さて、人類安楽死計画の後、イシュタムを見捨ててさっさと逃げていたゲーデは、さて、これからどうしたものか、とガイア連合の監視の目を逃れていて考え込んでいた。世間では地球が魔界と融合しただのなんだのと騒がしいが、ゲーデにとっては全く関係のない話である。
(ったくガイア連合の奴らは、変態で尻の穴も使ってるだろうに。尻の穴ガバガバなくせに穴が狭いとかどうなってるんだよ。教えはどうなってるんだ教えは)
とりあえず、こんな変態どもの国なんてこれ以上ごめんだ。俺はとっとと逃げるぜ! という事で、ゲーデはさっさとこの日本から逃げる事に決意した。
何なら、とある天使がやったように分霊を作り出して記憶をそちらに全て移植して、ガイア連合の呪的追跡を逃れるという手段もあったが、さすがにそれは最後の手段にしたいものだ。これだけの大混乱の中なら、一匹の悪魔を追跡するなんて物好きはおるまい。
(さて、これからどうしようか。魔界に帰ってもいいけど、それだけだと面白くないからな。
何か適当に海外にでも逃げるか……)
やはり黒札やガイア連合の目が光っている日本より、海外に逃げたほうが自由気ままできるだろう。
悪魔なので好き勝手に逃げられるといえばそうなのだが、何らかのきっかけがあったほうが逃げやすいのも事実だ。と、そんな風に考え込んでいる彼の元にとある詠唱がどこからともなく聞こえてくる。
『────告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
召喚の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ』
その詠唱と共に、ゲーデの前にヴンと魔法陣が展開される。何らかの呪的追跡か?とおもったが、何か聞いたことがある。ガイア連合が作り出した試験的な新しい召喚形態。
通称『ランダムガチャ召喚』
これは、ランダムに悪魔を召喚でき、運がよければ自分より遥かに高レベルの悪魔を召喚できるというガバガバ召喚術らしい。しかし、自分より遥かに高いLVの悪魔など呼べば当然制御など不可能だ。
(ある程度の制御権は与えられるが、到底従えられるものではない)
支配できない悪魔を解き放つという危険性も多いにあるので、危険すぎるので海外でしか行われていない。安いマッカで極めて強力な悪魔が召喚できる……かもしれないと海外のデビルサマナーはこれを使って、そして自滅している。
『誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ──―!」
とりあえず面白そうだから飛び込んでみるぜ! とゲーデはその召喚に応じた。わざわざLVを下げてまで霊的追跡を逃れた存在が、そのままガイア連合系統の召喚になど応じるとは普通考えない。
それなら、それを行えばガイア連合の裏をかくことができるはずである。
流石にダーク系統の悪魔は禁止されているようだが、残念ながらゲーデはNEUTRAL-NEUTRALだ。問題なく召喚できる。
召喚に応じ現れてみれば、自分を召喚したのは、ボロボロのツキハギデモニカ……左腕が汎用性を捨てた巨大な破砕プライヤーに、頭部は巨大な筒状のカバーに覆われたデモニカ《ガンプ》*1を装備した人間。
そして、目の前には、弱い悪魔の群れ『ダイモーン』の群れおよそ30体ほどである。
「な……! Dレベル測定不能!? それほどの強い悪魔が!?」
見たところ、ここは日本ではないことは明らかだった。恐らくは旧アメリカ……多分、ヴードゥー教に関係が深い、ニューオリンズと言われているところなのだろう。
それならば、自分が召喚されたのにも納得がいく。と言っても目の前のデビルサマナーはおよそLV15程度。
そんな雑魚に従う理由などどこにもない。
召喚した雑魚諸共、この雑魚悪魔たちも一掃するか、それとも雑魚デビルサマナーを操って玩具にするべきか、とゲーデは迷う。そして、その迷いが状況を分けた。
ボロボロのデモニカを纏ったゲーデを召喚した男は、手のひらに宿った紋章を振りかざしてゲーデに対して叫ぶ。
「令呪三画を使用して勅命となす!! 俺の相棒になれ!! 死神ゲーデ!!」
これは絶対命令権……などではなく、それなりの命令権しかない劣化令呪とでもいうべきものである。
転生者と異なり、海外のサマナーなどに対してそこまで気を使わないガイア連合は、このガバガバ召喚の悪魔を制御するべく、この劣化令呪で何とか制御してくれ、とある意味投げやりなスタンスを取った。
だが、劣化令呪といえど、それを纏めて三画ブッパすればいくら高レベルの悪魔といえどそれなりの制御権にはなる。(とはいうものの「まあいうことを聞いてやってもいいか」程度だが)
「は……はははは!! 制御権全部ブッパして命令が「相棒になれ」か! 中々面白いなお前!!
