とても参考になります。色々と取り入れてみました。
誤字脱字の報告、ありがとうございます!
──―岩手県花巻市東和町『丹内山神社」。坂上田村麻呂東征の際に社殿を改築し、不動明王を安置したという由緒ある神社。境内にはアラハバキ神を祭ったとされる「アラハバキ神の巨岩」が存在する。元々この神社もアラハバキの巨石を祭ったのではないかという一説もあるぐらいだ。その大石の上にぐてーんと遮光器土偶が横に寝転がっている姿は、まさにシュールそのものだった。
「起きろ621、仕事の時間だ」
「何その番号は……。まあそれはともかく何の用? 我あれ*1から騒動起こしたりしてないんだけど?」
寝転がっている遮光器土偶……もとい『国津神アラハバキ』は凍矢と向き合って会話を行う。
アラハバキと凍矢は以前自然回帰を唱って暴走したアラハバキを倒して平定した間柄ではあるが、少なくとも凍矢の方に恨みはない。(借金まみれという事から親近感すら感じるほどである)アラハバキの方も倒されたが別段恨み骨髄という訳ではなく、友好的とまでは言わないがかなりフラットな感じである。
「ああ、それで話なんだけど、以前堤防に対してもお前の力を借りただろう? それと同じく新しく作る路線の周囲の「盛り土」にアラハバキの「塞の神」としての力を込めてほしい」
鉄道の線路は、線路自体の重さや通過する列車の重さ、振動などに耐えるために、しっかりとした基盤が必要となる。 この基盤を作るための盛土が路床盛土だ。そして、その盛り土にアラハバキの塞の神としての力を込めてガチガチに霊的に固めるというのが凍矢の考えである。
アラハバキは謎に包まれた神ではあるが、その中に村や部落の境界線を守護する『塞の神』としての力を持っているという伝承もある。それは彼のホームグラウンドである東北地方ならば尚更である。
セツニキからも、東北地方ならアラハバキの神としての力は有効だし、これからの東北地方の事を考えたらアラハバキをこちらに引き込んで調伏させた方がいい、とのことで一度打倒した凍矢が説得を行いに来たのである。
自然回帰派である彼からすれば、人類に協力するなどお断りだ! という反発を予期していたのだが、アラハバキは意外なほどあっさりと凍矢の依頼を了承した。
それは、以前のやらかしで借金塗れ&呪術的に身動きを封じられているのを何とかしたいということもあるが、それだけではない。
「まー我も人間たちに全滅してほしい訳じゃないし……。というか人間たちに全滅するのは困るし、自然回帰はあくまで我の好みだから……。苦しんでいるなら手助けするぐらいはする。何か『列車』?とかいう文明の利器に協力するのは業腹だがまあ仕方ない」
元は自然回帰派の彼ではあるが、それでも態度がかなり軟化したのは、やはり終末を迎えて実質神代回帰した世界を見たからだろう。
神代回帰という事は、実質文明退化による強制的な自然回帰と行ってもいい。(事実終末対応せずに動かなくなった機械は数多い)
それに加え終末によって大量の人々が死亡したのを見て、この地の守護神としての本能も活性化したのだろう。彼はあくまで自然回帰させたいだけであって別に人々を死亡させたい訳ではない。
この二つによってアラハバキの態度も大きく軟化した結果、凍矢に協力することにしたのだ。
自然回帰派の彼としては、列車などという文明の利器の防衛に力を貸すというのは不本意ではあるが、背に腹は代えられないという状況である。
以前のやらかしによって契約でガチガチに縛られ、借金塗れの彼にとってはまさに渡りに船。こんな好機を逃す手はない。助力するかわりに契約の一部解除を行い力を発揮すること、そして今後は自分の働き次第で借金を返すための手段があれば迷わずに協力するだろう。
「まあ……それに少し前に宮城で幼女ネキ?という黒札にボコられたこともあるしな……。*2これ以上逆らってもこちらに利益はないし……。という訳で国津神アラハバキ、色々あったが汝らに助力しよう。コンゴトモヨロシク……」
