加えてたくさんの高評価と感想ありがとうございます!
あと誤字修正も………ッ!
クソッタレ……ッェ!読み返しては修正してもそれでも出てくる……!どんだけガバガバなんや、うちの作品……!誤字撲滅を進めます………!
気怠い。身体が思う様に動かない寝苦しさで目を覚ます。
好きな時に好きな様に寝返りを打てないのはこんなに違和感があって寝苦しいのかと思いながら目を開けると、清潔感たっぷりの真っ白い知らない天井があった。
何があったのかは覚えてる。通学中に倒れ、殺せんせーにE組校舎に運ばれ、磯貝と怒鳴り合い、そしてまた倒れた。
おそらく、ここは病院だろう。
どうする?ナースコールでもしてみるか?そんな思考を巡らすが、しかし、身体は思う様に動かない。
大人しく、寝てるとしよう。
今年に入ってから気を失ったのは何回目だろうか?
鷹岡に殴られた時、普久間島で潜入が終わった後、倉橋さんとの通学中、そして怒鳴り合った後。
凄い、4回も気絶してる。ここまで短期間で気絶してる中学生は中々いないだろう。一年の頃のを含めたら5回だ。しかも話によるとその原因のほぼ全てが過労なのだから凄まじい。
このまま、もっとも多く倒れたで賞の中学生部門で優勝を狙うのも悪くないかもしれない。
「……………馬鹿か」
いや、ほんと。何やってるんだろうな、俺は。
心配してくれてる倉橋さんを適当に言いくるめようとして、俺の為に怒ってくれてる磯貝に怒鳴り散らして、E組のみんなを心配させて、怖がらせて。その結果がコレだ。
みんなには謝らないと。特に磯貝と倉橋さんには。
みんなには心配だけじゃなく迷惑まで掛けてしまった。
磯貝にはキツい言葉で感情的に八つ当たりしてしまった。
倉橋さんを泣かせてしまった。思えば、普久間島の時を含めて、彼女の前で2回も倒れてしまっている。そりゃあ怖いだろう。心配もするだろう。なのに、戯けて、冗談言って、言葉を無視した挙句に適当にあしらってしまった。
磯貝の言葉が脳裏を過る。
自分と周りを顧みることなく独りよがりに突っ走った結果がこの惨状だ。自嘲することすら烏滸がましい。
あんだけ酷かった頭痛も消えた。頭の中はクリアだ。果たしてそれは、磯貝に当たり散らしてスッキリしてしまった所為なのか、眠ったからなのかは定かではないけれど、夏休みの最後くらいから続けていた昔の自分の考え方の再現は止まってしまった。
これが最後だとか、元仲間だとか、誰に訊かせるわけでもないと言うのに、モノローグで付けてまで頑張ったんだけどなぁ。
まあ、でも、分かることはあった。
俺は、この4ヶ月で変われたと思ったけど、結局は何も変わってなかった。少しだけ現実を知って、気が大きくなって、自分ならできるんだと自惚れて、暴走して、倒れてしまった。
全校集会で身の丈にあった態度でいろよ、とか言ったけど、一番身の丈に合わない態度だったのは俺だったな。
ただただ反省するばかりである。みんなに謝ろうにも、どんな顔をすれば良いのか。これから俺はどうするべきなのか。考えなきゃいけないことは泣けるほどに盛りだくさんだ。
「…………………圭一」
「————えっ?」
天井を見上げてぼーっと考えていると、知っているけど聞き慣れない声が不意に鼓膜を叩いた。
あぁ、知っている声だとも。ずっと褒めて欲しかった、認めて欲しかった相手の声だ。なにより、血の繋がった父の声だ。忘れたりはしていないから当然だ。
でも、不思議だった。2ヶ月は出張だとか言ってた筈なのに、なんでこんなところにいるんだろう?
