入っていない人は日程などの都合が悪かったとお考え下さい。
(さすがに全て把握はできないし)
キャラ把握に正直自信がない……。
それからしばらく後、九重静は難しい顔をしながら、自分のパソコン(終末対応)と向かい合っていた。
その画面内部にいるのは、様々な老若男女のバラバラな存在。
彼ら彼女たちは唯一だけの共通点を持つ。それは”金札”という共通点である。
その画面に対して、静は頭を下げて言葉を放つ。
「今回はお集まりいただいてありがとうございます。
と、言うわけで金札会議を始めさせていただきます。
初めての挨拶はおそらく一番地位のある東藤様にしていただこうと思いましたが……」
「もう終末前の地位など何も意味がないのだから、気にする必要がないのでは?
まあ気楽に行こうではないか」
金札リモート会議。
それは各地の社会的地位のある金札同士が集まって会議を開いて、お互いの悩み事の相談、あるいはお互いにコネを作って物資や情報の交換などを行うために結成されたリモート会議である。
終末後の世界では、もはやシェルター外に出て集まって会合を開くのも難しい。
こういったリモート会議が一番現状に適していると彼ら彼女たちは判断したのである。
ここに集ったのは、金札の中でも政治系に関する金札たちであり、ごく普通の金札は入れられていない。
(きちんとしたルールはないが)
それは、現状魚沼などでの暴動、佐渡島での暴動などどこのシェルターも色々な問題点が噴出しているので、それに対する解決策を求めてのことである。
「皆さんもすでにご存じの通り、我々金札のもっとも大きな問題として”黒札様のシェルター事業の取りやめ””山梨への帰還”が最大の問題であることは理解していると思います。
今回はこの対策について考えていきたいと思います」
「ええ、よろしく頼みます。有意義な会議にしたいものですね」
G県の中でトップクラスの政治力を誇る東藤 草史郎*1
霊山同盟支部の補佐であり巫女長、山根 紫陽花*2
十勝支部シェルターの黒札の妻、魚無伽耶*3
長野県上田市の浦野牧シェルターの宮下周*4などなど。色々な金札がここには集合している。
彼ら彼女たちは黒札に代わって政治的な権力を所有している、それを振るっている金札が多い。
「まず我々が一番恐るべきなのは「黒札様のシェルターの放棄」これが一番問題になると思われます。実際にシェルターを放棄してガイア連合の本部に引きこもる黒札様は実際にいくつか事例が確認されています」
その静の言葉に、周囲の金札たちは一斉に眉を顰めた。
そう、それこそが金札たちの最も恐るべき最悪のパターンである。
「思ったより辛かった」「人の命なんて背負えるか」とシェルター運営を捨てて山梨に逃げ込む黒札はそれなりに存在していた。それは彼ら、彼女たちの立場としては避けなければならない。
「それを避けなければならない、というのはここにいる金札様たちの総意だと考えています。
率直に言わせてもらえれば……どのシェルターも黒札様の慈悲と庇護によって成り立っています。
『いかに黒札様のご機嫌を伺って、気持ちよくシェルターにいていただく』
『いかに黒札様のご機嫌を伺って、資源を出してもらう』これこそが我々金札のやるべきことではないかと思います」
「まあ……情けないことだけどこれが事実なのよねぇ……。霊山同盟支部はちょっと特殊だけど……。基本的にどこも同じよね……。
私たち名家出はまぁ納得がいくけど、そちらは違うのでしょう? 大丈夫かしら?」
そう東藤草史郎のほうに話しかける紫陽花は、彼自身の方を心配しているのだ。
名家出、霊能組織出はそういった事情になれているが、彼は権力こそあれど、ほとんど一般市民の思考と同様である。
そんな彼が異常な常識を共有しているこの場で平気でいられるのかと心配しているのだ。
だが、彼はひらりと片手を振ってそれを受け流す。
「何、この程度で動揺していては今まで生き残ってこれてはいないよ。状況には柔軟に対応するしかなかろうな」
その言葉に頷きながら、静はさらに言葉を続けていく。
「と、某佐渡島の議員がおっしゃる通り『彼らと市民の間に立って、市民が叫ぶ不平不満が、不愉快な雑音が、彼らの下に届かないようにシャットアウトする事だ。彼らが、気持ちよく世界を守り、人々を救ってくれるように』。これこそが我々金札の行うべきことだと思います。どうでしょうか?」
その言葉に、そこにいる金札たちは大きく頷いた。
これこそが政治系金札の行うべきことである、とここにいる金札のほぼ同意と言っていいだろう。この価値観を共有できただけでも、十分に大きいというものだ。
