それから高評価、誤字修正等ありがとうございます!
今回も書けましたので投下します。
今回もお付き合いください……。
期末テスト!
それは1学期の総決算!
椚ヶ丘中学校では成績が全て!E組を誰に恥じることもないクラスにする、そう目論む100億の賞金首にとってこの期末テストは1学期の総仕上げ、決算の場である!
とまあ、こんな感じでE組は今回のテストでも燃えていた。
教室内は暑いので涼むために裏山の沢付近でのテスト勉強中。殺せんせーはいつにも増してやる気満々と言った様子で口を開く。
「ヌルフフフフ!君達も1学期の間にだいぶ基礎ががっちりに出来て来ましたのでこの分なら期末の成績はジャンプアップが期待できます!」
「殺せんせー、今回もE組全員50位以内を目指すの?」
「いいえ、あの時は先生も目先の点数ばかり気にしていました。本当なら生徒それぞれに合った目標を立てるべきなのです。そこで今回はこの暗殺教室にピッタリの目標を用意しました!」
暗殺教室にピッタリな目標という言葉にクラスメイトたちの手が一斉に止まる。視線が充分に集まった頃合いを見て、殺せんせーは口を開いた。
「前にシロさんの言った通り、先生は触手を失うと動きが落ちます。ご覧なさい。全ての分身が維持しきれず、子供の分身が混ざってしまいました」
「分身ってそんな減り方するのか」
「いや、違うでしょ」
殺せんせーの言う通り、俺たちに教えていた分身の幾つかに子供くらいの背丈の分身が混ざり始めた。
「更にもう一本、触手が減ると——ご覧なさい。子供分身が更に増え、親分身が家計に苦しみ出しました」
「切ない話になって来たぞ」
「もう一本減らすと父親分身が蒸発しました。母親分身は女手ひとつで子を養わなくてはいけません」
「重いわ!」
「つーか、触手3本無くなるだけで分身の精度にこんだけ差が出るのかよ」
「そう、乃咲くんが今、指摘した通り、触手3本無くなるだけでこんなにも影響が出ます。先生が触手を失う際に損なわれる運動能力は……ざっと20%!」
20%ってそんなに落ちるのか?単純計算で15本破壊すれば殺せんせーの運動能力は0%になるってことだろ?
それってとんでもない弱点じゃないか。
そんな事実に気付くと殺せんせーは背伸びしながら言った。
「そこでテストについての本題です。前回は総合点でのみ評価していましたが、今回は皆さんの最も得意な教科も評価に入れます。教科ごとに1位を取ったものには、答案の返却時、触手を一本破壊する権利を差し上げます」
「「「ッ……!!」」」
クラスの中で緊張が走る。
そんな緊張に対して狙い通りだと言わんばかりにヌルフフフフと笑う殺せんせー。彼は最後にこう締め括った。
「チャンスの大きさがわかりましたね?総合1位と各教科1位!皆さんがトップを取った場合に破壊出来る触手は6本です!これが
殺せんせーは俺たちをやる気にさせるのが本当に上手い。自分の命をチップに俺たちのやる気を盛り上げる異常な教育手腕には素直に舌を巻く。
こりゃあこれで、密かに第二の刃を研ぎ続けて来た甲斐があったな、と思っていると、登校中にたまに遭遇する三毛猫が草むらから現れ、すり寄ってきた。
いつしか倉橋さんと撫でたネコだ。相変わらず元気そうだなぁ、などと思いながら首下を掻くように撫でてやると、俺斜め前で真面目に勉強していたはずの速水さんがネコの声にピクリと反応し、振り返って来た。
あらやだ、この子、もしかして猫が好きなのかしら?などと思いつつ、ネコを撫で続けていると、速水さんの視線はネコから一向に外れることがない。
この時俺は確信した。このツンデレスナイパー、ネコ好きだな、と。まあ、俺にデレてくれたことはないけど。
などと思いながら、ネコを持ち上げ、速水さんの方に向けて見ると、ビクッと顔を背けてしまった。
それでもこっちが気になるのか、チラチラと振り返る速水さん。少し面白かったので、ネコを連れて速水さんの隣へ。
「はい、ねこ」
「…………」
「早くしないとにげちゃうかもなぁ〜」
「…………」
差し出されたネコを凝視して恐る恐る猫に触れる。気持ち良さげな声を出す猫に満更でも無さそうな……というか、普段のクールビューティなイメージがガッシャンドッシャンと音を立てて崩れて行きそうないい笑顔を見せる速水さん。
「……にゃ〜」
「——え?」
「……っ」
ニマニマしながら見ていると我に帰ったらしい速水さんがそっぽ向いてしまったので、大人しく退散する。これ以上揶揄ってツンの要素が強まってしまっても俺にはあまりいいことがあるとは思えないからだ。
にしてもいいリアクションが見れた。あの速水さんが『にゃー』だってさ。俺は隣に座るネコに勉強の妨げにならないくらい適度に構いながら勉強を進めた。
「あ、圭一!」
「ん?なんだよ磯貝」
「もし放課後空いてるなら本校舎の図書室行かないか?実は随分前から期末を狙って予約してたんだ」
「……うちの図書室、予約制だったのかよ」
とんでもない事実を聞いた気がする。中学校の図書室が予約制ってマジかなかよ。ありえなくねぇか?