思わず凡ゆる不調を無視して体を起こして声のした方を見る。
そこには、科学者然とした白衣姿の父がいた。
「幻覚……じゃないよな」
「……あぁ。幻覚などではない。お前に……会いに来た」
思ってもなかった言葉に驚いた。
父が二言以上で話していることに慣れないのもそうだが、何より、俺に会いに来たと言う言葉に驚愕した。
「………仕事はいいのかよ」
「子供が倒れて、平然と仕事ができる程、私は落ち着いた性格はしていないさ。信じては……貰えないだろうけどね」
父の言葉に嘘はない。伝わってくる意識の波長には嘘の色はなく、態度からも後ろめたさを感じない。
それに、1年の頃。初めて成績を落としたあのテストの直前に倒れた時も、この人は一回、帰って来たらしい。それはトメさんから聞いていた。あまり無茶をしないようにと伝言も受けた。でも、それだけだった。この人はそれだけ言い残してあっさりと仕事に戻ったのもまた事実。
「………いや、嘘じゃないのは分かるよ」
それでも、やっぱり意外だった。死んでないのならどうとでもなると言わんばかりにまた、様子だけ見て帰ると思っていた。
例え、この前、漸く会話が成立したのだとしても、たったそれだけのことで出来てしまった溝を埋められるほど、俺はこの人のことを知らないし、この人も俺のことを知らないだろう。
だから、嘘じゃないと分かっていても、信じられないのは事実だ。分かっているのに信じられない。不思議な感覚だ。
でも、あえて口に出すことはないだろう。
そう思って口を閉じると、また、父が口を開いた。
「圭一。思っていることを、話してみてくれないか」
驚いた。俺の言いたいことを知っているような口振りだった。
それも意外だったが、やっぱり慣れない。俺の目の前で二言以上で話す父に慣れない。
自分の知っている父とは違う。ある種の現実離れした光景に思わず口が滑るように思ったことを吐いていた。
「嘘じゃないのは分かる。でも、やっぱり信じられない。父さんのことが信じられないと言うより………目の前の現実が信じられない。受け入れきれてないってのが正しいのかもしれない。俺は……アンタが二言以上で話す姿が現実のものとは思えない」
「………そうだろうな。無理もない」
自分から話せと言っておいて、いざ言葉を受けた父は自嘲するように薄く笑うと、どこか遠い目をしたように見えた。
そう、遠い目をした父の顔を見た。なんだか久しぶりに父の顔を見たような気がする。彼の顔は昔に比べるとまだ若いなりに老けたように見える。
いや、違うか。本当に老けたように見えるだけだ。毎日顔を見ていれば気付かない程度の変化。それをこの僅か数秒のやり取りで一度に気付いただけのことだろう。
何気なく、前に見た夢を思い出した。いつだったか、夢に父が出て来た。そして、その父の顔に俺は違和感を抱いた。今の父はどんな顔をしていたっけ?そんなことを考えたことがある。
そして、その答えは今、目の前にあった。あの時考えたことの全てが目の前にいた。俺は、こうして改めて父を見るまで、変化に気付かなかった。一応は毎週末会っていた筈なのに。
俺は、自分が思った通り、父を見ていなかった。
久しぶりに"見た"父はよく見ると白髪があったり、記憶の中の姿よりも小さくなったように思う。
……いや、分かってる。それだけの年月、俺は父を見ていなかった。父が小さくなったんじゃなく、俺の背が伸びたんだ。それにすら、今の今まで気付くことが出来なかった。
「………」
ベットの上で体を起こしたまま、脇に置かれた椅子に腰掛ける父を見た。頭のてっぺんからつま先まで。
そして気付いた。父の白衣とズボンの裾に小さなシミがあった。黒いような、茶色いような小さなシミが少しだけ。
なんのシミだろうかと考えてみると、ふと、病院特有の消毒液臭さの中に僅かなコーヒーの匂いがする。
鼻を使って匂いを辿ると、匂いの元は父だった。正確に言えば父の白衣からしているようだった。
確かに、誠に勝手な想像ではあるが、科学者と言えば研究室かなんかでコーヒー飲んでるイメージがある。普段飲んでいるコーヒーの匂いが染みついたいるのだろうか?
そう思いながら父の観察を続けると、首から札を下げていた。IDカードって奴だろうか?
そこまで考えてふと、観察を止める。
少し妙だった。俺がどれだけ寝ていたのかは分からないけど、見舞いに来るのにIDカードを下げたまま来るだろうか?
