暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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はい、今月も1日がやって来ました。
もう9月ってマジですか………?

なんか、月一で投稿するルートを作るようになってから、あれ?もう1ヶ月経ったの?ってことが増えて来ました。あと3ヶ月で12月……ことしもあっという間ですね……。

それでは以下、本編です!


IFルート ハナコトバの時間 part6

 

「まさか、あの伝説の殺し屋がこんなに間近にいたとは」

 

「ははは、出来れば内緒にしておいて貰えると助かるよ」

 

 烏間が苦々しくコーヒーを啜るのを正面から眺める。

 うん、隙がない。純粋な正面戦闘では負けるつもりはないけど分が悪い。単純なタフさと膂力は向こうが上だね。こっちの技をパワーでねじ伏せることも出来るし、技術でいなすことも出来るだろう。戦闘者としての完成度は僕より高いな。

 

 今、僕らは圭一たちの泊まってる施設の教師陣の部屋に招かれて今回の件の聴取を受けていた。もっとも、ホテルの屋上に迎えに来た時の彼の第一声は『同僚が迷惑をかけてすまなかった』という謝罪だったけど。

 それに、一方的な聴取ではなく、ある程度、こちらに譲歩した聞き方、態度なのも好印象だ。確かに僕は彼らの身内のやらかしのケツを拭いた形になるのだし、ある程度は丁寧な態度で接されて然るべきなんだろうけど。それでも彼らからしたら世界最高の殺し屋の情報を得るこれ以上ない機会なのに、そう言った面を表に出してこないどころか感じさせないのは素直に賞賛できる。

 

「さて。まぁ、ざっと今話した内容が僕の視点かな」

 

「そうか。改めて感謝する。今回の件はこちらの監督不行届きが原因だ。鷹岡には厳罰が下るだろう」

 

「そんなことはどうでも良い。僕の教え子に危険が及ばないのであればね。報酬の類も要求するつもりはないから、代わりと言ってはなんだけど、あの手の危険人物が採用されないように採用試験の採点項目を見直して欲しいかな」

 

「……要改善点として報告しておく」

 

 ふむ。ここまででこちらに踏み込んだ質問はない。

 やはり配慮してくれているのだろう。

 

「烏間さんは意外と冷静なんだね。目の前に今世紀最大の殺人鬼がいるのに。正義感の強そうな印象があるから意外だよ」

 

「………同僚にも殺し屋がいるし、今日まで超生物の暗殺を志願して来た殺し屋たちの面接もして来た。殺し屋だからと思い描くような人格破綻者だという偏見は捨てたつもりだ。人殺しであることに代わりはないだろうが、殺し屋になるしかなかった者も何人か見て来た。アンタがどっちかは知らないが」

 

「ふむ……」

 

「だが、少なくとも、アンタは自分の生徒を守る為に動き、その過程で死人を出さなかった。何より、そのおかげで俺の生徒も守られた。今の俺はE組の表向きの担任で、学校の先生だ。感謝こそしても冷静さを失って襲い掛かる理由がない」

 

 なるほど、確かにこの男はカッコいいな。

 ONとOFFを巧みに使い分けている。事が起きる前に片付けたから、政府の工作員ではなく、彼は学校の先生として生徒を助けられた礼をしているという建前なんだろう。

 

「それじゃあ、政府……防衛省の暗殺監督役としては?」

 

 僕の質問に彼は鋭く目を細め、少し考えた後、ゆっくりと姿勢を前傾にし、話し込むようなら態勢を取った。

 

「正直に言えば、今すぐにでも確保したい。殺し屋としての罪は一旦、置いておくとして、優秀な殺し屋は多いに越したことはないし、乃咲くんと茅野さんの顔見知りというのであれば、E組の特別講師へ招きたいところだ」

 

「……罪は置いておくのかい?」

 

「それを言い出したら裁かなければならないものが多過ぎる。なにより、日本にはそう言った人脈がなかっただけで世界各国政府にとっては珍しくない職業だろう、殺し屋は。その上、死神という名前は抑止力にもなる。やり過ぎれば死神を雇った政府組織に消されるというな。政治的にも死神がいなくなるのはまずい」

 

「随分と理解があるね。まぁ、実際その通りなんだけどさ」

 

