『こちら馬ニキ!! 対象目標を発見! これより追跡に移る!!』
終末後、人の通行がほとんどない霊道。そこを疾走しているメシア穏健派の終末対応の車は、新潟港から逃れた隠れ過激派の一派である。
だが、それを逃すほどガイア連合は甘くはない。当然彼らにも追跡の手が瞬時についていた。
終末対応の車を真後ろから追いかける八本足の巨体の馬。つまり、スレイプニルと化した馬ニキである。*1
スレイプニルと化した馬ニキは、その高い機動性、速度性、悪路走破性など敵の追跡を行うのに最適の存在だった。
くそみそニキからの連絡を受けた彼は、馬形態に変化してそのまま指示されるままのルートを通って、メシア教の車と遭遇、そして車の追跡へと移ったのである。
思念波でCOMPに対して通信を行った彼は、そのままメシア穏健派の車に対して真横から体当たりを仕掛けていく。いかに車といえども、巨体の馬からのサイドアタックに耐えられるほど強くはない。
体当たりを仕掛けられた車は、そのまま霊道から側転しながら転げ落ちていった。
『よし! このまま「白いCOMP」とやらの確保を……!!』
スレイプニル状態の馬ニキがそう呟いた瞬間、その車の中から凄まじい力が放出された。
その迸る猛烈なMAGの前に、車の中にいたメシアの隠れ過激派たちは瞬時に骨も残らず消滅した。
ふわり、と宙に浮かんで猛烈なMAGを放つ白いCOMPを見て、馬ニキは猛烈な危険を本能的に悟ったのか、その速度を生かして、急速にその場から離脱した。
『ヤバい……!! 悪い!! このまま離脱させてもらう!!』
その馬ニキの状況をCOMPで聴きながら、阿部晴明*2は眉をひそめながら言葉を放つ。
「やっぱりダメだったか……。まあいい。ここまでは予想通りだ。悪いな田舎ニキ。ハルカをそちらに急行させるから二人で『アバドン・ハレル』を何とかしてくれ」
「それはいいんだけど……。くそみそニキはどうするんだ?」
「こちらはS県の浜に結界を張って最終防衛線を構築する。S県の海に辿り着かれて『穴』を作られて大天使サタンを呼び寄せられたらアウトだ。セツニキ、探求ネキ、俺の三人で最悪の場合叩き潰す。……もちろん、そうならない事が最善だが。」
文字通りの「背水の陣」である。くそみそニキ……阿部清明、セツニキ*3、探求ネキ*4の三人が纏めてかかればいかにアバドン・ハレルといえども殲滅はできるだろうが、万が一でも三人を抜かれてS県の海に辿り着かれてはアウトだ。
その前に彼を叩き潰せるのならそれが一番最善である。
そのための遊撃・迎撃隊として田舎ニキ……凍矢とハルカの二人で抑え込んでほしい、というのが阿部の考えであった。
「……ああそうだ。忘れるところだった。コイツを持っていけ」
そう言いながら、阿部は凍矢と式神である破裂の人形に、ネックレスを投げつける。
そのネックレスにかけられた青い石からは、とてつもない死と星の力が封じ込められていた。
「ソイツは、アマツミカボシが持っていた死の星の力が秘められている『宿魂石』を加工したものだ。
アバドンの分身である『アバドン虫アポリオン』は凄まじい再生能力を有している。
それを持っていれば再生能力を封じ込めることが可能なはずだ。本来ならば武器にできていればよかったんだが……。ハルカにも渡しておいたから、アイツもアバドン虫と戦えるはずだ。」
アバドン王アポリオンを倒す際、かのライドウは『宿魂石』から『斬蝗陽滅刀』を作り出し、その再生能力を封じ込めて倒せるようになった。
この『滅蝗陽滅石』を手にしていれば、同じように強力なアポリオンたちの再生能力を封じることができるはずである。恐らく、これは彼だけでなく、ハルカや他の強力な黒札たちにも渡されているのだろう。
超劣化分身であるアポリオンならば異能者でも倒すことは可能だが、強力な分身である『アバドン虫アポリオン』を倒すためには必要なアイテムである。