「こんにちわ。田舎ニキ。中々面白そうな事をしていると聞いて(勝手に)協力をする事にしました」
宮城県仙台市シェルター。まずはここから霊線の始点地となる場所にするという事で、上空にはマザーバンガードから大量の浮遊魔術がかけられたコンテナが降ろされてくる。
その内部にあるのは、直江津シェルターや釜石シェルターで作られた大量の霊線用のレールや枕木である。
そして、仙台市の倉庫内部にはカズフサニキや幼女ネキが開発した冥界エクスプレスや電源車などが並べられているが、それを見ながらふらりとやってきた探求ネキ*3は列車ニキや凍矢に対して協力を申し出てきた。
(単に面白そうだから、という実にシンプルな理由である)
そして、彼女が倉庫に運び込んできたのは冥界エクスプレスなどに続く新しい列車であった。外見はサメをモチーフにした生体列車とも言える存在。電車のような姿をした鮫はトリコで使用されていた搭乗用モンスター「キャンピングモンスター」その中でも列車とサメが融合した形状をしているキャンピングモンスターがこの『電シャーク』である。
「この『電シャーク』は、堕天使フォルネウスをベースにしてあれやこれやこねくりまして『列車化』したものですね。そちらの冥界エクスプレスが攻撃力を重視しているのに対して、【エストマ】*4と【ドロンパ】*5を使用できるようにして「ステルス性」を重視しました。まあ、正直本当に作ったばかりなので試作データをこちらに送ってくれれば」
探求ネキが言ったように、海の怪物、サメにも変化できる堕天使フォルネウスをベースにして列車化。元ネタが他の猛獣から見つかりにくくなるためセーフティモンスターともいわれるキャンピングモンスターなのでステルス性を重視したほうがいいだろうと【エストマ】と【ドロンパ】を使用することによって透明化&聖域化を行うことにより敵悪魔からの目を逃れやすくできるようになっている。(当然、透明化していても内部から外が見えるようなシステムにもなっている)
さらに原作再現のために【融解ブレス】*6や大電力を発しての【貫通マハジオダイン】も使用することができ、攻撃力も合格点である。音も探求ネキのことなので、何らかの遮音技術を用いてそのまま走行できるいわゆる光学迷彩を行える列車なのだろう。
「あの……探求ネキ。これ低レベルの覚醒者を乗せる試験運用とかは……?」
それを聞くと、探求ネキはそっと目を背けた。思わず突っ込みを入れたくなりそうになったが、ま、まあ探求ネキほどの人がいうなら……と凍矢はそれを飲み込んだ。
時間加速ができる「壺中天地」を有している彼女としては作成時間は問題はなかったのだろうが、それでも流石に低レベルの覚醒者たちを乗せる試験運用までは間に合わなかったらしい。
「いや……まあ……面白そうだから私も作ろう! と急遽作成したものなので……。ステルス性を重視したのもあるキャンピングモンスター。モンスターの再現をしたかったというのもあるので……」
彼女にしては珍しく歯切れ悪く言葉を放つ。まあ、探求ネキが作った代物だから問題ないだろう、と彼らは判断し、試験運用を行う代わりにデータを彼女に提供する事でお互いに合意に至ることになった。
「他にも幼女ネキが新しい列車である『アドベンジャー』*7やら『線路管理用神輿ガーディアン』を開発しているらしい。こちらとしてはありがたい限りだな。好意に甘えるとしよう。」
岩手支部の一室、そこでは岩手支部長である「愛宕ネキ」*8が疲れ切った顔で机の上の資料と向き合っていた。
岩手県自体として良かった点としては霊線構築によって大量の霊鉄需要が生まれたという事で、製鉄で有名で東北新幹線から物理的な距離も近い釜石市シェルターが霊鉄製造拠点になったことである。これにより、霊鉄特需とも言える好景気が釜石市シェルターのみならず岩手県全体に広まりつつあった。
霊鉄の作成の手伝いや霊鉄を運搬するのに、未覚醒者たちの雇用なども生み出せた事も大きいだろう。愛宕ネキとセツニキは資料を見ながら会話を行う。