「…………その上で、だ。今のE組の特別講師という話を真面目に考えて貰えないだろうか?望むだけの報酬は出す」

 

「その前に一つだけ質問いいかい?」

 

「もちろんだ」

 

「烏間さんは僕が世界最高の殺し屋、死神であると知ってる。なら、どうしても殺しの依頼ではなく、特別講師という枠なのかな。普通は逆だろう?殺し屋として雇う片手間で特別講師をするというのが望ましいのでは?」

 

「それも考えはした。だが、ここまででアンタは一度たりとも暗殺の類を仕掛けていないだろう?無論、証拠も確証もない。だが、仮にまだ仕掛けてないのだとしても、何か理由がある。それがなんなのかは分からない。ならば、藪を叩いて蛇を出すより、まだ可能性のある依頼を出した方が建設的だと考えた」

 

「なるほど。確かに最善だろうね」

 

 よく考えてるし、頭もキレる。

 優秀だな、この男は。通りで圭一が懐くわけだ。人格も優れ、頭もキレるし、その上で武力も最強レベルと来た。

 

「そして、アンタには教師としての確かな腕がある」

 

「ほう、なぜそう思うのかな?」

 

「乃咲くんだ。正直、中学生の強さじゃない。鷹岡も決して弱くない。むしろタフさで言えば第一空挺団でも指折りだった。そんな奴を軽く捻り、泣き叫んで失神するまで一方的に蹂躙する。世界でもトップレベルの猛者と言える。あれだけの実力者を育てた腕を買わない理由はない」

 

「あー、うん……。うん………。その、申し訳ないけど、圭一は例外かなぁ。確かにあのレベルまで育てたのは僕かも知れないけど、圭一じゃなきゃあのレベルにはなれないと思う。だから、あの子と同等の実力者を育てることを期待されてるのであれば、無理と言うね、ノータイムで」

 

「…………………やはり、死神から見ても異常か?」

 

「異常とか言いたくないけどね」

 

「…………そうか。いや、すまない」

 

「構わないよ、気持ちは分かるしね。んで本題だけど、申し訳ないけど今回はご縁がなかったと言うことで」

 

「……理由を聞いても?」

 

「確かに悪くない提案だった。E組に教師として興味がないと言えば嘘になる。実際、粒揃いだ。磨けば光る原石たちだろう。基礎を上げつつ、得意分野を伸ばしてやれば他に並ぶ者がいないと言えるだけの才能がある」

 

「それでもお眼鏡に適わないか?」

 

「と、言うより今は2人で手一杯なんだ。圭一を何処まで育てる事が出来るのか。茅野さんがどんな方向に進んで行くのか。今はそれを見届けたい。今後も生徒たちに危険があれば手を貸すことは約束する。それで勘弁して貰えないかい?」

 

 僕の譲歩に彼は頷いた。

 これ以上はどうやっても口説けないと悟ったのだろう。

 

「いや、充分だ。報酬は何処へ支払えば良い?」

 

「要らないよ」

 

「………なに?」

 

「要らない。代わりと言ってはなんだけど、アンタは圭一に取って高い壁であってあげて欲しい。あの子が本気でやれる相手はもう指折り数えられるくらいしかいない。烏間さんはその数少ない相手だ。だから、あの子が飽きないように強く分厚い壁でいてあげて欲しいんだ。望みはそれだけだよ」

 

 僕の言葉に彼はキョトンとしていた。

 本当に呆気にとられたと言うか、面食らった顔をしている。こちらの言葉を理解し切れてないみたいに瞬きの回数が少しだけ増え、口元を少しだけ緩ませた。ぱっと見ではわからないくらいにほんの少しだけ。

 

「あぁ、約束しよう。と、言っても正直に言えばかなりヒヤリとさせられる場面も増えて来た。そう遠くないうちに間違いなく抜かれるだろうが。こちらとしても生徒を守る為にも生徒より弱い訳にはいかないのでな」

 

「その言葉だけで充分だ。お互い、強くあり続けなければいけないね。慕ってくれる教え子の為にも」

 

「……あぁ。ぐんぐんと力をつけて伸びていく姿に、いつか我々の保護すら必要なくなる日が来るのかと思うと少し寂しさを覚えてしまうがな。どうやら俺は、彼らのお陰で本当に教師にハマりつつあるらしい」

