なお、装甲列車はウクライナ紛争でマジに使われていた模様。
RP様のご指摘をいただき修正しました
ピィイイイイ──―!! と蒸気のカン高い声が響き渡る。魚沼市に存在する元上越新幹線が通る駅として存在していた『浦佐駅』
終末後で路線網がズタズタになってしまったその駅は、もう寂れるばかりだと思っていたが、そこには今までにないほどの大量の人々で賑わっていた。
その駅内部の線路の上に存在するのは、終末ではほとんど動かなくなったはずの列車だった。
そして、そこに存在するのはただの列車や新幹線などではない。
頑丈な霊的装甲で覆われ、いくつもの巨大な砲台や機関銃などで武装され、さらには護衛のための多脚戦車すら乗せられている列車。
──―すなわち、『装甲列車』である。
元上越新幹線の路線を再建し、霊道と同じに霊的に守護された路線を走る霊的装甲列車。
その試運転がこのたび初めて行われるので、多くの人々が集まっているのである。
装甲列車は、列車の積載能力を生かし、歩兵、砲兵、対空砲兵、工兵、通信兵など様々な兵士を乗せ、さらに場合によっては軽戦車や装甲車までも必要物資込みで一度に運搬することが可能であり、小規模ながらも諸兵科を統合した独立作戦部隊としても機能する。
特に、この霊的装甲列車は、⑨ニキ*1の支配する呉支部から終末時の蒸気機関のデータを取り寄せて、終末でも信頼性の高い蒸気列車をメインにしている。
その蒸気機関の中で燃やされているのはただの火ではなく『蓑虫火』と呼ばれる妖怪の一種である。
鬼火、人魂、ウィルオウィスプなどと呼ばれる怪火の一種である。
ほかにも『権五郎火』『猫又の火』と呼ばれる怪火もあるが、権五郎火は権五郎という名の人物が旅の博打打ちとサイコロの博打で争った末に大勝ちしたがその博打打ちによって命を落とした怨念であり、雨を降らせるということ、「猫又の火」は猫を過重労働させるのはどうなの? ということでこうなったのだ。
MAGを注ぎ込まれた『蓑虫火』が終末対応蒸気機関の火室の中で加熱し、猛烈な蒸気を作り出すことで、この蒸気機関車が装甲列車の原動力となっている。
その後ろには装甲機関車と砲塔搭載車輌、装甲車輌が存在しており、砲塔や重機関銃などで装備され、さらに軽戦車の代わりに多足戦車も搭載されている。そのさらに後ろに装甲車両内に詰め込まれた様々な交易品である食料等などが大量に満載されている。
さらに、長岡市と魚沼市の間の路線は、レールに霊鉄、枕木に霊木を使用し、霊道と同じ要領で作られた霊的レールがようやく敷き替えられたばかりである。
レールが破損した際に備えて、特殊な魔力を流すとすぐに自己再生するような特殊な霊鉄で構築されている。これならば破損してもすぐに修復も可能である。
黒札の中でも鉄道好き、しかも軍事・装甲列車好きの黒札たちを集めて作られた試作型霊的装甲列車第一弾は、ゴトン、ゴトンゴトン! と動き出した。そしてその動く装甲列車を見て、その場にいた人たちは、うおおおおお!! と一斉に歓声を上げる。
彼らからしてみれば、失われたばかりの文明復興の第一歩である象徴そのものに見えたのだ。
(他にも、うおおおおすげぇカッコいい!! という純粋な声もあるが)
そう、これが実用化されれば長岡市と魚沼市の間を繋ぐことができる輸送網ができる形になる。
そうなれば、お互いの物資の交易もよりスムーズに進められる事になる。
もちろん、ターミナル転送やマザーバンガードによる空輸なども行っているが、マザーバンガードは空輸のために非常に忙しくあちこちを飛行しているし、ターミナル通信に頼りすぎるといざターミナルが使えなくなってしまった時がシェルターの終わりである。
それに対して陸路である霊道を作るなどの対策を行っているが、他にも色々な移動・交流・輸送の手段をとるために作り上げられたのがこの試作型装甲列車だ。(蒸気機関だけではなく、サブ機関のMAGバッテリーで動く電源車も備え付けられている。)
(しかし、列車好きの黒札に試しに話をもっていったら凄い勢いで食らいついてきて笑ったわ。
まあ、お互いウィンウィンの関係になれたのはよかったけど)
この終末は列車好きにとってはまさに悪夢の世界だ。魔界に落ちた拡張によってほとんどの路線は寸断され、列車も終末対応でなければ容易く動かなくなってしまう。
ズタズタになってしまった路線網を再建するなど、まさに気が遠くなるような作業である。*2
