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今回も書き終わりましたので投下します……。
あぁ、GWカムバック……!
人混みに紛れ、女子達の元へ向かっていると、ふと、既視感のある光景に出会した。片岡たちではない、見覚えのない女子の団体がチャラ男3人に絡まれている様だ。
「あのっ、私たち、そう言うのに興味ないんで!」
はっきりくっきりとした強気な女子の言葉。どうやらしつこいナンパに対してキレている様子。
「あ? 折角優しく誘ってやってるのに、なんなの、その言い種は。頭に来たんだけど」
しかし、逆効果。女の子の言い種に男達もキレたらしい。この薄暗い中でも分かるくらいに焼けた肌のパツキン男が苛立ちを隠そうともせずに1人に詰め寄った。
うん。普通、こう言う雰囲気の場所でナンパされたらあんな感じになるよな。事も無気にのらくら躱して挙げ句の果てに脅しまでするうちの女子連中が逞し過ぎるんだろう。
さて、どうするべきか。目立つ訳にもいかないし、かと言って放っておくのも後味が悪そうだ。
けど、ぶっちゃけ無駄に体力を使いたくないってのが本音だし、助けてやる義理がないのは事実だ。
忘れてはいけないのは、今の俺たちはクラスメイトの命を背負っているって事。だから、見ず知らずの女子なんて見捨てるのが合理的な判断って奴になってしまうんだろう。
俺は見て見ぬ振りを決め込み、その後味の悪い光景を遮る様にパーカーのフードを被ってナンパ現場を通り過ぎる。
「…………はぁ……」
つもりだった。
通り過ぎる直前、横いるナンパ男たち向かって何気なく声をかけてしまう。明らかな寄り道であると自覚しながら。
「あの、彼女ら嫌がってるみたいですし、その辺にしてあげてはどうでしょうか?」
やってしまった。俺、別に人が困ってたら助けたくなる、みたいな善人ではないでしょうに。柄にもないことをしでかしてしまったと、声をかけた直後に後悔。
俺は自分は結構合理的な人間だと思っていたのだが、どうやら違っていたらしい。標的を俺に変えた浅黒い男が明らかに苛立ち、殺気だった視線をくれる。
「んだテメェ。このお嬢ちゃん達の知り合いか?」
「いえ。まったく」
「じゃあ関係ないだろ? イタい目見たくないなら、さっさと失せろよ。お坊ちゃん」
いやはや、おっしゃるとおり。自分でも合理的ではないと思いながら割って入ってしまったことを少し後悔している。
でもまあ、そんな後悔が相手に伝わるわけもなくて。俺を向いた男がニヤつきながら俺の肩を突き飛ばそうとする。
どうしてこの手の輩は言葉で解決できないのか。いやまあ、さっきの連中を実力行使して制圧した俺の言えた義理ではないか。
これ以上、時間を使いたくないし、できるだけ手早く終わらせたい。一人一人潰すのは簡単だが、それでは時間が掛かる。
一番手っ取り早いのは格の違いを見せつけてやること。見たところ、さっきの本職っぽい奴らとは違うし。1人潰して俺を得体の知れない化け物に見せてやれば勝手に退散するだろう。
問題はその手段だ。暴力を使わず、無駄に体力を消費せず、なおかつ手早く、相手を脅かす様な勝ち方の出来る手段。それも1人を倒して残りを戦意喪失させるくらいのものが望ましい。
考えながら、手を弾いて攻撃を逸らす。
まさか逆らわれると思っていなかったのか、男が更にイラついたように手を伸ばしてくる。
その動きだけでコイツの波長は読み取れた。
少し考えた後、俺が出した答えはクラップスタナーだった。
攻撃を逸らしたそのままの動きで金髪の男の前で手を叩き合わせ、音の爆弾を弾けさせる。
パァッンという破裂音。直後に崩れ落ちる様に倒れる男の身体。ドサリと床に伏したソイツを信じられないと言った様子で眺める取り巻きの連中。
俺がソイツらに手を向けると、連中は連動した様に肩をビクリと震わせた。うん。良い反応。少し面白かった。
