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今回も投下致しますのでお付き合いください……!
頭の中で何かがキレる音がした直後。ガンガンと痛みを訴えていた頭痛が止んだ。耳鳴りも止まった。
頭痛と耳鳴り。それらを始めとした思考を妨げていたノイズが次から次へと吹き飛び、クリアな思考だけが残った。
今の俺はまともに動けない。人数で押さえつける作戦が上手くいかなかった時、仮に戦闘になったとしたら足手纏いでしかないのは明白だ。足腰立たないのだから当然。
だったから、せめて黒幕の正体を暴いてやる。黒幕がどんな人物なのか考察し、情報を提示してみんなを少しでも優位に立たせる。それが今の俺に出来る最善に違いない。
だから考える。クリアになった思考で今日1日の出来事を振り返る。その中に何か、犯人に繋がる情報があるかもしれない。
今日、俺たちは朝早くから学校前に集合し、移動。港に行って、船に乗ってこの伏真島に暗殺のためにやって来た。
島に着いた俺たちはウェルカムドリンクのトロピカルジュースで毒を盛られた。
それから自由時間に殺せんせーと遊びながら暗殺の準備をして、夕方。夏休み中に立てていた計画を始動した。
暗殺はいいところまでいったが、失敗。殺せんせーは完全防御形態になり、俺たちは疲労に押し流されるようにジュースに盛られていた毒に負け、クラスの半数がダウンした。
そして烏間先生に電話が来て、俺たち生徒が毒を盛られた事が発覚。クラスの中で最も背が低い男女2人、つまりは渚と茅野を交渉人に指定。殺せんせーを取引材料にこの伏真島殿上ホテルの最上階に来るよう指示される。
俺たちはホテルに侵入。殺し屋達を撃破しながら進み続け、殺し屋には殺意がなかったこと。黒幕は殺し屋ではないこと。そして黒幕のシルエットが判明した。
どこまでも広がる透徹した思考でさまざまな疑問点を抽出し、可能性を導き出し、今ある事実に肉付けする。
これだけの情報量があるのだから、黒幕の尻尾を掴む事くらいは出来るはず……いや、はず、じゃない。掴むんだ。殺せんせーが褒めてくれた観察力、考察力、そして、俺の一番の強みであるゾーンを惜しみなく使う。
俺の全能力を駆使して黒幕を炙り出す。何がなんでも正体を丸裸にしてやる。
まずは目に見える情報から黒幕の情報を引き出す。
律の映し出した映像の中にある人物は大柄だ。それなりに立派な椅子に座っているが、体が椅子からはみ出している。机に着いている腕の太さ、モニターからの光で見える筋肉の隆起から鑑みて相当鍛えていることが容易く分かる。加えて髪型だ。耳は出てるし、襟首まで伸びてる印象はなく、かなり短い。髪型、体付きから察するに奴はおそらく男だろう。
加えて、注視していると肩が上下に小刻みに動いているのが分かる。震えているのか?いや、そう言う動き方じゃない。じゃあなんだ?なんで肩がこんな風に動く?
——楽しんで見てやがるのが伝わって来やがる……!変態野郎が……!
寺坂の言葉が脳裏を過ぎる。楽しんでいる……。もしかして、笑っているのか?あり得なくない話だ。
・ガタイが良い。
・鍛えている。
・たぶん男。
・苦しむみんなを笑っている。
映像から分かるのはこの4つ。これだけでは核心には至れない。この中で深掘りできそうなのは苦しむみんなを見て笑っている理由くらいだが……。
苦しむ中学生を見て笑う理由ってなんだ?見ていて面白い?そういう性癖?どっちにしろまともじゃない。まともじゃないが、それで思考を放棄しては先に進めないので考え続ける。
少し考えるが、正常な思考ではやはり理解できない。なので、少し趣向を変える。俺がこの黒幕だった時、あるいは似たようなシチュエーションだった時、苦しんでいる相手に抱いている感情はなんだろう?もしくは、どんな相手にこんな仕打ちをしたいと思うんだろう?
他人を苦しめて楽しむ。生憎とそんな趣味はない。だが、強いて苦しんでいる様子を見て楽しいと思える相手がいるとすれば、それは、嫌いな相手だったり、憎い相手なんじゃないか?
