時代は少し戻って半終末ぐらい?
タマヤさんきくりネキ……というか福島支部を使わせてもらってすみません。
──―福島県、福島支部。
支部長であるきくりネキ*1の部屋には、大量の書類に埋もれて机の上にうつ伏せになって白目を向いている彼女の姿があった。大量の酒を飲んだ勢いで書類仕事を猛烈に片付けようとして勢いに乗っていたがついに力尽きて白目を向いたまま寝てしまったらしい。革ジャンを羽織りながら白目で書類の上で倒れているのは彼女が企業戦士かバンドマンか迷ってしまう光景である。書類の上で白目をむいて寝込んでいる彼女を心配そうに揺すり起こすのは彼女の腹心ともいえる「草神ネキ」である。目下の懸案事項だった「大多鬼丸」もその残滓を吸収した『大嶽丸』を星杖ニキが倒してくれたおかげで、そのままの安心感とテンション上がったまま書類仕事をしようとして力尽きたらしい。
幼女ネキが行ったガイアBCライブによってやる気を取り戻した彼女だが、今度はやる気が迸りすぎてワーカーホリック気味になってしまったとの事だ。
「ああもう……。酒の勢いで書類仕事するなとあれほど……。ほら起きなさい。お客様よ。【パトラ】。」
草神ネキのパトラによって眠気が覚めたきくりネキは、そのまま目覚めてやってきた客を出迎える。その客というのは、魚沼シェルターからやってきた凍矢だった。心配そうな顔をしながらも、凍矢は手土産に色々なお酒の瓶を出そうとするが、さすがに酔いから冷めたばかりの人間に酒を見せるのは不安だ、とそのまま酒瓶を全て草神ネキへと手渡していく。
「きくりネキ大丈夫か……?とりあえず【吟醸ゆめざくら(蓬莱山)】と【方丈山】を持ってきたぞ。飲みすぎるのはアレだと思うけど、ほかにあんまりいい手土産は思い浮かばなくてな……。」
「うう……。黒札は皆好き勝手に装備や武装を開発しすぎなんだよ……。このままじゃ年金……。じゃなかった日本の未来が……。黒札は皆しっかりと協力して総合的・体系的に装備開発をしないと……。」
どうも酒が覚めてしまったせいか、きくりネキは真面目モードを通り越して鬱モードへと突入してしまったらしい。もしここに星歌店長がいたら「昔のお前は心配性なところが可愛かったんだよ」とにこにこと言い放って周囲の皆をドン引きさせていただろう。だがいつまでも鬱モードになられても困る。凍矢はきくりネキに対して交渉のための言葉を放った。
「まあとりあえず……福島と新潟の県境の事について話をしにきたんだけどいいかな。魚沼市としても後背である福島県側から襲撃をかけられると困るので何らかの策を取りたい。
だけど、はっきり言って山と自然しかないので、あそこらへんは契約を結んだ人間に友好的な妖怪たちの開放自治区地区にしたいという事で合意したい。」
新潟県と福島県にまたがる山岳公園「越後三山只見国定公園」ならびに会津朝日岳や会津駒ヶ岳を含む広大な広義の意味での越後山脈。ここはあまりに自然と山が多すぎて到底開拓するだけの手間とリソースが存在しない。
この広大な自然を切り開くよりも、自然に近しく人間たちに友好的な妖怪たちの自治区にして好きに暮らさせようというのが凍矢の狙いである。
先の大戦でも妖怪たちも参戦しており、いまだ傷の癒えない大妖怪たちも数多く存在する。
そんな妖怪たちにとって自然が豊富であり、人々の畏敬を集める広大な自然でゆったり過ごすことは彼らにとっても生きやすいだろう。
こうした妖怪たちを住まわせる事によって監視の目として、広大な自然に隠れた過激派支部などができないようにしたり、あるいは何らかの大悪魔が襲い掛かってきたときの警報装置として運用するつもりである。その凍矢に対して、草神ネキはふむ、と顎に手を当てて考え込む。
「つまり福島県の「南会津郡」を実質「妖怪自治区」にするわけか……。まあお互いマンパワーが足りないしあそこらへんにも監視の目が必要だろうしいいけど……。妖怪たちが契約を破って逆らったりしたらどうするの?あるいは「ここは俺たちの土地だ!ガイア連合の支配など受けない!独立だ!」と反逆したりしたら?」
「ボコす。(真顔)まあ妖怪たちもパンデモニウム勢力みたいに現代文明に割と染まってるらしいから大丈夫だとは思うけど……」
脳缶ニキがパンデモニウム勢力に現代文明の娯楽を教えたように、妖怪たちも現代文明の娯楽にはそれなりにはまってはいたりする。……もっとも「最新のピコピコ? なんかワシらには分からんのぅ……」「今のナウでヤングなハイカラボーイたちはベーゴマや独楽が流行りじゃそうな! ふはは見よワシのベーゴマテクを!!」「妖怪漫画最高! 妖怪漫画最高!!」などちょっとズレているがまあそれはそれで……。というのが凍矢の本音だ。
