「あああああああああ!! あああああああああ!!」
ちょっとした用事でしばらく遠出をしていた凍矢は、ちょっと留守にしただけで襲い掛かってきた大騒動に呆然とした後自室で悲鳴を上げる事しかできなかった。*1
何故……どうして……こんなことに……と思わず某猫ミームばりに頭を抱えていた彼だったが、その後始末を考えるだけで頭が痛くなってしまう。
政治的な活動はほとんど金札たちに投げている彼だが、実質トップとしての後始末やら山のような書類仕事やら想像するだけで資料をめくりながら頭を抱えるしかなかった。
「防衛をしてくれた他の黒札たちにはお礼をして……北斎ネキとパピヨンニキと探求ネキとサージェスニキと……他にも魚沼シェルター内の黒札たちにも……ぬおおお……」
この魚沼シェルターは山梨支部からの鬼門に当たる「鬼門封じ」としての役割を有しており、鬼門を封じる事で山梨支部が災厄が襲い掛かるのを防ぎ、また山梨支部が被る災厄の一部を肩代わりしている。
実際の位置としては山梨支部から北東とは言い難い位置ではあるが、高位霊能者たちが「そう」と認識したら「そう」なってしまうのがオカルト業界というものだ。*2
凍矢の認識としては「まあ誰かがやらないといけない役割だし。それに『こちらが吹き飛ぶとそちらに災厄が降りかかるぞぉおお!! 嫌なら支援を寄越せぇえええ!!』ができるし」という感じであり、これをセツニキに言ったら「肝が太いのか変人なのかよく分からんな……。(真顔)」と言われた経緯がある。
まあ、それで今結果的に頭を抱えているのだから、自業自得と言われれば自業自得ではあるのだが、ともあれ、嘆いていても仕方ないので、まずは世話になった黒札にお礼の品物を届けなければならない。
「ええとこれとこれとこれと……。それじゃこれを各黒札たちに渡しておいて。よろしく」
凍矢がそう頼んでいるのは同じ黒札である「各務原かすみ」*3である。
同じ黒札であり命令権はないのだが、妹がやらかしてしまった事もあり、それを気に病んでいるらしかったので、手助けをしてくれ~という事で話がまとまったのだ。(凍矢自身は別に何とも思ってはいなかったが)ともあれ、黒札である彼女なら黒札同士の連絡もスムーズにいく。後は救出された人々の治療なども必要ではあったが、今回のベアトリーチェに捕らえられた人々……ミサカネットワークや御坂美琴たちはアリウススクウッドたちや桜子たち、放課後スイーツ部たちが共感を覚えたらしいので、治療や治療の支援などは全部そちらに任せて、こちらは資金を提供することだけにした。今回さらに散々やらかしてくれたメシア教穏健派も……散々やらかして締め上げたのに何故またやらかすのか? もう徒労の極みで関わり合いになりたくないので誰かに丸投げしてええか? というのが本音である。
もう面倒くさいのでそちらは棚上げにするとして……他の様々な黒札の皆やいわゆる現地民たちも総出で迎撃を行ってくれたので、被害こそなかったものの、そもそもの根本的な問題に向き合わなければならなかった。
それは「分身問題」である。
今まではなくても何とかやりくりはしていたが、彼が留守にした隙にこんな騒動が起きたのなら、それを解決するために「拠点防衛用分身」を置く必要に迫られたのだ。自室の椅子に座りながら腕を組んで凍矢はうーん……と考え込んだ。
「やっぱりアレかぁ……。拠点防衛用の分身……置かなきゃダメかぁ……。拠点防衛用の俺の分身が留守中にいればメシア教過激派やら多神やら野良の大悪魔やらも襲撃はかけてこないだろう多分……」
今回は魚沼シェルターの皆が協力して何とかなったが、かなり薄氷の上の勝利だったのは間違いない。
こんな事はできるだけ起こさない方がいいに決まっている。本体がいない間は、凍矢の拠点防衛用の分身を置いておけば、今回のような騒動は中々起きにくいはずである。
ともあれ、分身を作成するための準備に入った凍矢は、他神格からの干渉を排除するための結界を構築し、破裂の人形と共に分身作成に入った。
以前にショタおじやトールマン、ゴトウなどの超極秘会議が行われた際の時のように、様々な手段で神格は黒札の動向を監視している。特に秘密会議などが行われようとする際には、あらゆる手段を使ってそれを盗聴しようとしてくるのだ。
そのため、それらを遮断する結界を張れば秘密会議か? と警戒されて「一体何をやってるんだ……?」と注目を受けるのはある意味当然だろう。視線ウザ……散れ散れシッシッと思いつつも今はとりあえず分身作成のために集中しなければならない。
(というか何で俺なんかに注目するんだよ……他所のもっと大手の黒札を注目しろよ……)
分身作成は、「最初は一体準備するのに、それなりにコストと時間がかかる」「一度完成版を作れば量産は難しくない」と言われている。
そのため、まずはキチンとした完成版を作る、そして次は量産の速度を速めることができれば、探求ネキやハルカのようにポンポンと瞬時に分身を作ることはできるようになるはずだ。
だが、その時、凍矢に電流走る──―!!