何かしらの悪感情を抱いている相手。そうでもなければ熱出してぶっ倒れ、鼻血を吹き出し、冷や汗をかき、もがき苦しむ相手を楽しんで見るなんて出来そうにない。
そういう俺の感性を当てはめて考えると、黒幕の人相はガタイが良く、かなり鍛えていて、俺たちにかなり拗らせた悪感情を抱いている人物と言うことになる。
現段階ではそんな人物、全く心当たりがない。
ならば、と今思い浮かんだ犯人像にさっきまでの会話で出ていた情報を付け足してみる。
・ガタイが良い。
・鍛えている。
・たぶん男。
・椚ヶ丘中学校3年E組に悪感情がある。
・殺し屋ではない。
・外国の政府に勤めるエージェントではない。
・殺せんせーを知っている。
・殺せんせーを認知してるので少なくとも一般人ではない。
これだけ情報があるとかなり候補を絞り込めそうだ。この中で候補を絞るのに使えそうな情報は【殺し屋ではない】ことと【殺せんせーを知っている】こと、そして【外国の政府のエージェントではない】ことだろうか。
一番重要なのは殺せんせーについて知っていること。これだけで大分候補を絞れる。
殺せんせーを知っているのは……椚ヶ丘中学校3年E組、浅野理事長、各国政府、各国の軍隊(自衛隊など含む)、政府から依頼された殺し屋、あとはシロとイトナ辺りだろうか。
この中からさっきの条件でソートをかけるなら、殺し屋と各国政府とその軍隊は除外出来るだろう。
構えて、俺たちE組と浅野理事長も除外して良いはずだ。俺たちと理事長に関してはこんなことするメリットがないし、特に俺たちは被害者側なわけだからな。
シロとイトナの線も薄いだろう。あの2人には触手という奥の手があるし、そもそも犯人のシルエットと一致しない。
そうなると黒幕候補は消えたように思えるが、ここで思い出したいのは黒幕が俺たちE組に悪感情を抱いてるかもしれないと言う点だ。まさか知りもしない赤の他人が気に食わないからと言ってこんなことをするとは考えにくいから、黒幕は俺たちの関係者である可能性が高い。
そして、ここで生きてくるのが、黒幕は殺せんせーのことを認知しているので一般人ではないという情報だ。
俺たちの関係者で、殺せんせーのことを認知していて、暗殺者ではないが、一般人ではない。この条件に合致するのは、俺たちに殺せんせーの暗殺を依頼し、サポートを続けてくれた日本政府ではないだろうか。日本政府の関係者であるなら、外国政府のエージェントを除外した外交問題という理屈をある程度考えないでいいし、理にかなっていると思う。
ただ、そうなってくるとネックなのが、烏間先生が何も知らされていないという部分だ。
実は烏間先生には内密にそういう暗殺作戦を立案していました、という可能性はあるだろうが、さっき烏間先生が言った通り、最悪の状態で失敗した時のリスクが大きすぎる。
よくお偉いさんは無能だとか言ってる人がいるが、流石にそこまで馬鹿じゃないだろう。しかも、国家規模でやるようなことでもないはずだ。
となると、黒幕は日本政府関係者の単独犯か?
けれど、俺たちに直接関わりがある国家機関と言われると防衛省くらいしか思いつかない。
だが、ありえるのか?防衛省と言えば烏間先生たちになってしまう。いや、烏間先生だけじゃない。防衛省所属の人たちは一番手厚く俺たちを支えてくれてるんだぞ?こんな馬鹿げた暗殺プランを実行するような奴がいるとは考えたくない。
だが、律の見せてくれた犯人のシルエット。ガタイが良くて鍛えられている体というのは防衛省の人間なら不自然ではない。
……駄目だ、あまり考えたくない。これまで散々世話になった相手を疑うような真似はしたくない。
したくないが……考えないと黒幕の正体もわからず、不意を突かれてみんなに危険が及ぶかもしれない。
考えるしかない。せめて、この考察が外れていることを願いながら、思考を続ける。
まずは黒幕とそれに雇われた殺し屋達の動きだ。
俺たちは今日、暗殺の為にこの伏真島に来た。そしてウェルカムドリンクに毒を盛られた。
ここで考えるべきなのはどうして黒幕は俺たちがこの島に来るのを知ってるのか、なんで到着したばかりの俺たちにタイミングよく毒を盛れたのかという点。
殺せんせーのことを知っていることに関しては一旦置いておくとして、黒幕は何故、俺たちが今日、この島に来ることを知っていた?しかも到着と同時に毒を盛る事ができるってことはこっちの予定を詳細に知っていたと言うことではないのか?
