馬ニキにタケノコなどの件でお世話になったので。
空前のカオ転ブーム来ていてイイゾコレ~になっています。ウレシイ……ウレシイ……。
魚沼シェルターの作業場の一つ、そこでは凍矢の複数人の分身体たちが集まって作業を行っていた。分身体たちはそれぞれ協力しながら大量のブフストーン作成、多数の銃弾に魔力を込める凍結弾作成、そして水を生み出すアクアストーン作成など、分身体が作り出した色々な武装などをコンテナに封印してターミナルへと搬入しているのである。
「うおお!琉球ニキ*1の支部に物資搬入だー!!大量のブフストーン!アクアストーン!*2マハブフストーン!大量の凍結弾!!そして氷で構築された凍刃!!熱帯地方なら俺の特性が役に立つぜ!任せろー!(バリバリ)」
半終末より以前、魔人ネキの作り上げた道南支部*3では相性の悪さから活躍できなかった分、亜熱帯地方であり自分の氷結特性が役に立つ沖縄支部ならば力を貸す気満々らしい。大量の氷系オカルト物資が封印保護されたコンテナを大型ターミナルを使用して沖縄支部へと輸送していく凍矢。何なら自分が助っ人に行ってもいいくらいである。
大量の凍結弾などに加えてイギリス支部へと搬入した大量生産用の「凍刃」*4も役に立つだろうと式神マザーマシンを利用して凍矢の分身が作り出した凍刃を封入していたのである。凍矢の分身たちはそれぞれ作業を行いながらお互いに会話を行って情報の交換を行っていく。
「在日米軍の強化は……終末対応F-15とか虚舟型戦闘ヘリなら渡してもいいと思うけどロボ系列は流石になぁ……。*5」
「後は確か……列車ニキが道南支部や北海道シェルターに【蒸気併用霊子機関】*6に売り込みたいんだっけ?」
「まあ、目当ては北海道の【石炭】みたいだね。蒸気型霊力機関なら派生した蒸気をスチームパイプに通して支部自体を暖める事もできるみたいだし。北海道に売り込んで炭鉱から石炭を入手したいらしい。列車ニキのデモニカも石炭が必要みたいだし。」
そう、蒸気機関には当然石炭が必要。ではその石炭はどこから賄うのかと言われたら北海道に目をつけるのは当然だろう。北海道は国内でも有数の石炭産地として知られ北海道のほぼ中央部に位置する石狩炭田と十勝地方に存在する釧路炭田が有名である。ここに存在する膨大な石炭資源を活用しない手はない!と自身のデモニカにも蒸気機関を使用している列車ニキは目を付けたのである。
「石狩炭田は函館じゃなくて札幌よりだけど、まあ影響力のある魔人ネキなら何とかなるでしょ。釧路炭田もウォレスニキ*7の十勝から近いし、ウォレスニキにも売り込むのもアリかも?」
「寒さは豪雪地方の俺たちが一番よく解ってるからね……。暖房大事。じゃあ無惨ニキには列車ニキから話を通してもらってこちらは魔人ネキとウォレスニキに話を振ってみるか。導入してもらえれば石炭需要も生まれて炭鉱再開拓もしてもらえるだろうし。蒸気機関なら「温暖結界」も相性がいいだろうし、寒冷地向けの【温暖結界機能付き蒸気併用霊子機関】とか無惨ニキに頼んでいいんじゃない?」
(蒸気機関型飛行船……武装飛行船*8とか道南支部にどうかと提案しようと思ったけど列車ニキが怖いし黙っていよっか……。)
わいわいと分身体たちはお互い作業をしながら会話を行っているが、ちなみに炭鉱夫の問題は分身たちは皆揃って目を反らすしかない状態である。パピヨンニキの佐渡金山みたいに罪人や問題児たちをいい感じでよろしく!とウォレスニキたちに言うしかないだろう。
「あとはあれか。寒冷地仕様デモニカパーツを道南支部へ搬入か。あれは脚部のスキーユニットと肩部のヒーターユニットの組み合わせだからG3系列のデモニカじゃなくても大丈夫だっけ?」
寒冷地仕様デモニカのスキーユニット仕様。*9それはガンダムF90のC(コールドネス)タイプをモチーフにして小型化しデモニカ用に開発したデモニカパーツであり、肩部にデモニカ(本来はG3系列内部の人工筋肉を温める)と内部の人間を温めるヒーターユニットと防寒用マント、そして脚部に折り畳み式のスキーユニットが展開され、デモニカでも雪上を滑るようになるシステムである。*10
本来はG3系列対応ではあるが、別にG3系列ではないデモニカでも十分装備可能な装備ではある。さらにこのスキーユニットには、無惨ニキたちが開発した【フロートユニット】が組み込まれており、重いデモニカでも十分雪上を滑れるシステムになっている。雪に包まれた地方でもデモニカで戦えるようにと豪雪地帯の魚沼に合わせて開発されたシステムではあるが、道南支部でも十分役に立つだろう。
