暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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さて、また1日が来ました。
今日は2話同時投稿になります……。

楽しんで貰えれば幸いです……!


IFルート ハナコトバの時間 part5

 

 早いもので、今年ももう半分と言ったところ。

 毎日毎日、飽きもせずにイチャイチャしてる教え子2人を眺めてニヤニヤしてる僕も大概だろうけど、圭一も雪村さんも良く飽きないものだと感心半分呆れ半分で過ごす日々。

 

 でも、僕の人生の中ではかつてない程に穏やかだった。

 

 今日も今日とで日課な休日、たまにはだらだらしようか、と道場で圭一と寝転がりながら、ゲームをしていた。

 

「なんか、地球滅亡とか現実で言ってるけど、ゲームみたいな衝撃的な展開って少し憧れますよねぇ。ふと自分が使ってた武器が実は伝説の武器の弱体化した姿だった〜とか、自分の師匠というか、親分が伝説の〇〇だった〜的な」

 

「後半についてはキミも体験済みだろう?でも、確かにねぇ。ベクトルは違うけど、実はお前には許嫁が〜!みたいな恋愛ものの展開もちょっといいなぁって思うよね」

 

「先生にもそんなのあるんですね」

 

「最近少し興味が出て来てねぇ。近くに年がら年中、イチャイチャしてるカップルがいるからかなぁ。今も僕の隣でうつ伏せになってる圭一の背中を枕にしてる女の子もいるしねぇ」

 

「道場の床ってひんやりしてて気持ちいからねぇ〜。先生と圭一だってやってるんだから別にいいでしょ〜。でも、やっぱり意外かも。先生って恋愛とか興味なさそうなイメージあるし」

 

「あはは、そんなこと言ってると、実は隠し子ですって何処からか子供を連れてくるかもしれないよ〜?でも、恋人とか居ないから無理かなぁ〜。圭一、師匠に恋人の作り方を教えてよ〜」

 

「水35L、炭素20㎏、アンモニア4L………」

 

「圭一?造るでも創るでもないからね?人体錬成の材料教えてとは言ってないからね?」

 

 僕に真理の扉を開けさせようとしている教え子に戦慄しながら、ピコピコ。だらだらと過ごす時間は穏やかで、心地よく、雪村さんに至っては圭一の背中で寝息を立て始めた。

 

「んー、先生、そろそろ別ゲーやりません?」

 

「いいよ、何やる?ソウル・サクリファイス?」

 

「フリーダムウォーズもありでは?」

 

「ガンダムブレイカー2とかも捨てがたいね」

 

「あとはゴッドイーターとか?」

 

「んじゃ、それにしよっか。このままだとパタポンとかロコロコとか出かねないし。そうなると並んでゲームしてるだけだからね。折角だし今日は協力ゲーにしよう」

 

「りょーかいです。昨日、シロガネフル強化したんですよ」

 

「へぇ。そう言えばフルセットで使ってたよね、装甲はバックラーで銃身はブラスト、近接はロングだっけ?」

 

「そうそう、それっす。だってカッコいいじゃないですか。しかもシロガネは初期武器と同じフォルムで他の黒が基調な類似装備と違って真っ白なのが良いんですよ」

 

「仲間のエピソードで強化できるようになる、主人公の装備だしね。圭一はそういうの好きだよねぇ。まぁ、実際のミッションで使う主な戦術は終末捕食弾だけど」

 

「ギルのエピソードはねぇ……。良いですよねぇ」

 

 2人で並んでピコピコ。にしてもすごいな、圭一。色んなゲームやってるけど今のところ被弾ゼロだ。

 ゲームが上手いというより、指先の動きの精密性がエグい。圭一の強みだよね、人並外れた集中力から繰り出される精密な動き。本人はAC4系の2段QBを使えるように練習した結果とか言っているけど……。ありえないでしょ。

 

 その精密性は僕よりも上だろう。

 圭一の明確な強みだよね。尋常ではない集中力、動きの精密性、身体能力を含めた膂力。師匠である僕を越えている部分だ。

 

 教え子は今度はどの部分で僕を越えてくれるんだろう。

 そんな期待を胸の中で膨らませていると、雪村さんがバッ!と身体を起こした。

 

「あっ!!やばっ!!!」

 

「にゅぉっっ!?」

 

 その声に驚き、圭一の指が操作スティックから外れて攻撃を避け損ねる。圭一のゲーム中での被弾を初めて見た瞬間は、まさかの彼の恋人によってもたらされてしまった。

 