みんなが倒れたのは暗殺が終わった直後だ。それもほぼ一斉に倒れた。何故、同じタイミングで倒れた?同じ毒を盛られたのだから潜伏期間が同じなのは当たり前だ。だったらどうして暗殺が終わった直後だ?もっと前、あるいは後でもおかしくはないのに暗殺が終わった直後に糸が切れるように倒れた。
偶然にしてはタイミングが良過ぎる。もしかして、この毒は発症するまでの時間を調整されたものなんじゃないのか?
俺たちの到着と同時に盛られ、暗殺後に発症。これを狙ってやっているのだとすれば、黒幕は今日、この島で殺せんせーの暗殺が行われるってだけじゃなく、俺たちの計画をタイムスケジュールレベルで把握しているってことだ。
今回の暗殺計画の内容を把握している人物は複数いる。だが、この時間に何をして、この時間に暗殺をする、なんて所まで知っているのは当事者である俺たちと烏間先生から報告を受けているであろう防衛省くらいだ。マメな烏間先生のことだから細かく報告しているだろうし、殺せんせーの作った今回の暗殺旅行のしおりにも行動計画は載っている。それを物証として提出したのなら俺たちの行動を把握するなんて造作もないはずだ。
黒幕が防衛省の人間である可能性がこれで1つ。
次にみんなが倒れた後、烏間先生のスマホに掛かってきた黒幕からの脅迫電話について考える。
みんなが倒れたと同時に烏間先生に掛かってきた非通知の電話。これもよく考えると疑うべき点が多い。まず、黒幕は何故、烏間先生に電話できたのかだ。
別に殺せんせーやビッチ先生、なんなら俺たち生徒でも良かっただろう。どうしてわざわざ烏間先生だったんだ?番号はどこで手に入れた?烏間先生のことだ。プライベートと仕事で電話を使い分けてる可能性がある。
だが、仮にそうだとしても烏間先生が迂闊に自分の番号を振り撒くようなことをするとは思えない。ましてこの人の性格や言動的に何処の馬の骨とも知らないような奴の手に連絡先が渡るようなヘマをするはずが無い。
そう考えると、黒幕が烏間先生の番号を手に入れることはほぼ不可能であるという結論になるが、もう一つ、考えられる可能性がある。それは、
烏間先生の電話番号を知っていた、あるいは簡単に入手できるポジションがある。それは同じ職場の同僚だ。
同僚ならば有事の際の為に元々番号を交換していたとかなら烏間先生の番号を知っていたというのは充分あるし、仮に知らなかったとしても職場の緊急連絡網なんかで比較的簡単に番号を調べるってことが出来るはずだ。
それに、それならわざわざ俺たちの連絡先を調べるなんて事をせずに烏間先生へ電話をしたことも理解できる。
黒幕が防衛省の人間である可能性がこれで2つ。
電話で気になるはもう一つ。黒幕が烏間先生の実力を把握していたこと。今の烏間先生を側から見たら旅行に来た中学生の団体を引率する大人というイメージを抱きこそすれ、腕が立つとかそんなところまで考えるだろうか?
確かに烏間先生を警戒するのは正しい。俺たちの中の誰よりも強い。だが、そんな実力をたかが監視カメラで眺めた程度で把握できるものだろうか?その上で知った風な口を叩けるもんだろうか?せいぜい、こいつヤバそうだから警戒しておくか、程度に止まるんじゃないか?
思えば、おじさんぬは烏間先生を精鋭上がりだと知っていた。なんでたかが殺し屋が烏間先生の経歴を知っている?
