【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち   作:名無しのレイ

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第139話 終末後のオクラホマ州。

 ───旧アメリカ、オクラホマ州。

 アメリカ中央部を支配していた魔王プルートが消え去り、ガイア連合の力……ロボ部が作り上げた浄化柱の力によってオクラホマ州に付与されていたプルートの毒は大分弱まっていた。

 そして、その朗報はアメリカ全土の人外ハンターたちのみならず、旧アメリカ人たち皆が大喝采を上げる出来事だった。プルートに支配されていた我らの土地、国土奪還を行える! USA! USA! と盛り上がるのは当然といえるだろう。

 オクラホマ州全土を奪還できれば、未だ無事な旧アメリカ大都市「ダラス」の最大の盾にもなるし、国土奪還の最前線地帯にもなる。

 だが、それでも「マハーマユリ浄化柱」一本だけでオクラホマ州全土の毒素を完全に消し去れるほど甘くはない。かといって、浄化柱を連続で何本も作ってほしい、という金などあろうはずもなかった。

 そこで狩人ニキはガイア連合に働きかけ、新たな手段を行うことになった。

 

 ……オクラホマ州とカンザス州の元国境辺り。

 この辺りになってくると浄化柱の効力も薄くなり、まだまだプルートの毒素も薄くはなったが残ってはいる。魔蟲すら発生せず、植物や動物さえ存在しないまさに不毛の大地。

 そこに動き回っているのは、ロボ部のパイロットスーツで身を固めた、あるいは蛇神イグの加護などで「毒無効」を持っている人外ハンターのアメリカ人たちである。

 彼らは、土を掘り返してとある物体……小型の樹木の苗木を植えている。それも一本や二本程度ではない。間を開けながら次々と植えているのだ。

 

「よーし! この辺はまだまだプルートの毒素が残ってるからな! 毒無効持っていない奴らはマスク外すなよー!」

 

「『浄化樹』をどんどん植えていけ! こいつはDLV17(LV5)で俺たちでも十分扱える代物だ!! どんどん植えていくだけでいい!!おまけに毒素を吸収したら砕け散るんだっけ? 切り倒す必要がなくて便利なもんだぜ!」

 

 『浄化樹』。正確にいうと『浄化蓄積樹』は、パピヨンニキが行っていた「鉱業廃水をそのまま金属樹プラントへと流し込んで金属樹へと吸収させる」から「重度の金属汚染を受けた土地の環境浄化などにも応用できる画期的な技術になるかもしれない」というパピヨンニキのアイデア*1を実用化させたものである。*2

 

 この技術は「ファイトレメディエーション」と言われ、植物が根などから水分や養分を吸収する能力を利用して、土壌や地下水、大気の汚染物質を吸収、分解する技術である。

 例えば土壌に存在するカドミウム、鉛、ヒ素などと言った有害物質、あるいは重度の金属汚染、それらを根から吸収して浄化樹の内部に蓄える。こうして土壌を浄化しようという案だ。

 金属樹のシステムをさらにいじり、魔界地球でも五行器なしで育成できるようにし、ある特定の物質……ここではプルートの毒素……のみを吸収し、蓄積・金属化させ周辺の大地を浄化するために作成された特殊樹木である。

 特にここオクラホマ州はプルートの毒素に大規模汚染されている。これら浄化樹は大地に汚染されているプルートの毒素を吸収して蓄え、結晶化・金属化させていく。*3

 そして十分に毒素を吸収した浄化樹は、砕けてしまうため、それを毒無効を持つデビルサマナーたちが回収していく、という感じである。

 

 合金樹や金属樹のフィードバックを受けた探求ネキは、ロボ部からの依頼を受けてLVの低い現地民でも使用でき、なおかつ自家中毒を起こさず手軽にプルートの毒素を浄化・蓄積するというこの樹を作り上げたのだ。(データさえあれば探求ネキでなくとも生産できるようになっている。)

 これがプルートの毒素を吸収して完全に浄化するというシステムなら、必要LVは跳ね上がったのだが、あくまでも「毒素を吸収して蓄積・結晶化する」事に留めているため低レベルでの使用が可能になっている。そして、その蓄積・結晶・金属化した物体をどうするのかというと、答えは簡単である。

 

「プルートの毒素を十分に吸収して大地を浄化するだけじゃなくて、それを加工すればプルートの毒素を持つ弾頭「呪毒弾」の原料に変化するんだっけ? 