「つまり『正義のミカタの補助、補佐として』『市民たちの矢面に立つ』十勝支部シェルターはわりと下に対しては薫陶は行き届いていますが、ほかのところは大変そうですね」
十勝支部シェルターの黒札の妻、魚無伽耶はそう呟く。
ディストピアと揶揄されがちな十勝シェルターではあるが、その分内部の統制は十二分に取れている。
あそこではマーベルヒトモドキなどは生きてはいられまい。それを聞きながら霊山同盟支部の紫陽花は思わず頭を抱えた。
「う、羨ましい……。ウチは名家のロクデナシが黒札相手にやらかして……。寄せ集めで内部統制がうまく取れていないという弱点が明確に明らかになってしまうとは……」
紫陽花の状況を笑えるものはいない。
十勝シェルターが例外的であり、どこもかしこも内部のはねっかえりやらマーベルヒトモドキやら天使テロなど内部崩壊の種は満載であり、どこも頭を抱えている状況である。
霊山同盟支部はバックに黒札がいるとはいえ、白銀札であるハルカがトップであり、彼は黒札と違って嫌だから逃げるということはできないだろうから心配は少ないが、それでも他金札とのコネ作りのために参加したのである。
「こちらは純粋に人材不足でねぇ……。人間よりも人外のほうが多いのはどうかと思うのだが……」
そう愚痴るのは、浦野牧シェルターの宮下周である。浦野牧シェルターは実質指導層の中心になるのは、黒札を除けば二人しかいない。
もっと増やすべきだ、とは思っているが簡単に増やせるのならそうしている、というのも理解しているので難しいところだ、とは把握している。
そんな風に話し合っていると、静は二人の女性を皆に紹介する。
「そこで、このたび私が考える優れた政治家と呼べるお二人をお呼びしました。どうぞ」
その静の言葉に応じて、リモート会議画面に二人の女性の姿が浮かび上がる。
「解せないわ……。何で私ここにいるのかしら……」
「ホントそれ! 何でここにいるのか理解できないんだけど!!」
その一人は、いわゆるドクオシェルターを実質上運営している愛歌。*5
そして、もう一人は、三重第二支部デビルハンター(バスター)事務所を運営している、いわゆるスヤリス姫と呼ばれる女性、栖夜だった。*6確かに彼女たちも金札であり、シェルター運営を行っているが、ここに呼び出されたのは不本意と言わんばかりである。
「まぁまぁ……。私的には二人とも極めて優れた政治家だと思いますので。それではどうぞ」
「どうぞって言われても……。私はシェルター管理をしてるだけよ?
まあ、趣味の悪いAVシェルターだけどね。もともとは黒札が作り出したんだけど、そのままだと飽きそうだから、あれやこれや……奴隷たちに新しいテクを仕込んだり……して飽きさせないようにしてシェルターにこさせるようにする。訪れても不快感が少ない+来る用事を増やすようには頑張ってるわ。
そうね、私自身をネタにして黒札から物資を引き出す。そんなところかしら?」
おおおお! と一気に歓声があがった。彼女は実にさらっと言っているがそれを理解できずに黒札が去っていくシェルターは多い。
黒札を満足させて、資源を引き出すという意味で、彼女は極めて優れた政治家といえた。
しかし、これは黒札のことを完全に把握しなくてはいけないというかなりハードルが高いが、それでも行わないといけないのだろう。
「えぇ……私ィ……? 私はほら、黒札のお気に入りだから…… 【地味だけど安全な場所で、自由にできるトップになりた~い】とか思ってシェルターポーンと与えられたとかそんなのでは……。
ひ、姫プレイされてほしいもの与えられて、代償に腰痛とかそんなのでは……」
その瞬間愛歌から凄まじい憎悪の念があふれ出した。
「私はこんなに四苦八苦して苦労してるのに、ポーンとシェルターを与えられて姫プレイ? リア充爆発しろ」という考えである。
あっ、これこれ以上やるとまずいことになった静は、スヤリス姫に対して、しゅぱぱっと(まずそうなので配信切りますね)とジェスチャーで考えを伝える。
それに対して栖夜も頷くと「あ~ごめん。用事ができたからごめんね~!」とそそくさと配信を切っていった。
チッ! と盛大に舌打ちして、女性がしていけない顔をしている愛歌も、渋々と矛を収める。
そして、次におずおずと慣れていない状況で話してくるのは、他の金札……長老の代理とやらの金札『柏木武』という男性らしい。*7
彼が従う長老はとある黒札に助けられた現地能力者をまとめ上げ、その中心になりつつある。
そのネットワークは非常に広く、そして強い。それを理解している静は、代理でもいいから、と出演を望んだのである。
「代理として来てはいるが、正直困惑しているんだけど……? こちらの紫竜様はそうそう簡単にシェルター運営を放棄するとは思えないが? *8そんな性格ならそもそも我々を救っていないと思うが」