国を防衛する上での貴重な戦力だぞ?情報統制なんかはされていて然るべきだし、なにより、仮に統制がされていなくても調べようがないと思う。こう言っちゃ悪いが、烏間先生は強いけど、防衛省の中では数ある戦力の1人。プロパガンダとして彼のプロフィールなどが公開でもされない限り、実力や経歴を知ることはまず出来ないと思われる。
……けど、これも黒幕が防衛省の人間であるのなら説明ができてしまうだろう。烏間先生の実力を知っていたのは同じ職場にいたから。おじさんぬが彼の経歴を知っているのも黒幕が同僚として知っていた情報を伝えただけと言うことになる。
黒幕が防衛省の人間である可能性がこれで3つ。
それと、取引場所にこのホテルの指定した理由だ。
海外マフィアやヤクザなんかが紛れ込んで違法取引をしている場所なので国がマークしている場所だと烏間先生は言っていた。
この階に辿り着くまでの烏間先生のナビゲーション的にこのホテルの構造やどこにどんな警備が配置しているという仕組みを理解していたように見える。
けど、そんなこと普通は分かるはずがないし、このホテルを愛用している金持ち連中でも流石にそんなところまで知っているとは考えづらい。知っていたら、ガチの闇取引をしてるマフィアやヤクザが彷徨く場所に大事な子供を預ける筈がない。
でも、黒幕はそれすらも知って利用していたとしたら。出入り口の厳しい警備、奇襲や数の理を活かせない展望通路、突破困難なバーフロアとその中の客という肉壁、銃撃戦して下さいと言わんばかりの完全防音のコンサートホール。何もかも知った上で利用していたとしたら?
犯人はどこで知った?そんな普通に生きていたら知る由もないであろう情報を。
……って、これも簡単だな。可能性は数あれど、ここまで来たら俺の疑問に思っていることほぼ全部、烏間先生の同僚だから、で説明できてしまう。烏間先生は警視庁の知り合いから内情を聞いたと言っていたが、同時に国もこの島をマークしていると言っていた。だったら黒幕が防衛省の人間なら国がマークしているこの島のことを知っているのも自然だろう。
黒幕が防衛省の人間である可能性がこれで4つ。
あまり疑いたくないとか言いながらも考えれば考えるほど、疑えば疑うほどに辻褄が合ってしまう。
自分の中でビックリするほど点と点が繋がっていく感覚がある。悲しいことに予感は確信に変わりつつあった。
だが、解らない点がある。何故、人質が男女2人だったんだろうか?背が低いっての条件にするのは分かる。小柄な方が力で押さえ込みやすいだろうから。でも、それなら背が低い女2人の方が良くないか?背が低くても一応は男。それなりに抵抗力があるとは考えなかったのか?
このホテルに侵入する前に考えた最悪のシナリオを思い出す。だが、そのシナリオもよく考えれば人質は1人でいい筈だ。
人質を2人要求する意味が解らないし、仮に理解できたとしても、なんで男が必要だったのかが解らない。
・性別は男。
・鍛えている。
・ガタイがいい。
・俺たちに悪感情がある。
・防衛省の人間。
今分かるのはこれだけ。しかも一番最後はまだ可能性が高いってだけで確信ではない。今はまだ。
正直、鍛えていてガタイが良い男で防衛省の人間であると言うのであれば候補はかなり絞られる。だが、俺たちに悪感情を抱くほど濃密に接した相手なんて——。
「………ぁ………」
そんな相手はいない。そう結論出そうとした時。ふと、思い出した。ゾーンから抜け、思わず気の抜けた声を溢す。1人いる。俺たちを恨んでいるかも知れない男が。
——やっ!俺の名前は鷹岡明!今日から烏間を補佐してここで働くことになった!よろしくな、E組のみんな!
——まあ、待てよ。乃咲圭一。なんで烏間が良くて俺が駄目なのか聞かせてもらいたいんだが。
——黙って聞いてればガキが良い気になりやがって……!
——くそっ、くそくそくそ!!!
