【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち   作:名無しのレイ

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シン・仮面ライダーの大量発生型相変異バッタオーグとの戦闘シーンは大好きなんだが、トンネル内部での戦いが劇場だと何してるかさっぱり解らねぇ……。になりました。


大天使サタン再臨計画⑤

 アバドン・ハレルにより空が真紅に染まり、その余波は各シェルターにも及んでいた。

 当然、凍矢の故郷である魚沼シェルターもそれに対応するために対策を行っていた。

 魚沼シェルターを取り囲むように各部から無数の金属で構築された円筒形の物体『マニ車』が地下からせり出していき、マントラではなく祝詞が刻まれたそのマニ車はカン高い音と共に高速回転を行う。

 地下要塞シェルターにある防衛司令部では、それらを操作するために無数の人々がモニターに注目しながらキーボードを叩き込んでいた。

 

「結界増幅マニ車機関発動開始!」

 

「了解! 発動開始! 回転数一分間につき三万回転まで上昇中!! 各マニ車機関オールグリーン!!」

 

「焼き付いても構わない!! 全力でブン回せ!!」

 

 キュイイイン!! とカン高い唸り声を上げながらマニ車機関は高速で回転して魔術詠唱……いや、神々への祝詞を超高速詠唱を開始する。

 探求ネキが開発した反復詠唱による概念強度上昇術式によってシェルターの結界強度を強化してさらに霊的防御力を増幅させているのだ。

 LV100オーバーの超越者の領域に到達した敵対的存在が本気で敵対行動を行った余波は、新潟県の各シェルターにも及んでいた。

 各都市シェルターの霊的防御結界も、その余波によりミシミシと悲鳴を上げているのだ。

 ガイア連合が終末を乗り越えるために作った都市型シェルターの結界が、である。

 このシェルターは増幅装置により問題はないだろうが、他の都市シェルターの住人たちはミシミシと悲鳴を上げる結界に背筋を冷やしていることだろう。

 例えて言えば、台風により家の窓などがガタガタと震えているようなものだ。余波だけで結界自体を破壊することはできない。

 だが、その結界が文字通りの意味で命綱である市民たちにとっては、顔色が真っ青になっても不思議ではないだろう。

 

「各種マニ車機関、8割が出力80%まで上昇中!! 結界強度向上を確認!! 泡状結界各部問題なし!!」

 

「余波だけでこれだ……!! 小千谷シェルターや長岡シェルターは無事なんだろうな……!?」

 

 そんな魚沼シェルター地下の防衛司令室に籠っている黒札たちや現地民たちが騒いでいる中、異質な中にもさらに異質な存在がモニターに向かってキーボードを叩き込んでいた。

 それは銀髪をツインテールにした小柄で無表情な少女……この魚沼シェルターに存在する『鳥煮亭総合学園』に所属する小等部の『星野』と呼ばれる生徒である。

 元はとある悪魔の転生体だとかでプログラミングや電子情報管理に極めて強く、鳥煮亭総合学園の上層部である『ティーパーティー』の一人であるセイアの補佐を務めている。*1

 それゆえ「電子の妖精」の二つ名をもらっているが、それが彼女の本質をついていることを本人含めて誰も知る由はなかった。

 小等部である彼女を、こんな所でモニター監視勤務に努めさせていいのか? という疑問は到底大人たちの間では出たのだが、危険極まりない最前線ではなく、安全な地下基地でのモニター監視ならばまぁ……という事でなし崩し的に許可された彼女は、人間では到底及びもつかない凄まじい処理速度で業務をこなしている。そして、画面に浮かんでいる大量の情報を解析しながら、ふと思考の片隅で別のことを考えていた。

 

(しかし、この技術とマシンや電霊を組み合わせれば機械も魔術を使用することができるのでは……? いえ、マニ車自体は増幅装置に過ぎない。機械、電霊の『意思』が魔術を行使できるかにかかっている。もし、電霊が高度な攻撃魔術や防御魔術を使えていたとしたら、私だってあの時……)*2

 