「…………」
いや、ないだろ。あの手のカードはそのままカードキーになってる場合が多い。紛失したら一大事だ。そんなもの、わざわざ持ってくることはない筈だ。せめて車の中に置いてくるとか、鞄の中に入れるとかするだろう。買い被りかもしれないが、あの父がそんな初歩的なミスをするとは思えない。
それに、よく見れば鞄の類も見当たらない。というか、そもそも、もっと違和感を持つべきところがあった。
なんで白衣姿なんだろう?どこから見舞いに来たのかは分からないけど、白衣くらい脱いでくるんじゃないか、普通。
そう考えた時、状況証拠から一つの可能性が思い浮かんだ。
「……俺が倒れてから何時間か知ってる?」
「4時間ほどになる」
4時間。この人がいつからここにいたのかは分からない。けど、移動にたかが1時間しか掛からない距離にいたのなら、祖父はきっと、2ヶ月会いに来ないみたいな話は許さないだろう。
そう思うと、この人はちょっとやそっとじゃ帰って来れないくらい遠くにいたのは分かる。
それが、どうしてこんなところにいる?
俺は、足元のシミに視線を向けた。
「そのズボンと白衣の裾のシミは?まさか泥道を走って来た訳じゃないだろ?」
「………シミになっていたか。気付かなかった。さっき、コーヒーを溢してしまった。その所為だろう」
嘘の気配はない。でも、コーヒーを溢したと言う割に、この部屋にコーヒー臭さはない。コーヒーの匂いは父から注意深く嗅いでみないと分からないほど微かに香る程度だ。
それに、コーヒーを溢してシミになったのに気付かないというのも、らしくない。コーヒーを溢したら普通は周りに飛び立ってないか、確認するし、白衣なんて汚れの目立つモノを着てれば更に注意深くみるだろう。
コーヒーが付いたままの服、首からぶら下げたままのIDカード、俺が倒れてから目覚めるまでの時間を正確に理解している理由を考えると、あり得るかもしれない可能性が脳裏を過る。
——父さんは、俺が倒れてからすっ飛んで来た?
いや、可能性ではなく、事実なんだろう。当人が言っていたではないか。子供が倒れて平然と仕事はできないと。そして、俺はそれを嘘ではないと感じとり、認めた筈だろう?
俺が、今、目の前に父がいる理由をあれこれこじつけるのは簡単だ。でも、それは、父を見ると言う行為にはならない。
本当の理由を察していながら別の理由を探すのは目を背けているのと一緒だ。それは俺の目指す姿とは対極だろう?
頭を振る。小難しく考えようとする思考を振り落とすようにそうした後、ゆっくりと息を吐いた。
気を失う前、怒鳴り合いながら俺は磯貝やみんなに言った。父を見ることを始めの一歩にするのだと。そして磯貝は言った。まずは目の前にいる奴らにやってみろよと。
今、ここで父から目を背けたら、そのどちらも嘘になる。色んな人たちに迷惑かけて、心配かけて、その果てにこんな結果になったのに、自分の言葉すら嘘になってしまう。
それだけは、俺自身が許せなかった。
「……………………」
正直、何から話せばいいのか分からなくて困ってる。でも、今度こそ一歩を踏み出す為に、もう一度、父を見た。
今度はさっきみたいに値踏みするように全体を観察するのではなく、真っ直ぐに父の顔を、目を見た。
なんだか久し振りに見た父の顔は困っていた。
なんでそう思ったのか。なんでこれまで見てこなかった相手にそんな印象を抱いたのか。答えは簡単だった。
父さんもまた、俺を見ていた。目を逸らすことなく、こっちに視線を向けていた父と視線が交差し、彼の瞳に映った何とも言えない困り顔の自分を見た。
その顔は知っていた。その表情は似ていた。目の前のこちらを見つめる人物によく似ていた。
だから気付いた。困っている自分と同じ表情をしている目の前の男もまた、困っているのだと気付いてしまった。
何を言えばいいのか分からず、困っている自分と同じ表情をしている父も、俺に何を言っていいのか分からないんだと、気付いた。気付いてしまった。察してしまった。これまで俺が目を合わせなかった時も、同じ顔をしていたのではないのかと。今の俺のように必死に何か言葉を選んでいたのではないかと。
「………圭一」
「………なんだよ」
「すまなかった」
長い沈黙の末に漸く開かれたのは父の口だった。
開かれた口から飛び出したのは、謝罪だった。
何に対する謝罪なのか、分からなかった。
でも、受け入れなければいけないと思った。
