──―佐渡島シェルター、佐渡金山異界。*1
分厚い地盤を挟んで大深度の内部を半円状にくり抜いた大空洞。金属の森、金属樹などで埋め尽くされているその中に存在する神殿『地殿は佐渡島シェルターの結界基点を兼ねた沖合に存在する出島であるが、ここには分殿が存在しており、他の神々も地中という分厚い地盤と何重もの結界に守られているため、比較して安心して会話するのには格好の場所なの母神ガイア神殿』
そこには、地母神ガイアの分身シキガミである『十六夜ノノミ』が存在している。
本来、ガイア神の神である。(さらにギリシャ神話の根幹ともいえるガイアの領域のため、ギリシャ神話に近しい神霊や存在にとっては極めて安心できる環境というのも大きい)
そして、その分殿に招かれてハーブティーを口にしているガイア以外の二柱の神があった。
「違うんですぅううううう!! 俺はアポロンじゃありませぇええええん!! 俺はヘリオス!! 太陽神ヘリオスですぅううううう!! だからボコるのも頼るのもやめてぇえええ!! ……という感じで行こうかと思ってるんですけどどうでしょうか」
そのうちの一柱、ガイア神などの縁によって招かれた『太陽神アポロン』である。
アポロンの本霊は分霊を召喚されないように様々な策を取り、さらに魔界のあちこちを逃げ回っている。このアポロンはその後で召喚された貴重な分霊だったので、その分の仕事が彼に降りかかってきているのだ。(他にも食料・薬品生産担当や医療担当のアポロン分霊はいるが)*2
だが、当然ながらそんな状態で召喚されればアポロンに対する仕事が山のように襲い掛かってくる。
アバドン・ハレルが放ったアバドンの力を持った蝗たちに対するアポリオンキラーは、結局生き残ったアバドン・ハレルがその権能を使って蝗害を納めたため必要がなくなったが、それでも中東分のアポリオンキラーは未だ山のように注文が入ってくる。*3このままではまた過労死してしまうと判断したアポロンは、別の手段を取る事にした。
それは、自らをアポロンではなく「太陽神ヘリオス」と名前を変える事である。
ヘリオスはギリシャ神話の太陽神であり、紀元前4世紀頃から、ヘリオスはアポロンと同一視(習合)されるようになった。そして、ヘリオスはアポロンの権能に加え、また別の権能を有していた。
「ヘリオスの名前を名乗れば!! 俺の語源になったヘリウム関係を生み出す事も可能!! とある黒札が生み出したエイジャの赤石*4を使用すれば!! 太陽神の権能で『ヘリウム3』を生成する事も可能!! このヘリウム3を核融合炉を多用する呉支部に売りつけることで大儲け!! 勝ったなワハハ!!」
そう、それはこの佐渡島シェルターの支配者である『蝶野光爵』のコネを使用して『探求ネキ』と呼ばれる黒札が開発した「エイジャの赤石」に合わせて、太陽神としての権能とヘリオスの名前から派生した「ヘリウム」の力を合わせることによって「ヘリウム3」を生み出すことができるのである。*5
ヘリウム3は核融合炉の燃料となる物質であり、太陽から生み出されたヘリウム3は月の砂に大量に吸着されている。だが、魔界地球でオカルト的に月に至る手段はあるが、それでもかなり高コスト&行くのが困難なのは間違いない。それならば、ヘリオスの力&エイジャの赤石で生み出されたヘリウム3ならば遥かに低コストで安く入手できるため核融合炉を多用している呉支部(あるいは核融合炉を有している他支部にも)に高く売れるという考えである。
さらに、エイジャの赤石から産み出したヘリウム3をダイアナが産み出した「月の砂」に吸着させる事で持ち運びを簡単にしようというのだ。
