暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの高評価、感想ありがとうございます!

最近、各話のタイトルにルビを振れることに気づいたZWAARDです(ハーメルン活動歴n年)
まだまだ知らない機能が多くて驚きます。この前、読み上げ機能に気付いて絶句しました。運営からのメッセージはこまめにチェックしようと思いました……。

さて、それでは以下本編です!


89話 帰還の時間

 

 晴れ渡る空、流れる白い雲。そして鬱陶しい程にじめっと暑いアスファルトから反射する熱。

 久しぶりに袖を通した学校指定のワイシャツは早くも汗ばんでいる。今年最高の気温を記録するだろうと言う天気予報のねーちゃんも今日は嘘を吐かなかったらしい。

 

「あっぢぃ〜……」

 

 思わずネクタイを緩めながらボヤく。

 

『でしたらネクタイ外せば良いのでは?夏服ならネクタイは着けなくても良いと規定されてたと思いますが』

 

「気分の問題だよ。色々と引き締めないとな」

 

『ネクタイは緩めましたけどね』

 

「うっせぇ」

 

 パタパタと首元を扇ぎながら歩く。

 そう言えば、手で扇ぐのは体を動かすことになるので逆に暑くなる、みたいな話を聞いたことがあった。

 

「……お?圭一!」

 

「あ、ほんとだ。乃咲ぃ〜」

 

 律からの細やかなツッコミを適当にいなしつつ通学路を歩いていると、見知った黒髪と栗毛が目に入るよ。

 手を振りながら近づいてくる悠馬と前原は俺の名前を呼びながら近づいて来た癖に目が合うとキョトンとした表情になり、2人して目の前の現実を確かめるみたいに目を擦った。

 

「圭一?髪型変えたのか」

 

「すっげ。オールバックになってる。今まで少し前髪が短い千葉みたいな髪型してたのに。どんな心境の変化だ?」

 

「………まぁ、色々あったんだよ。ほら、決意を新たに髪型を変えるとか創作ではよくあるだろ。それと同じだ。似合ってない?断髪式の方が良かったかな」

 

「いや、似合ってる。普久間島ホテルに潜入した時に菅谷がセットした髪型だな。潜入後半では崩れてたから………そう言えば、前原たち留守番組が見るのは初めてになるのか」

 

 そう。俺は髪型を変えてみた。

 心境の変化で髪を変えるとか女子か!と自分でも突っ込みながら変えてみた。まあ、気持ちを切り替えるスイッチみたいなもんだと思えば、そうは気にならなくなった。

 

「ほーん……。ま、俺も似合ってると思うぜ?なんつーんだろ、垢抜けた感じがするって言うのかな」

 

「そうだろう。昨日垢落としで身体中擦った甲斐があった」

 

「垢抜けるってそう言う意味じゃねぇよ」

 

「ソフトボールくらいの大きさの垢が出て結構ショックだった。毎日風呂入ってるのに……」

 

「話聞いてるか?そう言う話じゃないってのに」

 

「だよな……。分かるわ、それ。俺も商店街の福引で当たったから使って見たんだけど擦れば擦るほど消しカスみたいなのが出て来てすげーショックだったわ……」

 

「磯貝?お前までボケに回るとしんどいんだけど」

 

「まぁ、偶には良いだろ。このノリも久しぶりだし」

 

「おっ、乃咲じゃん。おっす〜」

 

「木村も久しぶり」

 

 3人で歩いていると木村も合流した。

 顔を合わせると、例の如く、木村も俺の髪型を見て一時停止したが、割とすぐに再起動してにあってると言ってくれた。

 

「あれ、そう言えばさ、お前は結局この後どーすんの?」

 

「この後?」

 

「ほら、残るのか戻ってくるのかの話しだよ」

 

 木村が思い出したみたいに件の話を持ちかけてくる。

 A組に残るか、E組に戻るか。長らく悩んだ問いかけ。それに対する答えはもう出したので答える。

 

「俺はE組に戻るよ」

 

「おぉっ!」

 

「……そっか、正直、ホッとした」

 

「だな」

 

 三者三様の反応をするが、それでもみんな安心したように頷いてくれた。本当に今回は色んな人に心配をかけてしまった。

 

「あ、小テストは?」

 

「そっちも問題ない。電話でE組に戻ることを伝えた翌日には理事長がわざわざ病室まで来てさ、あの人の目の前で解かされたよ。正直、生きた心地がしなかったが、しっかり満点も取った」

 

「うわぁ……。嫌な甲斐甲斐しさだな、おい」

 