 

「………それじゃあ、お互い様だ。頑張ろうじゃないか、新米教師同士。僕はこれで失礼するよ、あとでこちらの連絡先を送っておく。用件があれば、そっちから連絡して欲しい」

 

「ちょっと待て、連絡先は確か教えてないはずだが」

 

「僕を誰だと思ってるんだい?そんなもの、調べるのに3分と掛からないよ。それではこの辺で失礼。圭一に見つかったら後が怖いからね。さっさと帰らせて貰うよ」

 

 烏間を置いて部屋を出る。部屋の外で当然のように聞き耳を立てていた、殺せんせーとイリーナに会釈しながら通り過ぎる。もっと気配は消すべきだよね。イリーナはともかく"先生"は。

 聞き耳を立てられてることは分かっていた。それを承知で諸々を話した。知られて困ることはないしね。

 

 んでも、やっぱり僕と圭一は似てるんだろう。イリーナが僕の顔を見てあの子の名前を呼びそうになってる姿は印象的だった。もしかして、圭一限定でなら、僕も中学生のフリとか出来るかなぁ?やるかどうかは別としてさ。

 

 思わず腕組みしながら考えて外に出る。

 ちょっと歩いた所で上から光が注いで来た。

 

 スポットライトのようなあからさまなものではない。なんとなく、光が増えた気がして顔を上げてみたら、こちらに向けられている光が一つ、あることに気が付いてしまった。

 

 しかも、その光は一定のリズムで灯いたり消えたりしてる。

 パッと灯いて、消えて、ほんの少しだけ長く灯いた。後で表すとツ、ツー、のような感じ。

 そこでなんとなくモールス信号だと思い至り、このリズムで思い当たる単語を頭の中で並べてみる。それなりの長さの文字列だ。それで和文ではなく、欧文。それに当てはめると『What are you doing』と言ってる。日本語に直すと『何してんの、アンタ』と言ったところか。

 

 目を凝らして光の元を辿ってみると、そこにはまさかの圭一がいた。部屋の電気が消えていて、ベランダから圭一だけが外に出てる。状況的には、部屋の中で圭一だけが起きてるみたいだ。電話してこないのはそう言う理由だろう。

 

 僕もスマホのライトで信号を送る。

 

『ちょっとキミのとこの先生とお話ししてんだ』

 

『殺し屋としての依頼?』

 

『似たようなところ。断ったけどね』

 

『話が拗れたりして危ないことになってないなら良いんだけど。んじゃ、気をつけて帰ってくれ』

 

『そっちもあんまり夜更かしはダメだよ。おやすみ』

 

『へーい。おやすみ』

 

 それ以降、光信号は送られて来ない。夜目に圭一が部屋に入って行ったのが見えたので僕もホテルに歩き出す。

 そう言えば、僕、圭一にモールス信号なんて教えてないんだけど。なんか当たり前みたいに滅茶苦茶達者に会話してなかったかい、今。僕の返答に対して淀みも隙間時間も殆どなかった。

 

 あの子、知らない間にどんどん多才になってないかな。

 普通、モールス信号って簡潔な単語で意図を分かりやすく、なおかつ暗号で伝える為のものでしょ。『爆弾がそこにあるので危険です』じゃなくて『そこ、爆弾、危険』みたいな感じでさ。それなのに普通に文字を単語にして、文章にしてたよ、あの子。

 

 ちょっと後日にでも、何処で覚えたのか聞いてみるか。

 

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「ん?あぁ、ちょっとSkypeで海外の人と知り合ったんです」

 

「す、Skype……?」

 

「えぇ。あの電話ツールっすね。せっかく先生とビッチ先生から本格的な外国語を習ってるし、見ず知らずの人ともしっかりコミュ取れるか試してみたくて。捨て垢のTwitterとかFacebookで募集掛けて、ある種の使い捨てと割り切ってなんの情報も入ってないSkype用の端末を準備して、直感で連絡くれた人から良さげな人を選んで通話するようになったんです」

 

「待て待て待て、やってる事が中学生のそれじゃないでしょ!?捨て垢はまだしも端末使い捨てのつもりで用意するとかガチ過ぎない!?そんなするなら、言ってくれれば、僕が良さげな相手を"用意"するのに!詐欺とか危険な人だったどうするのさ!?」