むふー! と自慢げにドヤ顔しているアポロン……もといヘリオスに対して、疑問を投げかける女神は「地母神ダイアナ」である。狩猟と月、樹木の神である彼女はローマ神話のアポローの妹であり、原型はアルテミスであるため、ガイア神やアポロン……ヘリオス神とは非常に仲がいい……が彼の考えに対して、ふむ、と考えた後で突っ込みを入れる事になった。
「……でも結局アポロンの権能でアポリオンキラーを生み出せるし、アポロンの仕事は結局そのままなのだから根本的に何も変わらないのでは? むしろ自分から忙しくなっているのでは?」
「だ……誰か助けてぇえええ!!」
アポロンからヘリオスになっても、結局仕事の量は変わらないところか増えてしまうのでは? という根本的なダイアナの疑問に思わずヘリオスは泣き言を漏らしてしまうが、それでもインドの方で開発された孔雀明王の力を秘めた鶏、ダイアナやガイア神の協力でハーブティを飲める程度の余裕は出てきてるので、まあこのままでもいいか……と泣きわめくヘリオスを他所にダイアナとガイア神はそう判断した。
「ところで……ガイア様は私たち、いえ、私がギリシャ神話から外れてしまうのはよろしいのでしょうか?」
「いえいえ~。ダイアナちゃんもアポロンちゃん……ヘリオスちゃんも皆可愛い私の子ですからね~。オネイロイちゃんたちもダイアナちゃんもヘリオスちゃんも、そして何よりプロメテウスちゃんも皆元気で何より何よりです~。皆このまま健やかに育ってくれるといいんですけれどね~」
原初神であり大地そのものを象徴するガイアは全ての存在を内包し許容する。彼女からしてみれば皆揃って自分の子供である(特にプロメテウスちゃんは悲惨な過去から立ち直って生きてる可愛い孫)らしい。その原初神らしい器の広さに思わず他の二柱の神も苦笑いを浮かべた。
「海だ──ッ!!」
新潟市、日和山浜海水浴場。
新潟市はこの地を防衛する黒札「大宙実槻」……「鑑定ニキ」やその親友、「長尾景虎」たち*6の手によって都市自体を覆う大規模結界が張られ、他の海岸沿いの都市シェルターと同じように地脈を操作して近海も結界内に納めている。
そのため、海岸線では海水を利用した大量の塩の精製や神々の力を借りて漁業なども行っているが、その中でも一部はさらに結界を厳重にして今や限られた一部の人間しか利用できない「高級ビーチ」を作り出している。
オカルト堤防などで周囲をガチガチに防備されているこの内部では(比較的)安全に海水浴ができるという金札・黒札御用達の海岸である。
その中で、いわゆるKSJ研究所*7のカズフサニキ、スカリエッティニキ、ジュンニキの嫁である「スグリ」は水着姿でキャッキャッとはしゃいでおり、「レヴィ」は水着姿で浮き輪に乗って海をプカプカと浮かんでおり、「カーミラ」は吸血鬼とあって日傘から外に出るのを恐れているようだった。(実際はガイア連合の技術力で平気なのだが、やっぱり恐怖心はぬぐえないらしい)
「キャ──ッ!! 海なんて久しぶり! 海水冷たくて気持ちいいー!!」
「これが海……。私は初めてだけど不思議なものだね……。」
「ほ……。本当に大丈夫? このガイア連合のオカルト日焼け止め本当に太陽の下に出ても大丈夫なの? 本当に本当?」
放課後スイーツ部のライブを見て号泣した研究所だったが、自分たちも少しでも青春を取り戻したい! と気分転換を兼ねてこうして海水浴で遊ぼう、と終末後では貴重な安心して遊べる海水浴場までやってきたのだ。
そして、この海水浴場にやってきたのはKSJ研究所だけではなかった。そこにいる女性たち四人、栗村アイリ、伊原木ヨシミ、柚鳥ナツ、杏山カズサはいわゆる『放課後スイーツ部』と呼ばれるグループだった。以前のバンド活動によって一気に黒札たちから注目を受けて有名になった彼女たちは、今回KSJ研究所が海に遊びに来るついでにCMのスポンサーになって、彼女たちを使用するオカルト清涼飲料水の宣伝CMを作るために海水浴をするついでに連れてきたのである。
