加えて誤字修正やたくさんの感想ありがとうございます!
今回も投下しますのでお付き合いください。
「なんだよ圭一。結局来たじゃん。珍しい」
「て言うか、なんで制服なんだよ、お前」
着いて早々に磯貝と前原に絡まれる。殺せんせーは断れまくったと言っていたが、案外、クラスの過半数は集まっている。
なんだかんだで付き合いが良いよな、コイツら。俺の暗殺に参加したり、前原のやり返しに乗ってきたり。
「ちょっと野暮用。理事長に呼び出されたんだ」
「マジ?なんかあった?」
「明日になれば分かるよ」
適当にはぐらかすが、特に追及されることはなかった。口々に『またロクでもないことされそう』とか呟く程度。
我ながら役者だな。みんなを裏切っておきながら堂々と輪の中にいる。俺ってば意外と男優なれるかもな。
我ながら考えてることが最低過ぎて笑えない。
「あ、圭ちゃーん!」
自分にげんなりしていると聞きなれた声が俺を呼ぶ。元気よく弾むような声。いつもは鈴の音のように心地よく聞こえる筈の彼女の声が今はなんだか耳に痛かった。
声とカツカツと聞こえて来る足音を追うと、いつものように天真爛漫な満面の笑みで元気よく手を振る倉橋さんがいた。
「乃咲、来たんだ?」
「やることなかったしな」
浴衣を着込んで洒落っ気を出す女子たち。
女子ってこういう時に浴衣を着たがるよな。不思議だ。靴も普通のやつじゃないし、歩き辛かったりしないんだろうか。
「ねぇねぇ、圭ちゃん!この浴衣どうかな?」
目の前まで来てクルリとその場で一回転。薄い黄色の布地は嫋やかで袖口などに控えめにあしらわれたピンクの花が映える。
着物とかに詳しい訳じゃないし、ファッションセンスに自信があるわけでもないが、派手過ぎず、地味過ぎず、見ればそこにいると静かに主張するような良い浴衣だと思う。
「良いんじゃないか。派手過ぎず、地味過ぎず、ちょうど良い塩梅の落ち着いた浴衣だと思う」
「えへへ、ありがと!」
「………………いや、その感想と反応はおかしいよ」
求められた感想を述べると頭痛でも抑えるみたいに頭を抱えた茅野がそんなことを言い出す。
その反応に対し、何かおかしなことをしたかと考えるが、俺の言動におかしな部分はない筈だ。
「……だめだこりゃ。前原、アンタは乃咲をどうにかして。陽菜乃はこっちでどうにかしておくから」
「りょーかい。ほら、乃咲。ちょっと来い」
首を傾げる俺と倉橋さんをそれぞれ前原と岡野が首根っこを引っ張って少し離れた場所に連れ出す。その際、男子連中は俺たちに、女子連中は倉橋さんの方について来る。
「あのなぁ、乃咲。褒めるところが違ぇよ」
「どうして?」
「どうしてって……本気で言ってる?」
「……?浴衣どうかなって聞かれたら浴衣に対する感想言うだろ。茅野もお前も何言ってるんだ?」
【圭一弱点メモ②:超弩級の恋愛下級者】
「薄々思ってたけど乃咲ってズレてるよね」
「だね……。渚くんに同意だわ。乃咲クンって頭がキレる癖に変なところで妙な方向にズレてんだよねぇ」
何故だか渚とカルマにまでディスられ始めた。
千葉や杉野、竹林まで頷いてやがる。
「んまぁ、圭一の個性だとは思うけどな。でも普段の洞察力とか考察力をもうちょい人間関係に回した方が良いと思う」
こういう時、割とフォローに回ってくれることが多い磯貝にまで小言を言われてしまった。一体どうしてだ?
