「……。結界の維持を行うため、人柱の法を行います。異論のある者は。」
―――場所は変わって、新潟魚沼地方のとある村。
この一帯を治めるのその名家の代表、流れるような黒髪のスレンダーな女性の言葉に、周囲の皆は静まり返る。
結界を作るためにこの地に元居た霊能組織の皆はその命を捧げた。
そのため、他の村々が消滅しつつある時でも、何とかこの村は無事でいられたのである。
だが、その結界も地脈活性化のため、揺らぎつつある。
人柱を行う事によって、その結界を保つためのエネルギーを注ぎこもうというのだ。
この名家には変わった風習があって「党首は真っ先に人柱になるべき」という奇怪な伝統になっている。
霊能組織と名家が一体化している所は多いが、この名家は例外的にすでに霊能組織が滅んでしまっており、その分家(霊能力なし)が家を引き継いだのだ。
彼らは地元の人間にすら知られずにこの地を守ってきていた。
だが、それにも限界が訪れつつあるらしい。
「我らの役目はこの地の守護。この地の民に不安を与える事はあってはいけません。」
「では、他の地から素質のありそうな者を購入するという事で……?」
「いえ、私自身が人柱になります。私が生贄になった後で、皆は住民を他の土地へと避難させてください。多少の時間稼ぎなら可能なはずです。」
その党首である彼女の発言に異議を唱える者はいなかった。
実際、この名家は主要な霊能組織の皆は結界作りに命を捧げ、他の歴代党首や主要人物も結界に命を注ぎ込んでおり、血の強い人間はほとんどいなくなり、今や、党首である彼女は遠い血を引くだけの一般人に限りなく近い。
そんな血筋でどこまで有効かは疑問が残るが、皆を守るためにやむを得ない。
皆さめざめと涙を流す悲愴な雰囲気の中、彼女は決心を固めた。
―――竈神社。
元はこの地を守護する霊能組織が作り出した結界はもはやボロボロである。
そして、長年封印されていたその内部はもはや異界へと変貌している。
神への嫁入りにも似た儀式で、党首である女性は神輿で神社へとやってきて、結界前に置かれる。
ここで自らが自害すれば、そのエネルギーが結界へと流れ込むはずだ。
だが、運の悪い事に、すでに限界を迎えていた結界から悪魔がすり抜けて、彼女を異界内部へと引きずり込んでしまったのだ。
「あ、ああ……。苦しい、苦しい……!」
彼女の周囲には鬼火がふよふよと浮いており、彼女に対して呪いをかけている。
それは熱病の呪いである。
そして、それを取り囲むように彼女をせせら笑いながら見下しているガキの数体。
たっぷりと苦しめた後で、ガキたちは彼女の体を貪り食らおうと待ち構えているのだ。
キィーン……。キィーン……。
その時、彼女の耳に微かな金属音が聞こえてくる。
気のせいか?と思ったが、他のガキや
そして、時がたつにつれ、その音はますます大きくなっていく。
キィーンキィーンキィーン。
ヒュンヒュンヒュンヒュン。
キンキンキンキンキン。
その音と共に、霧の中から燃える双眼がギン、という音を立てて光と共に現れる。
その眼光に周囲の悪魔も警戒態勢に入り、同時に風が吹いて霧が晴れていく。
そこに存在していたのは、刀を地面に突き刺して佇んでいる西洋鎧を連想させる装甲を持っている機械騎士だった。
「鎧の……騎士?悪魔……なの?」
呆然と呟く彼女を他所に、その西洋の鎧騎士を連想させる存在は、手にした刀を構えて瞬時にガキたちとの間合いを詰め、横凪に刀を振るう。
『【ヒートウェイブ】!』
その一撃により、ガキたちは大量の体液をまき散らす。
「【マハブフ】!!」
続いての猛烈な周囲一面を凍り付かせかねないほどの吹雪により、ダメージを負っていた
その猛烈な吹雪を放ったのは、地味でいまいちパッとしないただの普通の青年に見える男性だった。
しかし、霊能力を失った彼女にとっては、神器級の威力を平然と生身で出すその青年が只者でないことは理解できた。
「ん?生きている人間?生贄か何か?君、まだ生きてる?」