「ともあれ、「霊線特需」とでも言える好景気は出ているが、特需はしょせんすぐ消えるもんだ。朝鮮特需とか典型的だな。霊鉄特需を釜石や新潟の直江津で抱え込んだのは良かったがそれが消え去って巨大な施設だけでまた寂れてしまったら元も子もないからな。まあ霊鉄ならこれから復興需要とかもありそうだが……」
「うう、分かってるわよぅ……。好景気なのは嬉しいけど、規模を大きくしすぎると後で赤字に転落するし……。バランスが難しいわね……」
この霊線構築はいわばガイア連合や支部たちが協力して作り上げた巨大公共事業である。
公共事業を行う事によって仕事を増やし、未覚醒者たちに対しても仕事を増やして失業者対策も行える。
未覚醒者であっても霊線レールの原材料である復活した釜石鉱山から産出された鉄鉱石の運搬、霊鉄作成の手伝い、出来上がった霊線の運搬業務、それに伴う食事作成や身の回りの世話の仕事程度はできるため、そこに雇用が生まれる事になる。
同じく岩手に存在する黒札である「ニヒトニキ」*9による「教導スキル」と鬼手一族たちの協力もあって霊鉄制作やそのための素材作りなどは上手くいっているため、愛宕ネキからしたらそのまま雇用を広げていきたいのが本音である。
「まあ、とは言ってもこれだけ巨大な鉄道網ならしばらくは大丈夫だとは思うが……。霊線特需がなくなっても霊鉄なんて復興にいくらでも役に立てるし、規模さえ広げすぎなければいいんじゃないか? 山形県とかも霊線を作ってほしいとあかりんごが食いついてきたみたいだし、しばらくは心配ないだろ」
とはいうものの、これは嬉しい悲鳴という物であり歓迎こそすれ嫌がるものではない。まずは嬉しいニュースを情報共有したあとで、二人は今度は現実……というか嫌なニュースに向き合う。それはメシア教過激派についての話題である。二人は深いため息をつきながら、死んだメシアシンパたちの魂から直接カス子ネキが引き出した情報を向かい合う。
「まさか……セツニキや鬼手一族や私たちでも追跡できない隠れ拠点が岩手にあったとは……流石に予想外だったわ……。確かに岩手や宮城には「隠れキリシタン」の概念があったとは言え……。」
カス子ネキから得た情報によると岩手や宮城には「隠れキリシタン」が存在し、過激派はその隠れ里を占拠して戦力を虎視眈々と蓄えているらしい。岩手には「隠れキリシタン」という概念、あるいは独自に隠蔽術式で細々と生き残っていたのを密やかに拠点化しているとのことだ。元々、仙台藩のキリスト教信仰は製鉄を隠れ蓑にして広まったらしいという流れもあり、製鉄需要で盛り上がっているこの状況には奇妙に一致する。もちろん、セツニキもその辺は警戒しており、釜石市シェルターの霊鉄作成に過激派が入り込まないように注意はしている。*10
「過激派どもは、今度は釜石の霊鉄作成所に潜り込んで製作中の霊鉄に聖遺物の混ぜ物仕込もうとしたり、霊鉄保管庫や拠点にテロを仕掛けようとしたり、霊鉄の配置前の霊脈に小細工をしようとしていたから、鬼手一族や他の勢力と協力して排除しているが……俺や鬼手一族の手をすり抜けて隠れ住んでいるとは流石に予想外だったな……。一応は岩手県一関市の大籠地区は、隠れキリシタンの里らしいから確認はしたんだが……。さすがに向こうでもそこまで愚かではなかったか。まあいい、これは【闇の転生者】*11に情報を流して拠点を始末してもらうか……。愛宕ネキは霊線と霊鉄特需の件に集中しておいたほうが岩手のためになるだろ。」
愛宕ネキからしたら、自分たちの領土に過激派の拠点があるのなら自分たちの手で粛清したいのは当然であるが、それよりも彼女は岩手支部長として霊線の建築、霊鉄の生産運営などやるべき仕事は山のようにある。
任せられるのなら任せたほうがいいだろう、と彼女はセツニキの言葉に頷いた。
(しかし……妙だな。静かすぎる。過激派の奴らは散発的な嫌がらせしかしてこない。本格的にやるなら敵戦力の分散のために各シェルターで大規模なテロ活動を行って黒札の戦力を分散させるぐらいはやるはずだが……。過激派に戦力が欠けているのか?いくらなんでもさらなる決戦兵器はないはずだが……。警戒する必要はありそうか……。)