「ど、どうしたんだい、雪村さん?」

 

「忘れてた……。今年の水着、買ってない!」

 

「…………水着?」

 

 今年の水着、という何とも今時の女子らしいワード。

 この前、姉が亡くなって荒れていた時に比べると本当にありふれたリアクションというか、平和な悩みが微笑ましい。

 

 んでも、どうしたんだろう。海にでも行くのかな。

 

「実は夏休みの最後の方で南の島に行くんです。もともとA組の成績優秀クラスが行けるバカンスなんだけど、期末テストで各教科、総合順位の1位の合計が勝ちって賭けをA組とE組でやったんです。勝った方が相手の言うことを何でも一つ聞くって。んで、俺らE組が勝ったから賭けの戦利品として参加権を貰ったと」

 

「へぇ、面白そうなことしてるね」

 

 椚ヶ丘学園の詳細は知っている。成績優秀者の集まりであるA組と素行と成績が悪い問題児の集まりであるE組。まさか、その両者が正面切って衝突することになるとはね。

 

「勝ったってどんな感じで勝ったんだい?」

 

「9対6でE組の勝ちっすね」

 

「……………ん?ちょっと待とうか。どう言うこと?5教科の各1位と総合1位で最大得点は6じゃない?トータル15って……」

 

「あぁ、単純に教科ごとの1位と総合1位が複数人いたってだけなんだよね。圭一とA組の浅野くんって人が5教科で満点だったから自動的に各教科と総合で1位。この時点でA組とE組は6対6。そこに加えて英語、理科、社会で1位になったのがE組にそれぞれ1人ずついたから6対9でE組が勝ったと」

 

 なんてハイレベルなことしてるんだ、椚ヶ丘学園。

 普通、進学校の期末とか100点阻止問題とかあるだろうし、一つの教科でも満点を取るのは難しいだろうに、その上で各教科で満点を取れるのがのべ5人、全教科満点が2人とか。流石、日本指折りの進学校というべきか。

 

 まぁ、E組の担任はあの人だし。不思議でもないか?

 

「っていうか、圭一。随分と成績上がったね。学年最下位だったのが嘘みたいだ。よく頑張ったね」

 

「私としては圭一が最下位だったってのが信じられないけどね。今回のテストでも私、圭一に勉強教えて貰ったし」

 

「ふふん、圭一は僕が育てたからね」

 

 胸を張ってドヤ顔をすると2人が苦笑した。

 圭一が照れくさそうに頬を掻きながら言う。

 

「まぁ、先生のおかげです」

 

「そんなこと……あるけど、でも、一番は圭一が頑張ったからだろう?良くモチベーションを維持してるね。それが少し意外かも。最初は勉強を嫌がってたのに」

 

「……確かに最初は嫌だったけど、良い成績をとれば新しい技を教えてくれるって約束してくれたから。それに先生、約束守ってくれたし。段々苦痛じゃなくなったっていうか」

 

「あはは、なんか意外かも」

 

 笑いながら意外だという雪村さん。

 そんな彼女から恥ずかしそうに目を逸らしつつ、照れ笑いしながらやっぱり頬を掻きながら言った。

 

「それに今は……あかりもいるし」

 

「ほぇ、私?」

 

「…………あかりの……茅野カエデの彼氏だってお前の転校初日に言ったし。折角ならカッコいいとこ見せたいじゃんか……。そら勉強できる=カッコいい、喧嘩強い=カッコいい、みたいな思考はしてないけどさ。自慢できる彼氏でいたいじゃん……」

 

「っ……見なよ、先生。私の圭一を……」

 

「いや、ほんと。圭一ってギャップ萌え狙ってる様にしか見えない時あるよね。訓練中は戦闘狂染みてるのに」

 

「うんうん。学校でも一番いい笑顔してるの、烏間先生との模擬戦中だし……。あ、そうそう。そう言えば烏間先生が先生に会いたがってたよ。圭一の師匠って存在に興味があるみたい」

 

 圭一を自慢し始めたと思ったら、雪村さんから妙なカミングアウトがあった。烏間が僕に興味を?

