【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち   作:名無しのレイ

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大天使サタン再臨計画⑩

 そして、テラゲート一号の牢獄の内部に、コツコツと足音を立てながら一人の青年が入ってくる。

 メガネをかけた神経質そうな青年。彼はKSJ研究所の創始者の一人である「カズフサニキ」*1と言われる黒札の一人である。

 自分から滅びにいったというのに、わざわざここに閉じ込めるということは、賠償なり何なりするのにも少なくとも何かしらの話があるということだろう。

 最早まな板の上の鯉と同じ状況であるアバドン・ハレルは、ため息と共に彼に話しかけた。

 

『……あのさぁ……。あの話の流れで俺たちを閉じ込めるか普通? 暴れまわった罪を償うために虚無に還るって言ったじゃん……。そっちの方が話の流れ的にスムーズだろ?』

 

「そうだな。だが残念ながらそうスムーズに行かないのが世の中って物だ。そして、虚無に還るぐらいじゃお前の罪は償えないって奴らもいるんだ。それにそもそもガイア連合に牙を剥いた奴をタダですませるわけないだろ? お前も某スカディ*2のことぐらい聞いたことあると思うけど?」

 

 そのカズフサニキの言葉を聞いて、アバドン・ハレルの魂は、はぁ~と深々とため息をついた。

 

『……全く持ってこの世界はクソ&クソな世界だな。ゆっくり休む事もできやしない』

 

「まあそれには同意する。まあ、憎悪と怨念の塊にさらに憎悪を上乗せしても暴走するだけだし。

 幸せになりたかったと言ってた被害者に外道行為をさせたら仮面ライダーがマジ切れしそうだしね……。

 そこでそちらにとっても利益のあるウィンウィンの話を持ってきた。

 つまり、メシア教過激派への復讐『乗った』いや判断がはえーよ。もうちょっと詳しい話聞こうぜ……」

 

 カズフサニキの言葉に、迷うことなくアバドン・ハレルの魂は同意した。彼の思考を誘導していた天使の羽は存在せず、今の彼は正確な思考判断を行える。

 つまり、悪いのはガイア連合や黒札ではなく、メシア教過激派であるという至極単純な理屈を今の彼は理解できるのだ。半分燃え尽き症候群である彼だが、過激派への恨みとなれば話は別である。自分をこんなに無茶苦茶にしてくれた過激派がのんびりと暮らしていると思えば聖人君子でも怒り狂わないほうが無理だろう。目的を見失っていたアバドン・ハレルに対して、カズフサニキの言葉は彼の心を見事に奮起させたのだ。

 

(まあ、燃え尽き症候群になって何もしないよりは、何らかの目的で奮起させた方がいいからな。こちらはちょうどいい手駒をゲットして、向こうは復讐のために働く。これぞウィンウィンの関係だな! ヨシ!!)

 

 元々、KSJ研究所が陰であれやこれや動き回っていたのも、対メシア教に対してちょうどいい人材としてアバドン・ハレルをスカウトしたかったという理由が大きい。他の黒札からも「暴れまわったコイツを贖罪・賠償のために馬車馬のように働かせます。暴走しないようにきちんとこちらで制御しますし責任も取ります」と言えばどこからも反論がでる事はないだろう。こうして、アバドン・ハレルはKSJ研究所の配下に下ることになったのである。

 

 


 

 ──―メシア教過激派の拠点。

 地上がメギドアークによって焼き払われても問題ないほどの地下深部に作られた秘密要塞基地。そこは空中機動救済箱舟ノア型一号艦『ヴーセ(贖罪)』とアバドン・ハレルを作り上げた過激派の一大基地である。だが、その基地は、今や壊滅状態になっていた。

 あちこちが破壊され、火を噴いている基地。地面に倒れ伏している無数の過激派のメシア教徒。そして、地面に倒れているこの基地のトップの大司教は、目の前に立っている男に悲鳴のような言葉を浴びせた。

 

「な……。何故だ!? 何故貴様が!? 貴様は滅んだはず!! いや、そもそも何億もの呪的束縛!! 「大天使カマエル」様の宣教の羽の思考誘導!! それだけガチガチに縛られているはずの貴様がなぜ我々に逆らえる!! ───アバドン・ハレル!?」

 

>魔王アバドン・ハレル LV120

 

 ハレル化……天使化しながら魔王であるというのは矛盾極まっているが、ともあれ彼自身も天使のままだとまたメシア教に好き勝手されそうだと判断し、苦労して種族を変更したのである。