「しかしセツニキがここまで前向きというかガイア連合を動かしてまで協力するとは……。何か考えがあるのかしら?」
「これは単にシェルター同士を繋げるだけじゃない。上手くいけば東北地方をぐるりと取り囲んで守護・地鎮できる大規模大型結界の構築にも繋がる。さらにカズフサニキたちですら諦めた地理の把握状況、測量やら土地の奪還やらを行う拠点地にもなるだろう。……これは人類はシェルターに籠って蹲っているだけのか弱い存在ではない。この日本を取り戻すための国土奪還・国土平定のための第一歩になるんだ。それならいくらでも協力するってもんさ。」
そのセツニキの言葉に、愛宕ネキは大きく頷いた。
大規模な霊線構築のために各支部の人員たちと会議を行ったり忙しく飛び回っている凍矢と列車ニキ。そんな忙しくしている二人に対して、高校生ぐらいの茶色の髪をロングヘアーにしている若い女性が話しかけてきた。
それは以前凍矢と共に今は仲魔にしている「ザオウゴンゲン」と共に戦った「#UNICUS(ユニクス)」のメンバーの一人『辻野あかり』*12である。
「ちょっと~お話したいんだけどよろしいんご♡」
以前の共に戦った縁もあるので別段話を聞く程度ならば問題はない。元々、地元山形県で生産される山形りんごをこよなく愛する彼女は、凍矢たちと同じく山形県を守ろうと戦っている「地方勢」の一人である。
彼女自身も山形県、ひいては山形りんごを守ろうと走り回っているらしいがそんな彼女も宮城・岩手・青森・秋田を繋ぐ霊線計画を聞きつけて、自分たちの所……つまり山形新幹線の霊線開発*13をお願いしにきたらしい。
青:東北新幹線(最優先)
赤:羽越新幹線(優先したいが難易度が高い)
黄:秋田新幹線(優先度は低め)
緑:山形新幹線(優先度はさらに低め)
「なるほど……。山形県にも霊線を通してほしい、と。いやまあ羽越新幹線のプランを使用する予定だから、どの道秋田から新潟まで山形県を通す予定ではいるけど……。じゃあ山形県の担当になって色々名家などと交渉する役目になる? それならこちらもありがたいけど」
「喜んでやらせてほしいんご♡文句をつけてくる阿呆どもは片っ端から薙ぎ払ってやるんご!! その代わりに山形新幹線復興もお願いしたいんですけれど~ダメんご?♡」
だがいくら交流があるとはいえ、いきなり予定にない山形新幹線の霊線構築を頼んでも断られる可能性は高い。
正直、山形新幹線は新潟からしてみたら旨味が少ない、というのが正直な所だ。(少なくとも凍矢から見たら)
山形新幹線より宮城・岩手・青森・秋田・山形を通して新潟にまで霊線を通す東北新幹線&羽越新幹線ルートが新潟や他県にとっても遥かに利益がある。
そこのところはあかりも十分に理解しており、まずは羽越新幹線の山形県の地域を担当し、ここの霊線をしっかりと繋げる役割をこなそうというのが彼女の考えである。そして、その後で山形新幹線の霊線構築をお願いしたい、というのである。
「いや……まあ……とりあえず東北新幹線復興と羽越新幹線建設、秋田新幹線が終わってからなら考えるけど……。正直かなり優先順位は後回しになるけどそれでもいいの?」
「構わないんご。羽越新幹線を通して秋田と新潟を繋ぐルートとして山形県に霊線を通してくれるんでしょ? それなら山形新幹線が後回しになっても別段構わないんご!! 羽越新幹線の山形方面ルートは私たちが何とかするんご!!」
山形県の羽越新幹線のルートには、出羽国一宮【鳥海山大物忌神社】が存在する。出羽富士、鳥海富士とも呼ばれる鳥海山を神体山とし、山形県・秋田県にとって非常に霊的に重要な部分である。羽越新幹線の山形方面ルートを守護することは、山形県の霊的防衛にとっても大きな意味を持つ。
さらに、新潟県と隣接する山形県の霊的防衛がしっかりしていないと、新潟県に悪魔が流れ込んでくる危険性は大きい。