どうやら脅かすことには成功したらしく、取り巻きの1人が倒れた男の名前らしきものを呼んでいるが、男はうんともすんとも反応を示すことなく、無言で床と熱いキスをしていた。
「……次」
キモが底冷えする様な声を頑張って出して、フード越しに彼らへと視線を向ける。
それだけで威圧としては充分だったらしい。
「わ、悪かった。彼女ら可愛かったから声をかけただけなんだ」
「だとしても相手を選ぶべきだ。こんな無法地帯にいるとは言ってもいい歳した大人が中高生をナンパしてるんじゃない。それだけで犯罪が成立する世の中なんだからな」
「あ、あぁ。本当に悪かったと思う。お、俺たちはこれで失礼するよ。許してくれ」
「謝るべきは俺ではなく、彼女らでは?」
「そ、そうだな。悪かった」
「え、あの、いえ……」
さっきまで強気な態度をしていた女子の戸惑う様な声。事態を飲み込めていないことは手に取るように分かったのでさっさと会話を終わらせる様に努める。
「ここらでお互いに何もなかったことにしません? 彼女らは何もされなかった、あなた方は何もしなかった、俺も何も見なかった。そう言うことにした方が平和的にすむと思うんですが」
「そ、そうさせてもらう」
「キミらもそれで良いかな」
「あ、えっと、はいっ」
呆気に取られた様子の女の子を尻目に、倒した男の身体を持ち上げて、彼らに引き渡す。
最後にもう一度視線を送るとすごすごと倒れた男を引きずって立ち去って行った。
彼らを見送ってから、今度は女の子達に視線を向ける。
「キミらも女子だけでこんな所にくるもんじゃないよ。あんな感じの連中がウロウロしてて危ないから。遊びたいのは分かるけど、そういうのは昼間のビーチとかに留めておいた方がいい」
「は、はい、あの、ありがとうございました!」
「ん。じゃ、俺はこれで」
ガバッと頭を下げられ、ちょっとバツが悪くなり、足早に立ち去ろうとする。寄り道は済んだ。さっさと戻ろう。
今度こそ皆んなの所に向かおうと歩き出したその時、見知らぬその子が慌てて顔を上げ、歩き出そうとした俺の手を掴んだ。
「熱っ……!?あの、もしかして熱あるんじゃないですか!?」
「ちょっとだけね。でも大丈夫だから」
「ちょ、ちょっと待って! あの、せめてお礼を……!」
「いや、大したことしてないから。お礼なんて……」
お礼なんて要らない。そんな言葉を出す前に、後ろから聞き覚えのある声で呼ばれた。
「乃咲くん。どうしたの、こんなところで」
矢田さんだ。作戦の下見が終わったのか、どうやら俺を呼びに来てくれたらしい。
「ちょっとな。さっきの人らを撃退したらまた絡まれてる子達を見つけて。放っておくのもなんか気が引けたから」
「あ、そう言うことね。てっきり今度はナンパする側に回ったのかなって思っちゃったよ」
「俺にそんな度胸あったら今頃、彼女の1人や2人出来てるよ」
「それもそっか」
俺の言い分に納得したらしい矢田さん。
いや、これで納得されるのも少々悲しい所ではあるのだが、まあ、いいか。この話題をこれ以上広げる必要はない。
俺と矢田さんの会話に置いてきぼりだった少女の手の力が緩んだのを見計らってするりと手から抜け出す。
「ぁ……」
か細い声が聞こえたが、気にしていては埒があかない。
……まあ、正直な話。もしかすると、ナンパから助けた女の子とそのまま付き合いが続いて〜という電車男チックな展開になったかもしれないな、と少し後ろ髪を引かれてはいるが。
「ごめんね、彼、うちのパパのお気に入りなの。早く連れて来いってうるさいから連れてくね」
ヤクザ設定をまだ続けていたらしい矢田さんが俺の手を引いて、そして、俺の手に触れた瞬間、ギョッとした顔で振り返る。
「……乃咲くん。もしかして……」
「………?」
凄く思い詰めた顔だった。俺の手、気付かないうちに手汗まみれで気持ち悪かったとかかな?