「誘いはありがたいけど遠慮しとく。……E組が行ったら余計なのに絡まれて折角のチケットが無駄になりそうだ」
「あはは……た、確かに否定できない。わかった。適当なやつ誘って見るよ」
「悪いな、埋め合わせはいつかするわ」
「お前からそんな言葉が出てくるとはな。わかった、その時を楽しみにしてるよ」
磯貝とそんなやりとりをして俺は教室を後にする。
完全予約制の図書室なんて行こうものなら他のクラスからの罵声で勉強どころじゃなくなりそうだからな。
しかし、かと言って家で勉強し続けるのも少し飽きてきた。ゾーンに入れるようになってから勉強の効率は異常に良くなり、つい先日、とうとう各教科の1年の頃から今回のテスト範囲までの復習が終わったのだ。
自分へのご褒美……をするにはまだ少し早いだろうが、ちょっとくらいの贅沢なら許されるだろう。
そう考えた俺は学校から少し離れた喫茶店へ。いつだったか、俺が磯貝を恐喝した店までやって来た。
律儀に毎月祖父母がお小遣いをくれはするが、使う当てがなく、貯まっていく一方だったので、たまには喫茶店でお茶でも飲みながら勉強するのも良いんじゃないかと思ったからだ。
適当にアイスコーヒーを頼んで、教科書を広げてテスト範囲の先を少しだけ予習しておく。あの理事長のことだ。また直前で範囲を変えるなんてことをやりかねない。
「圭一、そこのピリオド見落としてるだろ。間違えてるぞ」
「…………なんでお前がここにいるんだよ」
教科書と参考書、問題集を見比べていると、聞き慣れたキザッたらしい声が聞こえたので顔を上げると、そこには我が校が誇る5人の秀才、5英傑の筆頭、浅野学秀がニコニコ顔で立っていた。
「正面、いいかな」
「お引き取りください」
「すみませーん、僕にもアイスコーヒーを」
「だから帰れって」
「心外だな、僕だって勉強しにきただけなのに」
「わざわざ俺の正面に来てまでやることか!?」
「何言ってるんだ?一年の頃は良く一緒に喫茶店で勉強したじゃないか。忘れたのか?」
「1年の頃限定でな!?今3年だぞ」
「いいじゃないか、別に減るもんじゃない」
「俺のSAN値が減る……」
「僕は神話生物かなにかか?」
俺やカルマ以上にのらりくらりしながら俺の正面に座る浅野。もういいや、どうにでもなってしまえ。
俺はお手上げだとジェスチャーして浅野の同席を認めた。こいつの強引さは1年の頃から変わらないな。
『大丈夫だ圭一、僕に続いて言ってみよう。"俺は強い"』
『俺は強い……』
『"有象無象を蹴散らす"』
『有象無象を蹴散らす』
『"踏み潰す"』
『踏み潰す……!』
あぁ、頭痛が痛いなんて馬鹿なことを言いたくなるレベルで思い出したくない思い出が一気に蘇る。アレは俺が2回目順位を落とした頃にされた洗脳教育だったか。
いつだったかの球技大会で進藤を洗脳してる様子を見て恐怖を感じたのは当時の浅野を思い出したからだった。
なるほど、やっぱりおっそろしい親子だよ。
などと思っているといると浅野のケアレスミスを見つけてしまった。
「浅野、そこの問3の方程式、途中計算のカッコが一つたらなくないか?ほら閉じる方の」
「ん?あ、ホントだ。ありがとうよく気付いたな」
「珍しいな、お前がケアレスミスなんて」
「僕だってミスくらいするさ人間だもの」
「あ、そう」
そんなこと言いながら勉強に戻ると浅野が不意に笑い出す。その笑い方が多少気持ち悪かったので怪訝な顔をすると、笑いながら困ったように訂正した。
「いや、すまない。お前とこうやって机を挟んで勉強するのが懐かしくてね。いや、本当に懐かしい」
「まあ、2年ぶりだしな」
「そうだな。ところ圭一。なんで、テスト範囲の先をやってるんだ?」
「いや、お前の親父に聞いてくれ」
「……今回はテスト範囲に変更はない。一切な」
「まじで?」
意外なところから情報が出た。
てっきりそういう情報は伏せるとばかり思っていたのだが。予想外だ。
「ただ、その代わりに中間テストとは桁違いの問題が出ると聞いている。曰く、問スターだ、とか」
