこの俺は関係ありません、みてぇな顔してる白髪頭!美術ノッポの方じゃねぇ、そこのアホずらだ。キョロキョロ周り見渡してるんじゃねぇ、お前しかいないだろう、乃咲!テメーも参加しやがれ」
「え、普通に嫌なんだけど」
「ホレ」
あれこれ1人ツッコミしてる寺坂がズンズンと殺せんせーの粘液を踏み散らしながら俺に一枚の紙を押し付けて教室を出て行く。その背中を見送ったあと、押し付けられた紙切れを見る。
【てらさかくんのいうことなんでもきいてあげる券】
あ、これあれだ。一番最初の合同暗殺の時に渡した【いうことなんでもきいてあげる券】だわ。まさかとっておいたのか。こんなくだらない紙切れ。からかいがてらに無駄に金色の折り紙を使って作ったバカみてぇな券。
寺坂、案外可愛いところあるじゃねぇか。
ちょっとだけ寺坂に萌えた。
「よーし、そうだ!そんな感じでプール全体に散らばっとけ!」
「そーだ!寺坂さんの言うことを聞けー!野郎ども!」
「疑問だね、僕は。キミに他人を泳がせる技量があるのかい?」
「うるせぇぞ!乃咲、竹林ぃ!てめぇらも入るんだよっ!」
「フヒィ!」
「ハヒィ!」
寺坂さんの腰巾着やってたらプールの中に蹴り落とされた。
なれないことをするもんじゃないな。碌な目に遭わない。
「すっかり暴君だぜ?寺坂の奴」
「あぁ。あれじゃ1年2年の頃と同じだ。学年中の嫌われ者。浮きすぎなんだよ、この学校じゃ」
あーあ、寺坂へのヘイトがどんどん上がってる。確かに今の寺坂は完璧な暴君だ。あれしろこれしろ、と騒ぎ立てるだけ。しかも具体的な指示は一つたりともありゃしない。ただプールに入ってその辺に適当に散らばってろ。寺坂の指示はそれだけ。作戦の概要なんてあったもんじゃない。
「なるほど、先生を水に落として皆さんに刺させる計画ですか?」
「っ!」
「ですが、それでキミはどうやって私を落とすつもりです?ピストル一丁では先生を一歩ですら動かせませんよ?」
背後に立たれ、そんなことを言われて青筋を立てる寺坂はその手に握ったピストルを殺せんせーに向ける。
そして紡がれる言葉は死刑宣告の様で。
「覚悟は出来たか?モンスター」
「ええ、勿論です。鼻水も止まりましたし」
「ずっとテメーが嫌いだったよ、消えて欲しくてしょうがなかった」
「ええ。知ってます。これのあとでゆっくり2人で話しましょう?」
緑のしましまを浮かべる殺せんせーは完璧に寺坂を舐め切っている。そんな扱いに腹が立ったのか、寺坂は勢いのまま引き金を引く。
どうせ、発砲された弾丸は避けられて、寺坂が赤っ恥をかくだけだとたかを括っていた矢先、それは起きた。
凄まじい爆裂音と少し遅れて身体が意図しない方向に流される感覚。プールが何者かに破壊された。
いや何者か、なんて言い方はよそう。寺坂が破壊したのだ。まずい、流される。そう思いながら俺は近くでもがいていた竹林を捕まえ、正面から流されてきた倉橋さんを正面から身体で受け止めて、プールのコースラインに捕まる。
まずい。流石に俺含め3人分の体重を片手で支えるには限界がある。ずるずると手がコースラインから滑って行く。
竹林を脇に抱え、倉橋さんを腕と胸板で挟んでホールドしているこの状況は非常に体勢として危うい。
「大丈夫か、2人とも!?」
「へ、平気!」
「た、助かったよ乃咲……!」
きつい体勢で堪えること数秒、殺せんせーが彼たちを救出に来てくれた。
「ナイスガッツです!2人を頼みましたよ乃咲くん!」
俺たちを陸に持ち上げると同時に余裕なく言い放ち、飛び去る殺せんせー。しかし、俺は俺でやるべきことがある。
「竹林、倉橋さんを頼む!ちょっと寺坂問い詰めてくる」
「わ、わかった!」
俺は唖然とする寺坂に駆け寄り、両肩を掴んでガックンガックン揺らしながら今回の真意を問い詰める。
「答えろ寺坂!今回のこれはお前の作戦か!?」
「ち、ちがっ!シロとイトナが……!」
「あの2人か……!」
俺は教室まで対先生マチェットを取りに戻る。イトナ相手なら役に立つかもしれないから、教室を水浸しにしながら教室にあるありったけの先生ナイフをかき集めて、現場に戻る。
「乃咲クン!なにがあったの」
「プールが爆発した、犯人はイトナとシロだ!」
手短に伝えて、走るといまだに呆然とする寺坂と合流した。