なんて思っていると彼女の視線が動いた。
その視線を追ってみると、少女がなんとも携帯しづらそうなケースに入ったスマホを握りしめて、口をパクパクさせている。
その少女とスマホ、そして俺を見比べると彼女は仕方なさそうに口元を緩めて、徐に言った。
「ねえ、写真撮ってあげようか?」
「え……?」
これにはこの名も知らない少女もキョトン顔。
「ちょっと彼、危ないことに首突っ込んでるから連絡先を教えてあげる訳にはいかないけど、写真くらいならいいでしょ」
「あの、矢田さん?」
「乃咲くん。フードとって。大体、室内で被るもんじゃないでしょ、それ。ほら、スマホ貸して。ほら、そこの壁に並んで!」
慌ただしく指示をする矢田さん、その様子にしどろもどろしながらなんだかんだ指示に従う少女。気が付けば俺と少女の仲間達だけが取り残されていた。
「え…、えっ……?」
「ほ〜ら! 乃咲くん。早くしないと呼びに来た私が怒られちゃう!」
「……? わ、分かった」
矢田さんの意図を理解しかねるが、確かに呼びに来たのにいつまでも道草食ってて怒られるのは彼女かもしれないので指示された通り、フードをとり、壁際に並ぶ。
「はい、撮るよ〜。はい、チーズ」
矢田さんの作り出した流れに終始キョトンとしている俺と無言で困惑している少女。そんな彼女に矢田さんはスマホを返すと今度こそ俺の手を引いて歩き出した。
「じゃ、あなたたちも早くここから出た方がいいよ〜。ここナンパ多いから〜」
キョトンとしている少女達を置き去りにひらひらと手を振る矢田さんに半ば引きずられる様に俺も歩く。
「あの、どうして写真なんて?」
「出会いに運命とか感じてそうな、ああ言うタイプは収穫があるまで結構引かないの。だからおみやげを作ってあげたんだ。そうすれば結構簡単に引き下がってくれるから」
「ほぇ……」
流石女子、というか、女子にしか分からないことって奴なんだろうか? なんだか頼もしい。
「乃咲くん。モテ期きちゃったんじゃない?」
「いや、そんなことないでしょ。仮に来ていたとしても、そもそも今はそんなことどうでもいいだろう?」
「うん。どうでもいい。少なくとも——」
矢田さんが不意に立ち止まる。まさか止まると思っていなかったので反応が遅れ、つんのめる。
彼女にぶつからないよう、慌てて立ち止まった俺の額にひんやりとした矢田さんの手が当てられた。少し冷たくて気持ちいいと思ってしまうが、そんな気の抜けた思考は彼女の次の言葉であっけなく跡形もなく霧散する。
「乃咲くんが体調崩してることよりは」
やばい。あんまり体調が良くないのがバレた。咄嗟に誤魔化そうとするが、矢田さんの確信に満ちた顔に気押され、言い訳すら出来ずに口を噤む。
「凄い熱だよ。これ、40度は絶対に行ってる。身体の節々に痛みとかはない? 吐き気とか寒気は?」
「……少し寒い。吐き気は今のところない。でも、言われてみると少し地面が傾いてる様な感覚あるかも」
「これ、今すぐ休まないとダメだよ。実は私ね、身体の弱い弟がいるからなんとなく分かるんだ。今、相当具合悪いでしょ」
矢田さんに問い詰められる。これまで話したことは何度もあるが、こんな風に詰められるのは初めてで、少し戸惑う。
ここで『俺は問題ない』とスマートに言えれば良いんだろうが、彼女に詰め寄られて、動揺した俺は考えてしまう。
頭が痛い、寒気もある、ようやく自覚したが、平衡感覚も少し危うい。でも、今のところはそれだけだ。
まだ、俺は動ける。
「俺はまだ大丈夫だ。動ける。そんなことより、早く行こう。皆んな待ちくたびれているかも」
額に当てられた矢田さんの手を強引に振り解き、誤魔化す様に歩き出す。だが、一度気になってしまうと身体は素直になってしまうのか、歩き出そうとした所でふらついてしまった。
「ほら、言わんこっちゃない!」
慌てて支えに来てくれた彼女を制止して、脚を叩き、気合いと根性でどうにかこうにか足を動かす。
まだ倒れるわけにはいかない。皆んなのために薬を奪う。その任務が果たされていないのだから。
「俺は問題ない」
「でも……ふらついてるよ!」
「確かにふらついてるけど、それだけだ。不調も我慢できないレベルではない。それに、仮にここで休んだり、倒れたりしたらそれこそ皆んなに迷惑をかけることになる。忘れたわけじゃないだろ、俺たちは不法侵入してるんだから、客じゃないとバレたら1発でアウト、任務失敗だ」
「けど……!」
「頼むよ、矢田さん。これが最後なんだ」
「それって………」
俺の言葉に一瞬動揺するが、こちらの主張を否定出来ず、俺を休ませるなんて無理だと悟ったのか……。