ともあれ、そんなこんなで他シェルター支援について話し合っていると、分身体の一人が本体に対して話しかけてくる。
「後はナマモノネキを封印しておいたぞ本体。」
「うん……うん?」
その言葉に思わず首を傾げる凍矢本体。どうやら自分の氷系の技術を使用して、氷棺内にナマモノネキを封じ込めて強制コールドスリープ状態にしたらしい。恐らく半年間は封印から出られなくなるだろうと分身体は踏んでいる。*11世話になっている幼女ネキが毎回怒り狂うのを見て、今回は自分にまかせてくれ、とやらかした罰として封印状態にしたとのことだ。
「ラインハルトニキやヤンニキから多少は戦術を学んだからな……。戦術とは相手の嫌がる事を徹底的に行う事。ナマモノネキの嫌がる事は何か?それは【締切に間に合わない事】だ!半年間は氷の中に封印しておけば、次回の山梨コミケには間に合わない!大量の締切を抱えて身動きが取れない苦しみを味わうがよいワハハ!」
「まあ……根本的解決にはなってないけど……いいか!」
封印されて文字通りの意味で頭を冷やしたナマモノネキを見れば、幼女ネキの溜飲も少しは下がるだろう。とりあえずヨシ!と現場猫した凍矢は、次の作業に取り掛かった。*12
──―異界、黄泉比良坂最上層部。
そこでは普段の静かな異界とは異なり、異界でも作業できる土木工事機械や覚醒者たちが協力しながら専門の『工場』を作成していた。
それは馬ニキが考えて作ってくれた『山葡萄』と『タケノコ』の生産についてである。*13ジャンニキやカタリナネキですら唸りを上げるほどの美味さを誇るこの食材の生産のために異界【黄泉比良坂】の最上層部に新しい工場を作ることになったのだ。(きちんと馬ニキに対してもお礼のため売り上げの一部をロイヤリティとしてマッカ提供も行っている)特に『タケノコ』は保存のために専門の工場を作った方がいいと言われた凍矢はそのアドバイスに従って魚沼シェルターから建設資材を搬入してタケノコ工場を作成したのだ。
「MAG変換発電装置設置完了!!」
「了解!! MAG変換発電装置起動開始!! 起動ッ!!」
これは地熱発電ならぬ、地下霊気変換発電である。黄泉比良坂の下層に蓄積された黄泉の膨大な霊気を吸い上げ、それを電力へと変換するシステムだ。(これがなくても凍矢のMAGバッテリーも大量に存在はするが)
黄泉比良坂は黄泉と繋がっているため、地下から膨大な黄泉の霊気が放出してくる。それを電力に変換する事ができれば、黄泉の影響力を減らし、湧いてくるヨモツシコメやヨモツイクサたちを減らすことができ、さらに膨大な電気供給も行えるという一石二鳥のアイデアだ。
「うーむ、馬ニキやジャンニキから「タケノコを保存するのなら工場が必要」と言われたから作ってみたけど……せっかくだし俺の秘密基地的な場所にするか! 死後はここに住むつもりだし。きちんと馬ニキにもお礼のマッカを上乗せして渡しておかないとなぁ。」
今のところ、最上層部を工場や居住地、店や凍矢の死後の快適な家を作り出す拠点地にして、第一階層をノロイ米の大規模生産拠点へと変えていく予定である。
現地民の修行場として活用している第ニ階層、第三階層もノロイ米の農地として活用したい点はあるのだが、まずは第ニ階層のヨモツイクサたちを完全に駆逐して安全を確保してから、というのが凍矢の考えである。
そして、その発電システムが稼働し、工場や集合住宅に明かりが灯ったのを見て、工場を組み立てていた建築員たちは一斉に歓声を上げる。
そして、その電力で稼働を始めた工場内で加工されたタケノコは缶詰や瓶詰、あるいは塩漬けにされて山梨支部へと輸送されていく予定である。タケノコは長期保存が難しく、真空パックや缶詰瓶詰にして最大1年保存が可能である。そして、それら真空パックや缶詰瓶詰にするための工場が必要ということでこうして工場を建設したのだ。*14
あのジャンニキやカタリナネキですら認めるほどの美味さを誇るのなら、山梨支部の舌の肥えた黒札たちも満足してくれる事だろう。
他にも、山葡萄の保存加工用に山葡萄を利用したワイン、ジャム、ジュースの生産、さらにドライフルーツにするための研究なども工場内部で行われる予定である。(セツニキや幼女ネキたちにも世話になっているので送ってみる予定)その工場を見ながら、凍矢はどうせ死後に住むのならもっと住みやすい場所にするべきか、と腕を組んで考え込んでいた。(自身の死後用の屋敷は作ってはいるが)
