暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えて誤字修正や高評価ありがとうございます!

計画通り投下します!
お付き合いください……!


61話 胆力試しの時間 その1

 

「肝試しかぁ、私初めてだよ」

 

「同じくだな。なんならお化け屋敷にすら行った事はない」

 

 自分たちの番が回って来るまでの間、ペアを組んだ倉橋さんと駄弁る。会場となる海底洞窟は結構暗く、外からでは中の様子が見えない。言うて300メートルちょいしかないのでそんなにビビることもないと思うが。

 それにしても肝試しとかは本当に初めてなので少し楽しみではある。殺せんせーはどんな風に脅かしに来るのか。

 

「圭ちゃんは怖いの大丈夫?」

 

「どうだろ。ガチ心霊は経験ないから分からないけど、スプラッタとかホラー映画とかは大丈夫。生きてる人間の方が怖いしね、浅野とか理事長とか、知謀を巡らせて来る奴らな」

 

「理事長たちは圭ちゃんの中だと怪異扱いなんだね。私は苦手かなぁ……。ホラー映画電気消してみるとか絶対無理」

 

「そうかなぁ……。ああ言う映画って笑えないか?」

 

「ごめん、ちょっと何言ってるか分からない」

 

「なんか、演出とかの意図を理解するとさ、そろそろ来るな〜ってのが分かるし、実際に来たら予想通りすぎて笑えるし、主要キャラの死亡フラグとか分かりやすくて」

 

「ホラー映画の楽しみ方間違ってると思うよ……」

 

 適当な会話で場を繋いでいると、時折、本気でビビってるのか、それとも演出で誰かの悲鳴を録音したのを流しているだけなのか、絶叫が聞こえて来る。

 うーん。楽しそう。とはいえ、そう思っているのは俺だけらしく、倉橋さんと言えば声やら物音が聞こえる度に小動物染みた動きでビクッ、ビクッ!と肩を震わせていた。

 

 見ていて可愛いやら、面白いやら。時間が来るまで倉橋さんのビビり具合を眺めて愉悦に浸る。

 さり気なくシャツを掴んで来ているのは萌えポイント高いな。お年頃の男子としては勘違いしたくなる。

 

「っと、そろそろ時間だな」

 

「ほ、本当に行くの……?」

 

「いかないと肝試しにならないし。ほら、行くよ。琉球のタコ型生物が俺たちを待ってる」

 

「圭ちゃんがいつになくノリ気だよ!?」

 

「大丈夫だよ。いざとなったら、『ここは任せた、先に行く!』をやるから。ゆっくり楽しんでくれ」

 

「せめて『ここは任せて先に行け!』にしてくんないかな!?それ私置いてかれてるよね!?流石に泣くよ!?」

 

「じょーだんだよ、ほら。早く行こう。次の組の奴ら待たせちゃうから。倉橋さんを置いて行ったり、突然大声出して驚かせたり、徐に無言になって不安にさせたりしないから。安心して」

 

「さっきまでの会話のせいで今の全部『やるからな?』って前振りにしか聞こえなかったよ……」

 

 俺が歩き出すと躊躇いがちに倉橋さんが着いて来る。

 ようやく足並みが揃った辺りで洞窟に足を踏み入れた。殺せんせーから予め渡されていた懐中電灯を壁とかに向けてみると、意外と虫とかの類いは張り付いたりしていない。

 

「中は思ったより綺麗だな」

 

「なんだか寒い……。ねぇ、もう帰ろうよ……」

 

「なんだよ倉橋さんビビってるの?」

 

 確かに思った以上に洞窟の中は肌寒い。薄暗く、足元しかない灯りというシチュエーションは結構雰囲気がある。

 思った以上に楽しめそうだな、と思っていると遠くからペンペンと琵琶の音がゆっくりと近づいて来た。

 

「……!!」

 

 聞こえて来る音に面白いくらいビクッ!と反応する倉橋さんが力無く垂れ下がっていた俺の右手を掴む。

 

「ね、ねぇ。もう帰ろうよ……」

 

