【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち   作:名無しのレイ

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皆さんからネタを振っていただいたので先にこちらを。
ネタを振っていただいてどうもありがとうございます。



9/4 ご指摘をいただいたので修正しました


第104話 佐渡島と地母神ダイアナについての話

「やれやれ。一難去ってまた一難だなぁ」

 

 疲れたように凍矢は、自分の旧公民館内部のソファーに腰をかけて、もはや高級品になっているコーヒーに口をつけてぼやいた。

 コーヒーの生産地はまだブラジル方面……ケツァルコアトルが存在している地方や、被害を受けながら何とか生き残っている東南アジアなどでマシではあるが、紅茶の方はかなり悲惨である。

 インド・中国は天使の蹂躙を受け、スリランカなども当然かなり被害を受けている。そんなところで紅茶を生産している余裕などあるはずもない。

 民間では、もはやまともなコーヒーより、タンポポの根などを流用した代用コーヒーが多く流通している。

(未覚醒者の間では、そういうタンポポから代用コーヒーを作って流通させている人間たちもいるのだから人間はしたたかである)

 

 ともあれ、マーベルヒトモドキ、Dランク難民をパピヨンニキの佐渡島*1に送った凍矢だったが、また新しい問題が押し寄せてきた。

 

 それはナイスボートニキ*2 から新しく追加されたDランク難民、いわゆるマーベルヒトモドキの追加のおかわりである。

 こちらとしては、ナイスボートニキとのコネや、関西でのキクリ米の需要が新しく出来たし、【カエレルダイコン】の苗をもらったのでそれ自体に文句はない。できるならば【ヒランヤキャベツ】や【ミガワリナス】の開発もお願いしたいぐらいである。

 

 問題はやはり、「マーベルヒトモドキ」たちの方である。

 関西の方では権力を振り回してあれやこれやと口うるさかったらしいが、新潟に属する人間としては「うるせ~! そんなこと知らね~!」である。

 関西で終末前には権力を振るってブイブイ言わせていたらしいが、終末後、しかも新潟でそんな物振り回された所で知った事ではない。

 どんどん佐渡に送り込む事に嫌はない。

 

「というものの、ただ処分してくれ~と処分料を送るだけだとなぁ。確かパピヨンニキは馬ニキに『デミフリムニル』や『デミタング』とかも頼んで試験運用していたっけ。こちらでも肉は重要だしなぁ」

 

 静の許可を得た凍矢は、佐渡島の黒札であるパピヨンニキのCOMPに電話をかけて、今の状況を説明する。

 

「ああ、パピヨンニキ? うん、悪いけどまたマーベルヒトモドキが増えたらしくてさ……。うん、ごめん。俺たちが思っていたより多いっぽいねこれ。で、またお願いできない? 処分料はきちんと払うし、後そちらの馬ニキに売っていた『デミフリムニル』や『デミタング』も購入できない? ノウハウないところの運用のデータとかも必要でしょ? 

 うん、ちょっと考えてみてくれると嬉しい。あと、そちらの鉱物資源を搬送するために、魚沼のロボ部がそちらと大ターミナルで繋げたい計画(費用はロボ部持ち)も上がってるらしいから考えておいて。それじゃ」

 

 そういうことになった。

 実際、魚沼はコメつくりには力を入れていたが、牧畜には力を入れていなかったのは事実である。

 終末後でも大量の肉を手に入れられる手段は喉から手が出るほどほしい。

 試験運用を行っているということは、ほとんど完成しているも同義ということだ。

 真っ先に確保しておくのはこちらにとってもメリットがある。

 静的にも、肉を大量に仕入れるというのは頭の痛い問題であったため、問題はないだろう。

 

「しかしなぁ……。『岩見銀山』まで一杯になるとは……。ここまで頭お花畑が多いとは予想外だったなぁ。KSJ研究所のほうもあんまり多すぎると手が回らないだろうし。

 最悪、ほかのところも手一杯になったときの事を考えないといけないかぁ」

 

「別に色々な思想を持っていても構わないとは思うが、それを黙って大人しくさせることができない奴らがここまで多いとは予想外だったわ……。何で黙って大人しくしていないかねぇ……」

 

 別に不満はあってもそれを黙って働いてくれれば、文句はない。

 だが、あれやこれや権利ばかり主張する人間を養うほどこちらももう余裕はないのだ。

 何で権利を振りかざす前に、黙って働いてくれないかなぁ、と凍矢は思わずため息をついた。

 

「キュゥ~!!」

 

