【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち   作:名無しのレイ

137 / 145
麻績屋媛神と霊糸と操り人形

「えっ? 十日町の麻績屋媛神が拗ねまくってダークサイドに落ちかけている?」

 

 自らの家で作業している中、仲魔であるそのキクリヒメの連絡を受けて、凍矢は思わず驚いた。

 霊能担当、特に日本神担当であるキクリヒメは、その立場上日本神たちと極めて親しく、連絡を取ったり掲示板を行って連絡を取ったりすることができる。

 その立場から、十日町シェルターの麻績屋媛神が拗ねまくっているという情報をキャッチしたのだ。*1

 

「ええですわ~。日本神霊板ではドン底に落ちかけているから何とかしてほしいというクレームですわね弱小神霊とはいえ、二人の黒札から袖にされたというのはかなりショックだったようですわ」

 

 弱小神霊である麻績屋媛神を放置しても凍矢の立場からは問題はない。だが、基本的に小市民である黒札である。凍矢もその例外ではない。できる限り恨みは買わない方がいい、と彼も考えているのだ。

 

「うーん、袖にしたつもりはなかったんだけどなぁ……」

 

 ぽりぽりと困ったように頭をかく凍矢。だが彼がどう思っていようと彼女から見たら袖にされていたという事実は変わりない。おまけに『建葉槌命』を招いた事や、機神にロボ部が祭りに行こうとして結局勘違いでやめてしまったこともそれに拍車をかけてしまっているらしい。

 それに対して、キクリヒメも困ったように言葉を続ける。

 

「まあ、織物の神でありながら星神天津甕星を下したほどの武神である『建葉槌命』を招いたのは地域防衛的にも正しい判断だとは思いますが……。

 やっぱり昔から越後にいるのだから自分の領域を奪われた、と思うのはどうしようもないですわね。恨みを買うと他のところで厄介な事になりますから、避けた方がいいと思いますわよ?」

 

 うーん、そうだなぁ、とキクリヒメの言葉に、凍矢は腕を組んで考える。

 昔から越後の地に信仰されている神を蔑ろにした、となって変に恨みを買ってしまってもこちらも面白くないし、気分もよくない。どうせならお互いウィンウィンの関係にしたほうがいいに決まっている。

 彼女の権能である織物、霊糸を生かせるような物はないか、とうんうん考えていた彼は、一つのアイデアを思いついて、麻績屋媛神の霊糸を見ながらキクリヒメに対して相談を行う。

 

「ふんふん。なるほど……。よし、それじゃ麻績屋媛神の作った霊糸を医療班に持っていってくれ。上手くいけばお互いウィンウィンになれる……はずだ」

 

 了解、とキクリヒメは麻績屋媛神の霊糸をガイア連合の医療班へと持っていく。

 彼らの考えが上手くいけば、お互いにウィンウィンの関係になれるはずである。

 

「後は霊地のメンテをしてくれている馬ニキにもお礼を送っておかないとなぁ……。いつもお世話になっているんだからこれくらいはしないと」

 

 馬ニキは定期的に霊道を通ってくれて、新潟、長野、山梨支部を繋ぐ霊道のメンテを行ってくれている。そのお礼はきちんと送らないといけない、と考えるのは自然だろう。

 今まで定期的に霊道のメンテを行ってくれているうえに、十日町シェルターを守るために動いてくれたというお礼はしなければ考えていたのだ。

(実際には結局は見ていただけとはいえ、桜子たちが駆けつけてくれなかったら……。と思うとぞっとしてしまう)馬ニキに対するお礼を色々と送る手配を行っていると、COMPを通してキクリヒメから凍矢へと連絡が入ってくる。

 

「……え? 例の医療班に渡した霊糸が本部の医療班へと渡って、フェイスレスニキ*2からとある提案をされた? 分かった。俺が直接フェイスレスニキと連絡を取る」

 


 

 ──―十日町シェルター、諏訪神社の中に存在する機神社。

 そこには、伊勢・松坂から勧請された麻績屋媛命と、古くから越後の民間信仰として存在する『黒姫様』の二柱の神が機織りの神として祀られていた。

 そのうち一柱、『黒姫様』こと奴奈川姫命は、『浦野牧』に縁深い建御名方神のファミリーであるという事で『浦野牧』へと祀られる事になった。

 だが、その内の片方である麻績屋媛命は、スサノオが逆剥ぎにした天斑馬の逸話から馬ニキと相性が悪いということで祀られるのを断られ、怒り狂った後ですっかり拗ねていた。

 凍矢が、多めのマッカと御神酒である「越ノ氷輪山(蓬莱山)」を持って訪れたのだが、拗ね果てている麻績屋媛命は、床の上で丸くなっていてさめざめと泣いている始末だった。

 

「どうせ……どうせ妾なんか……。(めそめそ)」

 

 その辛気臭さに、相方である黒姫様も思わずうんざりとした表情を見せる。

 麻績屋媛命にとって二人の黒札やロボ部に袖にされたというのはよほどショックだったらしい。

 何とか黒姫様によって活を入れられた麻績屋媛命は、渋々ながら凍矢と相対する。

 今更何の用だ? ご機嫌伺いに来やがって、という表情の麻績屋媛命は、凍矢の言葉を聞いて態度を一変させる。

 

「つまり……。妾の霊糸を手術の縫合糸として使いたいと? ガイア連合の医療班で?」*3

 