 全員の顔に苦笑が浮かぶ。

 

 あの時は本当に怖かった。ベットの横には理事長、備え付けのテーブルの上には明らかにA組ではまだ習ってない部分が出題された小テスト。ものすごくニコニコしながら解いてる様を見守ってくる理事長は夢に出るほど怖かった。

 

 あれは絶対に根に持ってる。

 A組に留まらずE組に戻ったことを絶対に不満に思っているだろう。その所為か浅野理事長の思う強者像をひたすらに聞かされた。興味深い内容ではあったけど、あの人が強者に拘る理由がよくわからない。ある種の狂気を感じたくらいだ。

 

「そう言えば、その息子の方はどんな調子なんだ?」

 

「あー……。なんつーか、面食らいまくってる。殺せんせーの奇天烈な言動に対する反応見てると『そう言えば俺たちもこんなリアクションしてたわ』とか懐かしくなるぞ」

 

「……そうか。強く生きて欲しいもんだな」

 

 哀れ浅野。彼は今、自分の常識をぶっ壊されてる真っ最中らしい。俺を嵌めた天罰だ、ざま〜みろ。

 自分から踏み込んだ領域だ。哀れむことはあろうとも同情はすまい。全て自分が選んだ結果である。

 

「暗殺の方でなんか進展は?」

 

「いんや、特にない。プリン爆殺計画で殺せんせーの嗅覚と味覚が予想以上に強いのを再認識した程度」

 

「ま、半年暗殺して大したこと分かんないのに、2週間で何か変わるはずもないか。そりゃそうだわ」

 

 などと暗殺教室の状況について最新の知識を仕入れていると、いつぞや、倉橋さんとあって、そのままぶっ倒れた道に辿り着くと、彼女がいた道から見慣れた女子連中が歩いて来ていた。

 

「あっ!圭ちゃん!!」

 

 これまた聞き慣れた声。恐らく律を除いたら一番最近連絡を取った相手だ。そんな彼女がパタパタと軽快な足音を立て、大袈裟に腕を振りながら走ってくる。

 いや、ほんと、倉橋さんは元気だなぁ〜なんて微笑ましく思っていると、同じことを思っているのか、その後ろにいた片岡や岡野、矢田さんも倉橋さんの背中を見て微笑んでいた。

 

「わっ!?髪型が違うよ!?」

 

「うーん、本日3度目。やっぱり似合ってない?」

 

 こうも連続して髪型を突っ込まれたことは今までなかったので少しばかり気になって来た。例え周りに肯定されたとしても、何度も確認されると不安になる精神である。

 

「あー。ホテルの時の」

 

「そっか、あの時はヒナちゃんいなかったもんね」

 

「ま、確かに髪型変わるとだいぶ印象も違ってくるよね。でも、なんか垢抜けたみたいに見えるし、顔付きも前より良くなって、良い感じなんじゃない?しらんけど」

 

「なぁ、前原。岡野のコレは女子語だとどう言う意味なん?シンプルに褒められてるってことで良いのか?」

 

「良いんじゃね、しらんけど」

 

「…………前原くん嫌ぁい」

 

 前原からプイッと顔を逸らすと倉橋さんがフリーズしているのに気が付いた。ガチっ!と硬そうな効果音が似合う止まり方。再生中の動画を一時停止したみたいに同じ姿勢で止まっていた。

 

 なんだろ、どうかしたのだろうか。

 

 倉橋さんの前に立ち、少し膝を曲げ、彼女の視線の高さに自分の目線を合わせて顔を覗き込んでみる。

 

「倉橋さーん?」

 

「————」

 

 返事がない。ただの屍のようだ。

 何が起きた。人がフリーズするのはえてして思考が追いつかない時や、予期すらしていなかった事象が起こった瞬間だと決まっているものだが……。この短時間に何が起きた?

 

 考えてみるが、分からないものは分からない。

 何か見たのか?それこそ未確認生物とか、未知の生命体的な、人の理解の範疇を超えたものとか……?

 いや、でも普段殺せんせーなんてとんでもないイレギュラーを見てるんだからそんなの見ても大して驚かないと思うんだが。倉橋さんをこんな状態にするって一体どんなものを見たんだよ?