 そんな彼の元に、小さい九つの頭を持つ小さい蛇「キュー」が懐いていく。

 これは、対クズリュウ戦の時に、凍矢の体に張り付いていた九頭竜の小さな破片から生まれた超小分霊ともいえる存在、【未熟なクズリュウ(LV1)】である。

 もはやほとんど力を失った破片が形になったものだが、この程度なら他人に被害を与えないし、この分霊の記憶を通して九頭竜が人間に対して好感を持ってくれたらいいなぁ(淡い期待)と共に旧公民館内部で皆と協議して育てることになったのである。

 キューに餌を与えながらそんなことを考えている凍矢だが、これがのちに生まれたハルナの仲魔【非凡なクズリュウ】になるとはこの時誰も思わなかったのだった。

 

 


 

 ──―話は終末前に戻る。

 終末前の佐渡島では、凍矢によって調伏させられた一柱の神霊が存在した。

 地母神ダイアナ。凍矢によって倒された彼女は、ガイア連合に従う形になり、佐渡島担当のパピヨンニキの監視下に置かれる事になった。

 もちろん、ダイアナも無駄に暴れまわってせっかく拾った命を落とす真似などしない。

 まずはおとなしくガイア連合、パピヨンニキに従って「ガイア孤児院」を任せられるようになるために信頼を積んでいくのが彼女の目的である。

 そして、そんな彼女は、とある神霊と会話を行っていた。

 それはロリショタニキ*3の下にいる神霊、ヘスティアである。

 

「いや、確かに効果的だろうけどさぁ……。ホントにやる気なの? 君のことがばれたらアポロン、ストーカーみたいに君に付きまとうと思うよ? せっかくあの人がアポロンに仕事を積み込んで君のことを気づかなくさせようとしているのに……」

 

「でも、それもいずれ遅かれ早かれバレることでしょう? なら、ここでロリショタニキ? や他の地母神の人たちに恩義を売っておいたほうが得なのでは?」

 

「それはまぁそうなんだろうけど……。まあ、あの子や他の地母神たちのコネは君からしたら喉から手が出るほど欲しいだろうしねぇ。分かった。向こうには僕から伝えておくよ」

 

 そして、その場にやせ細ってボロボロの一柱の神霊が連れてこられた。

 そのまさしく疫病神そのものの顔は、太陽神アポロンの分霊。

 彼はロリショタニキに協力している地母神に、アバドンの配下の蝗を倒すべく、アポリオンキラーを大量に作成されられ精神的・肉体的にズタボロの状況である。

 そんなボロボロの彼の前に、バン! とスポットライトが灯り、その灯の下に一人の女性が存在していた。

 それは、いわゆるチアガール姿をして、両手にボンボンを持った地母神ダイアナの姿である。

 

「フレフレ頑張れお兄様♥️蝗退治頑張れお兄様♥️

 ファイオーファイオーお兄様♥️」

 

 チアガールのコスをしたダイアナは、狩猟神特有の体の柔らかさや運動神経を生かして、見事なチアガールのダンスをアポロンに見せる。

 足を垂直に上げてIバランスを見せる(スカートの下はドロワーズなので問題ない)サービスっぷりである。それを見たアポロンは号泣しながらダイアナへと抱き着こうとする。

 

「お……おおおお!! アルテミスゥウウ!!」

 

 ダイアナ神は、元々ギリシャのアルテミスと同一視される神であり、アポロンもローマ神話にそのままアポローとして移植されている。

 ローマ神話においては主要な神格がギリシア神話の神格と同化されたが、その中でアポローンだけは双方に共通する名をもつ神である。

 アポロンからしてみれば、ダイアナはアルテミスと極めて近い同一存在に見えても不思議ではない。

 

「はいそこまで。飴の時間はここまでだよ」

 

「ほらさっさとアポリオンキラーの量産に戻りなさい!! 飴はくれてやったんだから、さっさと働く!!」

 

「あ、アルテミスゥウウ!!」

 

 無数の地母神にずりずりと無理矢理引きずられていくアポロンを見た後でダイアナは、先ほどの媚びた笑みから一転して冷徹な表情へと切り替える。

 アバドン対策でブラック労働でアポリオンキラーを作り続け、精神的肉体的に限界に達しつつあるアポロンに対しての飴の役割を彼女は引き受けたのである。

 

「貴女も嫌な役をやらせてごめんね。嫌だっただろうに」

 

「いえ、同じ地母神ですからそちらのお気持ちはよく分かります。力になる事に嫌はありません。

 その代わり……」

 

「ええ! そちらに私たちの地母神としてのツテやらノウハウやらは惜しみなく与えるわ!! 