 当然暴走しないように、霊核である心臓・脳に遠隔起爆用のメギドラオン術式が組み込まれているし、体各部にもメギドラオン術式が組み込まれ、首には贖罪中の罪人である事を証明する『首輪(当然メギドラオン術式内臓)』もつけられてガチガチに固められている。

 アバドン・ハレルが破城槌となって真正面から基地に突撃して、秘密の脱出口から逃げ出した上層部は

 その大司教の言葉に、アバドン・ハレルはすっと指を天に向けながら言葉を放った。

 

「ふむ。ではお約束ではこのセリフを言わせてもらおうか。

 ……「貴様らに復讐するために、地獄から戻ってきた」とな。『主いひ給ふ、復讐するは我にあり、我これに報いん』……復讐するは神に無し。神はただ傍観しているだけに過ぎない。ならば、復讐するは『我ら』にあり、だ」

 

「ああ、よく分かった。終末前の世界も、半終末の世界も、お前たちは世界を食い潰す事しかできない。

 救済のためと言いながら世界も人類も食らい潰して消耗させていく。お前たち過激派こそが『アバドン』だ。食らいつくすしか脳がない蝗以下のクズどもだ」

 

 地下要塞の重要部がアバドン・ハレルの巨大な力によって破壊されており、過激派のメシア教徒たちは全て床に転がっているが「死んではいない」。

 いや、死んだ方がマシなほどの苦痛にもがき苦しみながら皆のたうち回っているのだ。

 これは、元のアバドンが持っている伝承「人々に死さえ許されない5ヶ月間の苦しみを与える」という能力そのままである。

 

「ば、バカな……! 何故我々が……!! 我々は主に仕える……!!」

 

 だが、この能力は「ただ額に神の刻印を持っていない人間だけにするように」つまりキリスト教徒以外の人間にしか効果がない能力である。

 メシア教徒である自らにその能力が通用するはずがない、と大司教は考えていたのである。

 だが、そんな大司教を、アバドンハレルは嘲笑しながら見下ろしていた。

 

「ヨハネの黙示録きっちり読んでおけよ。聖書エアプが。簡単な理屈だ。お前たちは『キリスト教徒じゃない』だろ? アバドンが刺すのは、キリスト教徒以外の『異教徒だけ』だ。お前たちメシア教過激派が異教徒、異端でなくて何なんだ?」

 

 それは、アバドン直々に「お前たちは主に仕える存在ではなく異教徒、異端者である」と認定されたのと同じである。自分たちは主に仕えた選ばれた存在である、という無駄に高い盲目的なプライドをへし折るには十分だった。それに気づいた大司教は、思わず絶叫するが、それをアバドン・ハレルはせせら笑いながら見下ろす。

 

「きっちりヨハネの黙示録通りに「五ヶ月死んだほうがマシな苦しみ」を与えるような毒にしてやったぞ。

 逆に言うと「五ヶ月間死ぬことも身動きもとれずに猛烈な苦しみに合う」って事だ。

 ……この終末時に、救いも来なくて、身動きも取れずに五ヶ月間死ぬほどの苦しみを味わうなんて、末路は知れているような物だがな。せいぜい苦しむがいいさ」

 

 過激派たちはアバドン・ハレルのこの毒を叩き込まれて、死ぬこともできずに皆のたうち回っているのである。この後、メシア教に恨みを持つ者たちが強襲してくるか、それとも占拠しようと大悪魔が襲い掛かってくるか、はたまた彼の後ろ盾であるカズフサニキたちが何らかの用途を見出して占拠するか。

 それは不明ではあるが、どのみち彼らが死んだほうがマシ以上の苦しみを味わうのは確実である。

 

「く、クズが……お前たちにその力を与えたのは誰だと思っている! 我々が貴様にその力を与えたのだぞ! この恩知らずの恥知らずめ!! 大悪魔のろくでなしめ!! 地獄に落ちろ!!」

 

 自分で転生者たちを攫っておいて無理矢理改造し、無理矢理膨大な力を植え付け、洗脳して殲滅兵器へと改造させておいて、いざ自分たちに反逆したらこの口ぶりである。

 この発言が、アバドン・ハレルの地雷の上でタップダンスしているのは言うまでもなかった。

 しばらくの沈黙の後、静かな怒りを秘めてアバドン・ハレルはすっと片手を上げて大司教に向けて呟く。

 

