ルイジアナ州ニューオリンズ近く。
ここでシェルターを守護するゲーデとネームレスはそれなりの評判になっていた。
これは元々、この地がヴードゥー教の本場であるメキシコに近く、この地にもヴードゥー教が根付いていたため。そして、ヴードゥー教とカトリックが融合して独自の信仰が誕生していたからでもある。
それなりの強い信仰、そして地脈の強い場所によって、ゲーデもあちこちのシェルターに結界を張れる程度の力は取り戻しつつあった。
ブードゥー教徒たちは「キリスト教を隠れ蓑にして白人の目をごまかす(土着キリスト教)」というのを通例としているため、メシア教穏健派として潜り込んで資材を正式な手段で入手して横流しすることもあり、この地はそれなりに活気に満ちたシェルターへと変貌していた。
「まーったく俺たちの信仰が一神教と同一視されるとかよー。まったく関係ないじゃねーか。弱いってのはやだねぇ。」
元々土着の宗教が一神教に取り込まれたのは、彼らが白人に取り込まれたため、そんな中でも自分たちの信仰を維持するためだ。つまり極論、弱いからこうなってしまったのである。
ああいやだいやだ、とゲーデは首を振るがそれはどうしようもないことである。
それでも彼らは抗い、終末寸前まで無事にシェルターの維持を行うことができた。
ガイア連合からのハンターからの超極秘指令「過激派拠点の【破壊工作】」指令が飛び込んできたからである。何やら、過激派は終末に突入するための一押しに派手なことをやらかすらしい。
それを妨害するために、海外でのエリートデビルサマナーたちに破壊工作を行ってほしいとのことだ。*1
「おいおいおい。相棒。こんなの事実上の特攻じゃねーか。こちらの旨味なんて何もないぜ?」
「いや、やる。やらざるを得ない。これで大勢の人たちが救われるのなら、俺は喜んで命をかける!!」
そんなネームレスに対して、ゲーデはやれやれと肩をすくめた。
──―ルイジアナ州、過激派秘密基地。
そこでは、悪魔召喚プログラムを内蔵したICBMが終末発動と同時に日本各所に発射され、切り札である【対星神聖兵器】エンシェントデイの補助をすべく、着弾と同時に数十体もの大天使「トランぺッター」を召喚。
エンシェントデイから目をそらすために日本各地を荒らしまわる計画を行っていた。
だが、そうはさせじと、ガイア連合からの支援と命令を受けたエリートデビルサマナーたちが奇襲・強襲を仕掛けていったのである。
「ははははは! ははははは! ザコザーコ!! 天使なんて死神様にとってカモだって知らんのかねぇ!!
【享楽する死神】*2【マハムドオン】!! 【ダークギフト】*3!!」
ガイア連合からの支援などによって、地脈に眠らせておいた分身と再融合を行って完全に力を取り戻したゲーデは、秘密基地に侵入・強襲を行っていた。
もちろん、これは囮である。派手にゲーデが暴れまわる間に、他のデビルサマナーが発射を阻止する計画だ。
ゲーデの呪殺によって、数百体の天使・天使人間が次々とその命を落としていく。
呪殺を得意とするゲーデは、まさしく天使にとって天敵そのものである。
マハムドオンによって、無数の天使の命を奪い取り、ダークギフトの一撃で数体の天使を纏めて肉体を粉砕して葬り去っていく。それはまさしく文字通りの無双状態と言っても過言ではなかった。
「はははは! このまま行っちまおうぜ! 一気に行こうぜ一気によ相棒!