「馬鹿馬鹿しい……。お化けなどいる訳がないでしょう。科学的に考えて」

 

「あ、あっ!圭ちゃん、気を付けてね!」

 

「……実は結構余裕あるだろ、倉橋さん。つか怖いの苦手とか言いつつ青鬼の台詞暗記してアレンジしてんじゃん」

 

「違うよ!怖いからこそ少しでも気を紛らわせたくてやってるだけだもん。そもそも圭ちゃんから始めたんじゃん」

 

「いや、俺は感想を言っただけのつもりだったんだが」

 

 そうこうしている間にも琵琶の音はゆっくりと確実に近付いて来ている。ペン、ペン、ペンと。

 音が大きくなり、それが近づいて来ている予感が刺激されればそれだけ倉橋さんの冷静さが失われてゆく。

 

 殺せんせー、演出上手いな。まずは音だけで存在をアピールし、ゆっくり近付くことで恐怖心を煽る。

 となると、次に考えられる展開は2つ。このままゆっくりと蝕むような恐怖を与え続けるか、あるいは持ち前の超スピードを使って、ここまで高まった恐怖を爆発させるか。

 

 今後の展開を予想していると、ボワッと独特な音を立てて青い人魂と共に琵琶法師のコスプレをした殺せんせーが現れた。

 

「で、出たっ!?」

 

「うおっ!?」

 

 今日一番の驚きと共に俺のシャツを掴むだけに止まっていた彼女が姿勢を変え、俺の右腕に身体を押し付けるようにしてホールドしてくる。正直、殺せんせーの演出より、こっちの方が色んな意味でドキドキする。

 当たっている。小振りだけど柔らかい、存在感のある物体が。恐怖でむぎゅーっとホールドする力を強める度に腕が沈む。  

 

 その生々しい感触に思わず驚きの声が出た。

 

「ここは血塗られた悲劇の洞窟。琉球……。かつての沖縄で戦いに敗れた王族たちが非業の死を遂げた場所です」

 

「ほ、本当かな………?」

 

「さ、さぁ……?演出だと思うけど」

 

 近い、倉橋さんが近い!殺せんせーには悪いが肝試しどころじゃない。肝というか、俺だけ胆力を試されてる。押し付けられる異性のやわらかい身体に反応を見せず、如何に紳士的に振る舞うか、みたいな別の競技が始まってる。

 

「決して2人離れぬよう。1人になれば彷徨える魂にとり殺されてしまいます。そうやってくっ付いて出口まで歩きなさい……。道中、何があっても決して離れては行けませんよ……」

 

 言いたいことを言うと、殺せんせーはヌルっと姿を消した。とうにお化け役の殺せんせーはいないと言うのに、今だに聞こえる琵琶の音が良い味を出している。

 怖がる要素はないが、1人で来たのならそれなりに楽しめたかも。俺的に女子と密着してるこの状況の方がよっぽど怖い。

 

「圭ちゃん、本当に怖いの大丈夫?なんか、殺せんせーが出て来た時にフツーに驚いてなかった?」

 

「………殺せんせーじゃなくて、倉橋さんの声に驚いたんだよ。急に隣で大声出すんだもの」

 

 キミが突然くっ付いて来たからだ、と言いたくなるのを我慢して無理矢理飲み込む。

 ……が、いつまでもこのままと言うのも心臓に悪いので歩き出す前に少し考え、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「倉橋さん。少し、歩き辛いかなって」

 

「………あっ……!?」

 

 遠回しに現在の状況を指摘すると、視線は自分が抱き付いている腕を向き、次に俺の顔に向き、あわあわと口を忙しなく動かした後、一度、離れようと思い至ったのか、腕から力が抜ける。

 

 その様子に胆力試しではなく、肝試しに戻れそうだと胸を撫で下ろすと、隣の少女は何を思ったのか、一度緩めた筈の手に再度力を入れ、ホールドし直して来た。

 

「……あの〜……。倉橋さん?」

 

「……考えてみれば腕に抱き付くなんて今更だよね。朝なんてもっと凄いことしてた訳だし」

 

「それはそうなんだけど歩き辛い……」

 