 医療糸は回復魔術を使用するので需要は少なくなったが、それでも需要が完全に消え去った訳ではない。

 優れた医者なら自らのMAGを縫合糸として使用できるが、ただでさえ精密が必要とされる手術で自らのMAGを多量に放出するのは、いくら覚醒者でも辛い。

 その点、機織神の霊糸ならば、その状況において性質を吸収性縫合糸や非吸収性縫合糸など特性を変化させることもできる。

 そうなれば、医者の覚醒者の負担も大きく減ることはできるはずだ。

 

「はい、そちらの霊糸を医療用の縫合糸として使用したいと医療系の黒札からの依頼がありまして……。

 これが上手くいけばもっと他の医療系から依頼が来るかもしれません。

 後は、新しく作られた「懸糸傀儡」用の接続用霊糸も作っていただければ……」

 

 それに加え、凍矢はもう一つの提案を行った。懸糸傀儡……つまり某からくりサーカスで使われていた操り人形である。

 これは、言うなれば一反木綿式神を人型に変化させて、霊糸を接続して操る「有線ケーブル式の一反木綿式神(人型)」である。

 一反木綿にはある程度の自動思考は内臓されているが、この操り人形は、霊糸という有線ケーブルでダイレクトコントロールを行うことによって、自分の思う通りに自由自在に動ける、というのが特色である。

 霊糸を通す事によってより強力な契約を結ぶ事によって、転生者と契約した時ほどの強い戦闘力をより引き出す。それがこのコンセプトである。

 

『一反木綿式神は、転生者ならすぐに契約でき、負担も軽くそれなのに、戦闘力もかなり高い』『なにより、自分の式神が敵を倒すと普通のパワレべとはダンチの経験値効率を得られる』と明言されている。*4

 だが、逆に言えば、転生者でない現地民では契約もそんな簡単にできず、負担もそれなり、高い戦闘能力を発揮できない、ということになる。

 

 それを霊糸という有線ケーブルで現地民と懸糸傀儡式神を接続し、ダイレクトコントロールを行う事によって契約を高め、負担を軽くし、高い戦闘能力を引き出すことができる、という現地民向けの装備にしたのが、この懸糸傀儡である。しかも、霊糸という有線ケーブルを通じて、懸糸傀儡が獲得した経験値、MAGをダイレクトに操縦者である現地民に送り込むため、経験値効率も格段に向上できるように設定されている。

(いきなり大量にMAGを送り込ないように、ある程度のリミッターもかけられている)

 さらに人間の意思で動かすのなら、人型であるのが最も適している、と疑似変化スキル(変化スキルDぐらい)を差し込んで一反木綿から人形の姿へと変化させているのだ。

 

 これは少しでも現地民が戦力になってほしい、という考えから作り出された、大量に存在する一反木綿式神の改造版である。

 

 欠点としては、操縦者から離れられない、という欠点もあるが、懸糸傀儡……一反木綿式神は物理耐性を所有しているので、懸糸傀儡を盾にしながら操って戦えばいい、という結論になった。

 霊糸自体で操るのではなく、霊糸を有線ケーブルとして自分の意志で自由に操作して戦わせるので、すぐさま使用できるというのも特色の一つだ。

 元々現地民たち用に作られた物であるが、欠点としては悪魔とほぼ近接戦闘の間合いで戦わなくてはならないことが上げられる。

 これは、山梨支部医療班の一人であるフェイスレスニキが霊糸を見て、何故かもっていた人形系列の技術をロボ部に提供し、「操り人形も広義のロボだな! ヨシ!」というガバガバな範囲でロボ部が試作した物である。

 

(凍矢的には医療用の縫合糸としての活用だけを考えていたのだが、これを見た治療班のフェイスレスニキが何故か、霊糸を有線ケーブル……疑似神経にするアイデア、懸糸傀儡のアイデアや技術をこちらに提供したり*5、黒札たちも「我これ欲しい!」とダダをこねたりする人たちもいたがそれは別の話である)

 

 そして、当然これらを行うという事は、ガイア連合の医療班だけでなく、ロボ部からのMAG、さらに懸糸傀儡を操る多数の現地民からのMAGが注ぎ込まれるということになる。

 それを聞いて、麻績屋媛命は今までの落ち込みはどこにやら、満面の笑みを浮かべて、凍矢の言葉に答えた。

 

「仕方ないですねぇ!! 不本意ではありますが!! そこまで言われてしまっては神としては仕方ないですね!! 喜んで協力させていただきましょう!!」

 

 その提案を受けて、麻績屋媛神は、今までとは異なる満面の笑みを浮かべて、凍矢のその提案を引き受ける事になった。

 


 

「……不本意ならやっぱり止める?」

 

「あっ嘘です、すみません。よろしくお願いします」

*1
【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話様、余話27 新潟行きリヤカーの旅(4)

*2
「カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ TS改造手術()」などに登場する医療班の黒札の一人

*3
漫画のK2でいい糸を医療糸として使用した回があったはず。

*4
小ネタ ガイア・アニメーション山梨スタジオ とある部署の日常

*5
何でやろなぁ……。不思議やなぁ……。(棒)まあ黒幕になっても困るので、フェイスレスニキは単に操り人形が好きということでw

TS現地民、里見柊弥のTS先

  • 今のままの『里見灯花』
  • マギ〇コの『里見那由他』
  • 【無〇迷途】の菫(すみれ)
  • その他

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。