俺たちがICBMの指令室を破壊しても構わんのだろう!?」
そんな風に哄笑を上げながら腰をガクガク振って、天使を殲滅するゲーデに対して、LV30になったネームレスは、銃弾を乱射しながら注意の言葉を放つ。
「ゲーデ!! 注意しろ! 相手がこんな奴らばかりとは限らないぞ! 当然切り札も……!!」
そのネームレスの言葉を示すように、基地の外壁を突き破りながら、両手に剣を持った豹の頭をした獣人のような存在が浮かびながら出現する。
普通に考えるのなら、それは悪魔、堕天使の「オセ」であるが、それは普通のオセと異なり純白であり、しかも堕天使でありながら、背中に純白の翼、頭に天使の輪を浮かべさせていた。
>Lv60 オセ・ハレル
そう、それは堕天使であるオセがメシア教過激派の力によって天使への姿を取り戻した「オセ・ハレル」である。
本来ならばLV73の存在ではあるが、まだ技術が不完全か多少レベルが低いらしい。
稀ではあるが、堕天使の中でも天使に戻りたいと強く願う存在もいる。そんな彼らからしてみれば、まさに羨ましいところの騒ぎではないだろう。……問題はそれがメシア教過激派の力によって行われたということだが。
だが、そのオセ・ハレルを見てゲーデは嘲笑する。
「すっごーい! 君は呪殺が無効なフレンズなんだね!! ……舐めるなよ、神の尻穴舐めるしか能のない無能どもが。一度落ちて過激派の尻穴舐めて天使の出戻りって恥ずかしくないの? ぷっぷくぷー。」
そのゲーデの嘲笑に流石に切れたのか、オセ・ハレルは剣を振りかざしながらゲーデへと襲い掛かる。流石にLV60代の戦いに巻き込まれてしまっては、LV30のネームレスといえど肉塊へと変貌してしまう。
それを察して、ゲーデはネームレスへと叫ぶ。
「相棒!! このクソボケは俺が引き受ける!! お前は核の指令室へ行け! 頼んだぞ!!」
そのゲーデの叫びと共に、オセ・ハレルは剣を振りかざしながらゲーデへと襲い掛かる。
「【享楽する死神】!! 【ダークギフト】!!」
オセ・ハレルとゲーデとの凄まじいぶつかり合い。神々しい光を放つ剣と漆黒の死の瘴気を放つ杖との激突は、余波で他の天使たちも次々と切り刻まれ、消滅していく。
あんなのに巻き込まれてしまってはひとたまりもない、とネームレスは慌てて指令室へと向かっていく。
そして、ゲーデがオセ・ハレルを引き付け、他のデビルサマナーたちもそれぞれ侵入を行い、他の天使たちと戦っているのか比較的容易くネームレスは核の指令室へとつくことができた。
しかし、それでも指令室の警備は厳重。数多くの天使たちが指令室の前を固めている。
あれをいちいち倒しているのは時間が足りない。こうなったら”切り札”を切るしかないか、とネームレスが考えている間に、天使の魔術攻撃が、彼のデモニカ《ガンプ》の頭部へと命中する。ぴきぴきとガンプの特徴的な筒状のカバーの頭部にひびが入り、そして粉微塵に砕け散る。
そこから現れたのは、ツインアイが特徴的な通称ガンダムタイプと言われるデモニカフェイス。
そして、何より特徴的なのは、その額に存在する巨大な砲台にも似たキャノン。それを転生者が見たらこう言うだろう。
──―ダブルゼータガンダム、と。
「くたばれ!! 封印開放! 全セーフティ解除!!