 まぁ、そう言う意味なら僕も興味はある。圭一が僕以外で尊敬している大人。戦闘狂の圭一が師匠としてなら僕だけど、やり合うなら烏間先生と言わしめる強者。

 

「僕も会ってみたいかなぁ。圭一が強者と認める相手。是非、顔を見てみたい。技量なら僕、力技なら烏間なんだろう?どっちがより優れているか、師匠として圭一に見せつけないとね」

 

「うわぁ………大人気ない………」

 

「絶対に会わせたくない2人だな……。烏間先生も『ここまでの強者を育てた者。興味がある。しかも、鷹岡を瞬殺せしめた乃咲くんが自分よりも強いと認める相手。興味がある』って凄いいい笑顔で言ってたから」

 

 圭一と雪村さんがドン引きしていた。

 心外である。少なくとも、戦闘狂か人誑しか、みたいな二面性が超前面に出始めている圭一に引かれたくない。

 

「……あっ、そうだよ、水着!近いうちに買いに行かないと。この後予定とかある?折角だし、圭一が選んでよ!」

 

「……………………できるだけ肌面積少なめの奴な」

 

「え、なんで……?折角だし、可愛いのがいい……」

 

「だってあかりの肌……色んな奴に見られちゃう……。水着なんて殆ど裸だろ……。スク水………も一部のマニアが喜ぶしダメだ………。そんなの俺だけが知ってればいい」

 

「………………圭一が私が自慢できる彼氏でありたいって言ってくれるみたいに、私も圭一が自慢できる彼女になりたいんだもん。一応、ボディライン以外のルックスには自信あるし、可愛い格好で圭一の彼女ですって言いたい……」

 

「あかり…………」

 

「圭一………」

 

「あーあー、お熱いこって………」

 

 イチャイチャし始めた2人を尻目に、軽くスマホを操作してチケットを取る。圭一たち椚ヶ丘学園の3年E組が向かう普久間島。彼らが乗り込む前日から3泊4日で。

 どうせなら、同じ宿泊施設で〜とか思ったけど、暗殺も持ち込まれるなら、政府の力で追い出されかねないし、近くの大きなホテルで良いかな。端金で泊まれるみたいだし。

 

「あ。2人とも。その旅行、僕も行くから」

 

「「ほぇ?」」

 

「だってその間、1人とか寂しいし」

 

「「………え?」」

 

「もしかすると顔出すかもだけど、シカトしちゃダメだからね。そんなことされたら泣くからね。ワンワンと」

 

「先生、犬飼ってたのか……」

 

「圭一、いまのワンワンは犬のことじゃないと思うよ……。っていうか、先生、本当に暇?お仕事いいの?」

 

「もちろん普段から花屋もしてるけど、そんなに盛況ってわけじゃないし4日くらいなら問題ないよ。それに株もやってるから。圭一と出会ってからは2人が学校に行ってる間はデイトレードして資金増やしたり、それで稼いだ纏まった金を投資に突っ込んだり、パチ屋で目押しできるスロット見つけて荒稼ぎしたりね。そんな感じだからお金は腐るほどあるから」

 

 僕の言葉に圭一と雪村さんは顔を合わせて引き攣った顔でドン引きした様な表情をした。

 うん、わかるよ、僕も自分でもどうかと思うよ。でも仕方ないじゃないか。暇なんだもん。かと言って外で筋トレする訳にもいかないし。人が通らない時間帯ってのもあるし。片手間でお金を稼げるからちょうど良いんだよ。

 

「デイトレードは片手間でやることじゃないんよ」

 

「圭一、いまナチュラルに僕の思考を読んだね?」

 

 やる様になったじゃないか。

 最近は思考を読んでいるみたいな動きが模擬戦では増えていた。こっちの動きを先読みして攻撃を置いてくることもあるし。この子が敵に回ると間違いなくラスボス格だよね。

 っていうか、そんなラスボス格が自分よりも格上だと認める烏間はどんな化け物なんだろうか。おっかない。

 

「あ、そうだ。圭一、雪村さんでもいいけどお小遣いいる?折角だし、水着でも買ってあげなよ」

 

「流石にお小遣い貰うのは遠慮する……」

 

「わ、私も……」

 

 別に遠慮しなくても良いんだけどなぁ……。

 

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「と、言うわけでやってきました普久間島〜!」

 

「いぇー!」

 

「い、いぇー!」

 

 本当にやって来た普久間島。

 なにやら、殺し屋が子供達に毒を盛ろうとしていたので、殺し屋の素性と拘りから使うであろう毒を読み、中和する薬を作り、圭一たちが宿泊する施設に事前に厨房に潜入してサービスで出されるウェルカムドリンクに混ぜて置いた。

 