 呪毒弾を撃ち込まれた天使どもの顔と言ったらなかったぜ!!」

 

 プルートの毒素が結晶化・金属化し浄化樹から変化した仮称「呪毒樹」は極めて危険な代物だが、それを弾丸の弾頭へと加工する事によって、天使たちに対して極めて有効的な手段となる。

 呪毒樹と化した木々を持ち運ぶのは極めて危険ではあるが、イグの加護である「毒無効」*4やATなどの手によって、ガイア連合の基地へと持ち運ばれ、そこで「呪毒弾」*5へと加工されていくのである。これはプルートの毒素を集束させて弾丸にしたような物である。

 

 四文字の警告であり直轄の部下であるプルートの毒素で出来た弾丸を、天使たちが撃ち込まれたらどうなるか? 実質プルートの権能によって倒される天使どもは、とても『いい』悲鳴を上げながら倒れる事になる。

 終末後、過激派天使たちはアメリカでもその勢力を大きく落としたが、アメリカがメシア教勢力の最拠点だった影響もあり、未だにロウ属性に偏った地脈の存在、それによる天使たちはそれなりに存在している。

 とはいうものの、流石に現地民たちにプルートの毒素が結晶化した物体を加工する事は難しい。そして、その加工を行うのはオクラホマ州に進出しているロボ部の傘下のガイア連合の基地である。

 

「まあ、もっとも「呪毒弾」への加工はガイア連合の基地でないと無理だけどな……。

 まさかガイア連合マジでロボを作ってるとはなぁ……。あいつら頭がイッてるぜ。」

 

 アメリカの人外ハンターたちやネイティヴアメリカンの人々は、多数動き回っているAT……アーマードトルーパーとナイトメアフレーム『グラスゴー』を見て、驚きと畏怖の目でそれを見守る。

 冗談で巨大ロボ云々を言っていたが、まさか本気でロボを作り出しているとは予想外だったのである。

 そして、今までアメリカにあまり関心を向けていなかったロボ部がオクラホマ州に基地を作ったのは、やはりクン・ヤンの莫大な鉱物資源である。*6

 黄金が卑金属とされるほどにクン・ヤンの鉱物資源は莫大なものである、と伝承にも残されている。

 だが、そこには超能力を持つクン=ヤンの民が存在している。クン・ヤンの合理的に発達しすぎて、社会が倦怠状態になっている上に地上世界を怖れている。そんな彼らがいかに神である蛇神イグからの命だといえど、ガイア連合の人間たちにそうそう採掘権を渡すとは思えない。

 だが、それでもその鉱物資源は魅力的である。

 それに加えてオクラホマ州は原油が鉱物資源も豊富な土地である。それを逃さない手はない、とロボ部はこちら方面に対しても手を広げ始めたのだ。

 

 それを見ながら、ツァトゥグアとイグの分霊……小トトロとツチノコの姿をした彼らは会話を続ける。

 旧支配者としての異形の姿では人間からの信仰心は得られにくい。

 だが、幼女ネキの提案したこの姿なら人間たちも心をある程度許してくれると理解した彼らは、幼女ネキの作り上げたフォーマットをそのまま利用することにしたのである。小トトロとツチノコの姿をした二柱は睨みあいを行いながら会話を行う。

 

『ううむ……。まさか貴様とこの領土の共同経営を行うとはな……。忌々しいが仕方あるまい』

 

『それはこっちの台詞なんだが? 毒無効のスキルでどんどん信者を増やしおって……。幼女ネキの仲裁がなかったら戦争待ったなしだぞ?』

 

 イグの加護である「毒無効」スキルは、プルートの毒素に覆われたアメリカ中央部を奪還するために極めて有効なスキルである。

 本来は蛇の毒を無効化する加護なのだが、イグは需要に応じて、プルートの毒素すら無効化する方へと調整を行ったのである。それを求める人外ハンターたちは極めて多く、メシア教の惨状を見て、一神教にすら疑問符が沸いている信仰心を失った旧アメリカ人たちは現世利益と言わんばかりに異形の神の信仰を行う者たちも存在した。(もちろん、それに対して異界の神を信仰するなど!といった人々も当然多い)