(せや! 探求ネキの木分身の応用で、水分身を使えばええんや!! 霊水で作り出してそこに自我の分身をシュート!! 超エキサイティング!! これならわざわざ複雑な肉体を作り出さずに、手軽で強力な分身を生み出せる!! 我超天才!! 勝ったなワハハ!!)
その凍矢の考えに破裂の人形は(本当に大丈夫か……?)という顔をするが、ともあれそれが主人の望みなら行うしかない。
という訳で水分身の技術の応用として、ざっと探求ネキの教科書を読んだ凍矢はアクアの応用で自分のMAGを込めた霊水を生み出し、そこに自我の一部を埋め込むという荒業に出る。
そして、基礎をきちんと学ばずに応用のさらに応用、加えてさらに独自技術を使った分身作成は当然のように失敗する事になった。
「何故……どうして……こんな……」
ぽよんぽよんと跳ねている水分身の失敗作……スライム(仮)を見ながら、凍矢はがっくりと膝を折って四つん這いの形で項垂れる。通常水分身ならきちんとした人型になるのだが、木分身と違って物質的な実体がない以上、しっかりとした術式を組まなくてはならないのだが、それをさぼった結果、見事にスライム(仮)になってしまって、人型になるのも難しいという分身としては失敗と言わざるを得ない結果になってしまった。
「ぷにぷに。(そらそうよ。残念ながら当然)」
という感じで失敗作となったスライム(仮)ではあるが、ともあれ拠点防衛分身を求めている凍矢からすれば、廃棄するのも勿体ない。
そこで凍矢が考えたのは、学園の最終防衛装置としての運用である。
学園は黒札の子供や金札の子供たちも通っており、彼らの事を考えると絶対に守らなくてはならない拠点の一つである。例え失敗作だとしても学園を守護するための十分な戦力になるなら使わない手はない。
「……というわけで、学園に行ってもらうけどよろしくな」
「ぷにっ!! (おk!! 任せとけ!!)」
……なお余談ではあるが、これから先の未来で、放課後スイーツ部の青春力を全開にしたライブに魂を焼かれた黒札たちが「放課後スイーツ部だけは絶対に守護しろ!!」「あの子たちをメシア教の毒牙にかけたら分かってんだろうな!?」「絶対嫉妬してくる奴らや嫌がらせしてくる奴らが出てくるだろうからそいつらも何とかしろ!!」という黒札たちの猛烈な『圧』によって、ナギサと田舎ニキの胃が痛くなったのは別の話である。*4
ともあれ、失敗の根本的問題は何か? と考えた凍矢の脳内に、教師としてのセツニキがほわんほわんと浮かび上がって凍矢に対して忠告を与えてくる。
『……あのな。何のために教科書があると思ってるんだ? 俺の教科書も探求ネキの教科書もきちんと揃ってるんだろう?』
『手抜きするな』
『きちんと』
『真面目に教科書に従え。きちんと手順を踏んで作成しろ。いいな?』
アッハイ……サーセン……。思わず脳内のセツニキに平謝りしながら凍矢は大人しく教科書通りに分身作成を始める事になった。
一番簡単なのは、探求ネキが行っていた木分身を見習って木材を元にしてそこから自分の分身を生み出すのが一番だろう。実際、凍矢の得意とする水系統は木属性とも相性はよく、水生木(水が木を生む)の関係でそれを応用すれば分身を増やす事も可能……かもしれない。
しかし、やっぱり「いきなり応用から入るのではなくきちんと分身を作成する基礎技術をマスターしろ」と教科書に書かれているため、渋々ながら凍矢はきちんとした分身作成に取り組むことになった。
「という訳でそちらも手伝ってもらうけどよろしくな」
「ぷにっ! (任せとけ!!)」
「はい、マスター。了解しました」