「もし人間たちとさらに友好を結びたいというのなら、幼女ネキの所の「百鬼夜行」学校に入学させて学ばせればいい。これでお互いウィンウィンな関係になれるだろうし、そうなればバカな暴走とかしないだろ……。多分」
「了解ー。まあ実際福島県は広すぎるしねぇ……。そこまで監視の手が伸びないし、大悪魔発生とかもできる限り早期に探知したいし……。まあいいかな。」
福島県の面積は北海道、岩手県に次ぐ全国3位の県である。いくら支部長とはいえきくりネキだけでそこを全て把握・カバーするなど過労死待ったなしな状況だ。
手の届かない自然豊か……つまりド田舎まで手が回る状況ではないので、南会津郡を「妖怪自治区」とするのは彼女にとってもありがたいことだろう。その話はまとまったのはいいが、正直キャバオーバーぎみのきくりネキは頭を抱えながら叫ぶ。
「正直ねぇ!! 福島県は広すぎて全部把握してカバーするなんて無理!! もうねぇ! 無理だよこんなのさァッ!! って言いたい気分!! 『人類の領域を悪魔に分け与えるな』『自治区なんて作ったら後で絶対火種になる』っていう過激派もいるだろうけどさァ!! だったらお前らが管理しろや!! の気分!!」
先ほども言ったように、福島県は北海道、岩手県に継ぐ三番目に広い県となる。それをきくりネキ一人だけで管理するなんて無理にもほどがあるだろう。きくりネキは凍矢が持ってきた【吟醸ゆめざくら(蓬莱山)】を手に取ると封を開けてそのままぐびぐびと一気にラッパ飲みを始める。真面目ではあるが、元々割とフリーダムな気質があるきくりネキにとって正反対ともいえる大量の書類仕事を片付けるなんてストレスにもほどがあるのだろう。
凍矢には腹心でありブレインである静に滅茶苦茶頼っている&分身体もできたのでそちらに書類仕事を任せているという事情もあるが、きくりネキの魚沼シェルターを上回る大量の書類は福島県という特性も影響していた。
4割弱の面積に約13%の人口を擁する「会津」、県の中央部に位置し奥羽山脈と阿武隈高地とに挟まれた太平洋側内陸にあって4割弱の面積に約62%の人口を擁する「中通り」、県の東部に位置し阿武隈高地と太平洋とに挟まれた太平洋側沿岸にあって2割強の面積に約25%の人口を擁する「浜通り」である。
これだけの地域を一人の支部長でどうにかしようなんてやはり無理がどうしても出てくる。その歪みが出てきているのである。
「それに例の震災の件もあるしねぇ……。幼女ネキの開催してくれたガイアBCライブから発生した膨大なMAGで地鎮を行ったりして大規模災害は起きないようにはしてるけどね……。人出が足りないんだよねぇ……。
という訳で田舎ニキ助けてぇ! 会津若松地方に色々テコ入れしてぇ!! 後背が安定したほうが田舎ニキも安心して暮らせるでしょ!!」
幼女ネキが提案したガイアBCライブで発生したいわば「祭りの熱気」、つまり黒札たちが騒いだ膨大なMAGは福島県に襲い掛かる災害を防止・制御するために運用されている。鹿島神宮・香取神宮の「要石」を元にした要石を作り出し、それに黒札たちのMAGを注ぎ込む事によってこの世界でも震災が起きないように警戒しているのである。
「というわけで……外部の支部長から見た改善点……アドバイスをしてほしいのよ。このままこの子が潰れたら宮城も新潟もどこも困るし……。」
なるほど。支部長としての経験からくるアドバイスをしてほしい、という事に凍矢は納得した。確かに福島支部は比較的若い支部であるし、しかもバンドマンである彼女が書類仕事なの何だとと向いていると考えるのは難しい。そういった点を何とかできないか?と草神ネキは考えたらしい。本来はこういった事は草神ネキや大使ニキが行うべき仕事ではあるのだが、それでも他支部長の経験からくるアドバイスは有益だろう、と草神ネキは考えたらしい。
「よし分かった。私にいい考えがある!……いや真面目にやるからそのジト目は止めてほしい。
まず改善ポイントその1。きくりネキは真面目過ぎる!全部自分でやろうとするからこんなに書類を抱え込むんだよ。アレハンドロ……大使ニキにどんどんバンバン書類仕事を投げていけばいいんだ。というか全部丸投げしてもいいぐらいだよ。」
きくりネキの周囲に山のように積み上げられた書類を見ながら、凍矢はどんどんと書類の区分を始める。