「誰が上手いこと言えと言ったか」
「僕じゃない。職員室の前を通った時に
「偶然、ねぇ。まあ、そういうことにしておこう」
ここは素直に浅野の言うことを信じて、テスト範囲の復習に戻るとしよう。英語の教材を閉じて数学の教材を開き直す。
すると、浅野が何気なく口を開いた。
「そう言えば、最近、理事長の様子が変でな」
「それは元からだ。このラスボス親子め」
「そう言う話じゃなくてだな……。どうにも、最近、E組に対する干渉がいきすぎている、そう感じているんだ」
「……そりゃあ、アレだろ。E組の成績が底上げされてきてるからな。E組は最底辺であるべしな理事長からしたら面白くないんだろうさ」
ここは適当にはぐらかしておく。
おそらく、今日、コイツがここまでしつこく絡んできたのはE組の抱える"なにか"を暴くためだったのだろう。
「それもあるんだろうがな。最近の理事長はE組に過干渉がすぎる。2度に渡るE組視察、急なテスト範囲の変更、野球部対E組のエキシビジョンへの参加、そして今回、君たちが中間テストで掲げていた全員50位以内の目標を潰すためのA組強化期間。どれも前年まで例のないことだ」
「……一番最後に関しては初耳なんだがなぁ」
「乃咲、E組でなにか、まずいことをしちゃいないだろうな」
「……まずいこと、というと?」
「最近、妙な噂を耳にする。コンビニスイーツを買い占める謎の巨漢、高速移動する巨大な影、巨大な黄色いタコの目撃情報に、Gカップのねーちゃんの背後から聞こえてくる、ヌルフフフとかいう笑い声」
テーブルに頭突きをかまして頭を抱えてしまいたくなるのを必死に我慢する。あのタコ。ちったぁ自重しろや……!
「ついでに言えば、E組の山に突如発生した巨大竜巻、裏山に目撃情報のある謎のプール、そしてそのプールで泳ぎの特訓をさせられる夢を見たとか言う女子生徒」
一番最後のはアレだ。片岡が面倒な奴に絡まれたとかいう話だ。俺は現場に居合わせなかったから知らないけど。
「なにか知らないか、圭一」
「……知らんな」
そう知らん。殺せんせーが何をしてようと俺の知ったことではない。だから、嘘はついてない。知らない、うん。知らない。
これは嘘ではない。うん。嘘じゃない。
浅野の根掘り葉掘り聞いてやろう、みたいな視線を断るように言い切る。口を閉じた貝の気持ちで唇を固く閉ざしておくと、諦めたらしい。ようやく浅野がアイスコーヒーに口を付けた。
話が一度落ち着いたところで俺も頼んでいたコーヒーを飲む。図らずとも浅野とタイミングでコーヒーを置いたと同時に、なんの因果か、全く同じタイミングでお互いのスマホが鳴った。
これもまた図らずとも全く同じタイミングで互いに電話に出た。
「もしもし?」
『すまん、圭一。とんでもないことになった』
「とんでもないこと?」
『あぁ。A組の5英傑と賭けをすることになった。しかもすっかり話が広がって勝った方が相手に好きな命令をできる、なんて話になってるらしい』
「は?E組と賭け?」
浅野の素っ頓狂な声に向こうの話の内容が容易に想像ついた。ちょうど浅野と目が合う。
どうやら向こうも同じ内容の電話らしい。合った瞳が問いかけてくる。お前も同じ内容か?と。
それに対して頷き返しておく。これは一旦、何がどうなってそうなったのか磯貝あたりを問い詰めにゃぁならんらしい。
「……面白いことになったな、圭一」
「そう思ってるのはお前と一部の教師陣だけだ」
ため息を吐きつつ、俺たちも今日は解散することになった。
「なるほど、売り言葉に買い言葉だったわけだ」
「ほんとすまない」
「いや、別に謝ることはないけど」
不真面目なカルマとそれに抗議する殺せんせーを尻目に状況を聞いた。どっちもどっちというか、一方的に絡まれ、少し反撃したら戦争になった、一言で表すならそんな感じのいざこざだな。
にしても、負けた方が勝った方の言うことを何でも聞く、か。面白い賭けじゃないの。勝てれば、の話しだけど。
「それよりどーするの?そのA組が出した条件ってなーんか企んでるきがするよ」