 殺し屋は……いいか。いつでも殺れる。いや、実際に殺すつもりはないけどね。使われた毒も命に別状はないものだったし、殺すつもりはないのは理解できたから。もしも本当に僕の教え子たちを殺すつもりなら……話は変わるけど。

 

 圭一たちには話さなくていいか。

 事前に無効化したことを話して不安を煽るのは止そう。

 

「って本当に来る奴があるかぁー!!」

 

「圭一のノリツッコミだぁっ!!?」

 

「いや、てっきり私も冗談だと思ってたけど……」

 

 ちなみに、僕の教え子(怪物)は僕があらかじめ毒を無力化する薬を入れた後、殺し屋が毒を入れたウェルカムドリンクを飲んだ瞬間に顔を顰めて『なんか変なの入ってない?』とか言ってた。

 殺し屋なんかよりも圭一の方がよっぽど怖いよ、僕は。なんでなんか混入してるの分かるんだよ、流石に僕も毒を試すみたいなガチの毒味をさせたことはないんだけど。

 

「先生、忘れがちだけど、死神って呼ばれた殺し屋なんでしょ?流石にガチ殺し屋がいる場所に来るのは不味くないです?それに烏間先生もいるし。政府の工作員の烏間先生もいるし」

 

「大丈夫大丈夫、僕の顔を知ってる人なんていないから」

 

「この余裕の態度からして本当に大物なんだよね。圭一と並んでゲームしてるところとか見ると想像付かないけど」

 

 僕らはビーチにいた。最初は圭一と雪村さんは暗殺の為の下準備ってことで忙しそうにしてたみたいだけど、仕事が終わって自由時間ができたらしくて会いに来てくれた。

 よく見ると、生徒たちもちらほらと。まぁ、そうだよね。本来はバカンスなわけだし。適度に遊べないとね。

 

「んでんで?例の烏間氏はどこかな?」

 

 キョロキョロと見渡しつつ、実はもう目星を付けてる。

 このビーチの中でも一際目立つ美人。ハニートラップ暗殺者のイリーナ・イェラビッチ。その横に立つ、屈強な男。服の上からでも分かる筋肉。だが、無駄に肥大化しているわけではない。本当の意味で引き締まった良い身体の男。

 

 なるほど、立ち姿からして分かる。只者じゃない。

 これは確かに今の圭一では勝てないだろう。きっと良い勝負にはなる。でも、経験の差で2、3歩ほど及ばないだろう。

 

 なんとなく、鷹岡に勝った圭一が慢心のカケラも表に出さない理由がわかった気がする。本来なら、第一空挺団出身の精鋭に余裕で勝ったという事実は自分の力を過信して慢心するのに充分な、いや、充分すぎる実績だ。

 それでも圭一がそう言う空気を出さないのは、日頃からあれだけの猛者を見ているからだろう。同じ部隊の出身なのに大きすぎる実力差のある、烏間と鷹岡。そのピンキリすぎる実力差が圭一に敬意を抱かせているのかも知れない。

 同じ部隊の出なのに、弱すぎた鷹岡。強すぎる烏間。つまり、烏間はそれだけ実力差を開かせる努力をしたんだと。

 

 圭一が出会った僕以外の明確な格上と呼べる強者が彼で良かった。そんな風に心底思える男だった。

 

 っと、ちょっと見過ぎたか。100mは先にいる烏間氏と目が合った。そりゃあ圭一と雪村さんは彼にとっても教え子。そんな教え子2人が見知らぬ大人と揃って話していたら気になるか。 

 今の僕はアロハシャツに麦わら帽子にサングラスという浮かれポンチスタイルだから、圭一と瓜二つとは気付かれてないはずだけど……あれ、こっちに歩いて来た。

 

 圭一は……気付いてない。

 うん、あれほどの強者が近付いて来ているのに、それに気付いてないのは……うーん。流石に減点するのは酷かなぁ……?

 

「乃咲くん、茅野さん。そちらの人は?」

 

「ぬおっ!?」

 

「ひゃっ!?」

 

 そして足音もない。やるね、この人。

 足音、衣擦れ。それらがない。

 

「どうも、初めまして。あなたは圭一たちの学校の先生ですかね。僕は七志乃。個人的に彼らの先生をやってます」

 

「っ、ほう。あなたが。お噂は乃咲くんから予々。私は烏間と言います。彼らのクラスの担任です。どうぞよろしく」

 

「こちらこそ。圭一には去年からうちの流派を教えていますが、学校の先生で自分よりも強い武道経験者がいると言うものですから。ある種の親バカですけど、圭一はかなり強く育ちました。そのこの子が認めるのは相当だと思いましたが……いや、本当に強そうだ。是非一手御指南いただけますか?」

