政治的な話は難しいなぁ。
結局、今回の長岡市シェルターの件はぼっちちゃんネキや露伴ニキから代金をもらうと言う形で決着がついた。*1
代金を貰って物資を支払うという形ならば、こちらが舐められているというわけでもないため、タカりはそんなにこないはずである。
だが、そこでまた新たな問題が起こる事となった。
それは、馬ニキのところ、シェルターから送られてきた難民たちの件である。
「わりと温厚な馬ニキが切れてるらしいのはびっくりしたわ。皆どこもかしこも大変なんだなぁ」
のほほんと他人事みたいに言ってるけど、貴方も結構大変ですからね? という視線を静は送ってくる。
「すみませんが、私の名義で浦野牧シェルターと長岡市シェルターの黒札様には一応抗議文は出させていただきました。後金振さんにはこちらで霊的契約でガチガチに縛り付けるという形にしようかと。
金札の私では、抗議文はスルーされる可能性も高いですが。」
金札ごときが何を言ってるんだ!と言われるかもしれないが「うるせー!ウチの黒札様に負担かけてるんじゃねー!」というこちらの意思を伝えなければならない、という考えからである。
「うーん、まあ仕方ないかぁ……。今回は単純にタイミングが悪かったのが大きな要因だよなぁ」
長岡市シェルターの件であれやこれややっている時に、さらに難民も押し付けられたら、それは文句のひとつも出てくるのが自然だろう。
まあ、他のシェルターとは交易的な意味でも、敵対関係になっても何の得もない。
少なくともビジネスライク的な感じでやっていきたいのが本音である。
「ともあれ、今回は結局長岡市の黒札が代価を払ってくれる形にはなりましたが、与しやすい相手だと周囲のシェルターが群がってくるかもしれません。こちらのほうで舐めたことを言ってくる奴らは排除していきます。」
静は少しそれた話を難民の方へともっていく。元は、月架手町シェルター*2に流れ着いた難民は上澄みは人間を捨ててでもそこに住む事を決断し、質の悪い難民たちが馬ニキの『浦野牧』シェルターへと流れつき、そしてそれが今回こちらに回された形になる。
文句と権利ばかり言う質の悪い難民を黒札に合わせて精神を疲弊するわけにはいかない、と彼女の独断で難民は全て眠りの魔術で深い眠りにつかされている。
「今回の難民はアレな人間ばかりなので、片っ端から睡眠をして無力化させています。
まあ……。浦野牧シェルターが押し付けてきたのも分かりますが、どうしますか? こちらで処分しておきましょうか?
それとも、KSJ研究所に押し付けるか、ですね」
「……でもいつもいつもKSJ研究所に押し付けるのも予算がバカにならないしなぁ……。
うーん……。何かいい手はないものか……。そうだ、思いついた!」
「まずこの権利ばかりを主張する厄介な難民、仮にDクラスとする……を皆佐渡に輸送して佐渡金山での鉱山夫として働かせればいいんだ。昔は「佐渡の金山この世の地獄、登る梯子はみな剣」と謳われたそうだけど、現代でもこれを復活させる。権利ばかり主張する奴らは佐渡金山送りか、吸血鬼殲滅隊に狩られるか二つに一つとすれば少しはおとなしくなるだろ……多分。」
佐渡金山は、金銀だけでなく、ロボ部の様々な物資の生産にも必要な銅、鉄、亜鉛、石炭の採掘も行われている。そして、それらを掘り出すには当然の事ながら鉱山夫が必要になってくる。
特に、江戸時代には無宿人(浮浪者)が強制連行されてきて、過酷な水替人足の補充に使われたという。
水替人足の労働は極めて過酷で、「佐渡の金山この世の地獄、登る梯子はみな剣」と謳われたほどだ。
例え未覚醒者であろうが、お守りをつければ鉱山内の物資の輸送や排水処理の水替人足などの仕事はできるだろう。
凍矢は難民たちをランク分けして、ランクDの権利ばかり主張する「
これでも大人しくない難民が出る? それは知らん。
そのうちSCP財団みたいにDクラス難民は人体実験の材料に使われそうだなぁとふと思うが、そこまで気を回せるほど彼にも余裕はない。
ともあれ、さっそく佐渡の黒札と連絡を取って彼らを佐渡送りにする手配をする。
と、そんな中、COMPを通して馬ニキから電話がかかってくる。*3
「ん? 馬ニキから連絡? 馬ニキ元気? ……なるほど。そっちも大変なんだなぁ。うんうん、こっちもそちらとは仲良くしていきたいのは本音だから今後もよろしく。ん?パトラのカードとかユニコーンとか?いや、ここでゴネてそちらの信頼度失う方が怖いよ。黒札同士の信頼は何よりの宝だし、何かあったら力を貸してくれるとありがたい。今度飲みにいこうなー。それじゃ。」
そういう事になった。
凍矢的にも馬ニキとは仲良くやっていきたいし、敵対しても何のメリットもない、がっちりとした信頼関係を作っていきたいというのが本音である。
政治部門に任せてウダウダするよりも、「はい問題なし、以上終了!」とさっさと決着をつけた方がいいな、と判断したからである。
ともあれ、これで方がついた凍矢だが、色々と厄介事ばかりで流石に精神的にしわしわピカチュウみたいになってしまう。
流石にちょっと休むわ……と寝室に行こうとした時、ソファーに座っているほむらが彼を呼び止める。
「師匠。お疲れ様。ほら、こっちに来なさい」
ほむらは、ソファーに座ったまま、ぺしぺしと自分の太ももを叩く。どうやらここに寝ろ、という事らしい。えっ?と驚いた顔をすると彼女は僅かに顔を赤くしながら言葉を放つ。
「何よ。年齢的にはJKの膝枕よ。膝枕。文句あるの?」
「……自分の弟子が珍しく優しくしてくれるのでびっくりしてる。あいた。」
ぺし、と凍矢の頭を軽く叩いた後で、ほむらは膝枕したまま、彼の頭を優しく撫でていた。
そして、そんな二人を物陰からこそこそと見ている二人の人影があった。女性体になっている『破裂の人形』と静である。
「……ここは私たち三人でマスターにジェットストリームアタック(意味深)を仕掛けるべきでは?」
「いえ、いい雰囲気ですのでそっとしておきましょう。……じれったいな。ちょっといやらしい雰囲気にしてくる、という顔をしてもダメです。さっさと関係を深めて強い子供を生んでくれたらいいなぁ、と思ってるだけで、甘酸っぱい恋バナwktkとかそう言うのでは……。」*4
「あーっもう、そこうるさい!!仕事しなさいよ仕事!!」
がーっと凍矢を膝枕したまま、ほむらがそう叫ぶと、二人はわーっとその場から蜘蛛の子を散らすように去っていった。
こうして彼女たちの日々は過ぎていった。