暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの感想と高評価、ありがとうございます!

あと、1周年ありがとうございました!
何故か頭の中で1周年は12月5日だと思っていたZWAARDです……。ほんと、前回の投稿日がちょうど1周年だったといただいた感想で気付きました。面目ございません……。

ほんと、1年も経つのに誤字が減らないのでお笑いですよ。ほんと、いつも誤字修正してくださる皆々様、ありがとうございます……!




78話 選択と願いの時間

 

 あの後、いつの間にか眠ってしまったらしい。次に目を覚ますと太陽がちょうど顔を出す時間だった。寝る前はまだ昼前だったのに目覚めたら朝日が昇っているとか、俺はどんだけ寝てしまったのだろうか。よっぽどぐっすりだったのだろう。

 普久間島の時とどっこいなレベルで長時間睡眠をした所為か、頭がぼーっとする。しかし、二度寝を決め込もうにも寝付くことができず、俺はのっそりと起き上がる事にした。

 

「……身体は動くな」

 

 身体を起こして肩をぐるぐる、首をパキパキ。昨日の様な身体の不自由さはない。まだ違和感はあるが、昨日に比べればかなりマシだった。睡眠と点滴は偉大である。

 

 続けて、ベット横に備え付けられてる荷台を見ると、祖父母か、父さんか、あるいは気を利かせてくれた殺せんせーが持ってきてくれたのか、スマホが充電器に繋がっていた。

 手を伸ばして電源を入れてみると、日付は自分の記憶とも予測とも一致しなかった。スマホの画面に表示された日付は俺が倒れた日の2日後を示していた。

 

「そりゃぁ、二度寝も出来ないわな」

 

 呆れた。我ながらどれだけ疲労を溜め込んでいたのか。

 自分への呆れとみんなへの申し訳なさが湧いてくる。

 

 申し訳なさの原因は、日付の下、まだ読んでいない通知を知らせる表示にあった。その数値、約150件。驚いた。グループからは通知来ない様にしているので、全部個人からの連絡である。

 

 LINEを開いてみると、クラスのみんなからそれぞれ3言くらいのメッセージが来ていた。それから、連絡先を交換した覚えのない五英傑からも来ている。

 ちなみに、メッセージ件数最多は殺せんせー、次点で父さん、浅野というラインナップである。

 

 殺せんせーのメッセージは長ったらしかったので一時スルー。とりあえずは現状把握のために父さんからのLINEを開いた。

 心配やら、現状やら、今後の動きについてびぃ〜っしりと書かれていたが、要約すると、こうなる。

 

・俺を検査する為に父さんの知り合いの病院に移ること。

・俺の検査に専念する為、職場で手続に向い、席を外すこと。

・診察の結果、2週間は安静にするように診断された。

・基本ベットの上から動かない様にすること。

・快復まで学校は休学する。

 

 重要なのはこれくらいか。あとは殺せんせーレベルではないものの、こちらを気遣うような言葉が陳列されていた。

 あの人、文面上では饒舌になるタイプだったか。こればかりは普段から多用してるのか、年頃の息子のレベルに合わせようとしているのか、言葉の最後には顔文字までつけてやがる。

 

「………不器用な人だったんだなぁ……」

 

 そんな感想がしみじみと出た直後、特に触ってもいないのにスマホが暗転し、1人の少女が映し出された。

 伺う様に何処か暗い顔で所在なさげな仕草を取る律。

 

「おはよう、律」

 

『ッ!』

 

 声を掛けると、顔に光が戻った。ガバッと音がしそうな勢いで顔を上げ、俺を見ると安堵した様に声を出した。

 

『おはようございます、乃咲さん……ッ!』

 

「うん、心配かけて悪かった。態度も悪かったよな、ごめん」

 

『ッッ、いつもの乃咲さんです……!』

 

「いつものってなんだよ?俺、そんな変だったか?」

 

『声はE組に居た頃より1〜2オクターブほど低く、視界は8度ほど下を向き、歩行による左右へのふらつきは5歩ほど。それから注意力が散漫になっていて声を掛けられてもワンテンポ遅れ、動きも緩慢になっていました』

 

「……………今の俺にはそれがないと?」

 

『計測できない部分は未知数ですが、声のトーン、視野角は私の知る平常時の乃咲さんです!』

 

「…………………………怖っ」

 