当然の事ながらキクリヒメと契約を結んでおり、日本の冥界である黄泉比良坂と強い結びつきを持っている凍矢は戦いで死亡した時にはメシア教過激派に魂を取られないように、ここ黄泉比良坂に魂が運ばれてくる契約を結んでいる。日本人であり、黄泉比良坂と強い結びを持つキクリヒメと契約を結んでいる彼ならば、冥界である黄泉比良坂と極めて相性がいいのは当然である。
個人的には死後は電脳異界よりここでゆっくり暮らすのも悪くはない、と考えているが、それには一つの問題点があった。それは黄泉比良坂には「娯楽も居住施設も何もない」という事である。
そこで彼が考えた結論は「なければ作ればいいじゃん!」という実にシンプルな結論である。
現在では、最上層部には下層の黄泉から引き揚げたMAGを電力に変換するタケノコ保存工場だけではなく、働く住民用の居住アパート、食料販売用の店、そして凍矢用の死後に住むための快適な巨大な屋敷などが存在しているが、これをどんどん広げて快適で住みやすい街に変えていこう、とするのが凍矢の目的である。 黄泉で飲み食いするとなるとヨミツヘグイの可能性が出てくるが、ここは正確には黄泉とは異なる場所なので、覚醒者ならば安全に暮らす事は可能だろう。
工場で働く人員の他に、黄泉比良坂内部で作成される「ノロイ米」を栽培している覚醒者たちも存在する。「ノロイ米」が「ノロイ酒」さらには対天使に特攻なノロイ酒をベースとした発火燃料やテルミットと混合して生成した特別製のナパーム弾は非常に重宝されるため、最近では生産量を増すために色々工夫をしているが、キクリ米や普通のコメなどと混ざらないように細心の注意が払われている。
黄泉比良坂の最上層部に強力な結界を張り、タケノコ用の工場だけでなく、居住施設や自分の死後に住む屋敷、さらに食糧生産システムや温泉、電脳異界や山梨支部、他のシェルターなどにも行けるターミナルを設置など、最上層部を自分の住み心地の冥界へと変貌させていく計画である。
自分が住む冥界だし、魚沼シェルターと異なり別段周囲の山神の反対があるわけでもない。
最深部に存在するイザナミが不安ではあるが、それも親和性の強い住み心地のいい冥界というのは捨てがたい。
さらにここは正確に言えば「現世」と「黄泉」の境目の領域である。ここを事実上支配するのはキクリヒメであり、好き勝手にいじろうと黄泉の奥深くにいるイザナミに別段文句を言われる筋合いはない。
さらに最悪の場合、死後に魚沼シェルターが大悪魔に襲われた場合、【復活しやすい】という最大の利点もある。現世と黄泉の境界線であるこの場にいる事は正確には「完全に死亡していない」という事でもあるので、肉体さえ保存していればすぐさま復活して出撃を行える事すら可能である。
……もっとも、基本的には現世は見ているだけではあり、多大な干渉は行わないつもりではあるが……。その凍矢の考えを聞きながら、工場起動を確認するためについてきた九重静は思わず凍矢に問いかける。
「……それはつまり、死後もこの魚沼シェルターの守護神になるということですが……よろしいのですか? 黒札様は皆「死後のことなんて知った事じゃない」というと思っていましたが……。」
「いや基本的には干渉しないつもりだし……。とんでもない大悪魔とか襲い掛かってきてこの土地が滅茶苦茶にされるのは後味悪いからまあ最悪のパターンを想定しているだけだし……。後は好きにやればいい。そこまで面倒見る義理もないしね」
(いや、それでも十二分に面倒を見てると思うのですが……)
黒札たちは「死後まで世界の面倒なんて見てられるか!!」が基本的な考えである。恐らく各黒札たちが独自に作り上げた魂を保護する世界に移動するか、電子異界で第二の生を送るかの二択だ。死後も復活のために備えていざ大悪魔が襲撃してきたら復活しようなどという物好きな黒札は数少ないだろう。(実験のために分身体を氷棺の中でコールドスリープさせていたりする。)
(肉体の保護さえしておけば現世に復活しやすいとはいえ……こんなところに好き好んで死後住む黒札もいないやろ。ふふふ、魚沼シェルターは地形的な問題もあるし好き勝手できなかったけど、ここだと何もないしキクリヒメの許可もあるし好き勝手に自分の秘密基地を建造するぜ!! 自分の死後の拠点作りだし、あれやこれや稼いだ分をここに突っ込んでも文句言われないでしょ! 嫁たちも贈り物のクロマグロ*15でご機嫌取ったし!)