「あの師匠にしてこの弟子ありだな。烏間先生もお前も肝心なところで鈍ちんすぎんぜ。あのなぁ、あぁ言う風に感想を求められたらしっかり褒めるんだよ」
「……褒めただろ?」
「浴衣をなっ!?女子の言う『これどうかな?』は女子語で『とりあえず身に着けてみたけど似合うかな?』って意味なの!服の感想求められて布地やら柄を褒める奴があるかぁっ!」
「いや、だってそれだったらシンプルに『似合うかな?』って聞くんじゃないのか?倉橋さんの性格的に考えて」
「そ、それは……ないとは言えないけど……!でも、普通はそうなんだよ!じゃあ聞くけどお前は倉橋が身体のラインが出るようなぴっちりデニム穿いてたら『良いデニムですな、淡い色が落ち着いた印象を与える』とか言うのか!?」
「………おかしいのか?」
「おかしいよっ!?来てる本人を含めたコーデを褒めろ!服を褒めたいだけならユニクロ行け!いいか!?女子語は複雑なの!意味深な感じの『放っておいて』は『構ってよ』、『大丈夫』は『大丈夫じゃない』なの!言葉の裏を読め!」
「おぉう、なんかタラシの前原が言うと説得力が違うな」
「言ってやるな。コイツなりに圭一たちを応援してるってことなんだ。それに案外間違ったこと言ってないと思うし」
前原さんが発狂してらっしゃる。
俺、そんなに変なことを言ってたんだろうか。
「良いか?この後に倉橋と向き合ったら普段と違うところを見つけて、気付いたことを教えてやれ。それがモテ男への第一歩だ」
「別にモテたい訳じゃ………」
「良いからやれ!」
バシン!と背中を叩かれ、磯貝とカルマに両手を掴まれて捕まった宇宙人の如く倉橋さんの前に連れ出される。
倉橋さんも倉橋さんで矢田さんと片岡に俺と同じ形で引き摺られており、俺の前まで来ると解放され、背中を押されていた。
「えっと……圭ちゃん。どう……かな?」
チラチラと俺たちを逃さないと言わんばかりに包囲する他のメンツに目をやりながらおずおずと聞いて来る。
どう言ったものかと素で悩むと倉橋さんの後ろにいる岡野、片岡、矢田さんが恐ろしい形相でこちらを睨み、後ろの男子たちからは短い嘆息が聞こえて来た。
ほんと、どうしてこんなことになったのかを考えながらゾーンに入り、倉橋さんを観察する。
普段と違うところを見つけて、気付いたことを伝える。そんなことを言うからには前原は倉橋さんの変化に気付いているのだろう。注意深く彼女の容姿を観察してみる。
普段と違うところを真っ先に挙げるなら浴衣を着ているところなんだろうが……流石にそんな単純なことではないだろう。そんな至極単純明快なことで前原や女子連中があんな怖いオーラを出すとは思えないし、服装程度でギャーギャー言うなら私服や制服を見るたびに一言言わなきゃいけなくなる。
なんだ?どこが違う?
これまで接してきた中で出来上がっていた倉橋陽菜乃という女子の人物像を脳内でトレースする。
常人の何十倍にも引き延ばされた3秒間をたっぷり使って脳内イメージと現物を比較してようやく普段との違いに気付く。
「……前髪の毛先、整える程度に切った?具体的に2〜3mmくらい。あとは唇?リップクリーム変えたかな……?」
「っ!分かるの?!」
倉橋さんが驚いたように顔を上げる。その反応から察するに外れてはいないようだった。とりあえず安心。これで他の連中にグチグチ言われずに済むだろう。
俺は後ろに陣取る前原さんに振り返り「やってやったぜ!」と言わんばかりにグッと親指を立てて見せる。
「ちげぇよ!!?」
「えぇっ!?」
「確かに洞察力と考察力を回せって磯貝は言ったぞ?でもそう言う意味じゃねぇの!いや、着眼点は良いんだけども!求められてるのはそんなハイレベルなことじゃねぇんだってば!」
「………乃咲。ここまで鈍いのね」
何故だが前原からは微妙に肯定されながら大部分を否定され、速水さんまで頭を抑えて呆れるように俺を見た。
「うーん……。もう正解でいいんじゃない?」
「だね……。ほら陽菜ちゃん嬉しそうだし」
「……そっか、気付いてくれたんだ……。えへへ……」