……鷹岡明。かつて烏間先生の補佐として俺たちの前に現れ、みんなに拒絶され、理事長に首を切られた男。
出会ってから別れるまでの極々短いやり取りが脳裏を過ぎる。交わした言葉は少なかったが、奴がやったと言うのなら何故だか妙に腑に落ちる自分がいる。
そんな自分の予感を裏打ちするようにアイツがE組にいた2日間の記憶が駆け巡った。出会った時の印象から去り際の様子まで鮮明に思い出し、俺の中の黒幕像に当てはめる。
鷹岡は男、ガタイが良い、烏間先生と同じく自衛隊上がりで鍛えている、みんなに追い出されたので俺たちに悪感情を持っている可能性があり、防衛省の人間……。
なんてことだろう。全部当てはまってしまう。
まるでパズルが組み上がっていくように鷹岡黒幕説が明確な輪郭を帯びてゆく。朧げだった予感が確信に変わってゆく感覚に背中をぞくぞくとした感覚が駆け上がってゆく。
そんな中で俺は渚を見た。
「……?僕の顔に何かついてる?」
不思議だった。なぜ、黒幕が一番背の低い男女2人を要求したのか。女子2人の方が扱いやすいだろうなって。
でも、黒幕が俺たちに悪意を持った鷹岡だったとするのなら納得できてしまう。だって、奴を追い出したのは渚だから。
——ごめんなさい。出て行って下さい
みんなの前で渚を公開処刑しようとしたら返り討ちにされた。取引の材料自体は茅野で個人的にあの時の復讐をしたいから渚を呼んだのであれば納得できる。
……だが、鷹岡を黒幕と断定するには一つ足りないものがある。それは殺し屋を雇う金だ。
殺し屋への依頼の相場なんて知らないが、数十万ですまないのは確かだろう。数百万、下手したら数千万かも知れない。
そんな額を鷹岡が持っているだろうか?奴は大人。俺たちなんかよりも歳上ではあるが、社会で見たら若い方。いくら国家公務員とはいえ、殺し屋を3人も雇い、このホテルの最上階を陣取り、裏工作までする金を用意できるとは思えない。
流石に銀行もそんだけの額は融資するか怪しいし、闇金関係から借りた可能性も考えられるがその他の業界は情報を共有しているイメージがある。あっちこっちで大金借りまくっている奴に金を出すとは思えない。
ここが鷹岡黒幕説の一番のネックだが、これが解決してしまったら俺の中で確信に変わってしまうだろう。
この中で一番奴を知っているのは烏間先生だ。あんなんでも彼とは同じ職場の身内。疑いを掛け、質問するのは気が引けるが、ここまで来たら聞くしかなかった。
「烏間先生。最近、防衛省の中で大きな金が動いたことはありませんか?だれかが宝くじに当たったとか、金を盗まれたとか、株で大成功したとか。殺し屋3人を雇い、このホテルを用意できるだけの金を手に入れた人物に、心当たりはありませんか?」
「……キミは防衛省の人間を疑っているのか」
烏間先生からの冷静な視線が痛い。そりゃあそうだろう。だが、引くわけにはいかなかった。
「はい。もっと言えば個人名まで察しがついてます。殺せんせーを認知し、俺たちの行動を把握し、あなたの実力と連絡先を知っていて、こんな俺たちに恨みをぶつける見たいなことをする人物は1人しか居ません」
俺の確信を込めた言葉に視線をずらし、諦めたような目でまた見つめ返してくる。烏間先生は観念したように言った。
「………。たぶん、キミが考えている人物は俺の想像している人物と同じだろう。そうだ。キミの察しの通りだ。先日、防衛省ではとある事件が起きた。暗殺や機密保持に使う筈だった資金を抜き出し、政府が準備していた殺し屋と共に行方を絡まし、音信不通になった男がいる」
その言葉に息を呑む。何もかもが確信に変わった。
これで最後に問題視していた項目が解決した。なにより、烏間先生が認めてしまった。
「お、おい。乃咲っ、何が分かったんだよ!?」
俺と烏間先生の会話に置いてきぼりなみんなの視線が集まる。だから、俺はみんなに伝えるのと烏間先生への最後の確認を兼ねて焦らすように口を開く。
「防衛省から資金を抜いて、行方を眩ました男。そして、今回の黒幕は防衛省の————鷹岡明、ですね?」
今度はみんなが息を呑む番だった。口々に困惑を溢し、殺せんせーですら目を見開き、烏間先生も信じたくなかったと言いたげにバツが悪そうな顔をしていた。
俺の問いかけ、みんなからの視線、殺せんせーの戸惑い、それらが全てを受け止めるように烏間先生の重い口が動く。
「……あぁ。そうだろう。我々が銃を奪ったあの見張り。何処かで見た覚えがあると思っていた……。そして思い出した。奴らは鷹岡の部下だ」
なるほど、そんな所にも気付く要素があったのか。流石に鷹岡の部下の顔までは知らなかったから気付かなかった。
だが、安心できない。まず伝えるべきことは一つ伝えた。黒幕の正体は掴む事ができた。次は……。
「渚」
「……うん」
「気を付けろ。奴の狙いは多分、お前だ」
そう告げた時、渚は俯いた。
あとがき
はい、あとがきです。
圭ちゃんが黒幕の正体に辿り着きました。
ブチギレた割に案外冷静さを保ててました。
うーん……少し発想が飛躍してるかなぁ……?
今回もご愛読ありがとうございます!