 

「乃咲乃咲」

 

「……前原くん嫌ぁい」

 

「良いからちょっとこっち来いって。倉橋の再起動の仕方教えてやるからさ。それで水に流せよ、な?」

 

「………まぁ、このまま立ち往生するわけにもいかないし。今回はその話に乗ってやるとしますかね」

 

 前原……と言うか、男連中のいる方に手招きされ、招かれるがままに近づき、前原からの指示を仰ぐ。

 

「とりあえず、ビッチ先生から教わったモテテク使って倉橋に呼びかけてみ。多分、再起動するからよ」

 

「……?なんでモテテクで再起動するんだよ?」

 

「……えっと、それは…………」

 

「ビッチ先生を師事してる倉橋なら、あの人から教わったモテる返しをする為にネタにノッてくるってこと」

 

「…………まぁ、悠馬がそこまで言うなら」

 

 前原だけならともかく、悠馬が言うなら別に変なこともないだろう。別に前原を信じてないわけじゃないが、前原と悠馬、どっちを信じるかなら、後者を取るだろう。

 

 合気道とか、実際は互いに掛ける技を打ち合わせしていて、魅せる為の演技をする、見たいな話を聞いたことがある。

 時代劇の殺陣とかも、互いに次はどんな動きをするのかをよく練っているからこそ、あんな見栄えのいい動きができる。

 

 つまり、ビッチ先生から伝授されたモテ技を使うことである種の実践演習とか、自分だったらこんな返しをする、見たいな稽古のようなものに発展するはずだと彼らは言いたいのだろう。

 

 まあ、それが彼女の再起動に繋がるかは疑問だが。

 

 脳内のビッチフォルダから使えそうな情報を引っ張り出す。まさか同級生に使うことになるとは思わなかったが。

 いくつか簡単に実践出来そうなものをピックアップして、自分のコンディションを整える。流石に声が裏返るのはダサい。

 

 ネクタイを締め直し、顔を引き締め、自分の声の特徴を損なうことのない範囲で音域を調整、目の高さを合わせるのではなく、片膝を着き、手を取り、しっかりと意思を込めた目つきで見上げる様に目を合わせて口を開いた。

 

「————陽菜乃」

 

「……………ぁ°」

 

 瞬間、短く悲鳴の様な声を出して倉橋さんはぶっ飛んだ。

 

 後ろに待機していた片岡にキャッチされ、ブシュ〜と空気を吐き出しながら勢いよく飛んで行く風船の如く、体を揺らめかせた後、彼女はプシューと音を立てて沈黙した。

 

「………………………前原くんの嘘つき」

 

「責任転嫁すんなコラ」

 

 その後、女子たちの必死の蘇生活動により、倉橋さんは一命を取り留めた。しかし、気絶するほどダメージを与えるとは思わなかった。少しばっかりショックである。

 この瞬間、俺は二度とモテ男ボイス、モテ男スキルを使わないことを心に決めたのであった。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

「ぜぇ……ぜぇ…………かひゅ………」

 

「お、おい、圭一?大丈夫か……?」

 

「らめぇ……」

 

「体力落ちすぎじゃない?」

 

「おりぇもおろろいひぇる……」

 

 通学路を順調に進んでいると、まあ、当然ながら学校に着くわけで。コレから久しぶりの授業だっー!と張り切って登り始めたE組の山。そこに思わぬトラップがあったのだ。

 体力が落ちているのは自覚していた。だからこそ、退院数日前は散歩をして少しでも歩く感覚を取り戻すことに努めていたのだが、俺は見通しが甘かった。街中を歩くのと山道を歩くのでは感覚が違うなど当然。

 しかしながら、それに気付かなかったのである。

 

「ましゃか……こんなに……たいりょくがおちてるとは……」

 

「圭ちゃん大丈夫?」

 

 しかし、なんだかんだでしっかりと山を登り切ることは出来た。道中、悠馬や前原、木村に散々手を貸そうか?と聞かれたが、俺にもプライドがあるので断ってきっちり歩いた。

 

 そして今、校舎の前で肩で息をしながら倉橋さんが下敷きを扇いで送ってくる風に癒されているところだ。

 

「久方ぶりに見たと思ったら随分疲れてんなぁおい」

 

「てらしゃかぁ………」

 

「ったく、おい磯貝、反対側もて。このファザコンとっとと席に運ぶぞ。カルマの野郎がさっさと弄りたくてウズウズしてんだよ。こっちに飛び火する前に生贄にすんぞ」

 

「すっきっぱらにポチ……」

 

「それを言うなら、泣きっ面にハチだろうがよ。犬を食ったみたいな文脈になってんぞ」

 

「お前が犬の話題出した所為で、泣きっ面をハチって名前の犬に噛まれた見たいなイメージが頭に湧いたんだがどうしてくれる。せめて蜂って言ってくれれば良かったのに」

 

「しらねぇーよ!」

 