 

「私からしたら2人ともえげつないよ!?圭一は変な方向に進化してるし、先生も良さそうな相手を"用意"するってなに!?」

 

 圭一からの事情聴取中。流石に色々とツッコミを禁じ得なかった。なんと言うか、圭一らしからぬ行動だ。

 いや、言いたいことは分かる。実際に危険が少ない方法を取ってるのも理解できる。でも、らしくない。

 

「だって、英語にだって訛りとかあるわけで。自分の言葉がしっかり通じるのか、逆に相手の言葉を理解できるのかとか気になるじゃないですか。それに訛りとか覚えて先生たちを驚かせたかったし。訛りを理解できれば何処の人とか分かるようになるし、話題作りとかもできるじゃないですか」

 

「うーん。この向上心は評価したいんだけどねぇ……!ネットリテラシー的な部分が……!いや、良いのか?対策は取ってるし、そんなに目くじら立てることじゃないのかなぁ……!?」

 

 先生としてどう言うのが正解なのか悩む。

 ネットでは見ず知らずの人と通話するのは珍しくないだろう。今どき流行りのFPSでのボイスチャットだって通話の一種だし、実際にSNSでメンバーを募ってボイスチャットするのも最近では良く聞くようになった遊び方だし。保護者的な立ち位置としては、変な人に絡まれたら直ぐに止めなさいで済ませてあげたい。

 しかし、先生としては、捨て垢と情報を盗まれても大したことはない端末を使うことで対策しつつ、向上心の赴くままに考えてアグレッシブに行動する姿勢を誉めてあげるべきか、もっと厳しいネットリテラシーをとくべきなのか……!?

 

「あのぉ……。先生?なんか話が逸れてない?もともとは圭一が何処でモールス信号なんて覚えたのかって話じゃ?」

 

 おずおずと手を上げる雪村さんにハッとした。

 そうだ、元々はそれを聞いていたのだった。

 

「モールス信号はそんな感じのネット越しの交流中に知り合った中年くらいのおっさんに教えて貰ったんだ。ミリタリー好きみたいでさ、俺も先生とか学校の暗殺で色々と習う内にちょっとずつ知識が付いてたからちょっと踏み込んでみたんだよ。そしたら意気投合しちゃって。『それだけ英語が話せるなら、英単語のスペルもいけるだろう?なら、モールス信号でも覚えてみるのはどうだ?興味があるのなら、私が教えてあげよう』って」

 

「それで本当に教わっちゃったし、覚えちゃったんだ?」

 

「そそ。D・Sって人なんだけどさ。『名前のイニシャル?任天堂のゲーム?』って聞いたら『Divine Soldier』って返ってくんの。なんかのコードネームみたいだな。日本語だと神の兵士とか神兵って書くんだぜ?って返信したら気に入ったらしくてさ。俺のこともコードネームで呼び始めんの。面白い人よ?」

 

 ミリタリー好き、モールス信号も完璧、神兵、コードネーム。流石にないよね、偶然だよね。もしくはそういう戦争系の話題が好きな情報通が勝手に名乗ってるだけだよね。

 

「へぇ。圭一はなんて呼ばれてるの?」

 

「俺はあんまり捻りがないけどな。アカウント名を『K1』ってしてたから『K-oen』ってさ。んでも話してると楽しいんだよな。ミリタリー映画とかで『あの銃撃シーン、構え方が違ってれば結末も変わったよな?』、『いや、アレは心構えの問題だな。遅かれ早かれ死んだだろう。名もない戦場でひっそり死ぬより、仲間たちの為に華々しく散る方が幸せだったろう』って感じの会話を最近はモールス信号をチャットに打ち込みながらしてる」

 

 うーん、会話の内容、僕の予想が外れてなければD・Sなる人物のリアクションが考えれば考えるほどに堅気の人じゃない気がする。構え方が変わってれば〜って話題に心構えから入って兵士の最期を予想するのはなんか、非常にそれっぽい……。

 

 んでも、流石に圭一もそこまで引きは強くないだろう。

 

「うーん。チャットでわざわざモールス信号……?」

 

 首を傾げる雪村さん。そう言えば、彼女、子役だったっけ。

 あれ、そう言えば僕も死神の技を受け継いだ2代目だよね。

 

 あれ、あれあれ……?