「まあ、確かに普段からしっかり見てないと分からない……って言うか、見てても気付かないよ普通。少女漫画にありがちな展開だけど現実でやれちゃう人初めて見たよ」
賞賛半分、呆れ半分。いろんな視線を受けながら別に変なことはしてないよな?と自分の言動を再確認。
うん。別におかしいことはしてないだろう。……あ、でも確かにビッチ先生の女子の変化は褒めろって教えは守れてなかったな。そこは反省するべき部分なのかもしれない。
「ま、一旦これでヨシとしよう。ほら、祭り回ろーぜ!」
「だね、たこ焼き食べたいなぁ〜」
みんなはきりかえたのか、すっかり祭り気分で歩き出してしまう。そんな中で腑に落ちず、1人残る。
「乃咲、乃咲」
「ん?どーした、茅野」
1人で首を傾げていると茅野に肩を突かれ、少しだけ屈むと耳に手を当ててボソボソと耳打ちして来る。
「こう言う時はまず、浴衣が似合ってるって褒めてあげるんだよ」
「——まじで……?」
「マジ」
指摘に思わず思考停止。え、じゃあ何?俺ってば深読みし過ぎた?シンプルに浴衣似合ってるよで良かったのか。
「難しいな……。人間付き合いってのは」
「うーん、乃咲が難しく考えすぎなだけかなぁ」
苦笑する茅野。……そう言えば、俺、茅野が満面の笑みで笑ってるの見たことないな。いつも苦笑というか愛想笑いというか。本心から楽しくて笑ってるってところを見たことない気がする。
いや、別に満面の笑みがないのがおかしい訳じゃない。神崎さんとかいつもクールに微笑んでいるけど、割と苦笑と愛想笑い気味な部分が多くて、その上で満面の笑みは見たことがない。
でも、そこは大和撫子というかザ・清楚な日本人ってイメージのある神埼さんならはしたなく声をあげて笑わないってのは別に不自然ではないように思う。
しかし、茅野の場合はなんとなく不自然さを感じる。人懐っこくて、いつも渚とか誰かと一緒にいる元気っ子ってイメージだからか、茅野の笑い方に不自然さを抱いてしまっている。
「……?乃咲?どうしたの?」
「いや……。あー…。うん」
見ていることに気付かれて、茅野が視線を向けてくる。キョトンと不思議そうに小首を傾げて。
なんか、一度気付くと気になるもんだな。思えば茅野の真顔を見たことがない気がする。常に誰かと一緒にいて、常に微笑を浮かべてて、その癖に感情出して笑うのは苦笑と愛想笑いだけ、と言うのはなんと言うか、アンバランスというか、違和感がある。
「ちょっと乃咲?そんな風に見られたら流石に恥ずかしいよ?」
ちょっと朱色の差した顔で言う茅野。だが、言葉と裏腹に意識の波長には一切のブレはなく、心音に変化はない。
つーことは……これ、演技か?マジかよ、女子って怖いな。てか、これ演技なんだったら相当な役者だぞ、茅野。
「じぃぃ〜……」
「の、乃咲……?」
茅野を観察する。顔やら胸やら身長やら。そしてふと思った。誰かに似ている。顔のパーツとかなんか知ってる人に似てる。
誰だろう?人の顔なんてそんなにまじまじ見たことないからパッと出てこない。そんな俺が既視感を覚える顔ってことはテレビとかでよく見る芸能人とかだろうか?記憶の中を検索する。
「……ぁ」
思い出した。そう言えば最近は見ないけど天才子役って言われていろんなドラマとか映画に引っ張りだこだった役者がいた。
名前は……そうだ。確か————。
「茅野ってさ、磨瀬榛名に似てるよな」
「えっ……!?」
茅野の心臓が跳ねた。芸能人に似ていると言われて驚いたんだろう。珍しく顔に動揺が出ていた。
「そ、そうかな?」
「うん。似てる……と思う。俺自身テレビとか詳しいタイプじゃないし、磨瀬榛名自体を最近見てないからぼんやりとそんな感じするな〜ってくらいだけどさ」
「へ〜。芸能人に似てるって言われるの初めてだよ。なんか嬉しいな〜」
心音が落ち着く。動揺は一瞬だったようだ。だが、見れば見るほど似ていると思う。というか、本人じゃないかってくらいだろ。今まで誰にも似てるって言われたことないってのはマジか?