ダブルゼータの頭部ハイメガキャノンに霊力が収束していき、ヴォオオオァアア!! と唸り声をあげてガンプはネームレスの体内のMAGを根こそぎ吸収していく。
これは元々転生者用に開発された『霊子加速砲』*6をデモニカに直接搭載できないか、という事をコンセプトに開発されたものである。
だが、元々転生者用に開発されていた物を、LVが劣る現地民が発動させることは難しい。
無理矢理発動させれば、瞬時に命すら落とす代物。そのため現地民たちが使用できず封印処置が施されていたのを、ネームレスは開封したのである。
(恐らく開発班が試作したのが流れてきたと思われる)
その霊子加速砲による一撃は、警備の天使たちを巻き込みながら指令室を直撃して大きく破損させる。
反動によって、ただでさえボロボロのデモニカは完全に使い物にならなくなり、粉々に砕け散ってネームレスの肉体に破片が突き刺さっていく。
これにより少なくとも、これですぐに核を発射することはできないだろう。そんな混乱している状況になっている中、基地自体が大きく揺れ、霊的な余波を伴った大地震が発生する。
そう、それは地球が魔界へと落下していく大破壊である。
地球が魔界に落下していく中、基地内の天使たちは次々と消滅、霊格落ち、天使以外の悪魔への劣化と阿鼻叫喚が木霊する。*7
【地獄でも天界でもない、野良の魔界】に落着してしまった地球は、彼ら過激派にとって予想外のものであり、今までの地脈改造などの反動が襲い掛かってきたのだ。
例のオセ・ハレルもその反動が来たのか、オセ・ハレル(LV60)からエンジェル(LV10)まで格下げになって泣きわめいていたので、さくっと始末してきた。
「おい! やったな相棒!! 俺たちほんの少しだけだが世界を救う手助けをしたんだぜ! 死神の俺とお前がだ!! やったなハハッ!! これだけ救えばお前も満足……相棒?」
倒れているネームレスを抱きかかえて、ゲーデはその異変に気付く。彼の体内の霊力がほとんど失われていたのだ。元々、霊子加速砲は転生者専用に考えられていたもの。しかも大出力の霊子加速砲を放って現地人がただですむはずはない。
彼はその命を全て燃やし尽くすことによって、ようやく霊子加速砲を放つことができたのだ。
彼は、霊力を燃やし尽くしてかすむ瞳で、息絶え絶えになりながらも、穏やかに微笑みながら言葉を放った。
「ああ……、良かった。俺は誰かを、何かを救うことができたんだな。ああ──―満足した。」
ゆっくりとネームレスは満足そうに微笑みながら瞳を閉じて眠りについた。それがただの眠りではないことは、死神であるゲーデにははっきりと理解できる。……ゲーデの力なら、即サマリカームで彼を復活させることはできる。
だが、満足気に微笑みながら大往生しているネームレスの顔を見て、それは違うのではないか、とゲーデは判断した。俯き加減に彼の顔を見ながら、ゲーデはぽつりと呟いた。
「……くそったれが。満足そうに逝きやがって。そんなに満足そうに眠るのは反則だろうがよ。」
ゲーデは、ネームレスの魂を回収すると同時に瞳を閉じさせてやると、眠っているかのように横たわる彼に向けて、静かに呟いた。
「……全く、最後まで人のいうことを聞かない奴だったぜ。ゆっくり眠れよ、相棒……。」
穏健派シェルターの近くの墓地。そこにはここ最近では珍しく『土葬』で土の下に眠っている遺体が安置されている。
この荒れ果てた海外ではもはや『安全な土葬』ですら極めて贅沢である。
土葬した遺体がゾンビやらスケルトンやら平然と復活してくる中、
彼と同一視されるバロン・サムディは、死体がゾンビとして悪用されることを防ぐ役目も持っている。
その権能を利用すれば、土葬された遺体がゾンビやらスケルトンやらになって復活することもない。
しかも、それを利用して、まだまだアメリカ内部に蔓延る無数のゾンビやら屍鬼やらを防ぐ結界もできる。
『死後の安らかな眠り』。現地人にとって非常に高価となった死後の安らぎを保証し、もしくは魂を輪廻転生させる。これこそが死神ゲーデの最大の権能であり恩恵である。