 律が怖い。なんなのこの情報量。俺、普段どんだけ観察されてたの?怖いよ律。なんかストーカー染みてるよ。

 いや、まあ、彼女はAIな訳だし、人間の調子を測る要素としては間違いではないのか?うん、そう思う事にしよう。

 

『今、皆さんに乃咲さんが目覚めたことを通知しました!ちなみにですが通知してない浅野さんから何故か、『おはよう。体調はどうだ?圭一』とメッセージが来てます』

 

「前言撤回、一番怖いのはやっぱりアイツだわ」

 

 浅野が怖いのは今に始まったことじゃないが、怖いぞ。やっぱり。この病室に隠しカメラでもあるわけじゃあるまいな。

 

『………正直、言い足りないことはあります。でも、きっと、同じくらい私たちも聞き足りなかったと思います。だから、これからの時間でお話しさせてください。聞かせてください。あんな風に、倒れさせてしまう前に、手を出してしまう前に』

 

「……そうだな」

 

『乃咲さん。申し訳ありませんでした』

 

「律が謝る必要ないって。磯貝の言う通りだったんだから。何も話してないのに理解しろってのが無理な話なんだ」

 

『それでも、です。謝りたいんです。乃咲さんが何も話さなかったというのなら、私は待つばかりで聞きに行かなかった。なのに責めるような言動をしてしまいました。貴方が謝るのなら、私も謝りたいんです』

 

 律の奴、しばらく見ないうちにだいぶ頑なになったな。

 E組の連中の影響だろうか。教師である殺せんせーを筆頭にあいつらもなんだかんだ言って頑なな連中が多い。

 

「……じゃあ、謝りあうのはここまでにしよう。少なくとも、俺とお前の間では。夏休み前みたいに接してほしい。俺もそうするから」

 

『はい、そうします!……これからもよろしくお願いします、乃咲さん!』

 

「ん、よろしく。律」

 

 まあ、E組から抜けた今、どこまでよろしくできるのか分からないけどな。という余計な一言は抜いておいた。

 ただ、少なくともこれ以降の会話において俺と律が謝りあうことはもうなかった。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

 完全に日が上り、病院の中に活気……いや、病気だったり怪我してる人が多い中で活気という表現は少し間違っているかもしれないが、色んな音が溢れ始めた頃、俺の病室に珍客が現れた。

 

「……圭一。起きたのか」

 

「やぁ、乃咲くん。とりあえず目覚めたようで良かったよ」

 

 片方は父さん。だが、もう片方が珍客という以外に適切な表現を見つけられない相手だった。

 

「おはようございます、理事長、父さん」

 

 まさか浅野理事長ご本人の登場だ。

 何というか、RPGの宿で休んで回復してる所に最初の村に居るはずの自分の父親が『お前に客だぞ』とか言ってラスボス連れて来た様な状況である。

 

「E組の担任から連絡が来た時は肝が冷えたよ。身体には気を付けなさい。努力する姿勢と執念は評価するが、それで倒れて実力が発揮できないというのは意味がないのだから」

 

「はい、おっしゃる通りです……」

 

 まさにおっしゃる通り。結局、小テストも受けられなかったし、学校を休学することにもなった。

 うちの学校はテストを受けなかった場合は、問答無用でE組行きだ。その理屈で言えば、俺はE組に戻ることになるのか?

 

「まあ、お説教はここまでにしよう。お父さんも見えていることだし、君たちには親子の時間が必要だろうからね。要件だけ伝えて私はお暇しようかな」

 

「……俺の処遇についてですね?」

 

「察しが良くて助かる。私がここに来た理由はキミのお見舞いとお説教、そして今後のキミの処遇についてだ」

 

 父さんは口を開かない。多分、ここに来るまでに何か話はしていたのだろう。俺としても口を挟む必要がないので理事長の言葉の続きを黙って待つことにした。

 

「キミの休学についてだが、学校は正式に受理した。一度、不適切な発言をした教師を出してしまったことは事実。中学生を過労で倒れるまで追い詰めたその一因であると判断したよ」

 

 不適切な発言をした教師とは、俺がE組に落ちる前の担任のことである。俺に「父親に比べて出来損ない」みたいな評価を職員室でぶちまけて、ブチギレた俺が殴り倒した男。俺が停学処分を食らったその後、この理事長に再教育と称してネクロゴンド分校に派遣されてしまったらしい。