女子とか、たまたま見た雑誌とかに載ってる役者とか芸能人が〇〇くんに似てる〜、〇〇ちゃんにそっくり〜みたいな会話してるイメージあるけどそう言うの一度もなかったのか?
……でも、まだ違和感。なんとなく、まだ頭の中に誰かの面影がチラつく。喉まで出かけているのに、口まで上がってこない歯痒さみたいなものを感じてしまう。一体なんでだろう?
「……乃咲ってさ、人を良く見てるよね」
「そんなことない。俺が本当の意味で人を見れていたのなら……俺はここにいない。もっと色々と上手くやってたさ」
「そうかな?私は見てると思うよ?乃咲がみんなに飛ばす指示とか周りのことを見てないと出来ないと思う」
「………どうなんだろうな」
茅野から振られた話をつい考え込んでしまいそうになるが、その直前に前原や倉橋さんが手を振りながらこっちを見る。
「おーい!早く来ないと置いてくぜ〜?」
「圭ちゃーん!カエデちゃーん!金魚掬いやろうよ、金魚掬い!あと綿飴とかも食べたいよね〜!」
2人と同じようにみんなに呼ばれて、会話を打ち切り、合流する。考えてみれば、茅野が誰に似てるとか、もう俺には関係ない話だ。考えるだけ無駄。時間の無駄。E組への未練を断て。
何度目かになる意識の切り替えを行う。そうだ。明日からは竹林以外は全員他クラスの生徒になり、俺は暗殺教室の部外者になるんだ。俺が考えなきゃいけないのは父とどう向き合うかだ。周りに気を取られるな。
「悪い悪い、茅野からレディーに対する接し方を教わってたんだ。めちゃくちゃ勉強になったよ」
「え、そうなの?」
「うん、乃咲ってば難しく考えすぎなんだよね」
「へ〜。乃咲クンはどんなことを教わったのかなぁ〜?」
「女の価値は乳じゃねぇ。誰の胸なのかだって」
「ちょっ!?そんなこと言ってないし!」
「………いや、茅野っちなら言いそう」
「うん、言いそう」
「言うだろうな」
「だね」
「みんなして私に対してどう言う印象持ってるのかな!?うぇ〜ん、矢田えもーん!みんなが微乳をバカにするー!」
「ひっ……!もぎ取られる……!?」
「そんなことはないけど!?」
祭りの雰囲気に当てられてか、普段よりもテンション高め。俺と竹林以外の面子は楽しそうに戯れあっていた。
そう言えば殺せんせーはどこに行ったのかと思って周囲を見渡すと、屋台の数軒に見覚えのある到底人間とは思えない巨漢が汗を垂らしながら焼きそばやらたこ焼きをこしらえていた。
必死だなぁ、あの人も。来年には地球を爆破するかもしれない超生物が学校からの給料で暮らして、お小遣い確保のために祭りで屋台してるとか字面だけ見ると何言ってるかわからんな。
「————おや、圭一じゃないか」
殺せんせーを見つけてこの状況のカオスさに呆れていると、これまた聞き慣れた声が鼓膜を叩く。
そして、聞こえて来た声に対してみんなは凍り付いたように戯れ合いを止めて、俺の方。より詳しく言えば俺の後ろに立つパーリーピーポーに視線を向けてフリーズしていた。
聞こえて来る声と特徴的な"圭一"呼び。この学校で俺を下で呼ぶのは磯貝以外だと奴しかいない。
やばい、捕まった。嫌だ、振り向きたくない。すっげぇ面倒臭い。つか、明日からコイツともクラスメイトになるのか。
げんなりするが、みんなの視線が俺を向く。うん、そりゃそうだよね、呼ばれたの俺だしね。俺が振り向かないと会話とか色々と進まないもんね。……うん、そうだよねぇ……。
嫌だ。心底嫌だが、振り返る。
するとそこには予想通りに奴がいた。