ではなぜ鉄道部は半終末の時に終末対応を線路に行わなかったのか。それは「とある理由」があって、ガイア連合の経済関係……ガイア大蔵省が反対を行ったせいである。その理由は後程明らかになるがここではひとまず置いておこう。
念のため、凍矢の仲魔である『ザオウゴンゲン』……『桑山千雪』もこの装甲列車には乗り込んでいる。
そんな彼女を見送るため、凍矢たちもこの駅に来ているが、ザオウゴンゲンの話をした時には、ほむらからは嫌味を言われ*3、破裂の人形からは白い目で見られ*4、静からは深いため息をつかれた*5凍矢の心情は察するに余りあった。
本来なら破裂の人形や静が色目を使ってくる女を排除する役目を担っているのだが、実際この高レベルで凍矢の壁となれるほどの戦力が入ってこれて、破裂の人形が安心して妊娠できるとなれば、まぁ仕方ないか……というのが三人の同意である。
この三人の間柄はハーレムというよりは、本人たち的には「戦場を潜り抜けた戦友たち」という感覚が強い。破裂の人形に欠けている一般女性としての感性を静たちは教えてくれ、破裂の人形はその力で静たちを守る。そして静はその知性でブレインとして凍矢を補助し、ほむらはその力でデビルバスターやデビルサマナーたちを押さえつけ、指導しているという一種の共生関係である。
そこに新入りが来るとなれば、必要とは分かっているがまあ面白くないのは当然である。
(俺は悪くねぇ!! 俺は悪くねぇっ!!)*6
まあ、それはともかく、自分の高レベルの仲魔を護衛につけるあたり、凍矢にとってもこの装甲列車はかなり力を入れているプロジェクトである。
鉄道部の黒札たちの力を借り、元上越新幹線の路線を修復し、霊的なレールを敷きなおし、霊道としての路線を再構築する。さらにそれで鉄道部たちに装甲列車を作ってもらったのだから、成功してもらわないと困るというのが正直なところだ。
(しかし、とりあえずは長岡市=魚沼市間だけで試作運用かな……。下手に長野と新潟の間で鉄道を作ると、馬ニキがキレそうだしもし引くとしたら要相談か)
とある黒札……義腕ニキのいた拠点からの情報によると路線は風水的には「川」になるらしい。*7
つまり、長岡市と魚沼市を繋ぐ川を作り出す事になる。風水的には川は水と水竜と強く結びつき、財運と金運に影響してくる。しかし、水は陰の気を受けやすく、汚れていたり濁っていたりすれば反作用も襲い掛かる。つまり、うまくいけばお互いの都市で交易が盛んになり儲かることができるが、放置しておくと反作用も起きやすいという意味合いを持っている。
そして、交易と金の匂いに過敏に反応する一人の黒札が存在した。
それは、 旧日本ハム、現ガイアミートの魚沼工場・工場長を務める黒札『武田観柳』である。*8魚沼在住だが佐渡の日本生類創研と繋がっており、立場上は七陰の一人である経済担当であるガンマの部下となる。
そんな彼も、この装甲列車に乗り込んでいる。そして、そんな彼の目的はただ一つ。
「なぜ私がここにいるかって? それはもちろん!! 金!!*9のためです!!」
観柳は指を丸の形……円の形にして朗々と言葉を放つ。動き出して順調に進んでいる装甲列車の中で、彼は自らの商人としての弟子であり現地民である阿爛に対して、身振り手振りを行いながら言葉を放つ。
今のところ、列車は正常に運行を行っている。だが、いかに霊道によって守られているとはいえ、何がおこるが分からないので、兵士たちが全方位警戒を行いながら列車の旅は進んでいた。
(この列車内部には戦艦と同様に艦内神社ならぬ列車内神社も内蔵されており、移動を繰り返す事によって霊道のメンテを行い、同時に霊道としての強度を向上させている)
「この装甲列車にはデカいシノギの匂いがします!! *10 列車の利点とは何か? それは一気に大量輸送が可能なことです。陸路でもさらなる大量輸送が可能になれば、さらに交流が盛んになり、輸送料も下がります。
では欠点とは何か? それは………。」
ギャギャギャ!! と列車が急ブレーキをかけて、乗っている皆がつんのめる。
列車が急ブレーキをかけた理由、それは霊道であるはずのレールが破損していたからである。
しかも、悪魔の仕業ではなく、見るからに人為的な物である。それを列車から身を乗り出して見ながら、観柳は言葉を放つ。