カルマも消滅したプールを見て唖然としていた。
「話しがちげぇーよ、イトナを呼んで突き落とすって聞いてたのに……」
「まんまと利用されたわけね」
カルマの呆れたような言葉に対して寺坂は反論するように彼に掴みかかり、畳み掛ける様に捲し立てた。
「言っとくが俺のせいじゃねぇぞ、お前らぁ!こんな計画、やらす方が悪いんだ!!皆んなが流されて行ったのだって全部奴等が……!」
寺坂の言い訳を書き終える前にカルマが寺坂の頬を殴った。殴られて尻餅をついた寺坂は俺たちを震えながら見上げる。
「ターゲットがマッハ20で良かったね。じゃなきゃお前、大量殺人の実行犯にされてたよ。流されたのは皆んなじゃなくて自分じゃん。他人のせいにしてる暇があるなら自分が何をしたいのか考えたら?」
そう吐き捨てると沢の下流へ走り去るカルマ。
「の、乃咲……」
残った俺を縋る様に見上げる寺坂に口を開く。
「勉強と信頼って似てるよな、自分の努力と行動次第で簡単にいろいろと上下する。信頼も成績もな。お前、成績だけじゃなくて信頼まで地に落ちたよ。このままだとお前、本当の意味でENDになるけど、それでいいの?」
「…………」
「よく考えるんだな」
俺も現場に走ろうとしたところで、寺坂が後ろで立ち上がる。
「……俺も行く」
「勝手にしろ」
俺たちは2人で駆け出した。
俺は自分が強いと思っていた。
ロクに喧嘩もしたこたぁない。
ただ、喧嘩になりかけたことならある。
「…………」
今、俺の前を走ってる乃咲とだ。
喧嘩と言っても、殴られたとかそんなんじゃない。ただ、道を塞いで歩いていた俺の正面から来たコイツに一睨みされただけ。
正直、ビビった。初めて他人に道を譲った。当時のコイツの『道の真ん中に落ちてるゴミを見る目』が気に食わなかったと同時に怖かった。
この時、持ち前のガタイと声のデカさだけで、周りを威圧していた自分が陳腐に見えて、負けた気がして仕方なかった。
コイツに無自覚に鼻っ柱を折られただけじゃない。この学校じゃそもそもそんなガタイと声のデカさで周りを威圧する生き方は通用しなかった。
自分の持っていた安っぽい武器はここじゃ一切通用しない。きっとこれから一生そうなんだとコイツに道を譲った瞬間に悟った。
E組に落ちた時、安心した。
自分の同類。不貞腐れた連中の集まり。惰性だけで生きている様な当時のE組は居心地が良かった。
なのに、あのモンスターがみんなに大きな目標を与えちまった。
そして、皆んなに取り残された俺はこうして頭のいい奴に利用されて、こき使われた。
「くそっ!」
気に食わない。
奴等の思う壺に動いてしまった自分も、結果的に何も出来ない自分にも。だから、せめておもった。
目標もビジョンもない馬鹿は頭のいい奴に操られるしかないなら、せめて、操られる相手は自分で選びたい、と。
俺たちが着いた頃、イトナと殺せんせーは既に戦いを始めていた。
だが、それ以外のE組生徒は全員無事だったらしい。ひとまずは一安心していいだろう。
「マジかよあの爆発にあの2人が噛んでたとは」
「それだけじゃないよ。みて、殺せんせーとイトナの触手のパワーが違いすぎる。きっと、他に何かあったのよ。水はかなりのハンデなんだわ」
岡島と片岡の分析に補足を付けるようにここまでダンマリしていた寺坂が口を開いた。
「水だけじゃねぇ。力を発揮できねーのはテメーらを助けたからだよ」
そう言って寺坂が指差した先には今にも折れそうなか細い木にこのクラスで最もヘビーな原さんがしがみついていた。
「あぁっ、ぽっちゃりな原さんが今にも折れそうな木に!」
「吉田や村松も崖っぷちだ!?」
「殺せんせー!原さんたちを守る為に!?」
「アイツ、ヘビーで太ましいから危ねぇぞ」
普段なら寺坂の言い草に笑っていた場面なんだろうが、状況が状況だけに笑えない。どうしたものかと考えていると、磯貝が口を開く。
「お前、まさか、今回の件、アイツらに操られて?!」
そんなセリフに寺坂はバツが悪そうに笑うと白状した。
「あぁ、そうだよ。目標もねぇ、ビジョンもねぇ奴は頭のいい奴に操られる運命なんだよ」
本当にバツが悪そうなあたり、本気で反省しているのだろう。カルマの叱責がよほどこたえたらしい。
そんなカルマに向かって寺坂は向き直る。