「よーし! それでは撮影行きまーす! 3、2、1……スタート!!」
某ポカリスエ〇トの宣伝でも「歴代ポカリ〇エットのCMガール」が存在するように、夏の透き通る青空と青い海に綺麗な少女たちは清涼飲料水の宣伝には最適である。セーラー服姿の彼女たちが砂浜やそのまま海に飛び込んで*8楽しそうにした後で、手にした清涼飲料水を一気飲みしていくところを撮影班は撮っていく。
「放課後スイーツ部おすすめ! スカッと爽やかな飲みごたえ!! 『イン・サイダー』*9!!」
「同じく透き通る飲みごたえ! 『アクマエリアス』*10!! 『プラシーボドリンク』*11ぜひ飲んでね!!」
はいカーット!!という撮影班の言葉に、放課後スイーツ部の皆は安心する。大崩壊……終末後の後でこんな海に来て海水浴で遊べる何て、そこらの金札であってもそうそう味わえない贅沢に、四人とも満足しきっていた。しかも海で遊べる事に加えてオカルト清涼飲料水飲み放題というサービスもあるなんて、まさに放課後スイーツ部の皆にとっては天国そのものだった。
「大崩壊後で海水浴も旅行も楽しめて清涼飲料水飲み放題なんて最高ー。黒札様たち一生ついていきます~」
「でも……。ホントに大丈夫? こんな美味い話裏がないの? 何か怪しいなぁ……」
のんびりとイン・サイダーを飲んでいる「柚鳥ナツ」に対して、「伊原木ヨシミ」は訝し気な声を出す。
こんな美味い話があるなんて、終末後の世界は甘い世界ではなかったはずだ、とヨシミは終末後の常識からかけ離れた今の状況に疑問を浮かべているのだ。だが、それに対して凍矢の分身「スライム(仮)」は砂浜でぽいんぽいんと跳ねながら言葉を返す。
「ぷにぃ……。(ああいいぞ。どんどん飲め……)」
わーい!とそのスライム(仮)の言葉に甘えて、散々オカルト清涼飲料水飲み放題で海水浴を楽しんだ放課後スイーツ部の四人に対して、スライム(仮)は冷徹な言葉を言い放つ。
「ぷにっ!! (ではこれより!! 放課後スイーツ部強化合宿を行うッ!!)」
「「「「えっ?」」」」
「「「「うわーっ!!」」」」
次の日、放課後スイーツ部の四人は5mはある巨大な悪魔『龍王ノヅチ(LV15)』と対面して戦っていた。放課後スイーツ部は大体平均LV8。およそ自分たちの倍のレベルはある巨大な悪魔との対面に、彼女たちは悲鳴を上げて逃げ回っていた。
「無理無理無理!! 死んじゃう!! 死んじゃうって!!自衛隊でも苦戦した相手なんでしょ!?*12私たち銀札が戦える相手じゃないって!!」
そんな絶叫するヨシミに対して、一番戦闘経験のある「京山カズサ」は愛銃であるマビノギオンを乱射しながら牽制をして、ノヅチの注意を引き付けながら他の三人に対して指示を出す。
「皆!! アガシオンを盾にして!! 絶対に近寄らないで遠距離攻撃で削り取る!! 近寄って買ったばかりのヘイローを試すなんてことしたら押しつぶされるよ!!《精密射撃》*13ッ!!」
黒札たちから寄付を貰った彼女たちは、スライム(仮)の指示もあって、そのマッカを使用してまず真っ先に自分たちを守るための『アガシオン』と『ヘイロー』*14という自分たちの身を守るためのオカルト武装を購入した。
アガシオンとヘイローはLVの低い彼女たちにとってはまさに神具とも言えるオカルト兵装であり、特にヘイローの物理耐性は彼女たちのまさに命綱ともいえる代物だった。だが、LVが倍以上の相手にその物理耐性を試す度胸など到底彼女たちにはなかった。カズサの指示通り、他の三人もアガシオンを盾にしながらそれぞれ愛銃から銃撃をノヅチに叩き込んでいく。
だが、ガイア弾に加えて銃撃スキルを使ったカズサの銃撃でもノヅチに大したダメージを与える事はできなかった。それは、彼女たちのLVが低いのもあるが、ノヅチも『物理耐性』を所有しており物理ダメージに極めて強いという理由だった。カズサの放った弾丸も平気で弾き返すノヅチを見て、思わずヨシミは悲鳴を上げる。