同時に、俺も謝らなきゃいけないと思った。
そもそも、前にあった時に答えは出ていたのだ。あの時、父さんが話してくれた筈だった。
日に日に母さんに似ていく俺に何を言えばいいのか分からなくなってしまったと。言ってくれたあの時に、踏み込んでおけば。その理由でも聞いていれば、もっと早く、解決出来たのかもしれない。こんなすれ違いをせずに済んだのかもしれない。
「私は、お前に甘えていた。何も言わずとも勤勉に励む姿に、楽しそうに結果を報告してくれる姿に安心して、その理由も考えずに、ただ頷くばかりで何もしなかった。何も言わなかった。お前のことを何も見ていなかった。親としての勤めを放棄していた。本当にすまなかった」
「…………」
「言葉を選んでばかりで何も言わなかった私の怠慢だ」
ゆっくりと頭を下げた父を見て思った。
俺は、父のこんな姿を見たかった訳ではなかった筈だと。報告する度にたった一言だけでも"よくやった"とか"頑張ったな"とか。そんな言葉が欲しかっただけだった。
「父さん……。頭を上げてくれ」
絞り出した声は震えていた。
父も、言葉に答えて顔をゆっくり上げていた。
「俺は……アンタが怖かった。何を言っても"あぁ"とか"そうか"しか言わないのを見て、俺に興味がないんだと思った。そのあと、決まって無言になるのも怖かった。あの次の言葉を待つ無言の時間が怖くて怖くて堪らなかった。何か言ってくれるんじゃないかって希望と、このまま虚無の時間が過ぎるんじゃないかって恐怖がずっと俺の中にあった」
震える声とは裏腹に、言葉はスムーズに出て来た。
次に父にあったら、こんなことを言う、あんなことを伝える。そんなことを考えなかった訳じゃないけど、そんなイメージとは全く違うことが次から次に出て来た。
イメージとは違ったのに、言葉は詰まることなく、溢れるように口から出ていた。
「認めて欲しかった。褒めて欲しかったんだ。父さんに。その口から、父さんの言葉で。俺に変なプレッシャーとかかけない様にしてたのかもしれないけど、それでも俺はアンタの言葉が欲しかった……。なのに、俺はずっと俯いてた。見てなかったのはアンタだけじゃない。俺もだ。一番認めて欲しかった相手を俺は見れていなかったんだ。相手にだけして欲しいことを求めてしまった怠慢は俺にこそあると思う」
頭を下げた。点滴のチューブが繋がった腕が見える。
この思うように動かない、点滴のチューブが繋がれた満身創痍の身体は自分の努力の結果ではなく、これまで周りを見てなかったことへの代償のように思えた。
「ごめんなさい。俺は見てなかった。いま、漸く分かった気がする。アンタは俺が俯いてる時もそんな表情で必死に言葉を探してただけなんじゃないのかって」
父は、本質的に俺と同じだったのかも知れない。相手が何を考えているのか分からない。だから、考えた。自分がどうするべきなのか。たったそれだけだったのかも知れない。
テストとかの報告をする時の彼と俺とで違っていた部分があるとするなら、きっと、言葉を選んでいるか、言葉を待っているか、それだけのことだったのかも知れない。
「考えたこともなかった。父さんが言葉を選んでるとか、何を言うべきか悩んでるとか。一度も。気付かなくてごめん。あの時、感情的になって一方的に怒鳴ってごめんなさい」
だからこそ、言わなきゃいけないと思った。
今まで感じて来たことに対する答えみたいなものを見つけて、一時的に興奮して、分かった気になっているだけかも知れない。
それでも、これでの14年間を忘れない為にも、自分の過ちに気付いたこの感覚を風化させない為にも、言うべきだと思った。
周りの言ってることは正しかった。
周りを見ないから、見られていることに気付かない。
まさにその通りだ。ただの一度でも俯かず、真正面から父の視線を受け止めることが出来ていれば、きっと気付けた。
俺は俺で、父さんは父さんで。だから、相手にしっかり伝えなきゃ分からないことだってある。
その通りだった。父の言葉を聞いて、初めて気付いた。父が何を思っていたのか。言葉を聞いて、父を見て、気付いた。俺と同じだったことを。逆に父もそうだったんだと。俺が何も言わないんだから知るはずがないんだと。
俺はこれを一生、忘れちゃいけない。
「…………」
頭だけは思考を続ける。頭を下げてからどれだけの時間が経っただろうか。数時間?数十分?あるいは数秒なのかも知れない。