「だがよ、操られる相手くらいは選びてぇ。アイツらはコリゴリだ。賞金持ってかれるのも気に入らねぇ!だからよカルマ!テメェが俺を操ってみせろ!その狡猾なオツムで俺に作戦与えてみろ!完璧に実行してあそこにいるの助けてらやぁ!」
そんな寺坂にカルマも向き直る。
「別にいいけど、実行できるの?俺の作戦、死ぬかもよ?」
「やってやんよ!こちとら実績持ってる実行犯だぜ?」
勇ましく言い放ち、シロたちの方へと向かう寺坂にカルマが言う。
「え、作戦まだ考えてないけどもう行くの?」
「え、あ、うん!まだなのね……」
寺坂に萌えた。
「シロ!イトナ!よくも俺を騙してくれたな!?」
「あはは、悪かったよ、寺坂くん。だが、E組で浮いていた君にはどうでもいいことだろう?」
「うっせぇ!誰が浮いてるって理由で殺人犯になりたがるってんだよ!?俺は頭に来てるぜ!おい、イトナ!お前、俺とタイマンはれや!」
然り浸透といった様子の寺坂。そんな彼に悪びれもせず飄々と酷なことを言い放つシロにキレた寺坂が我慢できないと言った様子でイトナに立ち向かう。
着ていたシャツを脱ぎ、盾がわりにすることで触手を持つイトナに立ち向かおうという彼をシロが笑った。
「やめなさい!寺坂くん!君が勝てる相手じゃない!」
「うっせぇ!引っ込んでろ膨れタコ!」
そんな荒ぶる寺坂に触手の一撃を加えようとするイトナに渚が焦った様にこの作戦の発案者のカルマに向き直るが、カルマはそれを軽く制すると口を開いた。
「いーんだよ、死にはしない。むしろアイツらは俺たちを殺さないし殺せない。殺したら人質としての価値がなくなるからね。だから寺坂に言っておいたよ。気絶する程度の触手は喰らうけどあくまでその程度、死ぬ気で喰らいつけってさ」
ぶっ飛んでる指示だが、そいつを実行しに行く奴もぶっ飛んでる。俺はそう思いながら皆の頭上、気配を消しながら木の上でマチェットの投擲体勢に入っていた。
『乃咲クンは寺坂が触手受けたあとでイトナの触手を破壊して欲しいんだわ。大丈夫、絶対に隙ならできるからさ。触手破壊のプロでしょ?』とかカルマからのえげつないもはや投げやりとも言える信頼に応えるためである。
「ぐふぅ……!!」
触手の重たい一撃が寺坂を襲う。辛うじて寺坂は意識を保っている様だが、盾にしていたシャツはイトナの触手に巻き込まれて回収されてしまった。
まずいぞカルマ、隙なんて何処にあるんだ?と問いかけそうになったその時、『くちゅん』と随分とまぁ、可愛らしいくしゃみが聞こえてきたので音の方へ視線を向けるとイトナが花粉症も顔負けなくしゃみを連発していた。
「乃咲クン、いまいま」
「っ、了解!」
言われた通りに触手に向かってマチェットを投擲する。律の体の中で作られた対先生プラスチックで刃先から柄尻まで作られたそれはくしゃみするイトナの触手を2本、容易に切り落としてくれた。
『柄は人間工学的に握りやすい形に成形しました!どうでしたか、乃咲さん』
「手に吸い着くみたいだった。完璧な仕上がりだよ、律」
『ありがとうございます!』
などと律とイチャつきながら話していると、殺せんせーが原さんをしっかり助け出してくれていた。
「寺坂のシャツ、昨日着てた奴と同じなんだ。つまり、昨日の対先生ガスを超至近距離で吸ったシャツだってこと。今日、殺せんせーがやたらと粘液出しまくってたのがそのガスのせいならイトナにも効くだろうと思ってさ?弱点、殺せんせーと同じなんだって?」
「けどそれなら乃咲に触手破壊までさせる必要あったのか?くしゃみしてる隙で充分な時間稼ぎが出来てると思うんだけど」
「乃咲クンに壊してもらったのはあくまで保険。触手失ったら動揺するっていうから念には念を入れないとネ」
なるほどな、今回は完璧にカルマの作戦勝ちか。しかも保険までかけてる徹底ぶりに今回ばかりは脱帽だな。
などと感心してばかりではいられないか。
俺は木の上から沢に高い水柱を作りながら飛び降り、イトナに向かって沢の水を思いっきり蹴り上げた。
「弱点が殺せんせーと同じなら、水が弱点なのも一緒。だよな、カルマよぉー!」
「乃咲クン正解〜って訳で、皆んな。転校生の歓迎水掛け大会でもやろうか〜」
「「「賛成〜!!」」」
俺とカルマの言葉に続く様にクラスメイトたちが、水飛沫をあげて沢に飛び込み、水遊びを始める。