「アタシたち純粋な戦闘要員じゃないのよ!?こんな怪物と真正面から戦うなんて無理だって!!」
「昔の私たちなら詰んでた……。だけど今の私たちには寄付を受けた大量のガイアポイントとマッカがある。食らえ高級アイテムアタック!!『マハラギストーン』!!『マハブフストーン』!!」
そういいながら、マハラギストーンやマハブフストーンをノヅチに放り投げるナツ。黒札たちの支援から得たマッカなどで購入した、現地民たちでは手に入れる事すら難しい高価なマハラギストーン。(本来の彼女たちであれば、せいぜい火炎瓶を頑張ってやっと手に入るぐらいである)
現地民からしたら垂涎のそれら高級品であるマハラギストーンやマハブフストーンを食らって流石のノヅチもダメージも食らってはいたが、それでもLVの低い彼女たちではその力を完全に発揮できず、いかに弱点を突かれてもノヅチはまだピンピンしていた。
ダメージを受けて唸り声を上げるノヅチに対して、放課後スイーツ部の皆はそれぞれの銃撃を叩き込んでいくが、物理耐性のあるノヅチには例えガイア弾であっても威力は不十分だった。
「ガァアアアアアッ!!」
弱点である火炎と氷結のダメージを受けて切れたノヅチは突撃*15を繰り出してくる。その巨体での事実上の押しつぶしともいえる攻撃は強力ではあるが、彼女たちはちょこまかと分散してそれを回避する。
メガテン5のユニークスキル『野分』*16は持っていないようだが、もし持っていたら彼女たちは手も足も出ずにやられていたことだろう。そんな、うわーーっ!!と悲鳴を上げながら逃げ惑う彼女たちを、超遠距離から見守る二人?の姿があった。それはスライム(仮)とKSJ研究所のカズフサニキである。
「田舎ニキ……。いくら何でも物理耐性&LV倍ぐらいの悪魔と戦わせるのは無理じゃねーかなぁ……。しかも彼女たちガチの戦闘要員じゃないんでしょ? もうちょっと手加減してあげたら?」
「ぷにぃ……。(オカルト武装でガチガチに固めたらいけると思ったんだけど、仕方ないなぁ……。それじゃカズフサニキ、
「了解。あの子たちは巻き込まないようにね?」
スライム(仮)の体から放たれた超高圧水流カッターからなる遠距離狙撃。研磨剤の代わりに氷の粒が内蔵されているその超高圧の水の射撃は、凄まじい勢いでノヅチの額に直撃して脳天と頭蓋骨を穿つ。そして、次の横凪の一撃で5mもの高さにあるノヅチの首が両断され、血しぶきをあげながら空中を舞う。
超高圧水流カッターは本来は物質を「削り取る」のだが、あまりの威力にまるで豆腐のように悪魔であるノヅチの首を削り落としながら切り裂いたのだ。首を切り落とされたノヅチはそのまま地面に倒れ伏し、消滅していった。そして、その分のMAGは一番近い彼女たちにそれなりに流れ込んでいったはずである。*17これも観測手であるカズフサニキがいるからこそ行える超遠距離狙撃である。
そして、いきなりの超遠距離攻撃で倒されたノヅチを見て、ぽかーんとしている放課後スイーツ部たちの戦いは、撮影班によって映像が撮られていた。いきなり自分たちとLV倍程度の相手、しかも物理耐性持ちと戦えなどというのには無茶にも程があるか、スライム(仮)もただの意地悪で強化合宿を行ったのではない。
今回はレベリングというよりもある程度「彼女たちも苦労していますよ」「頑張っているんですよ」という絵を取りたかったので苦戦しているのは良かったのだが、それでも彼女たちからしてみたら溜まったものではなかった。
そう、簡単にいうと放課後スイーツ部は『上手くやりすぎた』のである。スライム(仮)……凍矢からしてみても、まさか以前のライブ映像がここまで黒札……黒札のみならずガイア連合の所属している人々……に突き刺さるとは思わなかったのである。