「っ〜〜〜! はぁ……。分かった。でも、絶対に無茶しちゃ駄目だからね。そんなことしたら陽菜ちゃんに言い付けるから!」
葛藤の末に脅し文句付きとはいえ、俺が任務を続けることを心底渋々、辛うじてと言った様子で認めてくれた。
「分かった、ありがとう」
素直に返事をして、皆んなの元に向かう。
俺と矢田さんが着く頃には全て終わった後のようで何やら一悶着あったみたいだ。こちらの到着に気づいた岡野にちょっとした小言をこぼされてしまう。
「2人とも遅いよ、何やってたの?」
「あはは、ごめんなさい。私が呼びに行ったら乃咲くんが逆ナンされててさ。その子を撒くのに手間取っちゃって」
「はぁ!? 乃咲が逆ナンって……アンタ、モテ期? こんな旅先で、しかもこんな状況で女の子引っかけるとか、タラシ?」
「ナンパから助けただけ。それより、状況は?」
聞くと岡野が話してくれた。
なんでも、俺がいなくなった後、目的地に着いたのだが、案外、警備が多く、人手が必要そうと判断し、直ぐに俺と渚を呼び戻しに動いたのだと言う。
だが、俺がゴタゴタしてるうちに渚だけが到着。どうしようかと話してるうちに渚ちゃんを気に入ったらしいユウジくんが着いて来ていたらしく、渚にアピールする為に熱烈にダンスを披露し始めたと言う。
「いや、異性にアピールする為にダンスとか鳥かよ、求愛ダンスするとかどんだけ必死なんだ、ユウジくん」
「ね、求愛ダンスかよ、とは思わなかったけど。まあ、邪魔くさかったよねぇ。そしたら案の定、その辺のヤクザ屋さんにぶつかっちゃってさ」
「救いようがねぇ」
つか、ここ反社多過ぎるだろ。どんだけだ、伏真島。
「んで、面倒くさかったけど、ちょうど良いからそのヤクザを蹴り倒して、見張りの人に運んでもらって、なんとかそこの通路を通れる状況になったってわけ」
……いや、文句もツッコミもするべきではないとは分かっているけど、なんつーか、さっきのナンパに怯える少女たちを彼女らに見習って欲しいと思ってしまった。
いや、頼もしいよ? 後ろでガタガタ震えられるよりよっぽど頼もしいし、安心感もあるのよ?
でも、女子中学生が目的の為に、その辺にいるヤクザを蹴り倒して、伸びてるところを利用するとか何言ってるか分からねぇよ。逞し過ぎるだろ、うちの女子。
「……すまん。そうとも知らずに道草食ってた」
「女の子助けてあげたんでしょ? なら仕方ないわよ。むしろ非常時とはいえ、男に迫られてる女の子を見て見ぬふりしました、とか言ったらアンタに幻滅するところだった」
「……そう言って貰えると助かる。でも、あんまり無茶なことはするな。岡野も訓練受けてるし、ある程度強いのは知ってるけど女の子なんだ。肝心な時にいなかった俺に言えることじゃないけど。本当に無茶はしないでくれ」
「——まさか、乃咲がそんなこと言うなんてね。ちょっと驚いた。なぁに? 今度はうちらを口説こうとしてる?」
「そんなこと……」
「はいはい、分かってるわよ。揶揄っただけ。でも気遣い自体は嬉しい。だから一応、お礼は言っておくね」
「……あぁ」
会話を終え、バーフロアを抜けようと足を踏み出すと、横から矢田さんに小脇を突かれ、注意される。
「無茶しちゃいけないのはキミもなんだからね。本当に絶対、無理は駄目なんだからね」
「分かってるよ、無茶はしないから」
俺の言葉に頷きはしたけど、まだ信用はしていないらしく、彼女は俺の横を離れることなく、歩き出した。
全員がバーフロアを抜け切った所で、一足先に出ていたらしい渚が元の服に着替えてカーテンの裏から出てきた。
「あれ? 着替えるの早いな、渚。そのまま行けば良かったのに。暗殺者が女性に化けるのは歴史上でも良くあることだぞ」
「い、磯貝くんまで!?」
「渚くーん。とるなら早い方が良いらしいよ? ホルモンとかの関係で」
「とらないよ! 大事にするよ!?」
「その話は後にしてくれるか」
「2度としません……」
渚の玉を取るか取らないかの話で盛り上がる前線を烏間先生が落ち着かせ、渚がショボンと俯く。
ここまで来れば黒幕との接触まで秒読みと言ったところまで来ている。俺たちは渚の金玉を尻目に次のフロアに進んだ。
あとがき
はい、あとがきです。
いよいよ圭一の体調が崩れて来ました。ゾーンの使いすぎとウィルスのダメージ。結構しんどいでしょうねぇ……。
というか、人がぶっ倒れるくらいのウィルス食らったのに崖登ったり、殺し屋簀巻きにする為に動き回ったり、気合と根性で耐えてる寺坂って実はめちゃくちゃ凄いのでは?
今回もご愛読ありがとうございます!