「………圭ちゃんは嫌だったかな……?こういうの」

 

 捲し立てるように言葉を並べる様子を見ていると多少心配になる。そんなに怖いんだろうか、この肝試し。

 捨てられた子犬みたいな目を向けて来る彼女に絆され、少しだけ考えてもう少しだけ胆力試しを継続することを選ぶ。

 

 本校舎に戻れば倉橋さんとこう言う風に触れ合うこともなくなるだろうし。彼女も自分からホールドして来るくらいだ。腕を組むことを嫌がってる素振りはない。折角だ。こうなったら開き直ってこの役得とも言える状況を楽しもう。

 

「歩き辛いのは事実だけどね。でもキミがそうしたいなら別にこのままでいいよ。俺も倉橋さんなら嫌じゃない」

 

「……っ、そ、そっか。えへへ……」

 

 俺なりに結論を出し、このまま歩くことを選ぶ。

 事実、磯貝たちのせいで気不味い気持ちはあるが、彼女と歩くこと自体は嫌じゃないし、腕を組むことで生じる動き辛さも他の誰かならいざ知らず、倉橋さん相手なら我慢できる。

 

 腕を組み直し、安心したのか落ち着いたのか、彼女がようやく足を前に出したのでそれに倣って同じペースで歩みを進める。

 それにしてもやはり、歩き辛い。修学旅行の時とはまるで違う。あの時は俺が少し早く歩いても彼女と逸れるだけだったが、今は少しでもペースがズレればどちらかが体勢を崩してしまう可能性がある。女子と歩くのはやはり精密作業だ。

 

 そんな苦労を顔に出さないように足を進めること数分。俺たちの目の前に手作り感溢れる木製の扉が現れた。

 なんだろう、これ。普通に通っていいのかな?なんて場違いな物を眺めていると、殺せんせーがゆらりと姿を見せる。

 

「落ちのびた者の中には夫婦もいました。ですが、追手が迫り……。若い2人は椅子の上で寄り添い合い、自殺しました」

 

 殺せんせーのおどろおどろしい語りで緩んでいた空気が張ったように思う。空気が心なしか冷たくなったかな。

 ……と思ったら、暗闇の後ろで激しく動き回る黄色い物体。この人、自分がマッハの化け物だと言うのを良いことに超スピードで風を冷まし、冷たい空気感まで演出してやがる。

 

「その椅子がこれです」

 

 触手が俺たちから見て左側のスペースを指差す。

 これだけ凝った演出してるんだ。さぞ不気味なオーラを放つ椅子が鎮座しているのだろうという期待を抱き、触手の先に目を向けると、そこにあったのは………。

 

 無駄にピンクで彩られ、ハートの意匠が煩いくらいに自己主張しまくっているなんとも頭の悪そうなベンチだった。

 

「琉球伝統のカップルベンチです。ここで2人で1分座ると呪いが解けてあの扉が開きます」

 

「………なんか白けたな」

 

「………だね」

 

「にゅやぁっ!?そんなこと言わずに!しっかり座らないと呪いが解けず、いつまで経っても先に進めませんよっ!!?」

 

 やたらと必死にカップルベンチを推しまくる殺せんせー。

 なんとなく、肝試しが始まる前に見ていた意識の波長を思い出す。彼の波長が何かを企んでいるような揺れ方をしていたのは、こう言う理由か。おおかた、肝試しの吊り橋効果でカップル誕生!みたいなのを狙ってたんだろう、浅ましい。

 

「座ろうよ、圭ちゃん。後ろのペアに追いつかれちゃう」

 

「……そうするしかないか」

 

 このバカみたいなベンチに座るのは流石に恥ずかしいが、座らないと扉が開かない以上は進まないわけだし。

 渋々腰を下ろす。殺せんせーぇ……。カップル誕生を狙うならこのベンチは悪手じゃないかなぁ。付き合ってもない男女がこれに座るって相当ハードル高いぞ。

 

「さぁ、呪いを解くために会話を弾ませるのです!」

 