恐らくその時は新潟市にいる鑑定ニキが防衛に当たると思うが、それでもそんな事態は避けた方がいいに決まっている。それに羽越新幹線の山形ルートの名家は彼女が担当するとなれば、お互いにウィンウィンの関係になれるはずである。
「後、そちらでも情報が回ってると思うけど、秋田支部の一部の名家とこちらの一部の名家が霊線のルートを羽越新幹線から山形市を通る奥羽新幹線ルートにしようと目論んでいるらしいんご。確かにこちらからしたら秋田支部と山形市が直通になる奥羽新幹線ルートのほうがありがたいけど……そんな不義理は侵せないんご!! こちらの名家はお仕置きしておくから安心してほしいんご!」
確かに奥羽新幹線のルートならば秋田から山形市への直通ルートになるため、山形県としてはありがたいが、新潟から見れば旨味はほとんどなくなってしまう。
それよりも羽越新幹線の霊線作りに協力する代償として、仙台、福島から山形市を繋ぐ「山形新幹線」の復興に協力してもらう。これがあかりが選んだ方法である。
羽越新幹線と山形新幹線の2本の霊線が構築できれば、山形県の霊的防衛にも大きく貢献できるだろう、
「奥羽新幹線の方が確かに私たちにとってはありがたいけど! そんな不義理したら田舎ニキも列車ニキも協力してくれなくなるんご!! お互いに協力してウィンウィンの形に持っていかないとこんな大規模工事やっていけないんご!! しっかりとそちらに協力するから……山形新幹線の件よろしくんご♡」
パチン、と可愛らしくウインクをする彼女に対して、凍矢も列車ニキもやれやれ、と肩を竦めた。
「どうでもいいけど……東北地方と新潟県の協力って『奥羽越列藩同盟』を思い出すんご。もう旗印を五芒星にしたらどう?」
「負けフラグはやめろ下さい。(震え声)」
一方、秋田支部の支部長『室井梅吉』は胃痛に苦しんでいた。*14それは黒札ばかりの状況だけではなく秋田支部の現在の状況というのが一番大きい。秋田支部下の名家はとある事情により正当な理由がなければ処分することができない。
そのため、その弱みに付け込んで好き勝手やギリギリをついて自分に優位にしようとする名家が山ほど存在するのである。今回の霊線構築に付け込んで秋田から山形を通して新潟に繋げる「羽越新幹線」ルートではなく、秋田から山形を通して山形市へと向かう「奥羽新幹線」ルートにしようとして自分たちに優位に進めようとする名家たちが大量に出たのだ。
『うう……。また名家が文句を言い出してくる……』
そして、そんな彼とCOMPで通信を行っているのは、魚沼シェルターのブレインとも言える同じく名家URとも言える『九重静』である。しかし、同じURではあるが、静もやはり名家ではあるので邪魔者を迷いなく処断する事ができるので、彼女から見れば「さっさと始末してしまえばいいのに」とは毎回思ってしまうのはやはり同じ名家上がりでもかなり性質が違うといえるだろう。
「……名家の私が言うのも何ですが、そこまで気を使う必要ありますか? 黒札がバックにいるんだから逆らう名家は『処分』してもどこからも文句言われないのでは? 何ならこちらで『処分』をしておきましょうか? 貴方が倒れるとちゃあが悲しみますし、ちゃあ*15が悲しむとあの子を可愛がっていたロボ部の皆様からの突き上げが……」
『いや、こちらの名家のことはこちらで何とかする。わざわざそちらの手を借りるのは……。また何かあったら相談に乗ってほしい。』
と静自身も言うものの、何らかの事情があり彼は他の名家を即断即決で始末することはできないらしい。そこで静が考えたのは「大義名分があれば粛清することも可能だから名家の情報だけを集める」事である。
静は表部隊といえる【黒騎士部隊】のほかにも裏部隊、暗殺・妨害工作・情報収集など汚れ仕事の専門部隊である【氷グループ】【暗部】が存在する。本来は黒騎士部隊がこの任務を行う予定だったのだが、予想外に黒騎士部隊たちが有名になって『綺麗』な有名な神社の跡取りたちなどが申し込んできたので、こちらを表部隊の戦力として活用。