「吉田、村松!」
「あ?」
「は?」
「オメェらならそこから飛び降りれんだろ!1発デケェの頼むぜ!」
「まじかよ!」
「しゃーねぇな!」
水面をばっしゃばっしゃと叩きながら吉田と村松に指示を飛ばす寺坂。そんな彼に応える様に直ぐに彼らも飛び降りるあたり、寺坂組の信頼関係は本物なんだろう。
俺たちの"水遊び"で余計な水分を吸ったイトナの触手。それをくしゃみをしてる隙にここに来るまで集めて来たナイフを投げて破壊して、さらに動揺を誘う。
触手が再生しても、水を吸い、動きが鈍化し、くしゃみして隙を晒している間に俺や、俺が投げたナイフを拾った生徒の手で触手を破壊されるイトナ。その光景は言い方が悪いが集団リンチのようであった。
触手の再生には体力を使う。イトナが疲弊した頃合いをみてカルマがシロに問いかけた。
「どーすんの?まだやる?俺らも賞金持ってかれるの嫌だし、そもそも皆んなアンタの作戦で死に掛けてる。ついでに寺坂もボコられてるし、まだ続けるならこっちも水遊びさせて貰うけど」
その言葉に呼応する様に各々が水を準備する。
流石に分が悪いと判断したのか、シロは踵を返した。
「帰るよ、イトナ」
そんな言葉に思いっきり歯軋りしたイトナに殺せんせーが温かく言う。
「どうです?みんなで楽しそうな学級でしょう?そろそろちゃんとクラスに来ませんか?」
「……フン」
殺せんせーの提案を鼻で笑うとイトナはそのままシロの後に続いて去って行ってしまった。
その様子にようやく一息ついた一同は持っていた武器、水をその場に放り投げるとだっと疲れ多様に息を吐いた。
「ふぃー、なんとか追っ払えたな」
「良かったね、殺せんせー。私達のお陰で命拾いして」
「ヌルフフフフ、もちろん感謝してますとも、まだまだ奥の手はありましたがねぇ」
今回はこれで一件落着……かと思いきや、そうは問屋が下さなかった人物が1人。寺坂に突っかかっていた。
「そーいえば寺坂くん。さっき、私のこと散々言ってくれたわよね。ヘビーだとか、ふとましいだとか」
誰だろう、原さんである。どうやら木の上にしっかりしがみつきながらも寺坂の言葉はちゃんと聞き取っていたらしい。
詰め寄られる寺坂に1人だけ水に濡れない位置から高みの見物決め込んでいたカルマが笑っていた。
「あーあ、本当に無神経だよな、寺坂は。そんなんだから人の手のひらで転がされるんだよ」
「うるせー!カルマ!テメェも1人高いところから見てるんじゃねぇ!」
その一言に青筋立てた寺坂がカルマに掴みかかり、高台から引き摺り下ろし、そのまま沢の中にカルマを投げ込んだ。
カルマは全身水浸しになった身体を見下ろして当然キレる。
「はぁ!?何するんだよ、上司に向かって!」
負けじと反論する寺坂。
「誰が上司だ!触手を生身で受けさせるイカレた上司が何処にいやがる!!大体テメーはサボり魔の癖にいつもオイシい所は持っていきやがって!?」
「あーそれ、私も思ってた」
「これを機会にたっぷり泥水も飲ませようか」
寺坂の言葉に同調した片岡と中村さんが一緒にカルマに襲い掛かる。もうすっかりずぶ濡れなカルマに俺は思わず爆笑してしまった。
「ははははっ!カルマ、全身びっしょりでやんの!」
膝を叩き、腹を抱えて笑っていると、寺坂の矛先が今度は俺に向かった。
「テメーもだ乃咲!触手破壊だの、合同暗殺だの!普段のらくらしてる癖にそう言う時ばっかり中心人物気取りやがって!」
「あー、それ俺も思ってたわ」
「だな。今までなんとなく従って来たけどこれを機会に乃咲にもたっぷり泥水を飲ませてやろうぜ」
「え、いや、ちょっ」
身の危険を感じて体を後退させると何者かに両サイドからがっしりと腕をホールドされた。
「乃咲。さっきはありがとう。僕もみんなと同じ気持ちだ」
「あはは〜。乃咲くん——圭ちゃんもずぶ濡れになろうよ」
「ちょっ、まっ、竹林?倉橋さん!?」
2人にしっかりホールドされている間にカルマと寺坂が連携して水をぶっかけて来やがった。
「ブッ……!?やんのかテメェらごらぁぁぁぁ!!」
それで久しぶりに不良児スイッチが入った俺。
2人を振り解いてカルマと寺坂と俺で乱闘騒ぎ。それを見て爆笑するクラスメイトたち。今日、ようやく寺坂がE組に馴染んだ気がする。そんな放課後だった。