と、言うわけで破裂の人形とスライム(仮)も手伝ってくれた事もあって、ようやく分身作成は8割ほどが完成した。ここから後2割をラストスパートをかければ分身の出来上がりである。
結界外からやたらめったら色々な神々の視線を感じる……というかさらに増えているっぽいが、それらを無視しながら凍矢たちは一旦休憩に入る。ここまでできれば最早完成したも同然。あとはこれを瞬時に展開する訓練を繰り返せばいい。勝ったなワハハ!! 分身量産の暁には、この戦い我々の勝利だ!! とハイテンションになっている凍矢の元に、異常な霊的感覚が襲い掛かる。それは、神々の干渉を防ぐために部屋の外周部に展開された結界である。その結界……特に出入口のドア部分がガタガタとまるで結界をこじ開けるような動きを見せる。
「!?」
まさか敵か!? と破裂の人形とスライム(仮)は凍矢を庇うために前面に立つ。
ここはガチガチに泡状結界で固められた魚沼シェルターのほぼ中心部、凍矢の家であり何十もの厳重な結界に周囲は黒騎士部隊による24時間護衛が行われている。
それら全てを潜り抜けて凍矢の家に潜入して自室まで奇襲をかけてくるなどどんな神霊だ? いくら何でもメシア教系列ではありえないと思いつつも、破裂の人形は自らの盾と剣を構えて敵を迎え撃とうと構える。そして、ついに結界の入り口が無理矢理開けられ、そこから一人の可憐な少女がひょこっと顔を見せる。
「やっほー!! 田舎ニキ遊ぼー!!」
ドアの外でやっほーと手を振るのは、ガイア連合に所属する同じく黒札であり一度死亡してTS魔人となって復活した通称「TS魔人ニキ」である。*5
やらかしてガイア連合の力で復活した彼女ではあったが、その現場猫体質で散々ほかの仲間にも迷惑をかけることがある。それを防ぐための式神もきちんといるのだが、今回は間に合わずこうして現場猫をやらかしてしまったという状況らしい。
「敵か!?」と思っていて戦闘態勢を取っていた凍矢も破裂の人形も、予想外の人物の予想外の行動にほんの一瞬だが呆然となる。
「えっ?」
「えっ?」
TS魔人ニキも、てっきりこんな作業をしているとは思っていなかったらしく、「何か結界で秘密基地ごっこしているに違いない! 俺も混ぜて!!」程度にしか考えていなかったらしい。
開けられた結界に対して、注目していた各神格たちは「今だ! チャンスだ! 乗り込めー!!」と言わんばかりに無数の分霊を投げ込んでくる。高レベルの黒札の分身に自らの分霊が融合すれば、その分バックドアを仕込んで情報を抜いたり、最高にうまくいけば黒札の分身を自分自身の物にできるまさに大チャンス!! である。こんな大チャンスを逃す神格たちではなかった。(うあああああ!! やめろぉおおお!!)と止めに入ろうとする凍矢だが、その入り口に敢然と立ちふさがって通さん!! と言わんばかりに胸を張ったのは小型の九つの頭を持つ龍であった。
「キュゥウウウウウ!!」
部屋の前に立ちふさがったクズリュウの分霊……「キュー」がその九つの頭を必死になって動かしながら結界の空いた穴に対して多種多様な神格が遠慮なしに自分の分霊を叩き込もうとしているのを感知し、飛んできた分霊たちを貪り食っているのだ。
飛んできている無数の分霊たちをその九つの頭を利用してバババババ!! と物凄い勢いで口でキャッチして飲み込み、食らいつくしていく。いかに神霊といえど、多少の分霊程度ならば、元が九頭竜であるキューならば貪り食らって自分の力へと変換することができる。パクパクですわ!! と言わんばかりに飛来してくる神々の分霊を食べまくっているキューを見て、凍矢は次の指示を皆に出そうとする。
「よし! いいぞキュー!! 今のうちに結界を張りなおして……」