 

 圭一の周りってよく考えるとやばい人多くない?

 

 本人 : 最強中学生、殺し屋。

 父親 : 世界最高の科学者の1人。

 恋人 : 天才子役、殺し屋。

 師匠 : 世界最高の殺し屋。

 先生 : 元世界最高の殺し屋。超生物。

 先生 : 自衛隊トップエリート。

 先生 : 世界最高のハニートラップ使い。

 

 あれ、やばくない?というか、殺し屋多くない?ちょっと待ってよ、おかしくない?圭一ってちょっと前まで普通に堅気だったよね。というか、まだ堅気だよね。なんでこんなに偏る!?

 

 て言うか待てよ、ちょっと待てよ、本当に待てよ!?僕が圭一と会ったのって偶然だったよね。

 雪村さんとの出会いも喫茶店でたまたま相席になったからで、繋がりは学校の先生が雪村さんのお姉さんだったって。

 

 おかしいよ。この時点で偶然世界最高の殺し屋と出会って目を付けられて、喫茶店でたまたま活動休止中の天才子役と相席になるってどんな引きの強さをしてるんだ、圭一!?

 

 あれ、あるぞ、これ。そのD・Sってやつが本当に神兵の可能性ガチであるぞ!?クレイグ・ホウジョウの可能性!?

 

「んでさ、今度日本に来るって言うんだ。仕事の都合で来るついでに観光でもしたいらしくてさ。その時に遊ばないかって誘われてんの。サバゲーでもしようぜって」

 

「……圭一の事だから言うまでもないと思ってるけど、それ、大丈夫?危なくないかな?」

 

「それは俺もちょっと警戒してる。流石にネットで知り合った人と会うのって抵抗というか、怖いよな」

 

 しかもなんか邂逅一歩手前だし。

 これ、流石に圭一を1人で行かせるのは危ないな。

 

「先生、サバゲーって言うし、人数集めたってことで一緒に来てくれません?」

 

「おや、これは棚ぼただ。僕も流石に圭一を1人で行かせるのは危ないと思ってたからね」

 

「俺と先生がいれば大抵のことはどうにか出来るだろうし。それに、話してる感じ、別に悪い人でもなさそうだから。なんかシンパシーみたいなの感じるし。俺らの取り越し苦労なら楽しくサバゲーやって解散だしね」

 

「あ、じゃあ私も行く!私も心配だし、むしろサバゲー目的で友達が集まった状態で手を出すほどおバカな犯罪者もいないだろうし。それに実際、学校で習ってる技術がどれくらい身に付いてるのか確認できそうだもん」

 

 はいはーい!と手を上げる雪村さんは何処からともなくアサルトライフルのエアガンを取り出して、やる気満々。

 まぁ、実際に人数は多いに越したことはない。ただ遊ぶだけにせよ、相手が本物の神兵にせよ。

 

 でも、やっぱり人違いであって欲しいなぁ……。

 折角海外に友達が出来たって言ってる教え子を純粋に誉めてあげたいなぁ。語学力とコミュニケーション能力、そしてネットの友達からリアルの友達を作る人を見る目をさ。

 

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「初めまして、K-one。ネットで散々やり取りをした後で面映いが私がD・Sことクレイグ・ホウジョウだ」

 

「日本語上手いなぁ。面映いなんて日本人でもそうそう使わない表現だぞ。んで、そうだな。初めまして、D・Sさん。俺がK1、乃咲圭一です。日本へようこそ……で良いのかな」

 

 待ち合わせ場所はD・S氏が貸切にしたと言うサバゲー会場。

 この時点で一般人じゃないことは予想してたけどさぁ。

 

 人違いであって欲しかったなぁ………!!!

 いや、知ってたよ、あの後で待ち合わせの為に送られて来たって見せられた顔写真を見て九分九厘確信してたさ。でも、でもね!?やっぱり顔が似てるだけのそっくりさんであって欲しかった。どんだけ引きが強いんだ圭一ぃ!!

 

 顔に傷があって、傭兵のトップという割にはやや痩せ型に見えるが、服の上からでも細マッチョだと分かってしまう立ち姿。明らかに一般人ではない。なのになんであんな爽やかに握手してるの、うちの子!?