ともあれ、その彼の考えも田舎ニキ……凍矢も異論はなかった。彼もその敵を抑え込むためにハルカの力を借りればこちらも楽になる。二人で抑え込めば楽になるだろう、という阿部の考えはこちらでもメリットがある。
ともあれ、凍矢は破裂の人形を呼び出し、即座に敵の迎撃を行うために、派出所の外からシェルターの外へとトラポート、そして破裂の人形を戦闘機形態に変形させると、即時に空へと飛び去っていった。
馬ニキが急速離脱した後、その場では宙に浮かぶ白いCOMPが周囲全ての存在をMAGに変換して食らいつくしていた。霊道も、メシア教の車の残骸も、周囲の大気、地面、霊脈などあらゆる存在を食らいつくしていく。
それは、全てを食らいつくす貪欲と蝗害の化身、アバドンの力によるものである。
そして、全てを食らいつくしながら、COMPから立体型魔法陣が展開され、そこから純白であり複眼を持った仮面ライダーに似た姿が実体化される。
>アバドン・ハレル LV140
DLVではなく、ガイア連合式のLVで100を超えて超越者の領域へと到達してしまった存在。それこそが彼である。アバドンは真・女神転生2ではLV58。
それを超えるLV100の超越者の領域に到達したのは、このアバドン・ハレルが本霊に限りなく近い&半終末において暴れまわったアバドンに対する恐怖の念などで蓄えたMAGやリソースを全てこの分霊につぎ込んでいるからだろう。
つまり、半終末で蓄えたリソースをほぼ全てつぎ込んだのを見ても、アバドンの本気さが伺える。
元々、アバドンは真女神転生2ではセンターの「天使に戻してやる」という言葉で街一つを飲み込むほど天使への執着心が強い。(少なくとも女神転生では)
それをメシア教過激派に唆されてこの分霊が出来上がったのだろう。
LV60ですら【個人で地球規模の危機を引き起こせる】の力を有している、と明言されている。*5その倍以上の存在が日本に上陸したなどとなれば、核ミサイル攻撃とはまた異なる、まさに喉元に刃を突き付けられた形である。
実体化したアバドン・ハレルは空中からふわり、と地面に舞い降りる。そして、それとほぼ同時に空中を破裂させたような轟音とソニックウェーブをまき散らしながら、超音速すら超える速度で戦闘機形態の「破裂の人形」がこの空域に飛来する。
そして、ギルスレイダーに乗ってこの場に急行してきたかつて大天使サタンを倒した「鷹村ハルカ」*6も到着する。師匠である阿部から事情を聞かされた彼は、慌てて迎撃のためにこの場所へと向かってきたのだ。
「アレが……アバドン・ハレル!!」
すでに仮面ライダーギルスへと変身を行っているハルカは、「破裂の人形」から舞い降りて、デモニカ「グリスブリザード」と装備している凍矢と並んで、アバドン・ハレルと向き合う。
そこで、凍矢はアバドン・ハレルに対して奇妙な感じを覚えた。まるで親近感ともいえる奇妙な僅かな感覚。だが、そんな感覚に違和感を覚えながらも、そんなことを気にしている余裕はなかった。
そして、油断なくアバドン・ハレルに対して構えを取りながら、ハルカは彼に対して言葉を放つ。
「問おう!お前は何をしに来た!!お前の目的は一体!?」
ハルカは、アバドン・ハレルと対面しながら問いかけの言葉を放った。ハルカも阿部から大まかな情報はきちんと聞いてはいるが、きちんと確認を取らなくてはいけない、と考えるのはやはり彼が正義の味方だからだろう。その問いに、アバドン・ハレルは、ふむ、と頷くと別段隠すでもなく無造作に言葉を放つ。
「では、その問いに答えよう。『大天使サタン再臨』それが我々の目的だ。天使アバドンの力によって奈落の鍵を使用し、大天使サタンを再びこの地へと再臨させる。そして、サタンのメギドアークで地上を全て吹き飛ばし、全てをゼロに戻す。メシア教はそこから地上を再建するつもりだが……俺の考えは違う。」
アバドン・ハレルは、ゆっくりと両手を広げると、そのまま静かに言葉を放つ。
「何もかも全てを虚無へと還す。地上のみならずこの地球全てをイレースして地球を消滅させる。