見慣れた赤茶けた短髪に白いねじり鉢巻と仮面ライダークウガのお面を装備し、口には吹き戻し……ピロピロとかピーヒョロ笛と呼ばれる玩具を満足気に咥え。
水色の布地に星をあしらった浴衣を着こなした胴体もまた悲惨。右には水ヨーヨーと掬った金魚の入った小袋。肘にはたこ焼きと焼きそばの匂いがする袋をぶら下げ、左手は綿飴を握り締め、手首には巾着袋。背中に赤字で「祭り」と書かれていそうなハッピに袖を通した男がそこにいた。
「家まで呼びに行ったのにいないと思ったらこんなところに居たのか。電話にも出ないし、避けられてるのかと思ったぞ」
「………避けてたんだよ」
思わず頭を抱える。そうなのだ。コイツ、なぜだか毎年毎年、夏祭りになると俺を誘いに来るのだ。わざわざ家まで。
俺が1人なら居留守を使うのだが、そこは祖父母の家。俺だけではないのは必定であり、わざわざ俺を訪ねてやって来た友人を名乗る人物を無碍に返すなんてしない祖母の所為で俺は毎年このパリピに付き合わされていた。
「え〜っと……浅野?」
「おや、誰かと思えばE組メンバーが揃っているようだ。珍しいな圭一、僕以外に一緒に過ごす相手がいたとは」
「キモい言い回ししてんなよ、パリピめが」
「酷い言い種だ。僕だってハメくらい外すさ」
「外し方を考えろや!普段めちゃくちゃ澄ました顔してる奴がお茶目に祭り特有のアイテムをフル装備で現れると怖いんだよ!つーか他の5英傑はどうしたよ!?絡むんならそっち行けよ!?」
「『夏祭りの浅野くんのテンションには付いていけない。乃咲に任せる』だそうだ。良かったな、人望があって」
「逆に5英傑からの人望どうなってんの、お前。そもそも丸投げされるほどアイツらと関わりないし。と言うか、付いていけないんじゃなくて付いて行きたくないんじゃあねーのか!?」
「どーどー、そんなにかっかするな。ほら、流石に祭りだからと言ってハメを外し過ぎて周りの迷惑になるのはいけない」
「お前のせいでこうなってんだけどな!?」
「そんなに怒りっぽかったか?お前、カルシウム不足かもしれないな。ほら、フランクフルトでも食べるといい」
「カルシウム要素はどこ————もがっ!?」
「ちなみにカルシウム要素はフランクフルトに付けられているマスタードだ。このタイプのマスタードは100gあたり71mg程度のカルシウムが含まれているらしいぞ」
「んぐっ、もぐもぐ……!どっから仕入れて来やがんだ!?その無駄知識はよぉ!?」
「……すっげぇ。乃咲が完全にペース乱されてる」
「あぁ、あの乃咲がツッコミまくってるぞ」
コイツ面倒臭せぇっ!!?
5英傑の連中、こんな爆弾を押し付けやがって……!『僕らは選ばれし者!』とか偉ぶってるならこの選ばれし阿呆をどうにかして見せろや!本当に口先だけだなアイツら……!
「け、圭ちゃんがあーんされてる……。私もまだやったことないのにぃ!ぐぬぬぬぬぅ………!」
「え、陽菜ちゃん、今のそう捉えちゃう?」
「へぇ〜、ふぅ〜ん。乃咲クンは女子よりも先に男子にあーんされちゃうんだ?渚くん、ちょっと女装して乃咲クンにあーんしてみてよ。案外、変な扉開くかもしれないよ?」
「しないよ!?なんでカルマくんはちょくちょく僕をからかったり女装させようとするの!?」
口々に言いたい放題な連中に本日何度目になるかわからないゲンナリ。どいつもコイツも好き放題言いやがる。
なんか、色々と面倒臭く思ってしまう。主に浅野の所為で。ほんと何なのコイツ。実は友達いないんじゃねぇのか!?