 

「そんな経緯で私としては公認欠席としても構わないんだが、E組を除いた各学年学級の担任から体調管理は本人の責任だという声も上がってしまってね」

 

「まあ、そうでしょうね。テストを受けなかった場合はE組に行く。これはうちだと常識だし、そうならない為に体調不良でも這って登校する奴がいるくらいですし」

 

「その通り。だから体調不良の結果、成績が落ちるのは仕方ないこととして、キミは休学になったわけだ。しかし、学校側にも責任があるのは事実。そこで、キミに選択肢を与えることにした」

 

「………聞かせてください」

 

「一つ、A組に残る選択。この場合、休学明けにテストを受けてもらう。その結果が8割以上の正答率だった場合、残留が認められる。あぁ、ちなみに8割というのは今回のA組の平均だ」

 

 まあ、A組。つまり成績優秀クラスに残りたいのなら、学校の中での平均ではなく、A組の中の平均くらいは取れというのは理にかなっているかな。本来なら願ってもないことだし。なんなら、本来問答無用でE組行きの所に特別措置が設けられてること事態が異例。他の生徒が知ったら暴動が起きるレベルだ。

 

「二つ、E組に戻る選択。無論、この場合でもテストは受けてもらうが、その結果に関わらずE組に戻って貰う」

 

「………つまり、先生の用意してくださった特別措置を受けるか、受けないかって選択ですね」

 

「その通り」

 

 さて、どうしたものか。

 ぶっちゃけ、A組で学びたいことなんて一つもない。学べることもないだろう。反面、E組にはやり残したことがある。

 

 俺はどうしたいのだろうか。この学校に来たのは父さんに認められる為だ。主席で入って常に優秀であり続け、結果を出し、誰もに認められる結果を残して主席で卒業する。常に1位というのは出来なかったが、A組に残るのはそんな当初の目的を果たすことができる。

 

 けれど、E組にやり残したことがあるのは事実。それこそA組にいるより、E組にいる方が学べることは多いし、俺の気持ちとしてはE組に傾いているのは否定しない。でも、この学校に来た意味を考えると、辿り着く結末は真逆だ。

 

 A組は皆んなに認められる。

 E組は認められない。

 

 決してE組が格下とかそんなことは思ってない。でも、今、全員で取り組んでる、殺せんせーの暗殺という目標は決して誰にも知られることはないし、世間的に認められるものでもない。

 僕は中学の頃に地球を救いました〜とか、小学生が授業中にテロリストに学校を占拠されるも、自分が全て迎撃しました〜みたいな妄想と一括りにされかねない。

 

 俺はもう一度、選ばなければならない。A組か、E組か。

 

「さて、私の話はこれくらいだ。まだ目覚めて間もない。頭も中々回らない時期だろう。返事はしばらく待とう。ゆっくり考えなさい。キミがどうしたいのか」

 

 理事長はその後、「まあ、全校集会での発言的にE組に戻ったら針のむしろになるかも知れないがね」と言い残すと、父さんに軽く頭を下げて病室を出て行ってしまった。

 

「………相変わらず食えない人だ」

 

 その背中を見送った父さんが言う。

 そう言えば、一緒に入って来たな、この人たち。思い返すとこの2人の繋がりを俺は知らない。椚ヶ丘を受ける時もトメさんからは『旦那さまのお知り合いが経営する学校』としか聞かなかった。理事長って立場的にそのお知り合いってのは間違いなく浅野先生なんだろうが。

 

「父さんと理事長ってどう言う知り合い?」

 

「大学時代の先輩だ。当時、ハーバードにどうしても学びたい教授が在籍していてね、進学を決めたんだ。その時に同じ日本人だからと気にかけてくれたのが先輩だ。ちなみに彼は主席で卒業している」

 

「………まぁた知らねぇ引き出しが出て来やがった」

 

 初めて知ったんだが?父さんがハーバード出身とか。つーかイメージ的にマサチューセッツ工科大学とかの方が研究機関が多そうな感じするけど、そっちだったのか。

 

「……さて、私も先に要件を伝えよう。まず、お前の転院が2日後に決まった。手続きやら、受け入れ体制を整えるのに必要な時間だな。終わり次第に移動する」

 

「分かった」

 

 父の知り合いの病院。こっちは高校時代の知り合いとか言ってたっけか。こうしてみるとこの人の人脈は幅広い。ハーバードの主席卒業生、私立中学の理事、そして大病院の医院長。