「それは、これです。列車は線路がなければ走れない。至極簡単な道理ですね」
そう、これこそガイア大蔵省が反対した理由「線路が悪魔によって寸断されると列車は動けない」という問題である。列車は大きな輸送量を誇るが、反面テロに対して極めて弱い。
例えば悪意ある人間がレールのボルトを緩めただけでも列車は無力化が可能である。
恐らくこれを行ったのはメシア教のレジスタンス()だろう。だが、装甲列車から降りた工兵たちは瞬時に線路の修復へと入る。
通常の列車ならその場での線路の補修は難しいが、工兵や資材もあるこの装甲列車ならばその場で修復は可能である。このカバーができるため、鉄道部は通常の列車ではなく装甲列車を開発し、すぐに修復可能な路線を開発したのだ。だが、修復は可能とはいえ、やはり時間はかかる。そして、その絶好の機会を見逃す悪魔たちではなかった。
霊道を突破する勢いで、大量の悪魔たちがわらわらと足を止めた装甲列車に群がってくる。
恐らく、ご丁寧に悪魔を集めるために「集魔の水」がばら蒔かれているのだろう。
しかし、これは作り出した黒札たちも想定内である。
それだからこそ、大量輸送が可能な通常の列車ではなく、対悪魔用の攻撃力を有する装甲列車を作ったのだ。どちらかというと、これは霊的装甲列車が使い物になるかどうかということを試す試作型である。
「撃て──!! 撃ちまくれ──! 悪魔どもを近づけるなぁあああ!!」
榴弾砲車からの砲弾や、対空車両の機関銃からの猛烈な射撃が悪魔たちの群れを殲滅していく。
いかに霊道であろうと数による圧力をかけられたらただではすまない。そして、これだけの数ならば当然撃ち漏らしは出てくる。
砲弾の雨を突破した悪魔たちは、停車している装甲列車へと肉薄しようとするが、その前に立ち塞がる人影があった。
それは、装甲列車に乗っていた観柳である。しかし、彼は黒札であろうと戦闘職でも修羅勢でもない。
そんな彼が立ち塞がるのは無謀極まりない。だが、その彼の傍らには、特殊なデザインをした巨大な砲台があった。
武田観柳 With 回転式機関砲(ガトリングガン)!!
機械が動かない終末環境でも十分に動かす事ができる、手回し式で車輪が備え付けの回転式機関砲。これのハンドルを手にしながら観柳は不敵に微笑む。
「ふふふ……。属性弾は確かに悪魔に対して有効です。だが、基本的に属性弾はマガジンによって分けられています。その属性弾が通用しない場合、他のマガジンに切り替えて銃撃しなければならない。
それに対応する手段は!! 大量の様々な種類の属性弾を一気に浴びせかける!! これが正義です!」
「火炎弾! 氷結弾! 雷撃弾! 衝撃弾! 破魔弾! 呪殺弾! 魔力弾! 神経弾! 精神弾! シックショット弾*11、ベノムショット*12、パニックショット*13、緊縛弾*14、ドクロの弾丸*15!
ありとあらゆる属性弾がこのガトリング砲には内臓されています!!
これだけ幅広い属性ならば!! 必ずどれかは通用するはず!! そして、それを成す力こそが!!
「そしてぇええ!! このガトリングは!! かつて長岡城を守るために河井継之助自身が操作した彼の霊気が籠ったガトリングそのもの!! このガトリングは!! この長岡に近いこの地で最大の力を発揮できるのだ!!」
「金さえあれば弱小黒札の私でも!! 中位悪魔を殲滅することができる!! *16
食らえ悪魔ども!! これが──―お金様とガトリングの力だぁあああああ!!!」
そう叫んだ彼は、ハンドルを回し様々な属性弾の雨霰を肉薄してくる悪魔たちへと浴びせかける。
「ガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガト!!!」
「ガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガト!!!」
「ガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガト!!!」
「ガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガト!!!」
猛烈な様々な属性弾の雨霰に、流石の悪魔たちも次々と凪ぎ払われていく。それを見ながら、彼はガトリングの力を見せつけながら高笑いを放つ。
「ファハハハハハア!! たまんないなぁあああああ!!