とか思ったが、A組の連中とコイツの関係性を考えてみると何となくだが友人と呼べる間柄の奴はいなさそう。
A組の奴らがこいつに向けるのは尊敬と羨望と支配者に対する信仰心みたいなもの。考えてみれば友達にはならないか。
「わかった、今日くらいは付き合ってやるよ」
「ん?おぉう、どした圭一からそんな言葉が出るとは珍しいこともあるもんだな」
「そうだよな、友達と遊びたくなるよな、祭りの日くらい。邪険にして悪かったな、これからは出来るだけ優しく接してやるからな。頑張って友達作ろうな、浅野」
「ちょっと待て、なんで僕がボッチみたいな扱いを受けている!?僕にだって
「駒と書いて友達と読むのを素でやってる時点で健全な友人関係とは言えないんだぞ、お坊ちゃん」
「止めろ、その哀れみの目を今すぐ止めろぉ!友達くらいいるわバーカ!見てろ、今すぐに5英傑を集結させてやるからな!?」
意外、ボッチ属性が浅野の弱点だったらしい。知らず知らずのうちに弱点を攻撃しまくって浅野の撃退に成功した。
憐れ浅野。実はボッチ系なのを気にしていたのか。まあ、アイツの場合は孤独というより孤高なんだろうけど。
「浅野と乃咲って実は仲良い?」
「一年の頃は基本一緒に居たもんな」
「つか、浅野ってあんなキャラしてたっけ?」
「圭一の前だとなんかガキっぽくなるんだよ、浅野。圭一が絡むと途端にコミカルになるというか」
「圭ちゃーん、綿飴買って来たよ!はい、あーん」
「もごぉっ!?」
こんな具合で色々あったが、どうにか気を取り直し、みんなの輪に入ったり、意図的に出たりして時間を潰した。
祭りも終盤。大体の屋台が店じまいに入った頃、大空に花火が打ち上がる。もしかしたら人生最後、見納めになるかもしれない花火を一瞥した俺は竹林と共にみんなの輪から抜ける。
「あれ?圭ちゃんと竹ちゃんは?」
「え?あ、ほんとだ居ない。トイレじゃね?」
後ろから聞こえてくるそんな言葉に何処か後ろ髪を引かれながら店じまいを完全に終わらせ、今日の稼ぎをニヤニヤしながら数えている殺せんせーの元に向かう。
殺せんせーは案の定、E組のみんなが荒稼ぎして店じまいまで追い込んだ屋台を取り込んで店舗拡大を図り、分身を駆使して複数の店をやっていた。
ほんと、何でもありな超生物だな。
「ヌルフフフ、いやぁ、稼ぎました。材料費を差し引いても9月分のおやつには困りませんねぇ」
「いや、おやつ代どんだけかかる計算なんだよ?殺せんせー」
「おや、乃咲くんに竹林くん。どうでしたか?君たちも楽しめましたか?この夏祭りは」
「えぇ。暗殺で培った技術で祭り荒らしをしてる様子は側から見ていて面白かったですよ」
「そうですか!楽しめたのであれば何より!明日からまた勉強と暗殺です。今日ぐらいは2人も羽を伸ばして……」
「————殺せんせー」
満足そうに頷く殺せんせー。彼の言葉を遮るように竹林は彼の名を呼び、意識を自分に向けさせた。
満足そうに、楽しそうに、明日を語る殺せんせーには申し訳ないが、それでも俺たちは言わなきゃいけない。
「僕らは明日からE組にいません」
「——————ぇ……?」
「その事でお話しに来たんです。俺と竹林は夏休みの初めに理事長に呼び出され、選択肢を与えられました。このままE組に残るか、A組に戻るか。そんな選択肢です」
「そして決めました。僕らはA組に行きます。要領の悪い僕の為に手を尽くしてくださり、ありがとうございました」
「右に同じです。殺せんせー、今日までありがとうございました。先生のお陰で俺は今回のチャンスを掴めた。裏切るような形になってしまい、申し訳ありません。今まで殺そうとしていた相手に、そして来年地球を破壊するかも知れない相手に対して正しい言葉ではないかも知れませんが……お元気で」
「E組を……抜ける……?」
殺せんせーの消えそうな呟きは打ち上がる花火の音で掻き消され、その複雑な感情の声音は俺たちに届くことはなかった。
後書き
はい、あとがきです。
うちの生徒会長はパリピです。もしかしてキャラ崩壊タグを付けた方がよろしい……?まあ、いいか。
次回以降、圭一はA組として活動します。
暴走&迷走真っ只中の圭ちゃんは果たしていつ止まるのか!
しばらくは何を考えてるか分からない圭一をお楽しみ下さい。
ご愛読ありがとうございます!