だが、凍矢のその期待も空しく、かなり大きめの分霊が飛び込んできたらしく、それと真正面から正面衝突したキューはべしこーんとその勢いで吹き飛ばされる。
かなり強大な分霊……他の神霊分霊が小石ぐらい……なら、ラグビーボールほどの大きな分霊は流石にキューも食べることができず、その勢いに吹き飛ばされて凍矢の分身を守るための盾がいなくなる。
キューを吹き飛ばした強大な分霊は、邪魔者もいなくなった状況でそのまま真っ直ぐ8割完成の凍矢の分身体へと直撃し、爆発を起こして周囲に煙を巻き散らす。
「うぁあああああ!!」
「お、俺ダィイイイン!! 無事かー!?」
ちょうど飛び込んできた分霊で残り2割が補われたらしく、爆発を起こしながらも凍矢の分身体は起動を始める。分身と分霊の融合体は……分身ではないが、長野の馬ニキがロキに侵食されて大分やばい事態になったとは聞く。だが、今回はそれより遥かに低い侵食率だから恐らくは大丈夫だろう、と結界を張りなおした凍矢たちは、分身体へと近づいていく。
そして、そのベットに横たわっていたのは……
「うわぁあああ!! お、俺が女になってるぅううううう!!」
その姿は凍矢自身の姿とかけ離れた豊満なスタイルを持った垂れ目でロングヘアーの髪を編み上げてクラウン型にした女性の姿だった。見た目は全く異なるが、自分の分身を見間違えるはずもない。
そんな凍矢の言葉に彼女? は憤慨して口を開く。
「誰が女だ!! 俺は男……ん?」
彼女? はやたら重いな? と下を見ると下が見えないほどの巨大な胸が目に入る。
ぼいんぼいんと自分でその肉の塊を触って見て、それが自分の胸である事にようやく彼は気づいたのだ。
「うわぁあああ!! マジで女になってるぅううううう!! おっぱいぼいんぼいんしとるぅううう!!」
「うあああああああ!!」
「うあああああああ!!」
残り20%のその強大な分霊は女神デメテルの分霊だったらしく、その影響は分身の外見……性別に大きく影響したらしく、凍矢の分身はいわゆるTS化してしまったのだ。
しかも、そのデメテルの影響によるTS化を受けて、彼の外見はいわゆる「FGOのデメテル」へと変化してしまったらしい。
「ぷにぃ……。(いや二人で叫んでないで冷静になれよ……)」
ともあれ、スライム(仮)の突っ込みもあってある程度冷静になった彼らは、ショタおじの診断を受けるべく山梨支部へと移動した。
ーーーガイア連合山梨支部。デメテルの分霊の直撃を受けてTS化した分身を連れて、凍矢はショタおじの診断を受けていたのだ。
「……とりあえず、問題はない感じかな。あくまで分身に20%ほどの異物が混じった感じだし……。
本体がロキに乗っ取られた馬ニキに比べれば軽傷もいいところだね。
ただ、そのまま分身を本体に戻すのは少し待ったほうがいいかな。馬ニキがロキのMAGを馴染ませて取り込んだように、分身もしばらくすれば分霊を取り込んで完全に自分のMAGとして馴染ませる事ができるだろうね。」
えぐえぐと修羅TシャツとGパンを着て、胸のせいで修羅Tシャツが凄い事になっている田舎ネキ……凍子(仮称)は涙を流しながら呟く。
ロングへアの後ろ髪を三つ編みで纏めたクラウンブレイドでたれ目の彼女の姿は、完全にFGOのデメテルそのままの姿である。「俺」だとややこしい事になるので一人称を「私」にはしているが、先天的TSな人たちとは異なり、後天的TS……というか性自認としては完全に男性である。
アル部長のガイアアニメーションのTS勢や、呉支部の重症TS勢とはまた少し異なった立場のTS勢といえる。本体ではなく、あくまで分身が異物混入で影響を受けた形なので、馬ニキが危うくロキに取り込まれかけた状況に比べれば遥かに軽傷との事だ。