 

「いや、驚いた。アレだけの知識と発想があり、その上でモールス信号ですら瞬く間に覚えてしまったネット向こう側の友人が、まさか本当に中学生だったとは」

 

「モールス信号を覚えられたのはD・Sの教え方が良かったからだ。それに楽しかったしな。ミリタリー映画とかでモールス信号が出てくると何言ってるか分かるようになって」

 

「そう言ってくれると教えた甲斐があると言うものだ」

 

 しかもなんか、凄く気さくに話してる。

 マジで友達っぽいぞ、この2人。

 

「そうだ、先に2人を紹介しておくな。こっちが恋人のあかり、んで、その隣にいる俺とそっくりな人が七志乃。俺の兄貴みたいな人だ。2人ともエアガンくらいなら問題なく使えるし、サバゲーやるなら人数いた方が楽しいだろう?」

 

「あぁ、問題ない。先に話は聞いていたしな。こっちも同僚を連れて来た。日本の中学生とサバイバルゲームをすると言ったら興味が出たのか、ついてくると言って聞かなくてな」

 

 彼がそういうと、さっきから彼の後ろに控えていたマッチョマンたちがゾロゾロと前に歩み出てくる。足並みはバラバラだが、足音一つ一つに歴戦の猛者特有の気配を感じてしまう。

 やばいな。まさかの最強傭兵部隊"群狼"の揃い踏みだ。敵意の類は感じないし、本当に興味本位で来たのだろう。おそらくは、ホウジョウが興味を持った中学生を見物しに。

 

 うん。圭一ならともかく、雪村さんでは手も足も出ないな。

 というか、圭一がおかしい。あちらの部隊の面子とも遜色ないレベルで強い。ホウジョウを含めた何人かには敵わないだろうが、それでもこの場の面子では上の中と言ったレベルだ。

 

「初めまして、お嬢さん。ケイイチには良くしてもらっているぞ。今後とも仲良くしたいので、電話などしていても浮気を疑ったりしないでやって欲しい」

 

「えっと、あはは、分かりました。こちらこそ、うちの圭一がお世話になってます……?」

 

 朗らかな笑みを浮かべて雪村さんと握手したあと、ホウジョウがこちらに手を向けて来たので握り返す。

 

「っ……!」

 

「初めまして、ホウジョウさん。僕は七志乃。一応、私塾みたいなのを持ってて、圭一と雪村さんは僕の教え子ってことになる。弟子が海外の友達と会うって言うから少し心配になって着いて来てしまった。無粋なことをして悪かったね」

 

「……いいや。なるほど。日本、どうやら想像以上に愉快な国らしい。ケイイチやキミのような猛者がいるとは」

 

 握手して分かった。この男は僕よりも強い。

 なんでもアリの殺し合いなら僕が勝つ。でも、よーいドンの正面戦闘では絶対に勝てない。間違いなく僕の2〜3倍は強い。

 

 さて、穏便に終わればいいのだけど。

 

「へぇ、うちのボスが興味を持った奴がこんな中学生とはねぇ。坊主、お前、銃の使い方知ってんのか?」

 

「まぁ、ボチボチかな。どっちかって言うと近接戦闘の方が自信あるよ。んでも、下手くそって程でもないと思う」

 

「言うじゃん。なら、こっちの的を撃ってみろよ」

 

 早速、圭一が群狼の隊員たちに絡まれていた。

 まぁ、揶揄われてるというか、物珍しさで可愛がられてると言うべきか。ちょっと口調と態度が高圧的に見えるけど。

 

「えと、そっちのスキンヘッドの人が掌に乗せてる空き缶を撃てば良いんです?」

 

「おうよ、当てられるもんならな」

 

「当てられたら今日のサバゲー、お前の指示に従ってやってもいいぜ?良いっすよね、リーダー?」

 

「……あぁ、構わないとも」

 

 へらへらと笑いながら挑発する群狼の隊員たち。

 しかし、圭一は上手く擬態しているね。正体と元々の実力を知らなきゃ、確かに圭一はその辺を歩いていてもおかしくないただの中学生に見える。彼らの揶揄い方も無理ないだろう。

 

「んじゃ、お言葉に甘えて」

 