見ろ悪魔どもがぁあああ!! これが人類の、文明様の力だぁあああああ!!」
悪魔たちに対して無数の属性弾を叩き込んで気持ちよく殲滅していく観柳は、阿爛が持ってきたマガジンを交換してさらにハンドルを回して銃弾を叩き込みながら、彼はさらに言葉を放つ。
「いいですか弟子。人権も平等も失われてしまったこの世界でただ一つ公平な物、それが金!なのです!!*17
金さえあれば、未覚醒者でも契約護衛をした覚醒者に守ってもらえる!!頭脳も!肉体も!美貌も!人徳も!血統も!才能も!およそ力と呼べるモン何一つ天から与えられなかった”持たざる者”が人並以上になるには金しかないんです!!金こそが!力なき者でもこの終末の世界を生き残る手段なのです!!よく覚えておきなさい弟子!!」
そんな風にノリノリで弟子である阿爛に楽しそうに自分の理論を語る観柳。だが、こんな観柳の戦い方だが、大きな欠点が存在する。それは……。
「あっ、あの悪魔、銃撃反射と銃無効の悪魔だ。」
「うわぁああああああああ!! 死ぬぅうううう!! 早く!! 早く他の黒札をぉおおおお!!」
そう、それは銃撃反射や銃撃無効の悪魔に対して極端に弱いということである。
属性弾と言っても銃撃反射や銃撃無効の敵を貫けるほどの力は持っていない。これらの特性を持った悪魔の前では容易く敗れてしまうことになる。
観柳は慌てて指輪から自らのアガシオンを呼び出し、アガシオンの魔術攻撃に切り替えるが、前のガトリングガンの攻撃に比べれば明らかに攻撃の威力は衰えている。
さらに、それだけではなく、装甲列車の砲撃や重機関銃の射撃すら無効化する銃撃無効の巨大悪魔も現れてこちらに向かってくる。
それを迎え撃つべく、多足戦車が列車の防御に入るが、銃撃無効となれば殴り合いの泥仕合になり多足戦車も大きなダメージを受ける可能性が高い。
だが、そんな彼らの前に、重力を無視するようなシュパッ!と大跳躍を行いながら、一人のにこやかな三つ編みでゆったりとした服装をしたおっとりとした雰囲気の美女『桑山千雪』が悪魔たちの群れに立ちふさがる。
(ニコッ)
まるで花のようなほほ笑みを見せながら、千雪が手を振ると服の裾から何かが飛び出し、彼女はそれを手にする。それは、仏教などで用いられる法具、独鈷杵……いや、先が三つに分かれた「三鈷杵」だった。
彼女はその三鈷杵を構えると、その先から猛烈な闘気の刃が放出される。
「忿怒の暴圧!!」*18
彼女の手にした三鈷杵が横凪に振るわれると、噴出された闘気の刃が敵悪魔の群れへと襲い掛かり、悪魔たちを次々に粉砕していく。元々ザオウゴンゲンは明王と同じように激しい忿怒相と天魔を粉砕する相を示す三鈷杵、一切の情欲や煩悩を断ち切る利剣を示す刀印、左足の踏みつけは地下の悪魔を押さえつけており、右足の蹴り上げは天地間の悪魔を払っている姿という、極めて強力な降魔の力を秘めた神霊である。
彼……もとい彼女にかかればこの程度の雑魚悪魔の群れなどまさしく鎧袖一触だった。
悪魔多しといえど、「忿怒の暴圧」などという特殊スキルを持ち、これほどの降魔の力を秘めた神霊などただ一柱しかいない。彼女を見て、とある悪魔は叫ぶ。
「き、貴様……!まさかザオウゴンゲンか!?何をトチ狂ってそんな姿をしている!?」
「まあ!『そんな姿』とはご挨拶ですね。これを見て『狂っている』とは大分感性が人間寄りなのでは?*19お姉さん、傷ついてしまいました。*20これはおしおきですね♪*21」
「究極不滅の怒髪天!天魔撃砕!!」*22
千雪の手にした三鈷杵が再度振るわれると、そこから放出された闘気の刃は目の前の悪魔をドドドド!!とまるで大津波のように飲み込み、殲滅し粉砕していく。
数を頼みにしている程度の悪魔では、ザオウゴンゲンの降魔の力に敵うべくもない。そんな悪魔どもを殲滅していく中、ようやく武装列車の工兵たちはレールの修理が終了する。
さらに、千雪はザオウゴンゲンの力で霊道の穴を修復し、再度結界を張り直し霊道を修復する。
修験道の神であり、霊山で大規模な霊脈操作も行える彼女にとっては、この程度まさにお茶の子さいさいである。
そうして、再度動き出した武装列車は、今度は異変なく長岡市に到着し大歓声で迎えられる事になったのだった。
ファッション無惨様のごちゃサマライフ様から武田観柳を見たときは「やっぱりガトガトガトでしょ!」と使わせていただきました。
ガトリング斎だからね。仕方ないね。