 

「いえ。とんでもない。私としても乃咲くんほどの実力を持った中学生を見たことがない。僅か1年でここまでの強者を鍛え上げた手腕、是非とも拝見させていただきたいところです」

 

 ガッシリと握手する。

 うん、相当できる。

 

「あ〜あ、出会っちまった……」

 

 圭一が軽く頭を抱えていた。

 雪村さんはそんな彼の肩に手を置いて諦めを促してるし。

 

「もういいや、カエデ。あっちで遊んでよう。そろそろ"先生"も来るだろうし。せっかく水着なんだしさ」

 

「そだね……」

 

「あと、水着似合ってるぞ。部屋の中で見るのと実際に外で見るのでは印象違って見えるな。可愛い……というか、綺麗だぞ」

 

「あっ……。ありがと……。圭一も……その似合ってるよ」

 

「男モノの水着で似合うもクソもないだろ……」

 

「そうじゃなくて、その、外で見るの初めてだけど、身体、引き締まっててカッコいいよ……」

 

「………俺の身体なんて見慣れてる癖に」

 

「なっ!?そっちも同じでしょ!!?」

 

「つか、七志乃ってなんだよ……」

 

「あれじゃない?"名無しのごんべい"を名前っぽく名乗ったとかそんな感じなんじゃないのかなぁ、知らんけど」

 

「七志乃 権平って感じか、そうなると……」

 

 イチャイチャしながら去って行く2人。

 けど、僕らはいまだに握手でお互いの実力を図り合っていた。

 

「くっくくく……」

 

「あははは……」

 

「にゅぅぅぅ……い、一体、どんな状況ですか、コレ……?」

 

 遅れてやって来た彼らの"先生"が困惑していた。

 

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 さて、そんな楽しいひと時も終わった。

 どうやら彼らの暗殺は失敗したらしい。

 

 原因はたぶん、圭一だね。冗談抜きで突出した実力の所為で周りに合わせるのに注力しすぎて自分の持ち味を活かせていない。みんなでの暗殺に囚われすぎてるかな。

 あの子の場合、ある程度、仲間に指示を出したら自分のやりたい様に動くってやり方の方が実力が出せるだろうに。

 

 でも、遠目から観察してみるとやっぱりE組の子供達は粒揃いだ。暗殺の作戦内容も悪くないどころか場所を活かすと言う意味では最適解まであるだろう。

 けれど、圭一だけじゃなく、みんな足並みを揃えようと意識し過ぎてる感がある。よく言えば作戦に忠実、悪く言えば考える葦に慣れていない。水のジェット噴射で水圧の檻を作る発想は素晴らしいけど、折角なんだから、上から対先生弾でもばら撒くくらいすれば良いのに。

 

 彼らの暗殺をそんな風に評価しながら、僕は調べ物と軽いハッキングを終わらせる。調べ物の内容はもちろん、彼らに殺し屋をけしかけた者についてだった。

 

 なるほど、コレは逆恨みだね。

 

 情報自体は洗い終わった。犯人も特定できた。ハッキングの結果、圭一たちの泊まる宿泊施設の監視カメラに何者かが侵入した形跡があったし、隠蔽されていたけど、侵入経路も分かったので、それを辿って黒幕と言える男のパソコンに侵入する。

 

『やぁ、初めまして。鷹岡明さん。私は"死神"という殺し屋です。これから会いに行きます。最期の夜を楽しんで』

 

 彼のパソコンにそんなメッセージを表示させる。

 さて、そろそろ行こうかな。

 

 彼らの暗殺を見学するために設置したブースを片付けてホテルに戻る。どうやら、鷹岡氏の潜伏先も同じホテルみたいだしね。圭一たちと同じ所に泊まってなくて良かったよ。潜入が少し面倒になりそうだったから。

 

 下調べの段階から黒い噂のあるホテルだってのは分かってたけど、まさか殺し屋や防衛省の裏切り者までいるなんてね。

 

 僕はエントランスを顔パスで素通りし、圭一たちに毒を盛った殺し屋のスモッグを横目で眺めながらすれ違い、彼とチームを組んでる殺し屋の1人のグリップの前を堂々と通り過ぎ、更にお仲間のガストロに気付かれることなく、さっさと無駄に広いコンサートホールを通過した。

 