 弟子はそう言う流れるように準備してとスッと銃を構えた。

 今日は2丁のエアガンを持って来てるらしい。右手に持ってるのはファイブセブンか。もう片方はガバメント。二丁拳銃スタイルねぇ……。多分、本人の趣味なんだろうなぁ。

 

 ゲーム好きな圭一のことだ。威力の高い45口径で装甲を凹ませた所に貫通力の高いファイブセブンを撃って粉砕する〜みたいなロマン構成なんだろう。もっとも、エアガンだからロマンを意識した設定ってのが正解かな。

 

 そんなことを思ってる間に圭一は引き鉄を引いた。

 

 発射されたBB弾は全部で6発。1発は隊員の掌にあった空き缶を弾き飛ばし、残る5発は金属を叩く音を5回だけ残して姿を消し、僕とホウジョウ以外が呆気に取られる中で空き缶が芝生の上にポトっと落ちた。

 

「ドラえもんの映画だったっけか。6回の射撃で命中1発に思われたが、実は空き缶に穴が6つ空いてて、その中に潰れた弾丸が6つ入ってたって話し。流石にエアガンが弾は全部、この中です〜とはいかないな。1発目は弾かれてしまう」

 

 ぼやきながら銃をしまうとたった今落ちたばかりの空き缶をひょいと持ち上げて逆さにする。そのままゆっくり左右に振ると、飲み口からBB弾がしっかり5発、転がり落ちて来た。

 

 ホウジョウはその様子を顎に手を当てながらニヤリと眺めていた。これはまずいな。圭一の奴、間違いなく目を付けられた。

 

 僕が戦々恐々としていると、そんなことなど考えもしない群狼の隊員たちが圭一を取り囲み、わしゃわしゃと揉みくちゃにする。さっきまでの興味本位からの可愛がり方よりも、ニヒルな笑みを浮かべて揶揄うように。

 

「やるじゃねぇか、K-one!」

 

「あぁ、二丁拳銃とかやり出した時は『ダメだこりゃ』とか思ったけどよ。そのまま5発連続ワンホール決めやがるとはな!」

 

「しかも風の影響を滅茶苦茶受けるBB弾でな。滅茶苦茶良い腕してんじゃんか!すげぇな、最近のガキはよぉ!?」

 

 実際、大したものだ。プロの目からしてもそうだろう。

 BB弾なんてちょっと強い風が吹いただけで180度真逆の方、つまりは正面に撃ったはずなのに自分の方に飛んでくる事だってある。それくらい簡単に軌道が変わる。それを10mは離れた場所から落下中の空き缶の飲み口に5発連続でワンホール。それも二丁拳銃でだ。普通じゃない。どんな早業だ……!?

 

「ふっ……。アルファチーム、K-oneの指揮下に入れ。雪村と七志乃は好きな方に入ると良い。ブラボーは私とだ。異論は?」

 

「ちぇっ、おもしれぇ中学生とご一緒すんのも悪かねぇと思ったんだがなぁ。仕方ねぇ。プロの意地を見せてやろうぜ」

 

「?プロ?もしかして皆さん、海外のプロサバゲーマーみたいなもんすか?そう言えば装備もなんかガチっぽいし……」

 

 きょとーんと首を傾げる圭一の前でスキンヘッドの男がホウジョウにしばかれる。グーで、上から脳天に。

 

「そんなところだ。私は何でも屋というか、便利屋のような仕事をしていてね。彼らは部下なんだ。みんな強面だろう?顔に見合った趣味を探し始めた結果、見事にミリタリー好きになってしまった。趣味が講じてね、いつの間にか負けなしのチームだ」

 

「まじか、すげぇ!!」

 

 圭一、純粋に信じちゃダメだよ!?

 なんでそんなキラキラした目ぇしてるの!?

 

「うははは、すげぇ。やっぱりガチもんの群狼だぁ。ってことは、やっぱり神兵ってのは"あの"神兵だなぁ?やべぇ。こりゃ楽しいことになってきた……くけけ」

 

 え、あれ、圭一くーん?何言ってんの?

 なにさりげなく群狼のこと特定してんの?確かに以前、ちょっと話を出したことはあったけど、おかしいよ。笑い方とか妙なことになってない?やっぱり戦闘狂になってるよね?