父の言葉を待つ時間は相変わらず長く感じられた。それこそ、数秒が何時間にも感じられるほどに。
「顔を上げてくれ。頭を下げなければいけないのは私も同じなのだから」
父の言葉で顔を上げる。
もう2度と目を逸らさない為に父の目を正面から見つめた。
「我々は、やり直せるだろうか。これまで失った時間を取り戻せるだろうか。まだ、お前の父親でいていいのか?」
「やり直したいし、やり直さなきゃいけない。過ぎた時間は戻らないけど、でも、絶対に無駄だった訳じゃない。それに俺の母親は1人だけだし、父親もアンタだけだ」
事実、俺はこの人とすれ違っていなかったら、ここには居なかった。いや、今の俺は居なかったと言うべきか。
無言の父さんがとりあえず怖かった。期待に応えないとって椚ヶ丘を受験した。もしも、この人と円満な家庭で過ごせていたのなら、椚ヶ丘を受けずに地元に残っていただろう。
もし、そうなっていたのなら、俺は殺せんせーや烏間先生。磯貝を始めとしたE組のメンバーとは出会わなかった。
「だから、これからの時間で聞かせてほしい。俺のことも話すから。俺の知らない父さんのこと、俺を産んで死んでしまった母さんのことも。俺はこれから父さんを見る。だから、これからも俺のことを見ていて欲しい」
伝えた。これまで言いたかったことも、最近になって言いたいと思ったことも全て。
もちろん、思っていたことの全てを話せた訳じゃないけど、それでも一番伝えたかったことは全て伝えたつもりだ。
父の目を見る。彼の目は一度俺と交差した後、頭のてっぺんから、ベットの中で伸ばした足のつま先まで流れた。
「……………少しだけ立てるか?」
「…………」
口から出たのは予想してなかった言葉だった。
だが、その言葉に対して反射的に動いていた。自分の体の不調を忘れてベットから足を出し、床を踏み締めて腰を浮かせた。
「っ………!?」
そこで思い出した。ベットから出た瞬間に体勢を崩す。そう言えば、思うように体が動かないんだった。
また、倒れるのかな?なんて思ってたら、父が支えてくれた。父に支えられたまま、辛うじて真っ直ぐに立ち上がる。
ふらつきながらも立ち上がった身体。慣れた目線の高さに映る世界には一つだけ新しい気づきがあった。
「……背、縮んだ?」
「…………お前が大きくなったんだ」
さっき、自分で結論を出したはずの言葉を呟いていた。
向き合った父の肩は俺よりも少しだけ下にあった。目線は、俺の方が高くなっていた。だから、思わずそんな事を口走った。
そんな言葉を否定したのは父だった。
俺を支えているのとは逆の手が動いた。
躊躇いを感じさせる動きでそれはゆっくりと持ち上げられた。警戒とは違うけど、その動きから目が離せなかった。
持ち上げられた手は俺の頭の上の数センチ上まで来ると、そのままゆっくりと落ちて来た。俺の頭に着地する。
硬い手だった。同時に熱い手だった。殺せんせーの触手とは違う。普久間島の時の倉橋さんの手とも違う。
温かく、ゴツゴツとした男の手だった。
「大きくなったな、圭一」
すっとその言葉が胸に入って来た。
理由は直ぐに分かった。これまでの納得するばかりの『そうか』でも、間を繋ぐ為の『あぁ』でもなければ、気を使って言葉を選んでいる遠慮が感じ取れる言葉ではなく、ただ、思った事を口にしただけの父親の言葉だったからだ。
その瞬間、視界が滲んだ。
具合が悪くて世界が歪んで見える訳じゃない。ジワリジワリと視界が滲んでゆき、勝手に声が溢れた。
父の手は、俺が落ち着くまでずっとそこにあった。
あとがき
はい、あとがきです。
ようやく親子らしい事ができた乃咲親子。
しかし、そんな彼に滑り気を帯びた黄色い触手が迫る……!
もうやめて!親子で触手プレイだなんて業が深すぎる!圭一、あなたが陥落したらヒロインの倉橋さんはどうなっちゃうの!?
次回、「理由の時間」!
※この駄文はタイトル以外次回の展開にあまり関係ありません。
いや、この2人、思ってたことって
新一「何を話したら良いか分からない」
圭一「無言で何考えてるか分からない親父が怖い」
と一言で表せてしまうのが悲しい……。
これからこの2人の関係はどうなっていくのか!
ストーリーはまだまだ続きます。だって、まだ原作9巻ラストが終わったばかりだもの……。約80話でこれ。テンポどうなっとんねん……!
ご愛読ありがとうございます!