──―旧アメリカ合衆国、ルイジアナ州ニューオリンズ近く。
元々この地はヴードゥー教の本場であるメキシコに近く、ここアメリカ南部のニューオーリンズなどでもヴードゥー教は信仰されていた。
そのため、ヴードゥー教の神であるゲーデとは相性がいい。
ツギハギパーツで作られたボロボロのデモニカ《ガンプ》を身に纏ったネームレス。
彼はこの近辺の小規模穏健派のシェルターを守るために戦っているらしい。
彼はニューオリンズ近くのヒューストンに無数に存在している元過激派の闇医者*1から過激派の様々な薬の投与や悪魔の臓器の移植などを受けて、覚醒し成長限界を伸ばすことができたらしい。
とはいうもの、外法の技術を使って成長限界を伸ばしてもようやく限界はLV20。
そんなゲーデからしたら弱弱ザコであるネームレスであったが、ゲーデは彼に引っ張りまわされていた。*2
「よし! 行くぞゲーデ!! 隣シェルターまでの雑魚払いは頼む!!」
「おいいいいいい!! 聞けぇええええ!! 人の話を聞けぇええええ!!
勝手に突っ込んでるんじゃねぇえええ!!」
「いいか! よーく聞けよ。お前に死なれるとせっかくの玩具が壊れて困るんだよ。
だから大人しくお前は俺の玩具に……」
「何!? さらに隣のシェルターがやばい!? 休んでる暇はないぞゲーデマン!! 出撃だ!!」
「聞けぇえええええええ!! 人の話を聞けぇえええええええ!!
というかテメェ人間なんだから休めや!! 死んでも知らんぞ!!」
ほとんど休みもせず、食べ物も適当にすませるだけで、周囲のシェルター間をバイコーンを使役して走り周り、地形の把握を行いお互いのシェルターの道を作り出す。
そしてそのシェルターの防衛を行うのがネームレスの仕事だった。
それは、悪魔であるゲーデが突っ込みを入れるほどの激務だ。ゲーデからすれば彼を堕落させて玩具にしたいのだがら、こんなところで過労死なんてされてしまっては非常に困るのである。
ようやく何とか説得させて無理矢理休ませたゲーデは、肩で息をしながらぐったりする。
「おいおい相棒。もっと自由に生きようぜぇ!!
綺麗な女は洗脳ラブラブにしてパコればいいし、ムカつく奴はムド系で自然死(偽装)させりゃいい。
お前さんが望むんなら、肉オナホ……もといラブラブ彼女(笑)を何十人でも作ってやれるぜ?
俺の権能で洗脳すればラブラブ彼女(笑)なんて何十人でも何百人でも作ってやれる。何が不満なんだ?」
まあパコりまくって妊娠したところぐらいで洗脳解除したり、さらに洗脳させてヤンデレ発狂させた女性たちの殺し合いなんか面白そうだけどな! と心の中でゲーデは呟いた。
何百人ものラブラブ彼女(笑)たちが、目の前で殺し合いを始めたらどんな顔をするかぜひ見たいものである。
何ならオナホ彼女の在庫一掃セール(ムドオン)もするつもりである。
文句を言われたら「これはお前が始めた物語だろ(キリッ)」とでも言っておけば黙り込むだろう。
何百人もの綺麗な女性をどう集めるかって? シェルターの数個も襲って綺麗な女性以外殲滅すればいい。だが、そのゲーデの言葉に対して、ネームレスは首を左右に振る。
「ダメだ。ダメだよゲーデ。俺は大事な人たちを全部見捨てて逃げたゴミクズなんだよ。
そんなゴミクズが幸せになっちゃいけない。その分だけ誰かを救わなきゃいけないんだよ」
なるほど。それで大体ゲーデは彼の実情を理解した。いわゆる、サバイバーズ・ギルトというやつか。
家族も恋人も友人も全部見捨てて逃げ出して自分だけ生き残ったことに罪悪感を覚えているらしい。
そのために、他人を救うことでその代償行為をしているらしい。