カルマが呟く。確かに彼の心配ももっともだ。昨日話した感じでは浅野の奴はなにかに感づき掛けている。
向こうからの条件にもよるが、E組は今後一切、A組に対して隠し事は致しません、みたいな約束させられたら暗殺のことが破綻する。生徒同士の口約束と国家機密、どっちが優先かと聞かれたら間違い無く後者だが、相手はあの浅野だ。見逃してくれるとは思えない……というか。
「心配ねーよ、カルマ。E組がこれ以上失うものなんてねーって」
気の軽いことを言う岡島に口を開く。
「岡島、よく考えろ。理事長がゾーマなら浅野はバラモスだ。単独で世界征服できる手腕を持つ奴がこれ以上E組から搾取する何かを見つけられないと思うか?」
「……思いません」
「だろ?なんかえげつない嫌がらせみたいな要求を纏めた書面を出してきて、『これにサインしろ。要求は一つだけなんだろ?だったらこれも許容範囲だ』とか浅野なら平気でやってくる」
「乃咲の浅野親子への嫌な信頼感強いよね」
「そだね……」
俺のネガティブな発言に苦笑するクラスメイトたち。しかし、数名は危機感を感じたらしく、ペンを持つ指に力が籠るのを確かに見た。
どれ、ここは一つ発破かけるか。
「みんな、俺は先に宣言しとく」
「お、出た。乃咲の発破だ」
「……宣言しとく!俺は今回は総合一位を取る!殺せんせーの触手は俺が貰うぜ」
「はいはい。んじゃ、うちらは得意科目で攻めるわよ!もちろん狙える奴は総合1位も狙っちゃって!」
「…………」
あっれぇ。乃咲くんの発破ってもっと険悪な雰囲気にならなかった?なんなの?この先に言ってろ、こっちはこっちでどうにかするから、的な雰囲気。
もしかして発破にならなかった?そもそも発破いらなかった?すべっちゃいましたか、乃咲くん。
「どんまい、圭ちゃん」
「あはは……みんなやる気満々だぁ」
それはそうと倉橋さん。この前から俺のことを圭ちゃん呼びしてくるんだけど一体なぜ?
問い掛けるのは自意識過剰な気がして止めておくが、どんな意図があるのか知りたくなってしまう思春期には辛い。
「それはそうと、勝ったら何でも一つかぁ。学食の使用権とか欲しいなぁ」
「ふっ、無欲で可愛いなぁ、倉橋さん」
「へ?そうかな?」
「あぁ。俺だったら叶える願いの数を望む限り増やさして貰うね、とか、A組の権利まるごとE組に貰おうか?とかね。まあ、そうなると暗殺ができなくなるだろうけど」
「ははは、中々に鬼畜さんだねぇ」
などと倉橋さんと冗談なのか本気なのか際どいラインでのやり取りをしていると、殺せんせーがヌルヌル笑って俺の頭を撫でた。
「ヌルフフフ。それもいいですが、こんなのはどうでしょうか?」
殺せんせーがこの学校のパンフレットを手渡してきたので開かれていたページを見ると、そこには特別優秀学級に贈られる夏休み中に南の島のリゾート地での合宿が紹介されていた。
そっか、そう言われればそんなのもあったな。
E組の自分には関係ないや、とすっかり他人事だったよ。あった、確かに合ったわ、そんな合宿。
「君たちは一度、どん底を経験しました。だからこそ次はバチバチのトップ争いをして欲しいのです。先生の触手とこの合宿。ご褒美は充分に揃いましたね?暗殺者なら、狙ってトップを
殺せんせーの号令にクラスメイトたちが声を上げた。
支配者が庭を歩く。
「三年生の各教科担任の皆さんには中間よりも更に難しい問題をお願いします。もちろん、採点基準は公正明確にね」
支配者の言葉はその場にいる全員にほぼ衝動的な恐怖とやる気を与える。彼らは皆、自分の目の前にあるPCという名の牢獄で凶暴な化け物を育成していた。
「
「ご心配なく、理事長。この問題で私を満足させられる答えを出せる生徒はいない……!これはもはや問題ではなく、問スターと呼ぶべきものです」
「大いに結構。結果が楽しみです」
支配者は難問。問スターという化け物を前にして満足そうに笑う。彼の支配する領域ではカタカタとキーボードを操作する音だけが響いていた。