その軽装備の青年は、熱病に侵されている女性に対して軽く話しかけてくる。
それに対して、傍に控える鎧騎士も彼に向って機械的な言葉を放つ。
『マスター。これは恐らく微弱な呪いだと判断します。以上。』
まだ自我が芽生え切っていない破裂の人形は機械じみた言動しかできない。
この程度の弱い呪いならば、覚醒者なら容易く弾き返せる程度だ。
言うなれば、これは大祓のとある少女がかかった【呪い(弱)】と同じ効果である。
呪いを解くアイテムさえあればあっさりと解けるものではあるが、今の彼には手持ちは存在しなかった。
「うーん、呪いを解く系統のアイテムとか持ってないしなぁ……。ディアを使っても対処療法だし。あ、そうだ。あれを試してみるか。」
ごそごそと彼は懐から使い捨てのチューブ型注射器を取り出す。
針を覆っているプラスチックフードを取り外していく。
『マスター。それは?』
「うん、特殊加工された俺の血液。これで非覚醒者も覚醒できるようになるんじゃね?と思って医者俺たちに開発してもらったんだけど、これを投与すれば上手くいけば覚醒できて呪いも弾けるでしょ。
上手くいかなかったら……。まあ、アキラメロン。」
そういいながら、血液型が同じだと確認した凍矢は、彼女の血管にチューブ型注射器を刺して自分の血液を投与していく。
その瞬間、彼女の体はハネ上がった。
熱い熱い熱い熱い!!
寒い寒い寒い寒い!!
体内の熱病の呪いと、凍矢の血液に秘められた冷気のマグネタイトがぶつかりあう。
そして、当然の事ながら、覚醒者を侵すこともできない程度の呪い(弱)が微量とはいえ転生者の血液に勝てるはずなどない。
体内を循環していく強力なマグネタイトが秘められた転生者の血液。
呪いのため死にかけた彼女の肉体に、少量とはいえその血液は強力すぎた。
白目を向いてハネ上がった彼女の肉体。心臓が強力なマグネタイトを受け止め、激しく鼓動する。
そのまま死んでしまうのを防ぐため、凍矢は、ディアを彼女にかけて体力補給を行う。
そして、一瞬だが臨死体験を行った彼女は、ついに霊的な【覚醒】を行う事に成功した。
名家(笑)の血はロバであることは転生者には常識だが、彼女は名家の血を微かに引くだけのほぼ一般人というのが逆に幸いしてスムーズに覚醒したらしい。
覚醒した以上、ディアもスムーズに効くため、再度ディアをかけて凍矢は、彼女の名前を聞き出す。
「で、君名前は。」
「はい、私の名前は、九重 静と申します。」
その名前を聞いた瞬間、凍矢は、何故かひどく驚いた。
「……えっ?静?」
「?はい、それが何か。」
そっかー。これも何かの縁かなぁ、などと彼はよくわからないことを口にする。
疑問符を浮かべる彼女に対して、ともあれここでしばらく待っているように、と凍矢は、彼女に声をかける。
「この程度なら一気に行けそうだな。それじゃ……やっちゃうか!【
『イエス!マスター!』
その言葉に慌てて彼らを止めようとする静だが、彼らは疾風のように異界の奥へと飛び込んでいった。
そして、呪われていたはずのその異界が解けたのは、それからしばらくした後だった。
碧神 凍矢 男・20歳 転生者・覚醒済 Lv17
ステータスタイプ:【魔】中心の魔術師タイプ
耐性:破魔無効、凍結耐性、衝撃耐性、
スキル:ブフ、マハブフ、ブフーラ、コンセントレイト、ディア、ザン、吸魔、
特殊スキル:ブフストーン作成、凍結弾付与作成
装備:檜の木剣、退魔銃(猟銃・ショットガン型)、カジュアル装備一式
仲魔:式神【破裂の人形】 Lv8
ステータスタイプ:パワー型前衛
耐性:物理耐性、精神状態異常無効、呪殺無効、氷結耐性
スキル:挑発、かばう、ヒートウェイブ、グラムカット、食いしばり、タルカジャ
汎用スキル:会話、人型変化E
装備:無銘の刀、モーフィング装甲(現在はカジュアル系装備一式と同程度の防御力)
仲魔:妖魔アガシオン Lv7
物理耐性、雷撃弱点、アギ、ムド、エネミーソナー、テレパシー
デモニカ【バッシュ・ザ・ブラックナイト】
スキル:ザン*1