 

『うむ……。あの幼女を怒らせると怖いのは我が一番よく知っているからな……。ちょっと舐められないために威厳を出しただけでボコボコにされかけるとは……。何であの子我にわりと塩対応で貴様には甘いの? おかしくない?』*7

 

『m9(^Д^)プギャー』

 

『(#^ω^)ピキピキ。……まあ、それはともかく、我々二柱は極めて貴重な《ガイア連合に協力的な旧支配者》だ。このアドバンテージは極めて大きい。旧支配者たちの現在の動向や情報をリアルタイムでガイア連合に教えるだけで向こうにとっては値千金だ。このアドバンテージを使わない手はない』

 

『まあ、我はめんどくさいから足で最新の情報を集めるのなんてごめんこうむるがな! 旧支配者がガイア連合に与していいのか? 旧支配者同士の争いなんて日常茶飯事だ。クトゥルフとハスターを見ろ。年がら年中殴りあってるではないか。旧支配者同士の連帯感や仲間なんて意識など欠片もないわい』

 

  ツァトゥグアの言っていることは事実である。旧支配者同士でも対立関係であることは珍しくない。有名なのはクトゥルフとハスターとの対立関係である。人間である邪神ハンターたちがこれを利用して、対クトゥルフの戦力としてハスターの力を借りるのはよくあることである。

 よってツァトゥグアやイグたちが人類に力を貸して、他の旧支配者たちと敵対を行っても別に珍しいことではないし、旧支配者たちを裏切ったなどということもない。元々そういった連帯意識などほとんどないのだ。

 これは暗にイグに対して「情報収集は頼んだぞ」と言っているのである。イグは全ての蛇の神であり、旧支配者の中でも古く。相応に強大な神である。世界にあちこちに存在する蛇を使役して他の旧支配者たちの動向を探る。これがイグに期待されている役割である。

 そして、ツァトゥグアは他の旧支配者の動向を探り、それをガイア連合へと教える。彼ら人類に対して好意的な旧支配者は、他の旧支配者と戦う際に極めて有効になるはずである。

 

『それにあの……幼女ネキ?だったか?我の方はそれなりに恩義がある。我は極めて執念深い反面、恩義の方もきっちり返すタイプだ。幼女ネキの顔を立てて人類……ガイア連合の力になるのに否はない。貴様はどうなんだ?』

 

『我?そんなの決まっておるだろう!ガイア連合が作り出した美味・珍味を腹一杯食べて満足する!それだけよ!!美味・珍味を作り出すガイア連合がなくなっては困るからな!そのためにならいくらでも力を貸してやろう!!』

 

はははは!と笑う小トトロを見て、イグであるツチノコは、はあとため息をついた。

*1
「ファッション無惨様のごちゃサマライフ」様小ネタ 佐渡 これは鉱業なのか林業なのか 

*2
使用レベルが低いのは「毒素を蓄積・結晶金属化」する機能しかないため。本格的に毒素を浄化するシステムを搭載するとさらにレベルは跳ね上がると思われる。

*3
某ナウシカの腐海とほぼ同じシステム。ただしこちらは菌類ではないし、瘴気を排出することもない。

*4
本来は蛇の毒を無効化する加護なのだが、それを拡大解釈した。

*5
ムド効果&POISON効果を相手に与える。

*6
【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策」様 転生ようじょ、渡米する。⑥

*7
トトロだからね。仕方ないね。




〇終末後の旧アメリカ勢力(自設定)
・ダラス、ニューストン→アメリカにおけるガイア連合の拠点地。同時に狩人ニキたちの拠点地。
・ニューオリンズ、マイアミ、キューバ、バハマ→ゲーデが支配拡大中。
・オクラホマ州&アメリカ中央部→ツァトゥグア、イグが支配拡大中。中央部浄化・奪還を狙っている。
・ロサンゼルス&サンフランシスコ→メシア教穏健派の最大拠点。(過激派も含む)
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