最悪の場合、分身を消せばいいか、と思っていた凍矢だが、そこでショタおじからストップがかかった。
この状態で取り込むということは、同時にデメテルの分霊をそのまま取り込んでしまう形になる。分身を自分の物として取り込むまで今のままがいい、という事である。
「じゃあいわゆる「自分ヒロイン」はしないわけね?」
「だから私は男だって言ってるじゃん……。男とHするなんて尻穴掘られてアーッ!! するのと同じだし、ましてや自分自身となんて絶対ヤダよ……」
人によってはTS化した自分の式神とイチャイチャする人もいたが、少なくとも凍矢もTS凍矢もどちらも自分自身とイチャイチャは勘弁してほしい、という感じだ。
しかし、アバドン・ハレルを打ち倒して、ようやくレベル100の超越者の領域に到達した存在が処女というのは、呪術的にかなり不味いというか、生け贄として最高の存在である。
「……一応聞いておくけど、探求ネキとか人魚ネキとかそれともくそみそニキに二人まとめてアーッ!! されるのもダメ?」
「嫌どす……というか拠点防衛用として魚沼シェルターにずっと籠るつもりだし。いざとなったら『自爆』スキルで吹き飛ぶ所存だけどそれで問題ないでしょ?」
田舎ネキとしては、一番懸念しているのはほかの女性転生者の懸念の通り生む機械、苗床になる事である。
ただでさえ性自認が男なのにそんな状態になったらおぞましすぎて発狂してしまいかねない。
そのための『自爆』スキルである。*6なんなら罪人でもないのに、体の各所にメギドラオン術式を最大込んで自爆スキルも発動しない最悪の最悪の場合、肉体をバラバラに吹き飛ばす所存である。
……余談ではあるが、早速作成班からFGOデメテルの衣装と光輪と鎌が送られてきたが、着てみたら「うあああああ! デ、デメテルがガイア連合を練り歩いているッ!!」「うあああああ! ち、痴女がガイア連合を練り歩いているッ!」という二極端に別れて憤慨したり、イギリスのアーサー、モルガン夫妻に見せて「うあああああ!」されたのは秘密である。
「まあうん……君が良ければそれでいいんだが……それでTSニキはどうする?」
思うところはあるが、TS魔人ニキには悪気がなかったんだから仕方ない。
極論すれば「分身がTS化してしまっただけ」なので、大した問題はない……ない……ないよなこれ? と思いつつも、TS魔人ニキの式神「城ヶ崎美嘉」は申し訳なさげに凍矢に対して謝る。
「ごめんね……。ウチの主が……。私的にも現場猫しないように色々頑張ってるんだけど……。(遠い目)」
彼女は遠い目をしながら凍矢に向けて謝る。存在自体が現場猫と言えるTS魔人ニキに対して、見た目はギャルだが苦労人である彼女は謝り倒したりフォローに回って四苦八苦しているのだ。
「まあ……うん……極論言うと『分身がTSしただけ』だし……まあ……うん。(遠い目)」
「まあ……TS魔人ニキはちょっと僕のほうからお説教なり何なりしておくから……。賠償金も僕が肩代わりするから、それでいいだろ?」
相変わらずショタおじはTS魔人ニキに甘いが、まあ事を荒げたくはないし、仕方ないかぁという顔になる。
「後は問題は……デメテルかぁ……。逸話的には問題ないけど、わりとメガテンではやらかしてるみたいだからね……」
デメテルは、逸話を見れば大分まともな女神、大地母神ではあるのだが、何故かメガテン世界ではDEEP STRANGE JOURNEYとか真・女神転生Ⅴなどわりとやらかす事が多い。ショタおじはうーん、と考えこんでデメテルへの処罰を考える。