 

「んー、私は圭一と同じチームかなぁ。先生は?」

 

「それじゃあ、ホウジョウさんの方につこうかな。圭一の実力を正面から見極める滅多にない機会だ」

 

「良いだろう。それでは早速始めよう。どうせ我々しかいないんだ。好きなだけ準備をするといい」

 

 こうして我々は二手に別れることになった。

 ホウジョウたちは興味深そうにこちらを眺めているが、十数分後には僕や雪村さんにはカケラの興味も向けられない状況に発展することになる。他でもない我が一番弟子とクレイグ・ホウジョウの人並外れた戦闘によって。

 

 サバゲー自体はとても楽しめた。中盤までは。

 

 中盤以降は圭一とホウジョウが2人だけでドンパチやるようになったのだけど、これが尋常ではなかった。

 ホウジョウは素の戦闘能力で同じ部隊のメンバーであろうと容赦なくアルファチームを殲滅。

 圭一は壁やら遮蔽物やらを足場に3次元的な高機動で意表を突きながら殲滅。ちなみに僕はどさくさに紛れてフェードアウトすることで観客席に回った。

 

 回ったのだが………。

 僕の教え子は一体、何処に向かっているのだろうか。

 

 ホウジョウとタイマンになっても動じないどころか、むしろ自分からすっっっっごいいい笑顔で向かっていた。

 

 技術と力で捩じ伏せるホウジョウ。技と速さで躱わす圭一。一進一退の攻防を繰り広げ、両者ともにもはや自分がただの一般人であることを隠す素振りすら止め、各国の軍式格闘術を使うホウジョウ。僕や学校で烏間に習ったであろう技術を使う圭一。

 

「なんだ……あいつ、リーダーと互角だぞ……」

 

「おいアンちゃん、あいつ、どんな鍛え方を……」

 

「け、圭一って本当に何処であんな技術を……?僕が教えた以上の技術、明らかに烏間から教わった以上の戦闘技能……。え、まさか、ホウジョウと戦いながら技を盗んでる?今の動き、完全にカパプだったような……。僕も教えたことはないし、さっきホウジョウが使ってた……。えぇ………?こわぁ………」

 

「お前もドン引きしてんのかよ!!?」

 

「私の彼氏こわぁ………。んでも好き」

 

「こっちは惚気てやがるし……!?」

 

 その後、2人の戦闘は20分は続き、ホウジョウは遂に眼鏡を外した本気モードになって、圭一はというとそんなホウジョウに一歩も引くことなく食らいつき、最終的には圭一の負けという結果に終わった。

 

「……これは、将来が楽しみであり、恐ろしくもあるな」

 

「あぁ……。リーダーにここまで接戦。バケモンだ」

 

 圭一は群狼の隊員たちにしっかりとドン引きされていた。

 

「次にやったら……分からんな……」

 

 そんなことを呟くホウジョウの顔には楽しそうな笑みと共に誤魔化しきれない冷や汗を滲んでいた。

 

 うん、ほんと、どうなってるんだろうね。

 ちょっと前まで一般人だった癖に、色々と癖の強い人たちとの縁を結んで化け物並みの能力が身に付いてる。

 

 本当にどんな人脈を育ててるんだ、うちの弟子は。

 などと軽くドン引きしながら、それはそれとして人との縁が齎す成長を感じつつ、やっぱりドン引きする。

 

 それからしばらくした夏休み明けのこと。

 

 『ちょっと見ないうちに乃咲くんがとんでもないことになってるんですけどぉ!?何をしたんですかキミはぁぁぁぁ!!?』と"先生"が突撃してきたので、念の為に洗いざらい話した。

 ムンクの叫びのような顔で驚愕する彼を尻目に、もしかして圭一の戦闘能力はこれ以上、伸ばす必要はないのかもなぁ、なんて思いつつ、ますます癖が強くなって何を教えたら良いのか分からなくなったことに頭を抱えるのだった。

 

 




あとがき

はい、あとがきです。

圭ちゃん、とんでもないことになって来ましたね。
本編ルートと比べて順当な最強キャラしてますね、このIFルート……。なんでも出来るし人脈がエグいとんでもオリ主になってる気がしますが……。

まぁ、いっか!このルートの主人公は圭一じゃないし!

がんばれ2代目!圭一を真人間に出来るのはお前だけなんや!!

ご愛読ありがとうございます!

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