 もっとやばい人もいるかも知れないが、これまで出た人物は全員が学生時代の友達だと言うのだから驚きだ。

 

「次に……お前の進路についてだ」

 

「……進路?」

 

「あぁ。といっても、別に将来は何になりたいとかそんな話じゃない。お前がこれからどうしたいかについてだ」

 

「理事長の話を踏まえて?」

 

「あぁ。それもある。だが、私としてはもう一つ、提案できることがある。もっとも、提案というより、仰々しい言い方をするならば……親としての願いに近いが」

 

「……なに?」

 

「転校だ」

 

 出て来た単語に思わず思考が止まった。

 流石に予想してなかったぞ、転校なんて。

 

「お前がこの学校で頑張りたいのであればそれで良い。だが、もともとお前が椚ヶ丘を選んだのは私の期待に応えようとした結果、自分の意思を度外視したものだと考えてる。今からでも、地元に帰りたいのであればそれでも構わない」

 

「…………まぁ、否定はしないかな。父さんに言われなきゃ俺は今頃は地元にいただろうし」

 

「それに……。私としては、お前に危険な目に遭って欲しくはない。先日話を聞いた印象としては、やはり今の環境にいるのは危険だ。殺せんせーを狙う殺し屋は数多いる。その中に、お前達ごと殺そうとする輩もいるかも知れない」

 

「………そうだな」

 

 否定はしない。事実、俺たちはその毒牙を向けられた。死ぬかも知れないって思いは何度もした。

 

「お前の命は……私にとって地球より重い。だが、世間的に見ればそうではない。お前達を巻き込む結果になったとしても、確実に殺せんせーを殺せるならば、躊躇わずに実行する。それが社会で生きる大人というものだ。そしてこの先、お前がそう言う場面に巻き込まれない保証はない。私はそれが……恐ろしい」

 

「……………」

 

 親としては当たり前の言葉なのかも知れない。だと言うのに、こんな言葉を聞いて何処か感激しているあたり、俺も相当やってんな。心配されるのは嬉しい。

 

———でも。

 

「転校はしたくない。俺はもう地球滅亡という事件の渦中にいる。実際、暗殺にも関わった。A組に行ったことで、暗殺からは離れたけど、当事者であることに変わりはない。この状態で全く別の場所に行くのは……それこそ無責任だ」

 

 自分の選択を他人に委ねるのは無責任だと俺は思っていた。それでも磯貝は頼って良いんだと言ってくれた。

 父さんは今、俺に逃げて良いんだと道を示してくれた。でも、それはなんと言うか、卑怯というか、無責任だと感じた。だって、俺は散々暗殺を仕掛けて、いろんな事情を理解している立場で、選ぶことのできる立場でもある。

 もちろん、逃げるのだって選択なんだろう。でも、一度でも関わり、ここまで世話になった以上、どんな形であれ、近くで見守るのが責任で。俺はそれを手放しちゃいけないと思うから。

 

「…………そうか。お前は、そう考えるんだな」

 

 父さんは頷いた。俺の言葉にそんなしみじみ頷く要素はなかったと思うけど、父さんはゆっくりと3度頷くと、口を開いた。

 

「わかった。もう転校しろとは言わない。圭一、お前のやりたいようにやりなさい。自分のやりたいことを選び、進みなさい。お前はもう、私の期待に応えようとしなくて良い」

 

「……え?」

 

 言葉の真意が読めず、首を傾げる。

 またいつもの誤解をしそうになる前、父さんがそれよりも早く、いつも言葉を選んでいる時間よりも短く言葉を紡いだ。

 

「私は言ったな、お前に期待していると。それは変わらない。だが、磯貝くんとの口論からして、この言葉がお前の重荷になってしまったのだろう。だから、今、補足したい。別にお前は私の意を汲んで努力する必要はないんだと」

 

「どういうことだよ……?」

 

「私がお前に期待することは一つ。自分の選んだ道で好きなように頑張ること。それだけだ。私と圭がお前に望むのは、健康であること、長生きすること、そして、自分の選んだ道で好きなように頑張って、その果てに幸せであること。それだけだ」

 

「………父さんと母さんの望み」

 