 理不尽にキレてみたら怒鳴られた。

 ズカズカと近寄って来た寺坂に腕を掴まれ、悠馬と2人して俺を引きずって教室まで連行しやがる。

 

 地球人に捕まった宇宙人になった気分だ。

 まあ、実際には一般人に捕まったナチュラルボーン強化人間なので珍獣を捕まえた人間という意味では同じかもしれないが。

 

「あ、おい、変な角度で引き摺るとズボン擦れて破れるぞ!ったくしゃーねぇ。木村、お前は右足を持て」

 

「あいさー」

 

「……これは、どいう状況だ?」

 

 引き摺られていると、烏間先生が職員室から出て来た。

 しっかり挨拶したいんだが、生憎、右手を悠馬、左手を寺坂、左足を前原に、そして今、木村が新しく右足を掴んで来やがったので完全に地から足が離れてしまった。

 

「おはようございます、烏間先生」

 

「あぁ……。おはよう。今日からまたよろしく頼む」

 

「こちらこそ。まあ、一旦は体力作りからになりそうですがね。久しぶりに山を登ったら息が上がってしまいまして、ちんたらしてたら男連中に誘拐されることになった次第です」

 

「…………………そうか」

 

 烏間先生は頷くと、現実から目を逸らす様に外に広がる青空を見上げ、何やらしみじみと頷き始めた。

 その様子から、相変わらず苦労してるんだな、この人も、とE組に帰ってきたことを実感してしまう。

 

 横に向かってスライドしていく景色を眺めていると教室に辿り着き、寺坂が俺の右腕を持ちながら器用に扉を開ける。

 が、俺は見た。扉と壁の間に挟まっている黒板消しを。

 咄嗟にゾーンに入る。こんなことをやる奴はカルマくらいしか居ないだろう。このままだとアレは俺に直撃する。

 

 止まった世界で目を動かし、カルマのいる位置を確認。アイツはニヤニヤと笑みを浮かべており、その近くにいた渚と茅野はあちゃー、と顔を手で覆っていた。

 あのニヤけ面、間違いなく俺に直撃すると思ってる。しかも、予想外に四肢を持たれて運ばれて来たもんだからちょっと変なツボに入って笑いが堪え切れてない時の顔だ。

 

 アイツの思う壺になるは癪なので、ゾーンから抜け出した俺は再び動き出した世界の中で落下を再開した黒板消しに向かって全力で頭をスイング。サッカー選手も腰を抜かすようなヘディングを落下物にお見舞いし、カルマのいる方へと弾き飛ばした。

 

「へぶっ!?」

 

「カルマくん!!?」

 

 黒板消しはちょうど、チョークを消して白んでいる部分からカルマの顔面にクリーンヒット。アイツの顔より一回り大きい範囲を白く染めた。

 ちなみに渚はその粉塵に巻き込まれ、茅野はさり気なく退避し、被害を受けない場所に逃げていた。

 

 ……茅野の奴、すごい反射神経だな。いや、もしかして動体視力なのか?油断してたとは言え、カルマが直撃したのに1人だけ避けてるとは。思いもやらない特技だな。

 

「やぁ、おはよう。元E組兼元A組の風見鶏の乃咲圭一です。今日からまた皆さんと勉学に勤しむことになりましたので、よろしくお願いします。だいじょーぶですか、カルマくん?」

 

「はははっ、随分と元気そうじゃん、死神ファザコン」

 

「まぁ、それなりにな。お陰様で完全復活だ」

 

 この際、死神ファザコンとか言う新しい名前には目を瞑ろう。ある程度の弄りは覚悟していたことだ。

 

「さっきから気になってたんだけど、死神ファザコンはなんで磯貝くん達に腕と足掴まれて宙ぶらりんなの?」

 

「久方ぶりに登校して山を登って息を切らして、ちんたらしてたら捕獲されたんだぞ、茅野」

 

「んじゃー、しばらくは体力作りからだな。今日からまたよろしくな、死神ファザコン」

 

「そうだな、そうしてくれると助かる、杉野」

 

「射撃の腕、落ちてそうなら相談してくれ。アドバイスできるかは分からないけど、一緒に訓練するぞ、死神ファザコン」

 

「ありがとう、千葉」

 

「ご飯とかしっかり食べてた?まだ育ち盛りで若いんだからしっかり食べるんだよ?死神ファザコン」

 

「大丈夫だ。飯はしっかり食ってるよ、原さん」

 

「ねーねー、死神ファザコンは入院中、ナースさんとかと一夏のアバンチュールとかなかったの?」

 