「……なるほど。よくわかった。このまま五か月間放置しておこうかと思ったが気分が変わった。ならば、俺の得た新しい能力をお前たちに見せてやろう。

《逆行・天路歴程》ッ!! *3

 

 メシア教過激派内部の結界は、汚れた存在などを全て消しつくす、息苦しいほどの「清潔さ」によって構築されている。生あるものを許さない全てを純白に塗りつぶす絶対の白。

 アバドン・ハレルは力を解き放った瞬間、その絶対の白とも言える結界内部は『反転』した。

 秩序溢れた神聖さの雰囲気が全く逆になり、漆黒の絶望に満ち溢れた結界へと転落する。神聖さは全て消え去り、怒りと絶望に満ち溢れた結界……つまり、DARK-CHAOSの結界へと変貌する。

 

 アバドン・ハレルの特殊能力『逆行・天路歴程』は「天路歴程」という本を元にした能力である。この本は「破滅の町」にいたクリスチャンという男が、「虚栄の市」や破壊者アポルオンとの死闘など様々な困難を通り抜けて、「天の都」にたどり着いたという内容である。その本の内容を逆転させ、「天の都」から「破滅の町」へと戻す、つまり簡単に言うと【メシア教(一神教含む)の結界に干渉し、その属性を完全に反転させる能力】*4を持っている。

 カバラ的にいうなれば、生命の樹をそっくりそのまま反転させて邪悪の樹へと変化させる能力であり、メシア教の霊的要塞にとってまさに天敵とも言える能力である。

 そして、LIGHT-LAW(天の国)から反転させた結界内は真逆のDARK-CHAOS(破滅の町)の結界へと変貌する。

 そして、メシア教過激派の大拠点地の結界にDARK-CHAOSの『穴』ができればどうなるか。答えは簡単である。悪霊・外道・幽鬼・邪龍、そして力を落として『穴』を潜り抜けた『魔王』の分霊すら姿を現し、我先へと無力化されて地面に転がって苦しんでいる過激派たちへと貪りついていく。

 

 しかもこれは一気に全ての結界を反転したのではなく、一部の結界を反転させてその後じわじわと『穴』が広がっていくようにしている。

 地面に転がって苦しみながら、反転した結界が広がってダーク系統の悪魔に貪り食われるのを待つしかない過激派の絶望は言うまでもないだろう。地面に倒れて身動きの取れない過激派は悲鳴を上げているが、それを気にすることなく、アバドン・ハレルは後ろを向きながら歩き去っていった。

 

「……はー。まさか自分の発言が見事にブーメランになって突き刺さってくるとはなぁ。俺もこのクソみたいなドブクズ最低(メガテン)世界の中で、まだまだ生きなきゃならんとは……。贖罪も弁償もしなければならないしなぁ……。まあいい、いいさ。仕方ない。せっかく生きてるんだから復讐するなり自分の好きな事をするか。それが『生きる』ってことだろうしな。」

 

 やれやれ、と深々とため息をつきながら、アバドン・ハレルはそのまま上司であるカズフサニキ……KSJ研究所の元へと戻っていった。こうして、「大天使サタン再臨計画」はメシア教過激派の敗北という形で幕を閉じた。

 ……この後、彼は贖罪や弁償のためにKSJ研究所の元で馬車馬のようにコキ使われたり、彼らの元で対メシア教の戦力として活躍する事になるが……それはまた別の話である。

 

 


 

 というわけで「サタン再臨計画」終了です! お疲れ様でした! ボンコッツ様、キャラを使わせていただきありがとうございました。

 今回は劇場版で派手にやって周囲に与える影響が強いので、本当は「【カオ転三次】現地民とのぐだぐだ小話」様の映画を作ってる「下尾伽羅」が作り出した映画作品にしようとも思っていたのですが、もうこのままでいいかな……となりましたw

 現実扱いでも映画撮影扱いでもどちらでも大丈夫です。

 という訳でアバドン・ハレルはアヒャゲイルさんにバトンタッチや! 後はお好きにお使いくださいw

*1
【R-18】アビャゲイルの投下所様

*2
小ネタ 終末後、とある辺境にて

*3
オリジナル設定スキル。

*4
多分逆のDARK-CHAOSに汚染された一神教系列結界をLIGHT-LAWに反転させる事もできるが、当の本人はやりたがらない模様。なおその性質上、ニュートラル系の結界や一神教系列以外の結界には効力がない。

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