 その上、外野がやかましい。

 まだ、このベンチに座らせて、あとは若いお二人でがゆるりと〜ってムーブならまだ可能性はあっただろうに、このタコと来たらゴシップ書く気満々でメモ帳片手にスタンバッてるもんだから弾むもクソもない。

 

「圭ちゃんの手……。思ったよりゴツゴツしてるね」

 

「急にどうした?」

 

 ちょっと気不味くて沈黙してると徐に口を開く彼女。もう、殺せんせーがいるのは仕方ないと割り切ったのか、開き直ったのか、彼なんて見えてないみたいに会話を始める。

 ベンチの上に置いた俺の手をペタペタと無遠慮に撫で回したり、ツンツンと指先で突きながら。

 

「何となく気になったんだ。細マッチョって言うのかな?服の上から見た印象と実際に触った印象が違くて驚いたって言うか。プールの時間で圭ちゃんの体を見るたびに思ってたんだけどさ。肉体改造的なこと好きだったり?」 

 

「訓練受けてれば自然とこうなるだろ」

 

「どうなんだろ?確かにそれもあると思うけど、一番は圭ちゃんが一生懸命やったからじゃないかな?」

 

「……まあ、人並みにな」

 

「そんなことないよ。一番最初に烏間先生の放課後訓練を受けたのも、先生に初めてクリティカルヒットさせたのも圭ちゃんだもん。実は結構見てたんだよ?キミが頑張ってるの」

 

「勘弁してくれ、流石に照れ臭い。それに俺が頑張ってるならみんなも同じだろ。成績ドン尻だったのが、A組と上位争いするようになって、烏間先生に掠りもしなかったナイフが当たるようになった。倉橋さんだって女子の中ではナイフ術3位だろ?」

 

「確かにそうだけどね。まだまだだよ、メグちゃんとかと組まないと掠りもしないし」

 

「…………流石に相手が悪いか。烏間先生だもんな」

 

 片岡と岡野と倉橋さんが女子のトップ3。その3人がローテーションでペアを組んでようやく攻撃を掠らせる程度。

 男子の方もトップの磯貝と前原がコンビネーションでようやく当てられるくらいだもんな。おかしいわ、烏間先生。

 

「だから改めて圭ちゃんって凄いんだなぁ〜って思ったの。勉強では最下位だったのに1位になって、初めは先生殴った不良って嫌厭されて、クラスの中で孤立気味だったのに暗殺を通じて、いつの間にかみんなの中心に居てさ」

 

「勉強に関しては頑張ったからだって実感あるけど、後半は俺も知らねぇ……。ほんとどうしてこうなった?風向きが怪しくなったのは一番最初の合同暗殺の時だよなぁ」

 

「あはは、そうかもね。キミが作戦を練って、委員長2人と渚ちゃんたちがそれに協力しようかって話になって、大人数で作戦に沿って暗殺するのも楽しそうだよねってクラスのみんなが参加することになって、寺坂組とか先生たちも巻き込んでさ。思えば、あれが本当の意味でみんなが一つになった暗殺だったよね」

 

 思い返してみるとそうかもな。一番最初は個人主義な暗殺が多かった。各自で攻撃を仕掛けたり、組んだとしても仲の良いやつだけみたいな空気だった。

 それぞれの方向性は点でバラバラだったと言うのに、いつの間にかみんなで協力するのが自然みたいな流れになっていた。

 

「初めての合同暗殺、律の歓迎暗殺会、そして前原ちゃんの仕返し作戦。思えば全部キミが指揮取ってたよね。たぶん、それが理由じゃないかな?みんなもみんなで、いつの間にかそれを受けて入れる節があるし。今回の暗殺も自然と指示出ししてたもんね」

 

「ちょっとしゃしゃり出すぎたかなぁ」

 

「ふふ、そんなことないと思うけどな〜」

 

「んまあ、でもさ。俺がこうしていられるのは磯貝とか倉橋さんのお陰だと俺は思うんだよ」

 

「へ?なんで?」

 