 いわゆる『前世の記憶』というものだ。すでに覚醒している彼女にはこういう『前世の記憶』が断片的にフラッシュバックしてくる事が時折ある。

 どうも自分の前世は人間ではなく、特殊な鎧……デモニカに憑依した悪魔『電霊』だったらしい。

 完全な記憶ではなく極めて断片的なものではあるが、その『前世の記憶』は見るも無残な物だった。*3激しい戦い、大量に死んでいく善き人々。天使を名乗る悪魔が無辜の人々を蹂躙していく記憶。戦い、戦い、戦い。そして迎える無残な末路。そこからしたら、この平穏な地域はまさに天国そのものの世界である。

 失うな、守り抜け。前世の記憶は彼女にそう常に叫びを上げていた。

 そんな大人が見ても発狂するほどの凄惨な記憶は、まだ幼い彼女に多大な影響を与え、その幼さとは相反する大人びた言動と諦観した観点を彼女へと与えていた。

 それを救ってくれたのは、実家がラーメン屋を務めている彼女の幼馴染である『天川』という少年である。今彼女がここにいるのも、彼が自らの身を守るための「デモニカ」を購入するためのアルバイトということでもあるのだ。

 

(いえ、いけない。今は集中。この楽園ともいえる場所をなくす訳にはいかない。この地の平穏がいかに尊いものであるかは私自身が一番知っている。それに、デモニカを購入して幼馴染に護身のための力を与えないと……)

 

 彼女は頭を振って雑念を振り払うと、再度自分の業務に集中すべくキーボードを叩き始めた。

 


 

 >大量発生型相変異型アバドン虫アポリオン LV70×11体。

 

 アバドン・ハレルが生み出した『大量発生型相変異型アバドン虫アポリオン(人型)』

 11体の生み出された彼らは自らのバイク……黒いサイクロン号に乗って地面を疾駆しながら、アサルトライフルを突き付けながらこちらに対して銃撃を仕掛けてくる。

 もちろん、そんな彼らが放つ銃弾がただの銃弾のはずがない。

 その銃弾、弾頭も超小型のアバドン虫アポリオンが変化したものであり、高位の霊能者、黒札たちであろうとまともに食らったら大ダメージを受ける代物である。

 それに対して、凍矢の盾であり剣でもある彼の式神『破裂の人形』は、前に出て手にした大型ラウンドシールドで銃撃を受け止める。

 まるで弦楽器のように、盾が無数の銃弾を弾き返す激しいカン高い音が響き渡る。

 

「マスター! バイク形態に可変します!! 乗ってください!」

 

 銃弾を盾で受け止めた『破裂の人形』は機械体から変化スキルを使用して金属音と共に可変を行う。それはいつものように飛行形態の戦闘機状態ではなく、二輪の車輪で動く……つまりバイク形態へと変形した。

 純白のカウルに後方に六本の大型マフラーを装備したその形態は、まさにシン・仮面ライダーの『サイクロン号』だった。

 相手がバイクならば空を飛行するより、地上の機動性を考えた結果バイク形態の方が良いと判断したのだ。

 

(上空を飛行しながら空爆で仕留められれば楽なんだが、それで仕留められるほど甘い相手じゃないか……!!)

 

 グリスブリザードを纏った凍矢は、右手のパワーアーム「GBZデモリッションワン」を粒子化させてCOMPのストレージボックスにしまい込み、普通の両手でサイクロン号と化した『破裂の人形』に跨り、バイクを操作する。

 ハルカもギルスレイダーにまたがり、最高速で疾駆しながらそのドライビングテクニックでアバドン虫アポリオンたちの銃撃を回避していく。

 

(このままここで戦う訳にはいかない……! 余波で新潟のシェルターに大きな被害が出かねない。そうなれば被害の少ない場所……ほぼ無人地帯の長野県にまで誘導する!!*4

 