 そしてやって来たボス部屋の前。流石に門番役をしてる連中に中に入るのは無理かな。もうちょっと部屋が低い位置にあるか、屋外なら楽勝だけど。仕方ない。正面突破するか。

 一息で死角から飛び出し、2人いる門番の片割れにすれ違いざま、スモッグからくすねておいた毒のカートリッジを投げ付ける。相方がやられたことに一瞬だけ気を取られ、それでもすぐに僕に意識を向けるあたり、良く訓練されている。

 

 でも、残念ながら一瞬あれば充分だ。

 彼は僕に気付いた時、銃を構えるのではなく、無線を入れるべきだった。そうすればまだ、護衛対象に気付かせる可能性はあったはずなのに。一瞬だけでも確かに猶予はあったんだから。鍛えられてるけど、判断ミスだね。

 

 念のため、スモッグの毒を吸わせて銃を取り上げてから鷹岡のいる部屋に向かって歩き出す。

 致死性のものではなく、あくまで体を麻痺させる毒であることは、読めていたし、読み通りの代物だったおかげでしばらくの間、邪魔は入らなさそうだ。

 

「くそっ、くそっ、くそっ!!何が死神だっ……!なんだってそんな奴が俺を狙うんだ!?」

 

「それ、キミが毒を盛ろうとした子供たちも同じこと言うと思うけど。どんな立場から言ってるのかな」

 

 部屋に入ると何か、荒れてる声がする。

 どうやら僕に狙われていることを認識して焦っていたらしい。それなのに逃げもせず、この部屋に留まるのはなんと言うか、バカだなぁ。見たところ、荷造りの途中だったみたいだけど。

 

 まぁ、見たところ爆薬だったり銃だったり毒の入ってるであろうケースだったり。流石に放置して逃げるのもしんどそうなものばかりだし、理性が働いたのかな。

 

 慌ててる背中に声を掛けると、彼はビクッと肩を震わせて油の切れた機械みたいにギギギっとこっちを見た。

 

「その声……乃咲かっ……!?」

 

 あ、しまった。つい素で話しかけてしまった。

 声帯模写の一つでもすれば良かったな。

 

 麦わら帽子とサングラスを外して顔を見せる。

 

「なんでッッ、なんでテメェがここにいやがる!!?」

 

 あ、これ。間違いなく僕を圭一だと思ってるね。

 

「僕は圭一じゃないよ、鷹岡さん。メッセージは見てもらえなかったのかな。死神だって名乗ったはずだけど」

 

「死神っ!?て、テメェみたいな優男が!!?」

 

「優男て……。まぁ、今は殺し屋じゃなくて圭一の頼れる優しいお兄さん兼師匠やってるから間違いではないね」

 

「師匠だぁっ!!?あの乃咲のっ!!!?」

 

「そそ。ここまでの情報があればキミの様な単細胞でも理解できるかな?なんで自分が狙われてるのか。端的に言えば、キミが僕の教え子を狙ってるからだね。焦ったんじゃないかい?この島に来た時に出されるウェルカムドリンクに毒を混ぜたはずなのに、あの子がピンピンしてるの」

 

「ッッッッ!!!?」

 

「爪が甘いね。そう言うのは指示を出すんじゃなくて自分でやらなきゃ。自分の影響力を考えなよ。キミごときの為に、キャリアある殺し屋たちが何の罪もない中学生を大量に殺した実行犯になると思うかい?カリスマ不足だよね」

 

 隠すことなく煽る僕の言葉に明らかに苛立った様子で彼がこちらを睨み付けた。敵対心を繕う気もないらしい。

 けど、それも仕方ない。だって、この顔は、この声は、彼を容赦なく打ち負かした相手と瓜二つなんだから。

 

「あ、先に言っとくけどキミの雇った殺し屋たちは最低限の仕事はしていたよ。しっかり毒は盛っていたし、ここに来るまでの警備もしていた。まぁ、仕事をサボってなかったけど、殺る気不足だったってとこかな」

 

 言いながら銃を撃つ。鷹岡の胸元、これまで何度も見て来た銃が入ってる時特有の膨らみ方をしていた部位を精密に。

 

「ガッッッ……!!!?」

 

「ほら、もうそこにある銃は使い物にならなくなったろう?さっさと捨てて身軽になりなよ。そしたら僕も銃を捨てて上げるからさ。素手でやり合おう?」

 

「テメッッッ!!」

 

 顔を歪めながら胸を抑え、こちらを睨む。

 そら、そこに銃があると分かってるんだから先に無力化するでしょ。そんな風に睨まれる筋合いはない。

 