いきなり命令権をフルブッパする奴がいるとは流石に予想外だった。その面白さに免じて、相棒(笑)になってやってもいい、とゲーデは判断した。もっともこの場合、相棒=面白い玩具程度の感覚だが。
そんな風なことをやっていると、ダイモーンたちも痺れを切らしたのか一斉にゲーデたちに対して襲い掛かってくる。ダイモーンは呪殺は無効の悪魔である。いかにゲーデといえど苦戦はするだろうと、デモニカを纏った男は声をかけてくる。
「気をつけろ! 相手は呪殺が無効な悪魔だ! いくらお前でも……!」
「すっごーい。君たちは呪殺が無効なフレンズなんだね! ……だからどうした雑魚が。【享楽する死神】! *2【マハムド】!!」
この程度の雑魚ども、マハムドダインを使うなどあまりにもオーバーキルである。
呪殺貫通を付与されたマハムドは、呪殺無効を持つダイモーンの群れを瞬時に殲滅していく。
多少LVが下がったとはいえ、LV60代の悪魔がLV7の悪魔どもに後れを取るはずもない。
瞬時に死体となって消滅していく。
あれだけの悪魔の群れを瞬時に消滅させたゲーデを見て、ゲーデを召喚した男は驚愕の表情を浮かべた。
「こ……。これが測定不能悪魔の実力……! これほどの力を誇るとは……!!」
(ざぁこざぁこ♡……いやホンマにクソザコだな。俺がDレベルなら178ぐらいだと知ったらどんな顔するやら)
「ともあれ助かった死神ゲーデ。俺の名前は『ネームレス』とでも呼んでくれればいい。これから……うぐっ!!」
しかし、ダイモーンたちを葬り去った後で、いきなりその男は苦しみだす。LV15程度の雑魚が遥かに上位の悪魔であるLV60代の大悪魔を使役するのはMAG不足であったらしい。
せっかくの玩具が死なれては困るため、ゲーデは二つに分裂し、LV20程度の分霊になり、残りの力の分霊をこの地の地脈へと避難させる。
ここは、彼のホームグラウンドとも言える、アメリカ南部のニューオーリンズの近く。
ヴードゥー教が民間信仰として盛んだったこのホームグラウンドといえるこの地ならそんな無茶も可能である。
それでようやく安定したのか、その男ははぁはぁ……と苦しみながらも何とか元に戻る。LV60の大悪魔など少し使役しただけでミイラになってもおかしくないはずではあるが、それでも苦しんだだけでいられるのに、ゲーデは多少疑問を覚えるが、それもそのツギハギデモニカに宿ったMAGが減っていたのを見て納得する。
(ああ、あのツキハギデモニカ、あれに所有者の無念の思い、MAGがそれぞれのパーツにこもっていたのか。
それを使用して、自分のMAGも使用してようやく俺を維持するとかホンマくそ雑魚だな)
長年戦ってきたデモニカには、所有者の強い念が籠る。それはデモニカを初期化する際に強力なアイテムを生み出すほどである。それは、当然破壊されたパーツにも強く籠り、ツギハギデモニカであるガンプはそのパーツに籠った複数のMAGによってネームレスのMAG消費を補ったのだろう。
「まあいいさ。ほらこれならクソザコのお前でも使役できるだろ?さて、俺様は死神ゲーデ様だ。相棒(笑)のお前の名前を聞かせてもらおうか?」
「俺の名前は……『ネームレス』だ。よろしく頼む。死神ゲーデ。」
霊的契約に真名を名のならないとかなめてるのか……いや、クソザコ人間ならばそれも仕方ないな。小賢しい奴だぜ。と思いながらもゲーデはそれに頷いた。
ゲーデが人間を相棒(笑)→から相棒(真)に変えていくのを書いてみたいですね。