「確かにそちらの紫竜様は、我々金札、現地能力者にとっては当たりも当たりの黒札様ではあります。
あるのですが……。個人的な危惧を言わせてもらえば働きすぎて「燃え尽き症候群」を起こす危険性があるのでは?」
ひ、否定できない、とその金札の男性は思わず顔を引きつらせる。確かに彼は現地能力者にとっては神といえるほどの存在である。だが彼も人間だ。だが、何かに突き動かされている衝動が消失してしまえば、たちまち燃え尽き症候群に陥ってしまう可能性は十分にある。
「その……。他の所では黒札様はどう引き止めをされているのですか? 皆それぞれ何らかの切り札があると思うのですが……」
「簡単に言っていいでしょうか? 異性と好意的感情ですかね」
さすがに女の体で引き止めろ、というのは(名家的にはあるあるだが)まとめ役の立場的に自制した。
異性……女と好意的感情でそれぞれのシェルターに引き止めろ、というのは基本的だが王道である。(なお立ちはだかる式神の厚い壁)
こちらの黒札、凍矢的には「故郷を守る」という明確な目的があったので、うまく結婚することができた。
最悪の……本当に最悪の最悪の場合、彼が故郷も何もかも見捨てる場合ではあるが「私と子供を見捨てる気なのですか!?」という泣き落とし手段も一応手段の中には入ってはいる。(やる気はないが)
「ウチの子も黒札様には重しになってくれないところが、完全に向こうよりになってしまってね……。
全く。私が重しにならなければいけないとは未覚醒には負担が大きいのだが」
溜息をつきながら放たれる東藤の言葉に、分かる~とその場にいる皆は頷く。
完全に黒札に心酔してしまって、黒札の言うことならなんでも従うという金札(恋人など)も少なくない。
そんな彼ら彼女たちは地域シェルターに黒札を縛り付ける力にはならない。
(地元密着型の金札からしてみれば痛しかゆしだが)
「しかし、黒札様対策はそれでいいとして、市民対策はどうするね? 私たちが市民の矢面にたたなければ行けないのだろう」
「それこそ、対市民に最も経験豊富な東藤様からお話をお伺いしたいのですがよろしいでしょうか? あるいは、浦野牧シェルターの宮下周様からもお話しを伺えれば」
えぇ……と困惑しながら二人は自分の政治経験によるアドバイスを行っていく。
終末前に市会議員をしていた浦野牧シェルターの宮下周、そして、G県でトップクラスの政治力を誇る東藤 草史郎の二人の政治的話、市民たちを纏めるアドバイスなどは今まで政治的立場に立ったことのない金札からしてみれば、まさに値千金だった。
世界も政治も大きく変わってしまったが、人々の心を纏めるやり方、市民の心情を慰撫するやり方は大いに役に立つだろう。
「他にも、この会議でお互いに足りない資材の物々交換の会議の場としたいと思っています。
もちろん個別での会話も可能です。ですが、トラブルが起きてもこちらでは対応は行えないので、お互いに慎重な会議を行っていただければありがたいです」
金札同士のトラブルとなったら、迷惑になってしまうのは後ろ盾の黒札である。
政治的、指導的立場にいる彼ら、彼女たちはそれを理解してわきまえているだろう……。とは思う。多分きっと。
この場所は金札同士が情報供給を行ったり、足りない物資をお互い物々交換を行ったりして少しでもお互いが楽に、黒札に負担をかけないための努力の場としていくつもりである。
距離の近い支部なら物々交換は行っているが、距離の遠い、親交のない支部とはそもそも行っていないので、こうして交流の場を持つことは悪くない……はずである。
「後は、ガイア連合からマーベルヒトモドキを捕えるための試作品、幌金縄*9の超劣化・超弱体バージョンに加え、インドラジットのナーガの縄の超劣化・超弱体化バージョンが開発されました。
また、非覚醒者用捕縛用、非覚醒者でも眠りや麻痺などを与えることのできる超弱体化魔法を付与できるガードアクセラーver2が開発されたとの霊山同盟支部の開発班から情報が入りました。*10実験を行った結果をこちらで報告しようと思っております」
正直、静的には未覚醒のマーベルヒトモドキに状態異常の魔術を打っても別に問題ないとは考えているのだが、一応体面もあるため取りやめた代わりに開発をお願いしたのは、非覚醒者のマーベルヒトモドキでも捕らえられる器具などである。
まだ試したことはないが、まあ全身複雑骨折になろうと生きてさえいればヨシ! の勢いで行く予定である。
ほかのシェルターでもマーベルヒトモドキは沸いて出るだろうから、その威力をぜひ伝えてほしい、と色々な金札からの通信を受けて、今回は会議は終了した。