「磯貝は孤立気味だった俺にしつこく話しかけてくれた。だから、アイツに釣られて前原とかとも話すようになった。磯貝が話しかけてくれなきゃ俺は孤独だったろうな。誰とも話さず、話せず、1人で腐って行ったと思う」

 

「……まあ、E組始まったばっかりの頃は圭ちゃんだいぶ話しかけ難い空気だったもんね。そう思うと躊躇なく話しかけに行ったのってすごいかも」

 

「だろ?でも、俺にとっては多分、倉橋さんも同じくらいの大事だと思ってるんだ。磯貝が俺を孤独にしない環境を作った奴なら、キミは原動力……みたいなものだったのかも」

 

「大事………。えっ、私が……?」

 

「少し大袈裟かも知れないけどさ。ほら、覚えてる?俺が鷹岡に殴られて入院した事あったよな」

 

「あぁ……。あったね」

 

「実は殴られたあの日、俺も鷹岡を殴り返したんだ」

 

「そうだったの?」

 

「うん。烏間先生の放課後訓練を受けようとしたらアイツがやるってふざけた事言って来てさ、そっから口論になって、殴られて。俺が勝ったら烏間先生との訓練を続けさせて貰うって約束で勝負することになって、その時にね」

 

 思えばあの時、俺は鷹岡の恨みを買っていたのかも知れない。ホテルで俺に向けた狂気の笑みは渚に向けていたそれと同質のものだったように思う。

 

「結果、俺は勝った。でも、変な言い方になるけどさ。俺1人じゃ勝てなかった。嫌厭されて孤独だった俺じゃ勝てなかったと思う。なんかさ、『ほんとにやべぇ』って状況になるといつも倉橋さんの顔が脳裏を過るんだ」

 

「私が……?」

 

「うん。ほんと、どうしてなのかは分からないけど。鷹岡を殴った時、イトナが暴走した時、そして今回も。『このまま状況が悪化したら倉橋さんが酷い目に遭う』って自然と考えてた」

 

「だから私が原動力なの?」

 

「そうなのかもなって、話しながら思った。んで、どうして何だろうって考えて、多分、大事なんだって結論になったわけ」

 

「——そっか、なんか嬉しいな。そんな風に思っててくれたんだね。……私も、圭ちゃんが好きだし、大事だよ」

 

「俺も好きだし、大事だ。って、ここだけ切り取ると告白みたいだな。この話、ここまでにしないか?変な空気になりそう」

     

「……………私はなっても良いよ、変な空気」

 

「えっ………?」

 

 倉橋さんの言葉の意図が分からず、思わず思考が止まる。変な空気になっても良いってどう言う意味なんだろう?

 意図を図る為についゾーンに入って考え込んでしまう。しかし、どれだけ思考を重ねても答えが出ない。

 

 そんなこんなしてると扉がやたらと重々しい音を立てて開いた。どうやら時間になったらしい。

 殺せんせーはと言うといつの間にか姿を消していた。あのタコ、速いだけじゃなく、隠密性能も高いから厄介だよな。速いし気配も消せるからこっちの情報を集めたい放題だもの。

 

「思った以上に速いもんだね。1分って。ほら、早く行こ!」

 

 つい考え込んでしまった俺より先に立ち上がった彼女がいつもの天真爛漫な笑顔で手を差し出して来る。『変な空気』になりかけた空間を取り払うように溌剌とした声と笑顔で。

 そんな顔を見たら『1人で立てる』なんて無粋な言葉を吐き出す気にはなれず、その手を握って立ち上がる。

 

「次は何かなぁ〜」

 

 俺が立ち上がると倉橋さんは手を握り返してそのまま歩き出してしまう。あまりに自然に、それが当たり前であるかのように。

 何と言うか、この娘は結構な頻度で無自覚天然小悪魔ムーブするよな。ピュアな男だったら絶対に勘違いすると思う。

 

 倉橋さんに振り回されながら洞窟を回った。

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき  

はい、あとがきです。
倉橋さんと圭一のイチャコラ(笑)は次話まで続きます。果たして圭一はこのまま幸せな感じで終わるのか!

それは次話のお楽しみ……。
ご愛読ありがとうございます!
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