サタンの全力のメギドアークならば、魔界地球自体を消滅させることも可能なはずだ。
魔界地球自体も人類も悪魔も全て消滅させて、全てに虚無という救済を与える。これが俺の目的だ。」
その彼の言葉に、思わず絶句する二人に対して、アバドン・ハレルは彼らを真正面から見ながら、両手を広げたまま静かにさらに言葉を紡ぐ。
「人類も地球もメシア教も多神教も、何もかも全てが生まれてきたこと自体が間違いだったのだ。
全てを消し去り、全ての魂を平等に虚無に還すことで不幸も不平等も貧困も飢えも苦しみも、この世界の苦しみを何もかもなくして救済する。これが俺の人類
アバドン・ハレルはじっとハルカと視線を合わせながら、静かな言葉を投げかける。
「……確かお前はこういったな。「人間は全て仮面ライダーだ」と。だが、人間はそんなに強くない。皆疲れ切っている。誰もかもが皆疲れ果てているんだ。そんな苦難に満ちた生よりも、皆安らかな平穏な世界へと行きたいんだ。
……まあ、ガイア連合の本部は残るかもしれないが、黒札どもなど地球の残骸と共に永遠に宇宙を彷徨えばいい。いい気味だ。」
その奇妙な黒札に対する嫌悪感に凍矢は思わず疑問を覚えるが、ハルカはそれに対してさらに疑問を投げかける。
「大体、サタンが降臨したところで大人しくいうことを聞いてくれるとでも思っているのか!
直接相対した僕には分かる! アレは人間ごときが制御できる存在じゃない!!」
「できるさ。いや、アバドンの力を有している俺ならばできる。アバドンはサタンを閉じ込める役割を担っているが、同時にサタンとも同一視されている。
今の俺ならば、サタンを取り込んで自分の思い通りにする……ことは難しくとも、少なくとも全身全霊のメギドアークをこの魔界地球に叩き込むことはできる。」
それだけを言うと、アバドン・ハレルは、一度黙り込むと、今度は先ほどまでとは異なった震える感情的な言葉を吐き捨てる。
「ガイア連合は黒札を助ける組織、黒札のための相互補助組織。そういっているな。
だったら……。だったら何で……。俺たちを助けてくれなかったんだよお前たちは……!!」
「!!?」
その言葉に過敏に反応したのは、凍矢だった。アバドン・ハレルに感じた微かな共感。それは恐らく同じ転生者であることの反応だったのだろう。
「まさかお前も……転生者か!!」
普段は感じない転生者としての気配を感じたのは、アバドン・ハレルは一人の転生者だけでなく、数人……いや、下手をすれば数十人、それ以上の転生者の融合体だからだろう。
LV100オーバーであるのも、何十人もの転生者の素体を使用しているとなれば納得がいく。
アメリカに生まれたり海外に生まれたりして、ガイア連合が救えなかった転生者たちの融合体。それが彼なのだ。
「俺を見ろ黒札ども。俺はもう一人のお前だ。お前たちが救えなかった無念の塊だ。
その無念を持って、のうのうとしているお前たちを虚無に還す。」
アバドン・ハレルはすっと人差し指を天に指して、世界に轟け、と言わんばかりに絶叫する。
「我を恐れよ! ガイア連合!! 我は貴様らが見捨て、見殺しにした転生者たちの憎悪と怨念の塊である!! その意思を持って、我は貴様ら転生者を虚無へと還す!! これが我らの大義である!!」
「ショタおじとやらも、他の高レベルの黒札どもも、地球自体が吹き飛んでしまえば何もできまい。貴様らは永遠に宇宙空間を彷徨え。それがお前たちに下された罰だ!!」
メシア教過激派「メギドアークで地表を吹き飛ばして過激派の楽園を作る!」
アバドン・ハレル「メギドアークで地球自体を粉々にして地球も人類も消滅させて、苦しみから救済してあげるね!後黒札もガイア連合も絶対許さねぇ。」(BGM:甘き死よ、来たれ)
アバドン・ハレルは、「【カオ転三次】がんばれシフター ギラギラ転生記 ~僕がライダーになった理由~(仮)様」からイッチの情報をアバドンが引き出していたので、アバドン・ハレルが仮面ライダーの姿になりました。と入れたかったのですがうまく入れられなかった。