凍矢も分身を覚えて極めて高価な海産物を取って山梨支部へ売りつけたり、様々な依頼を受けて十分な儲けは出ている。その派手に稼いだ分をシェルター増強だけでなくここにも使って発展させるぜ!リアル秘密基地や! と凍矢は考えているのだ。だがそんなムフフと心の中でほくそ笑っている彼を、静はじとーっとした目つきで見つめる。
「まあ……工場開発も死後の居住地を作るのも必要性は十分理解できますが……またほむらにガチ切れされますよ? せっかくご機嫌とったのに……。それだけは覚悟しておいてくださいね」
常々「無駄遣いはするな」と言っているほむらがこれを知ったら必要な出費とはいえ、また怒られる事は間違いないだろう。思わずぴえん、となりそうな凍矢だったがそれは受け入れるしかないか……また美味しいカツオでも釣ってきてご機嫌を取っておかないとな……と工場を見学している凍矢に対して、工場を建設していた労働者たちは一斉に土下座して彼に懇願してきた。
「黒札様! ここ黄泉比良坂なら死後も私たちの魂を保護できるのでしょうか! 我々の死後もここで暮らしたいのですが……お願いできませんでしょうか! なにとぞ!!」
「えっ……いや確かに別に口止めとかしてなかったなぁ……。まあ工場起動するのに人手必要だし……。いいんじゃないかな……? あっいてて。」
別にいいんじゃないの?キクリヒメと契約は結ぶ必要はあるかもだけど、と気軽に言おうとした凍矢を口止めして、魚沼シェルターの代理管理者として凍矢よりも一般人に知名度のある静が直接前に出て、皆ににっこりと笑いながら宣言を行った。
「皆様のご心配は分かりました。ですが不審者がここに入り込んでテロを行う可能性もあります。きちんと審査を行って認められた人々から契約を結んでいく。これでよろしいでしょうか?」
おおおお!! と静の言葉に労働者たちから一斉に歓声が上がる。黒札でさえ不安に思っている「死後の安寧」それが約束されているのなら彼らに恐れるものなどない。そしてこの地でロクでもない事をしたらその「死後の安寧」「生前の安寧」すら失い、追放されることはすでにこの地の人々は骨身にしみて知っている。そうなれば、よほどのおかしい人間でなければ「良い子でいよう」と考えるのは普通である。(この地が色々騒動に巻き込まれてもそれでも何とか安全は確保されているので、他所より遥かにマシであると考えている)結果的に治安維持と人心の安定に繋がるとなれば別段凍矢に異議はない。
「まあ、ここはガイア連合の影響を受けずに俺の好き勝手やっていい領地だし……やっちゃいますか!メシアン立ち入り禁止令!!」
だが、やはりメシアンだけは別である。今まではガイア連合からの干渉もあってしぶしぶ穏健派を受け入れていたがこの異界内部ならば別にメシアン絶対許さんな土地にしても誰からも文句は言われる筋合いはない。
(そもそも陰気の強いこの黄泉比良坂に好んで来るメシアンが来るのは難しいだろうが)
死後までメシアンに悩まされるのは御免である。それを聞いて、ふむ、と静は頬に手を当てて考え込みながら凍矢へと言葉を放つ。
「メシアンで思い出したんですが……。いくら何でも穏健派どもはやりすぎなのでは?一度ならず凍矢様がいないときにさらに反乱を起こすとは……。*16ガイア連合からはメシアンたちを一定数受け入れなくてはならないとは決められていますが……。これだけやられてのうのうと居座ったままなのはどうかと……。二度もやらかしたのなら追い出す大義名分としては十分では? 人手は代わりに桜子さんたち一神教調和派を受け入れたら問題ないかと。」
静やほむらも元メシアンである桜子たちを警戒はしていたが、こちらに対して忠実であり長年きちんと働いてくれる彼女たちは「元メシアン」ではなく「一神教調和派」として認めており、その信頼度もきちんと積み重ねられたものでありしっかりしている。確執のあったほむらも、一生懸命頑張っているしまぁ……という程度には和解は行っているため、彼女たちを魚沼シェルターに迎え入れるのは別段問題はない。桜子たちが一生懸命働いているのは凍矢も知っているので、腕を組んで考え込む。
「うーん……。確かにそうだよな……。穏健派は俺がいない間に大騒動起こしてくれたし……。これだけの大騒動を起こしたんだから穏健派は長岡市シェルターに追放する、と言えば十分な大義名分になるか。代わりに今まで頑張ってくれた桜子たちをこちらに来てもらうという形なら頑張りに対して報われる形になるし、幼女ネキもにっこりだし。ちひろさんに相談してみるか……」
その言葉に、静は心の中で思わずガッツポーズを決めていた。