 ちらりと隣のハルカを見ると、彼もそれに賛同したのか微かに頷く。

 アバドン・ハレルも主目的はサタン再臨のためにS県に辿り着く事であり、各種シェルターなど攻撃している余裕はない。

 そんな暇があったら少しでも前に進む事を選ぶだろうが、別に各シェルターが吹き飛んでも無関心だろう。それは逆にいうなれば、その無関心さを利用して彼を都市部近辺から引きはがす事が可能という事である。

 

 アバドン・ハレルは背中からまるで蝶の羽のようなプラーナ……もといMAGを発生させ、自らの頭上にエンジェルハイロゥを展開させ、さらにふわりと飛行しながら空を駆ける。

 彼は、アバドン虫アポリオンたちで凍矢たちの足止めを行い、その隙に少しでも前に進もうという意思が感じられる。(それにこれだけの存在を生み出しておいてアバドン・ハレルも無傷ではすまず、多少レベルダウン&消耗しているのでこれ以上の損耗を避けたいというのもある)

 この場を戦場にしたくない凍矢。前に進みたいアバドン・ハレル。そして凍矢やハルカに攻撃を仕掛けて彼らを削りたいというアバドン虫アポリオンたち。この三者の思惑が図らずも一致して戦場を移すことになったのだ。

 

 バイクに乗って攪乱態勢に入る凍矢やハルカに対して、11体のアバドン虫アポリオンたちは、真横に一列に並ぶと、量産型サイクロン号のマフラーから猛烈な火炎を吹き出しながらウイリーを行ってバイクを盾代わりにしながらガガガガ!! と手にしたアサルトライフルを連射する。

 その一糸乱れぬ行動はまさしく異常そのものだった。

 それに対して、凍矢はバイクと化した『破裂の人形』を同様にウィリーさせ、『破裂の人形』を盾としてその弾丸を弾き返す。そして、サイクロン号と化した『破裂の人形』のマフラーが変形し、同様にブーストジャンブを行いながらジャンプし大量発生型相変異型アバドン虫アポリオンの一体の顔面にバイクと化した『破裂の人形』の前輪を叩き込み、そのまま再度跳躍する。

しかも、それだけではなく、さらにハルカのギルスライダーも同様にジャンプし同じく前輪の一撃を叩き込む。

 これに耐えられなかったのか、大量発生型相変異型アバドン虫アポリオンの一体はその衝撃で地面に叩きつけられ、爆散して消滅していく。それに振り向く事なく、凍矢もハルカもアバドン虫アポリオンたちを引き連れながら二人揃ってバイクを疾駆させていった。

 

(このまま開けている道路上で戦ったら、完全に連携の取れている向こう側が有利だ。いかに俺たちでも連携の取れた相手は厄介極まりない。ならば狭くて相手の動きをある程度封じ込められるトンネル内部で戦闘を行う!!)

 

「ついて来てくれ!! 奴らを新潟から引きはがし、トンネル内部に誘い込む!!」

 

「了解ッ!!」

 


 

『【カオ転三次】 終末に向けての準備するとある転生者の話』の作者の黒焦げ様から『破裂の人形』の挿絵を頂きました!!

どうもありがとうございます!!とても嬉しいです!!

『破裂の人形【機械体】』

 

【挿絵表示】

 

『破裂の人形【人間体】』

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

*1
『小話 とある大悪魔の半終末』に出てきたアキトのデモニカに存在していた電霊バロウズの転生体。アキトの魂と一緒にこの地に幼馴染として転生した。「ファッション無惨様のごちゃサマライフ」様「魚沼TSV ~転生者バリエーション~ 02」から。

*2
実際電霊Aionやネミッサなど電霊はバリバリ魔術を使用している。彼女が戦えなかったのはデモニカやシキガミによる縛りだと明言されている。

*3
詳しくは、『小話 とある大悪魔の半終末』&『おまけ サヤカちゃんネタ』の内容。結構キツイ話なので読まれる方は気を付けて下さい。

*4
【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話」様によると、終末後の長野県はほぼ無人の地となり、黒札シェルター2つ(馬ニキとレイプマンニキ)、多神連合シェルター2つ(戸隠神社・諏訪大社)、メシア教シェルター1つ(軽井沢)程度しか残っていないらしい。

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