「ほら、早く。圭一に一方的にボコボコにされてお漏らししちゃったんだろう?中学生の目の前で。さぞ屈辱だったろう?僕はキミにそんな思いをさせた男の師匠だよ?圭一はまだ僕を越えられてないからチャンスだよ?圭一に出来ないことをしたってドヤ顔したくないかい?今なら『よーいドン!』で初めてあげるからさ。その目、その態度からして圭一に負けたのは不意打ちされたからだって思ってるんだろう?」

 

「クソッ、クソクソクソッッッッ!!」

 

「ほら、さっさと来なよ。不意打ちされたから負けた、だなんて単なるキミの思い込みだって身体に教えて上げるからさ」

 

 銃を捨て、上着を脱ぎ、上半身裸になる。

 ズボンにも武器を仕込んでいる様な膨らみはない。

 

 当然だ。僕は丸腰で潜入したんだから。

 

「調子に乗りやがってッッッッ!何が死神だっ!!生意気なガキに教育してやんぜッッッッ!このクソ野郎がァァッッ!!」

 

 絶叫しながら向かってくる巨体を見て評価する。

 自衛隊の精鋭にいたことを前提に、彼に対する印象をまとめるのなら、銃弾を身に付けていた装備品ごと身に受けても向かってくるタフさと体幹の強さは並外れていると言える。

 

 だけど、それ以外の部分が駄目だ。見え透いた挑発に乗る精神的な幼さ。まだ冷静に受け止めた上で乗っかってくるなら加点評価できるが、冷静さを欠くのは良いとは言えない。

 走って距離を詰めて来ているが、速力がそもそも低い。簡単に言えば遅い。それに拳を振りかぶりながら走ってくるとか正気か。大振りすぎるし、振り上げてる右腕の下がガラ空きだ。

 

 これは圭一にボロ負けして当然だ。

 

 たぶん、体格相応に膂力はあるだろうけど、すぐに冷静さを欠くのでカウンターに弱く、自分の力をそのまま返されてノックアウトだね。たぶん、最小限の動きで拳と彼の身体を避けつつ、僕の拳を彼の顔面が通過する位置に置いておけば、勝手にぶち当たって見事にすっ転ぶだろう。

 

「ブベッッッッ………?!!?」

 

 ほら、予想通り。自分から当たりに来て後ろ向きにぶっ倒れた。僕の拳には鼻が折れ、陥没する生々しい感触が残っている。これは整形でもしないと治らないだろう。ご愁傷様。

 

 さて、どうしたものか。 

 このまま撃ち殺してもいい。既に汚れた手だ。殺しから脚を洗うつもりではあるけれど、それでも僕の生徒に手を出すのなら、死神に戻ることに躊躇うつもりはない。

 

 でも、そんなことをしたら、僕はあの2人に堂々と胸を張って教えて上げることはできないだろう。

 

 なら、僕がやることは一つだ。

 ピクピクと痙攣している鷹岡をしっかりと拘束し、色んな場所の監視カメラの映像が映った多数のモニターの前に置いてあるトランシーバーを持ち上げて殺し屋たちに語り掛ける。

 

『どうした、ボス』

 

「やぁ」

 

『………誰だ、てめぇ』

 

「鷹岡から聞いてないかい?僕は"死神"だよ。まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。それより、君たちの雇い主だけど、無力化した。証拠はこの無線かな。依頼は失敗だ。早く戻っておいで」

 

『……その指示に従うメリットは?』

 

「長生き、したいだろう?」

 

『……………了解した』

 

「大丈夫だよ、君らには証拠人になって貰う。何せ、防衛省の人間が予算を持ち逃げして殺し屋を雇って中学生を殺そうとしてたんだから。このまま鷹岡だけを引き渡したら、キミたちも同罪になりかねない。洗いざらい話せば、任務は失敗してキャリアには傷が着くかもだけど、信念と倫理観を持った殺し屋として信頼は得られる。それは確実に"次"に繋がるだろう。まぁ、なんにせよ、選ぶのはキミたちだよ」

 

『ったく、分かった。降参だ降参!』

 

 モニターで殺し屋3人が動き出したのを見届けてから、鷹岡の携帯を机の上から持ち上げ、手頃なパソコンで簡単にハッキング。端末から『烏間唯臣』の名を見つけ、電話番号を抜き取り、そのまま鷹岡のスマホで電話を掛ける。

 