暗殺・妨害工作・諜報を主任務とする手を血で汚しても厭わない元ダークサマナーたちで占められている【氷グループ】を半終末より遥か以前に結成していたのだ。(凍矢も薄々は気づいてはいるが、まあそういう部隊も当然あるだろう、と敢て突っ込んではいない)
室井梅吉とCOMP通信を切った静は、今度は自らの裏部隊である氷グループに対して指示を出していく。
『……もしもし。私ですが秋田支部近辺……県南名家の情報を集めなさい。どうせ名家なんだからあくどい事を山ほどやっているんでしょうから、粛清用の証拠を今から集めておきます。何なら半終末以前を調べ上げればあくどい事はいくらでも出てくるでしょう』
静と話しているのは氷グループの一人、流れるような艶やかな黒髪と整った人形のような綺麗な顔をしたチェロにも似た礼装を持った美少女……元ダークサマナーの一人『ヴィルトゥオーサ』である。
美少女ではあるが、彼女は元ダークサマナーでありその美しいチェロの音によって理性に隠された感情の発露こそが重要視していた人物であり、人の命を重要視していない人物だ。そのため、その音により【幻惑】【混乱】【魅惑】を与える事ができるという特殊能力を持っている。
『……『処分』はなさらないので?』
『一応秋田支部のシマですから勝手に『処分』するわけにはいきません。粛清用の証拠だけ集めておいて、いざとなったら証拠を秋田支部長に渡します』
静は基本的に温和ではあるが、そこは彼女も名家の血筋。邪魔者は何の躊躇いもなく粛清できる非情さは備わっている。必要であれば眉一つ動かさずに邪魔者や名家たちを何百人と陰ながら粛清する事ができるだろう。(できる限り凍矢には見せないようにはしているが)
『黒札様たちの一大プロジェクトの邪魔をしたらそれだけで私たちは消し飛ばされる儚い命というのを理解できないんでしょうかねぇ……。いやまぁギリギリを見据えて有利になる交渉を! と考えてるかもしれませんが……』
『ともあれ、了解しました。その近辺の情報を集めておきます。その代わりに……』
ヴィルトゥオーサは「人魚ネキ様♡ラブ♡」「お歌♡歌って♡」とデカデカと書かれたうちわを彼女は取り出す。同じ音系の能力者ではあるが、ヴィルトゥオーサはとあるきっかけで人魚ネキの歌を聴いてそれまでの自分自身の楽器の自信が粉微塵に打ち砕かれて人魚ネキの熱狂的なファンになったらしい。自分の楽器など彼女の歌に比べればただの騒音でしかない、と彼女は心の底から人魚ネキの歌唱に惚れ込んでしまったのだ。
それを見ながら、静は分かった分かったから……人魚ネキ様のグッズが手に入ったらそちらに回すから……とため息交じりに言葉を放って通信を切った。
仙台市シェルターから少し離れた場所。飛行できる幼女ネキやカス子ネキ。さらに飛行戦艦である「マザーバンガード」や幼女ネキ所有の「孔雀明王」を使用し上空から観察し先行偵察を行い、そして仙台市シェルターから北上して盛岡市シェルターを目指しているのである。そして地上部隊の先端を切っているのは、凍矢の分身と彼の仲魔である『ザオウゴンゲン』……もとい『桑山千雪』である。
本来の式神である『破裂の人形』は現在妊娠中であるため身動きが取れない。そのため用意した前線用のザオウゴンゲン……もとい千雪はまるで舞うように両手に三鈷杵を持ちながら前方に己の退魔を力を叩きつけていく。
「オン・バサラ・クシャ・アランジャ・ウン・ソワカ!!【忿怒の暴圧】*16ッ!!
「うおおおお!!【氷結貫通】【氷結ハイブースタ】【マハブブバリオン】! 【氷結貫通】【氷結ハイブースタ】【マハブブバリオン】! 【氷結貫通】【氷結ハイブースタ】【マハブブバリオン】! 連打連打連打ぁああ!!」
凍矢の分身体と桑山千雪は協力して、強力な退魔の力と猛烈な冷気で自然も悪魔も異界も全て一直線に打ち砕いていく。地形も空間も何もかもがぐにゃぐにゃにねじ曲がり、悪魔たちが好き勝手に異界を作りさらに空間を捻じ曲げていく。そんな中を開拓して道を切り開くためにはどうしたらいいか?