それだけ「爽やかな青春」に対してコンプレックスを持つもの、失われた青春を求めるものは数多く存在している……というかこの終末後の世界でそんなものを味わえるものたちは幸運に恵まれているといえた。
そして、元は銅札である彼女たちが、一気にスターダムにのし上がれば、それだけの成果を上げた人間を妬む者たちが大量に出てしまうことも至極当然といえる事だった。
それらの人々のヘイトを反らすために、まず行った事は「彼女たちも苦労してるんですよ、大変なんですよ」とアピールしている動画を流す事だった。
この終末であいつらだけ青春を楽しみやがって……!!という何も知らない人々の思い込みのヘイトをそらすためには、苦労して悪魔退治を行っていますよ、というのをアピールするのが一番である。つまり、今回の強化合宿はほかの人々からのヘイトを反らし、彼女たちのレベルアップも行えるという一石二鳥の作戦というものだ。
スライム(仮)の考えとしては「ヘイローやアガシオンやオカルト武装でガチガチに固めたしLVが倍ぐらいの敵でもイケるでしょ! 苦戦している絵が取りたいし何とか頑張れ!」という考えだったのだが、平均LV8程度の彼女たちがLV15の『ノヅチ』に立ち向かうのは純粋な戦闘要員でもない彼女たちには厳しいと言えた。そのため、スライム(仮)は「まあ苦戦している絵は撮れたしこれを流せばええか……」とノヅチを処分したのである。
「まあねぇ……。「うまくやりすぎたからヘイトを逸らすために苦労しているのを皆に見せる」のは分かるけどね……。学園の方でも絶対嫌がらせしてくる奴らが出てくるでしょ。そちらはどうしたの?」
「ぷにっ!(その辺は何とかした!褒めて!)」
いきなりポッと出で歌だけで黒札たちに大受けしたグループなどこの世界で妬まれないはずがない。
そしてそれは学園内でも同様である。もっとも学園内部はミカ・ナギサ・セイアの三大トップ直々が動いて徹底的に抑え込んでいるし、さらにスライム(仮)も動いてそう行った生徒たちの抑え込みに走っている。
何ならトップ三人とスライム(仮)の意思を汲んだ諜報部が陰ながら彼女たちを警護しているぐらいである。
もちろん、放課後スイーツ部の皆は何も知らないが、そのまま何も知らずに健やかに青春を過ごしてくれ、というのが大部分の皆の意見であり、これらは彼女たちは何も知らないまま極秘裏に行われている事である。
「そう、それならいいんだけど……。やりすぎの奴らがいるなら教えてくれたら「処理」はするよ? 金札の息子とか娘ぐらいなら何とかできるし。」
「ともあれ、あの子たちは俺たちKSJ研究所にとっては”青春”の象徴なんだ。いや、俺たちだけじゃない。セツニキの”星祭”の大半にも刺さる*18だろうし、他の黒札にだって刺さる奴らは多い。そんな彼女たちが過激派に攫われて”聖母”になって死んだ目になったり、穏健派によって洗脳されたらどうなると思う?青春の象徴が穢された時の怒りははっきり言って想像できないし、俺も自分自身を抑えられる自信はない。まあつまり、そういう風にならないようにしっかりと守護ってほしいってことさ。」
「ぷ、ぷにぃ……! (な、何か責任重大になっとる……! いややるけどさ……!)」
その威圧の籠ったカズフサニキの言葉に、スライム(仮)は必死になって頷きながら、はあ、とため息をつく。
「ぷに……。(せっかくだから馬ニキの保護下の『東西南北』グループ*19と放課後スイーツ部とコラボしてもいいな……。いや、東西南北たちの気持ちを考えるとこれは無しか……?なら東西南北を学園の巫女科……ならぬ『アイドル科』の講師役に招いてもいいかも……。)
ぶつぶつと考えに沈んでいるスライム(仮)に対して、カズフサニキはやれやれと肩を竦めた。