「とりあえず、やらかした分霊は粛清部隊でおしおきかなぁ……。本霊も……ポセイドンの監視やらペルセボネーとの会う期間を減らしたりペナルティを与えるべきか……」
分霊はかつてやらかしたスカディのように処罰をすればいいが、本霊にも最も嫌な事……嫌いな神であるポセイドンの監視やら、最も大事にして成人しても自分の膝の上に乗せて会議に出たとされるペルセボネーとの期間を短くしてやろうか……とかショタおじが考えている中、凍矢は声をかける。
「あ、それなら分霊を適当に痛め付けてこちらにくれない? 越後平野で過労死するまで農作物やらキクリ米やらのために豊穣の加護使いまくってほしいし」
新潟の越後平野は、凍矢と他の黒札たちが協力して結界で守護し、一大キクリ米産地へと変貌している。
これだけ広い平野から量産される大量の米でなければ、いくつもの県やガイア連合を支えるほどの米の生産は難しいのだ。だが、やはり広い分キクリヒメだけでなく、さらに強大な豊穣神の力があればより生産量を上乗せできる。
ガイアから続く地母神の正当な後継であり、数多の女神の中でも最高位の存在とされ「大女神」と呼ばれているデメテルの力ならば、まさに適正と言えるだろう。
その言葉に、解った。適当に痛め付けてガチガチの契約で縛り上げて送るね。とショタおじは頷いた。
「とはいう物の、便利だからってデメテルのスキル【エレシウスの祝福】*7や【ハーベストですわ!】*8 【エレウシスの実り】*9をバンバン使用すると、効果が強力な分、そこから浸食される可能性は多いにある。完全に馴染んで取り込むまでは使用しない方がいいだろうね。【豊穣の祝福】程度なら問題はないだろうけど」
そのショタおじの言葉に、女性体の凍矢はへ~いと返事を返す。デメテルのスキル【エレシウスの祝福】は極めて強力なスキルであり、味方全体に極めて強靭な防壁を展開できるスキルである。
だが、こんな強力なスキルがただで使えるはずもない。今の凍矢(女性体分身)がデメテルのスキルを使えば使うほど『縁』が強まり、どんどん力を送り込まれ浸食されていく可能性はある。きちんと分霊が溶け込むまで使用しない方がいいというのが、ショタおじの判断だ。
「あ!そうだ!あれやってよあれ!デメテルの真似をするのはデメテルに近づくけど、あれくらいなら大丈夫だからさ!」
ワクテカというショタおじの目に耐えきれず、女性体の田舎ネキは渋々とやけくそ状態でショタおじに対して叫んだ。
「は……は……ハーベストですわぁあああああああ!! (裏声&やけくそ)」
・田舎ネキ(TS分身体)
外的要因で後天性TSした凍矢の分身体。外見はFGOの女神デメテル。処女。
性自認としては男性だが、「そのおっぱいで男は無理でしょ。」と毎回突っ込まれる。
凍矢が留守の際の拠点防衛用分身として作成されたので、まあ、拠点防衛用ならTSしても問題ないか……の精神でそのまま運用された。(他の分身は普通に男性体)
華美な服よりもラフな修羅Tシャツやジーンズなど動きやすい服装を好むが珠に着せ替え人形にされる。
また、他の黒札からの露出度の高い服も(金に釣られて)来たりする。
(基準が男性なので羞恥心は薄い。男だから恥ずかしくないもん!)
FGOのデメテルの服や光輪などは送られたがタンスの肥やしになったが、武器の鎌だけはデメテルの豊穣神としての相性などもよかったので愛用している。
デメテルの豊穣の加護は使っても問題ないので、魚沼シェルター内で農業ニキと一緒に農業に豊穣の加護などを使用してキクリ米などの生産量を向上させている。
「終末に向けて準備するとある転生者の話」様の黒焦げ様からイラストをいただきました!
どうもありがとうございます!