「病院をなんだと思ってるんだ、中村さん……」

 

「ねぇ、死神ファザ————」

 

「んぁあーーーーっ!!死神ファザコンって呼ぶなぁ!」

 

【圭一弱点メモ④:死神ファザコン】

 

 流石に耐えかねて発狂すると、凄まじい風が俺たちの横を通り抜け、風を伴って移動して来たそれが、教卓に立つ。

 黄色いタコ型超生物はいつもと変わらない笑みで触手をゆらゆらぬるぬると動かしながら俺を見た。

 

「おはようございます、乃咲くん。体調は?」

 

「良好です」

 

「それは何より。キミがこうしてまた、この教室に戻って来てくれたこと、とても嬉しく思います」

 

「えぇ。この教室で学びたいことが沢山ありますから」

 

「ヌルフフフフ。それは結構。教師としてその言葉を貰えるのは最高の評価です。任せてください。この教室にいる限り、キミを飽きさせることは決してありません」

 

「教え子としてそれは嬉しい限りですね」

 

「……私はキミがどんな道を選ぼうとも応援するつもりでした。でも、こうして戻って来てくれたことが本当に嬉しい」

 

「足らない頭を自分なりに捻り続けて、やりたいことを見つけましたからね。俺はあなたや烏間先生、ビッチ先生、クラスのみんなから学びたいことがきっと沢山あるし、地球滅亡も食い止めたいです。やるべき、じゃなくて、そうしたい」

 

 俺がその言葉を告げると殺せんせーがニヤリと笑い、クラスメイト達はそれぞれの笑みを浮かべ、教室の外の先生方もまた、何処か好戦的で手強そうな笑みを浮かべた。

 

「………それに」

 

「にゅ?」

 

「目を逸らさないで見てくれるんでしょう?」

 

「………ニュルフフフフ!えぇ、もちろんです!さぁ、皆さん!今日も良く遊び、よく学び、よく殺しましょう!」

 

 常識から外れた担任の常識はずれの言葉。

 

「「「はいっ!」」」

 

 しかし、それに返事をする俺たちも常識はずれだ。

 それでいい。俺は、あれこれ言い訳を並べていたけど、結局はこの教室が好きで戻って来たのだから。

 

「ねぇ、圭ちゃん。そういえば、ホテルの時、いってらっしゃいって送り出したのに、結局言えてなかったと思ってさ」

 

「ん?なにが?」

 

「………おかえり!」

 

「………うん、ただいま、倉橋さん」

 

 始業のベルが久しぶりに鳴った。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

「……おや、乃咲が弁当持参とは珍しい」

 

「んぇ?あぁ、ちょっと思うところあって料理とか覚えてみようと思ってさ。とりあえずレシピ覚えたのを作って見たんだ」

 

「ほ〜ぅ」

 

 昼時、家から持って来た弁当箱を出すと、物珍しそうにやって来た面子の中で代表するように竹林が口を開いた。

 もともと、家庭科はできないわけじゃない。小さい頃からトメさんの手伝いをしていたのでそれなりにできる。

 まあ、誰もを唸らせる美食を作れるかどうかで言えば100%Noと答えるが。自分で食うには文句ない程度には。

 

「ほぇ〜。乃咲が料理ねぇ」

 

 前原からの失礼な視線をスルーしながら蓋を開ける。

 そして、全員が一斉に顔を顰めた。

 

「なにこれ」

 

「キャラ弁」

 

「…………このキモいのが?」

 

「見た目はアレだが、意外と美味いぞ」

 

「………………………………なぁ、圭一。こんど金魚飯でも食ってみないか?前原からも評判いいんだ」

 

「ん?じゃあ今度な」

 

「…………磯貝、ついでに料理とは何かを教えてやってくれ」

 

「心配すんな。そのつもりだ………」

 

「テメェら失礼すぎるだろが」

 

 むすっとしながら例のブツを箸で持ち上げる。

 

「ギシャァァァァァ」

 

 パンデモニウムは今日も鳴く。

 




あとがき

はい、あとがきです。
今回で長かった圭一の葛藤編が終わり、次回からまた原作に合流します。かれこれ半年……いやぁ長かった……。

しかし、やっとこさ色々な呪縛から解き放たれた圭一。
恐らくこれからは超絶好調でバシバシ活躍することでしょう。やりたいこと、やるべきことが一致した圭一は夏休み前の圭一の比じゃないレベルで怪物スペックになるでしょう。たぶん、きっと。

今回以降、圭一の髪型はオールバックになります。

今回もご愛読ありがとうございます!

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