くだらねぇ!! とゲーデは心の中で呟いた。それこそ腰さえ振っていればいいのにトラウマだなんだとバカバカしいかぎりだ、とゲーデは心の中で嘲笑を浮かべる。
こういう「故郷を守る」とか「大事な人を守る」とかいう奴らをセックス漬けにして腰を振るだけの動物に変えていくのは何よりの娯楽である。
所詮人間は快楽だけしか頭のない猿共なのだ。変な知恵などつけずに男も女も餓死するまで腰だけ振っていればいいのである。それが”幸福”というものだ。
まあいい。こういうのは自分から堕落しないと面白みがない。じっくりと機会を伺っていこう、とゲーデは決断した。
そんなこんなで旧アメリカ、ニューオリンズ付近のシェルターを防衛するために走り回る彼ら。
だが、一番の問題はやはりシェルターの物資不足である。
過激派一斉掃討作戦&プルートゥ消失によって盛り上がっていた穏健派だが、それでもやはり小シェルターなどの物資・食糧不足などはどうしようもない。
終末によってCOMPやアームターミナルなどの物質転送技術も実用化されたが、霊道も整備されていないお互いのシェルター間の道の開拓など、まさに命がけだった。
死神であるゲーデでは食料を生み出したり、何かを防衛するのは不向きなのは事実である。
(本神はどうでもよかったが)
「ううむ……噂に聞くガイア連合の黒札様のご慈悲にすがれれば……。狩人様もさすがにここの小シェルターまでは来てくれないだろうし……」
「ガイア連合の黒札? あいつら皆揃って筋金入りの変態じゃん。ガチ武器に欲情するとか引くわー。さすがの俺でも引くわー。変態! 変態! 変態! あんな変態どもと関わるんならしっぽ巻いてとっとと逃げるが勝ちよ」
「……もしかして、黒札様と面識があるのか?」
「ないない! あんな変態どもと面識なんてないない! ホントホント! ゲーデ嘘つかない!!」
(全く、人間というのはクソ面倒くさいな。そもそも何で俺が人猿どもの死なんて看取らなきゃいけないんだよ。こんなクズどもの面倒を見るなんてごめんだぜ)
そう、人間の死を看取る死神でありながら、彼は人間を嫌っていて見下している。いわゆる自己の役目不全におかれている状況である。
この二律背反に置かれている彼は人猿どもを駆逐し、自分が自由に生きるために「人類安楽死計画」にある程度協力したのである。
結果は実にバカバカらしい大失敗だったが。
(……いやまてよ。この海外なら安楽死計画を再開しても問題ないのでは?)
この海外はボロボロになりながら必死で悪魔と戦う人間たちで溢れている。そんな人間たちに「生きてるのは苦しいだろう? 安楽死して楽になろう?」と囁きかければ、大勢のサルどもが喜んで死んでいくだろう。
イシュタムはご丁寧に「全人類を安楽死させて苦しみの生から解き放って救済を与える」というメシアン脳だったが、これは実際MAG集めには効率的である。
安楽死させた魂を集めて、閉じ込め、ハピルマの天国とプリンパの地獄を定期的に味わわせてやれば十分MAG採集はできる。どこぞの天使どもの脳缶よりよほどスマートな方法だ。
にやにやと笑っているゲーデに対して、ネームレスは目をすっと細めて真剣な顔で話しかける。
「……相棒、何を考えてるか知らないが、それは『なし』だ。多分ろくな目に合わない」
「おいおい、神に対して意見か?」
「意見じゃない、相棒に対しての頼みだ。これなら問題ないだろ?」
一瞬黙り込んだ後で、ゲーデは呵呵大笑と空に向かって大爆笑した。
「はははは!! なるほど!! 相棒の頼みなら仕方ないな!! 仕方ない。まともに人間保護(笑)に努めますか!!」