 コール2回目で慌てた様に電話が繋がる。

 

『鷹岡ッッ!?貴様、今どこにいる!!?』

 

「あぁ、ごめんね、烏間さん。電話は鷹岡さんのだけど、電話を掛けたのは僕なんだ。さっきぶりだね、七志乃だけど覚えてるかな?圭一の師匠だけども」

 

『…………何者だ』

 

 慌てた様な声を落ち着かせる為に名乗る。

 気持ちは分からなくない。防衛省で用意した暗殺用の予算を盗んでそのまま行方を眩ました同僚から連絡が来たらそりゃあ慌てもするだろう。

 

 少しして、冷静に投げかけられた問い掛けに僕は少しだけ考えて、今後のことを考え、名乗ることにした。

 

「圭一の師匠……って言うより、"死神"と呼ばれた殺し屋ですって名乗った方が通りがいいかな?」

 

『死神……?!ロヴロの言っていた、世界最高の殺し屋か……!!通りで只者ではない雰囲気があった訳だ』

 

「申し訳ないけど、話の続きをしてもいいかな?」

 

『……すまない。続けてくれ』

 

「そうかい?なら、まずは単刀直入に言うと、キミの同僚の鷹岡だけど、防衛省から盗んだ金で殺し屋を雇い、生徒たちに毒を盛ろうとしていた。証拠と生き証人は確保している。引き渡したいので、普久間島殿上ホテルに来てくれるかな」

 

『分かった。すぐに向かう。だが…………一つ、聞かせて欲しい』

 

「何かな?」

 

『お前は……なぜ、こんなことをした?鷹岡を止めることも、俺たちに引き渡すことも仕事にはならないだろう。世界最高の殺し屋がなぜだ?金銭も要求せずに引き渡すのは何故だ?』

 

「………決まってる」

 

『………なんだ?』

 

「先生と呼んでくれる生徒を、兄の様だと慕ってくれる子どもを守るのに、それ以外の理由が必要かい?」

 

『………分かった。言葉を信頼する』

 

「あはは、助かるよ」

 

 電話が切れる。

 さて、このホテルに潜入し、今の電話を切るまで掛かった時間は13分13秒。まぁ、ボチボチって所かな。

 大半が移動時間だけど、やっぱり、暗殺してた頃からそうだけど、一番難しいのは標的を殺すことではなく、標的まで辿り着くまでだよねぇ。移動時間は削減し難い。その辺、圭一や雪村さんにも教えてあげるべきかなぁ……。

 

 烏間と鷹岡の雇った殺し屋たちが辿り着くまで、せっかく、普通はない経験を沢山積んでるし。僕は殺し屋時代の経験談を基に何か教えることは出来ないか思考を巡らせるのだった。

 

 




あとがき

えー。お気づきかもしれませんが……。
このルート、実はとんでもない落とし穴があります。

2代目が圭一の保護者というか守護者してるので……。
E組の実戦経験値がクソ入りずらいです。

しかもクラスには技量面で本編の頃とは比較にならない圭一もいるので、ゲームで例えるなら、平均レベル10くらいのパーティーに1人だけレベル70くらいの万能キャラがいる感じです。

圭一に戦闘を任せてレベリングというか、圭一に引っ張られて周りの力も上がってはいますが、そういうゲームにありがちな、レベルが上がるにつれて必要経験値が多くなる〜みたいなのも2代目と烏間先生という強者がいる所為でほとんどありません。

ポケモンで言うと、一番最初の街で友達から貰ったバッチを持ってなくても命令を聞くジム戦では必ずレベルが上がる、レベル70くらいの600属。

ドラクエで言うと、10回中8回は攻撃を回避する上に、ちから、かしこさ、すばやさ、きようさがカンストレベルまで上がる、常に「はやぶさ斬り」とか2回行動できるバトルマスター。

FEシリーズだと、並より高い成長率に加えて、良成長と攻撃、回避、命中が強化される固有スキルを持った、周りのキャラよりも普通にレベルがあがりやすいジェイガン枠。たぶん、月光と威力減衰無しの流星を同時発動してくる。

ブラボで言うと、ハメ殺しできないカインの流血鴉。

味方だとクソ強くて頼りになるけど、「コイツ1人で良くない?」ってなる枠で、敵で出てくると「倒せる設定だけど適正レベルがクリア後のエンドコンテツ並み」というヤバめのパワーバランスです……。

んで、そんな圭一より強い2代目……。
怖いっ………。

ご愛読ありがとうございます!



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