だが、ゾンビやスケルトン、屍鬼化するのは防げても、それを付け狙う食屍鬼などは墓地に侵入しようとやってくる。それを防ぐのが……。
「知ってるかクズ共。墓場は死者に敬意を払うものしか入れない。ここから先は立ち入り禁止だ。……俺たちでは入れない」
そう、それは死神ゲーデ。相棒の埋葬地であるこの地を守護する死神そのものである。
墓地に結界を張るだけでなく、近くの穏健派のシェルターも結界を張って防衛しているが、それは相棒の眠るこの地を守る「ついで」でしかない。
ああ、相棒が守ったシェルターぐらいは守ってもいいか程度である。
それに勘違いしてか、時々穏健派のメシアンどもがこちらに足を運んで礼を言ってくるが、ゲーデからしてみたらこいつら何言ってるんだ? 状態である。
「勘違いするなよクソメシアンが。俺は相棒の眠るこの地を守るために結界を張っているだけだ。
その範囲にお前たち穏健派のシェルターがあるだけにすぎない。それを忘れるなよ」
そう言ってけんもほろろに追い返す彼だが、ふととあるアイデアが思いつく。
(とはいうものの、せっかく相棒が命をかけたシェルターをクソメシアンに好き勝手させるのも面白くないしな。仕方ない。防衛のためとでもいってシェルター防衛にでももぐりこむか)
簡単に言えば、穏健派のシェルターに入り込んで乗っ取って自分の物にしてやろうというのだ。
この地の防衛も結界も全てゲーデが単体で賄っている。そして、穏健派のシェルターの皆もそれを知っており、住民たちもメシア教よりゲーデを信仰しており、それが穏健派の悩みの種らしい。
ヴードゥー教は、カトリックと習合して土着キリスト教として信仰されているところも多いため、それを勘違いして何も知らない信者たちもゲーデを崇めているところも多い。
土着キリスト教として穏健派のシェルターへ潜り込み、トップ層を洗脳して穏健派のシェルターを陰ながら支配して、穏健派の物資を掠め取って生活することは可能なはずである。
(ああ、偉そうにしてるクソメシアンどもはそれこそ腰を振るだけの猿にでも変えてやるか。
そんな猿を見れば、能無し猿どもも少しは考えを変えるだろ。
こんなサルども飼うどものクソ仕事、少しは楽しみがないとやってられないよなぁ!!)
「やれやれ。土地や民衆を守護するなんて死神の俺の仕事じゃねぇんだけどなぁ。
まっ! 相棒のためだからしょうがねぇかぁ~。何事も楽しくいこうぜ楽しくよ!!」
るんるん、とスキップしながらゲーデは穏健派のシェルターへと向かっていった。
この後、穏健派を洗脳してシェルターを乗っ取ったり、カトリックと習合したヴードゥー教だから、とメシアンから改宗した人々が来たりと、ゲーデは乗っ取ったシェルター運営に四苦八苦することになるが……。それはまた別の話である。
「人間ってホントクソよわ人猿だよな~w」
「わっかる~wホントクズだわw」
「で? お前なんでそんなクズの魂後生大事に持ってるの?」
「あ””? (ビキビキ)」
ゲーデさん大体こんな感じ。
シュガーソングとビターステップみたく、エンディングで田舎ニキや偽マフティーニキと一緒にラインダンスを踊ってそう。
ゲーデさんのシェルターは比較的普通に運営されています。
少なくとも、一般市民を無下に痛めつけるような真似はしない。相棒が悲しむからね。仕方ないね。
一番の特色は力ある死神である故に「死後の安寧」が約束されている所。
海外ではもはや土葬すら「贅沢な埋葬」であり、ほぼ確実にゾンビやスケルトンとなってしまうため土葬は事実上禁止されている。だが、彼の庇護の元ではきちんとした土葬も死後の安らかな眠りも約束されているため、人気は非常に高い。
サバトやら乱交は普通に行われているけど仕方ないね。
ブードゥー教はカトリックと習合しているため、メシア教穏健派のシェルターとして表向きは穏健派から支援を受けているが、実際はゲーデが穏健派を乱交で完全に支配して陰で操って、穏健派として活動しながら資材などを掠め取っている。