「圭は昔から身体が弱く、やりたいことは殆ど出来なかった。私は親の支配で好きなことが殆ど出来なかった。願いの押し付けになってしまうのだろうか。我々はそんな思いをお前にして欲しくなかった。生まれてから今日まで、私の意を汲もうとして頑張り続けてくれたお前からしたら、何を今更、と思うかもしれないが、これが我々の望みだ」

 

 父親と母親の願い。そう言えば初めて聞いたな、そんな話。まあ、つい最近までまともに話してなかったから当然か。

 

「お前の名前は母親の圭と父親の新一から漢字一文字ずつ取っている。我々の良いところを継ぎ、自由に、好きなように生きて欲しい。それが圭一。お前の名前の由来だ」

 

「2人の良いところを継いで、2人ができなかったことをする。俺、そんな風に願われてたんだな」

 

「………思えば話したことも、聞かれたこともなかったな」

 

「普通は小3とかの道徳の授業とかでやるんだろうけど……。なんかレクリエーションとかそんなのばっかりたったからな」

 

 思い出すのは小学校中学年くらいの道徳。鬼ごっこさせられ、女子にタッチしたら勢いが強くて泣かれてしまった苦い思い出……。あの頃は素行が良かったからわざとじゃないと相手も許してくれたけど……おのれ、小3の頃の担任の北村ぁ……。

 

「……ともあれ、今後、お前は好きな選択をしなさい。周りからどう見られるか、私がどう思うかは気にしなくて良い。自分がやりたいと思ったこと、正しいと思ったことを選びなさい。例えばそれが間違いであったとしても、私が共に背負うから」

 

「……急にまた成績が下がったら?」

 

「理由によっては叱るさ。そして考えよう。何が理由なのか。理由があるなら共に解決しよう」

 

「実は俺、修学旅行で知らない高校生に認知されてるくらい名前が通ってる不良なんだってカミングアウトしたら?」

 

「まずは叱る。次に謝る。お前がそうなった原因は私にこそあるのだから。人様に迷惑をかけてしまったのなら、一緒に謝りに行こう。許されるまで何度でも」

 

「……俺は人を殺せる技術を学んだ。母さんから貰ったチカラもある。そんな俺が道を違えたとしたら?」

 

「お前はきっとそんなことはしないさ。でも、仮にそうなったとしても、私も背負うよ。お前の罪は私の罪だ」

 

 俺の父親は思ったより、ずっと覚悟の決まった人だった。

 波長から、気配から伝わってくる。嘘や冗談、その場凌ぎの言葉ではないこと。本気でそう考えていることが。

 

 たぶん、この人もやらないことは言わないだろう。

 思いもしないことを口にしない。いや、口にできないんだ。だって、息をする様にその場凌ぎの言葉を並べる。そんなことができるなら俺たちの仲があんなに拗れることはなかったんだから。

 

「………わかったよ。間違わないように頑張るけど、その時はよろしく頼む。………父さん」

 

「あぁ……。私は見守り続ける。だから、A組に行くか、E組に行くか。お前のやりたい方を選びなさい」

 

「…………うん、考えてみる。自分がやりたいことを」

 

 俺は今、問われている。

 自分の本当にやりたいことはなんなのか。学びたいこと、やりたいこと、やりたくないこと、やらなきゃいけないこと。それら全てに対する自分自身の選択を。

 これまでの人生で視野を狭め、選択肢を少なく見せていた、父親に対するコンプレックスが目に見える障害でなくなった今、自分の進む道を俺は初めて選択することになった。

 

 A組に残るのか、E組に帰るのか。

 

 ………夏休みの時と内容は殆ど変わらない筈の二択なのに、あの時に比べたら心は随分と晴れやかだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに、お前、不良なんてやってたのか?」

 

「……………やっべ」

 

 いらんことを口走ったと後悔した後、本当に叱られたし、本当に謝り倒された。基本的に喧嘩しかしてなかったことを話し、当人同士の問題と言うことで謝りに行くフェーズは発生しなかったが。我らの親子関係はある意味で始まったばかりである。

 

 

 




あとがき

はい、あとがきです。

やっぱりうちの理事長はこう言うタイプですよねぇ……。前回の選択と違うのは圭一の気分が前向きな点でしょうか。またちょっと考えまフェイズに突入しそうですが、その前にワンクッション挟みます……。

父親の鎖なんて初めからなかった事に気付いた圭一は今後どうなってしまうのか!ご期待ください………。
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