 同じ地母神同士、仲良くやっていきたいと思うわ。よろしくね」

 

 そう、これこそがダイアナの最も大きい目的である。

 簡単にいうと、ダイアナにとってアポロンはわりとどうでもいい存在である。(ストーカーされるのウザいが)

 それより遥かに重要なのは、ロリショタニキに加え、その周辺との多くの地母神たちとのコネである。

 ダイアナは地母神といえど、孤児院などのノウハウなどはあまりない。

 それをカバーすべく、多数の地母神たちから孤児育成のノウハウや、お互いの物資の輸入・輸出のコネ、最悪の場合の避難先など多くの地母神たちやロリショタニキとの強いコネを作ることは彼女にとって必須ともいえるのだ。*4

 


 

 そんなこんなもありながら、何とか終末を乗り越えたダイアナだが、基本的にやるべきことは同じ。都市防衛のために狩猟神として走り回り、魔獣や都市に襲い掛かる悪魔を排除するのが仕事である。彼女は佐渡島の森で仕留めて血抜きをして、冷凍保存処理をしていた魔獣などを持って、とある場所へと向かう。

 それは、この佐渡島を支配している黒札『蝶野公爵』に使える式神『七陰』の一人『アルファ』のところである。*5

 佐渡島の森で捕えた魔獣を肉として売り払う(これが電脳異界のジャンのところに運ばれるが彼女は知る由もない)がダイアナの主な収入源になっている。

 

「ふむ……。なるほど。確かに。状態も良いようですね。これは報酬ですのでどうぞ」

 

 とある部屋の中でそう言いながら、アルファはダイアナに対して報酬であるマッカを支払う。

 佐渡島で「やらかして」しまって凍矢に平定された彼女がこの地を治める黒札に会えないのは当然の警戒といえるだろう。彼女自身もそれを受け入れている。

(むしろ腹心とも言える七陰に会えるだけで破格の待遇である)

 普通の黒札などが嫌がって面倒くさがる「ガイア孤児院」の佐渡支部を仮に任せてくれただけで、彼女としては十分な報酬といえた。

 そんな中、アルファはソファーに座っているダイアナに対して向き合うと、真顔で話を始める。

 

「さて、ダイアナ。今回は貴女に話があります。召喚当初はやらかした貴女ですが、その後は私たちガイア連合に従い、都市防衛などもきちんと行っていただきました」

 

「蝶野様も、孤児には無関心であられるため、ガイア孤児院を本格的に任せるには嫌はありません。

 「ガイア救貧院」はこの状況だとアリのように現地人たちが集ってきてにっちもさっちもいかなくなりそうなので、保留で。」

 

 ダイアナ的には、孤児たちがきちんと育って大人になってくれれば問題はない。独り立ちはちょっと……いやかなり寂しくて一日中めそめそと泣くぐらいだが、まあ大目には見よう。

 もちろん、大人になって孤児院を手伝ってくれればニコニコ物である。

 別に自分自身の教団を作ろうとか、カルトを作ろうとかそういった事に興味はない。

 だが、「デビルバスターになって悪魔と戦いたい」などと言った危険なことには断固反対する。

 ダイアナの「やだやだやだ! ママはそんなこと許しませんよやだー!」という禁断全力ダダコネも辞さない覚悟である。

 

「ただ……ガイア孤児院を任せるのに不安はありますが……まさか可哀想だからと言って、所謂「Dクラス難民」について手出しをするつもりは……」

 

 それに対して、ダイアナは首を振る。黒札が直接管理する案件に首を突っ込むほど彼女も間抜けではない。

 ただでさえ一度やらかしているのだ。そんな危険を冒すはずもない。

 

「いえ、そちらの方に手出しするつもりはありません。いくら孤児院を作るといってもそんな救いようのない人間を救えるほど神といえど手が回りませんから。ただ……」

 

「ただ?」

 

「ただ、マーベルヒトモドキでも両親がアレで子供はまともというパターンはあるでしょう? そう言った子供は、こちらで引き取ってまともに育てるというのはどうでしょう?」

 

 ふむ、とアルファは顎に手を当てて考える。マーベルヒトモドキの子供は下手をすればガイア連合に対して恨みを持つ子供ができる可能性がある。

 恨みを持ったままの子供が悪魔や反ガイア連合に育てられてて少年兵にさせられるのはこちらとしても面白くない。それを少しでも解消できるのならいいのでは? とアルファは判断した。

 

「分かりました。蝶野様と相談してみましょう。要望に添えるかどうかは分かりませんが」

 

 そのアルファの言葉に、ダイアナはおとなしく頷いた。

 

 

*1
「ファッション無惨様のごちゃサマライフ」様  アルカトラズ・レポート 前編

*2
【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法」様

*3
「なろう系な俺たち」様

*4
アバドンも魔人同様終末後消滅したらしいですが、イナゴは土着したようです。南無。

*5
「ファッション無惨様のごちゃサマライフ」様 アルカトラズ・レポート 前編

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