その答えとしては『黒札のその仲魔の能力のゴリ押し』である。
可憐な衣装に身を包んだ千雪は両手に三鈷杵を持ちながらまるで舞うように優雅な動きを見せながら、その退魔の力であらゆる存在を薙ぎ払っていく。これはいわば「地鎮祭」であり、これはそのために舞ともいえる。
元々修験道の主神である『ザオウゴンゲン』の右手の三鈷杵は天魔を粉砕する相を示し、左足の踏みつけは地下の悪魔を押さえつけており、右足の蹴り上げは天地間の悪魔を払っている姿を象徴しているように極めて退魔の力に優れている神霊である。
その権能を使用し、三鈷杵で天魔を粉砕し、左足で地下の悪魔を抑える……つまり地形を固定し、右足の蹴り上げで天地間の悪魔を払い道を作り上げる退魔の力を引き出し、その膨大な力を『忿怒の暴圧』として放出していくのである。
その膨大な退魔の力により、捻じ曲った空間や地形は半ば無理矢理直線状になり、前方の異界も悪魔も次々に消滅していく。よほどの大悪魔でもない限り、修験道の主神であり退魔の力に優れるザオウゴンゲンに逆らえる悪魔たちなど存在しない。
千雪が三鈷杵を振るうたびに、前方のあらゆるものは消し飛ばされ、その退魔の力で半ば無理矢理直線状の空間が出来上がっていく。
さらにそれに上乗せされるのが凍矢の猛烈な冷気である。冷気に耐性のある東北地方の植物でも彼の冷気には耐えられない。巨大な大木や人食い植物、【妖樹アールキング】【妖樹ザックーム】【妖樹ジュボッコ】の森、あるいは低レベルの異界も凍矢の冷気と千雪の退魔の力で片っ端から消滅させていっているのだ。
そして、その直線状の空間に対して、凍矢の冷気によりいわば『氷のトンネル』が構築されていく。
こうして構築された氷のトンネルは攻性防壁も兼ねており、外から悪魔やら何やらが襲い掛かろうと触れた瞬間に氷漬けになってしまう形である。
そのトンネル内部に移動可能なマニ車型結界展開装置やら何やらを持ち込んで、結界を展開し安全地帯を構築。そして、そこに路線やら枕木やら機械やらを運び込んで霊線を構築していくという流れである。
「よーし!! 安全確保!! 物資を運び込めー!!」
そして、その氷のトンネルと結界という二重の安全地点にロボ部が作り出した作業機械であるATたちや覚醒者たちが次々と霊鉄で構築されたレールや枕木を運び込み、イワナガヒメの力が込められた一番の土台になる『路盤』を作り上げ、『道床』と呼ばれる砕石構造の層を作り上げ、そこに霊鉄で構築されたレールや枕木を敷いて次々と霊線を構築していくのだ。さらに周囲に盛り土を作り上げ、そこにアラハバキの力を込めて霊的な防御結界へと作り上げていく。それに加えて道祖神や塞の神の祠なども作り上げ、何重もの防御結界で霊線を守護していくのだ。
そして、ある程度完成したら氷のトンネルを解除してどんどんと霊線を構築していくのがこのプランである。
普通の鋼鉄のレールならば熱膨張など行うので歪みが発生しメンテナンスが必要ではあるが、この霊鉄で構築されたレールでは、そんなメンテナンスなど自動的に行える実質的なメンテナンスフリーな素材である。
上空からは巨大なマザーバンガードから、次々と霊線用のレールや枕木などが入った浮遊魔術がかけられたコンテナが氷のトンネルが解除されて安全が確保されている地域に投下されていき、それを回収して氷のトンネル内部に送り込み、どんどん霊線を伸ばしていっているのだ。
そしてそのマザーバンガードを護衛するのは飛行できるロボ……【ダンバイン】や【キングゲイナー】、飛行形態ミッションパック『W(ウォーバード)パック』を装備して戦闘機形態になっている【F90】、そして呉支部のバルキリーを改造した【ファイヤーバルキリー】*19などもマザーバンガードの護衛に当たっている。
『……来ると思うか?』
『来るね!絶対に来る!!田舎ニキとロンギヌスの槍なんて厄ネタがあって何も起こらない訳ないじゃん!!絶対に騒動が起きるぜ!!』
『サージェスニキが大笑いする姿が目に浮かぶなぁ……。「田舎ニキと一緒にいると飽きないなァ!!戦争狂にとっては最高の職場だぜ!!」と毎回大喜びだもんなぁ……。』
『まあ俺たちは騒動が起きたら鎮圧するだけだ。全方位警戒態勢。何が起きても即応できるようにしておけよ。』
その言葉に、機体の中にいる転生者たちはそれぞれおー。と気のない返事を返した。
敵としてはMS(マライカスーツ)ならぬMA(マライカアーマー)でペイルライダー計画のガンダムたちを出そうかな、と思っています。
マシンメシアンで分類はメシアンなのでCOMPに入れられるから海外で生産されて日本に輸入されたよ!やったね!!まあ高レベル黒札揃いなのであっさりやられるんですが。