これら書類を纏めて各分野の担当に丸投げしようというのが彼の考えである。
「書類を分類して農業系は草神ネキに丸投げ!!技術系はドカルトニキに丸投げ!!医療系は真人ニキに丸投げ!!支部運営は大使ニキに丸投げ!!どんどん丸投げしていけばいいんだよ!!後は戦闘系・防衛系は豆芝ニキたちやチェストニキたちがいるからそっちに丸投げ……もといどんどん頼んでいけばいい!!支部長の仕事なんて承認のハンコを押すだけの仕事でいいんだよ!!」
うおおおおお!!と書類を分類してその書類を各部署に丸投げし、戦闘系の仕事は豆柴ニキたちにガンガン注文していく凍矢に対して、えええっと、きくりネキは本当にそれでいいの?と驚いた顔を見せるが、凍矢は親指を立ててにっこりと笑う。
「へーきへーき!!ガンガンやっちゃおう!!そもそもきくりネキはバンドマンで書類仕事は死ぬほど向いてないでしょ?」
「うっ……それはまあそうなんだけど……。」
「ならそれを大使ニキや草神ネキに伝えておけばいい。後は何とかしてくれる!!大使ニキはロボ作ってる暇があったらその分支部長代理として書類地獄で働け!!と言ってやればいいし、後は福島支部で大々的に書類仕事を行える人間を大募集かければいい。シェルター内部で書類仕事や数字に強いけど無職の人間は山ほどいるだろうし、そういう人間たちを銀札として大々的に雇っていけば書類仕事も片付けるし、雇用も生まれてシェルターでブラブラしている人たちも減る。一石二鳥だ!!何なら未覚醒者でも書類仕事ができる人間募集と書けばわんさと集まってくるし、書類仕事が苦手と自覚してるなら大勢集めた方がいいと思う。」
「まあ確かに未覚醒者の雇用も生まれるし一石二鳥でいい案だとは思うよ?でも大勢の人を雇うって事はそれだけ大量の金がかかるってことだよね?山梨支部からの支部運営費で賄えなかったら……?」
「借☆金☆。そもそもきくりネキはバンドマンだろ!!バンドマンが借金を恐れるな!!ガンガン借金を積み重ねていけ!!」
「うわーん!!元借金王は言うことが違うよー!!そんなガンガン借金できるほど私の心臓は頑丈じゃないよー!!そんなところで原作見習いたくなーい!!あんなダメ人間になりたくなーい!!」
本編では滅茶苦茶借金してたでしょ!それを見習え……いややっぱり見習わなくていいや。きくりネキはそのままでいてくれよな……と思いつつ、凍矢はさらにアドバイスを行う。
「まあマジレスすると……それだけ強ければガンガンガイア連合から大悪魔の討伐依頼が来るだろうから……1、大悪魔の討伐費用で借金を返す。2、福島県の特産、名産を作り出して有名になって融資を引っ張る。簡単なところはこんなところかな……。福島県の名産は……そっちのほうが詳しいだろうから任せた。」
ひぃん、ときくりネキは思わず叫びをあげる。しかし、やるべき事の雨霰だときくりネキの心は折れて「山梨支部に戻って引きこもる!!」という事にもなりかねない。そうなってしまっては誰もが皆損ばかり(きくりネキ本人も含めて)になってしまう。そこで凍矢は腕を組んで考えた結果こう提案した。
「せっかくのガイアBCライブ*2で有名になったんだし、もう福島を音声系能力者の楽園にしちゃえばいいんじゃない?どんどんライブメンバーやら路上ライブやら活性化すればきくりネキのやる気も出るし、音声系能力たちも地域防衛を行ってくれるだろうし一石二鳥では?」
そうかな……そうだな!ときくりネキもそのアイデアに乗り気らしい。実際支部としての特色は作らなくてはそのまま埋もれてしまう可能性が高い、農産物やら何やら特色を作ってそれを主軸に盛り立てていったほうがいい、というのが凍矢のアドバイスである。何なら長岡市にいるぼっちも定期的にライブを行うように誘えば来てくれるだろう。その提案にきくりネキもバンドマンらしくその提案には乗り気であり、明らかに前よりもわくわくした表情になっており、その顔に若草ネキも思わずほっとした顔になった。
「で、話は変わるけど豆柴ニキ*3にちょっと話がある……というか仕事があるんだけど。ロボ部の依頼であの銀を全部コバルトに変換してほしんだけど。きちんとロボ部から給料は出るから。量はアレだけど……。」
そうして、凍矢が指し示したのは、福島支部に搬入されてきた色々なオカルト補給物品の中の一つ。大型コンテナ内部に詰め込まれているみっしりと銀!銀!銀!この大量の銀をコバルトに変換してほしいというのがロボ部からの依頼である。しかもこれだけではなく、どんどん大量に銀……恐らく佐渡島シェルターの金山から買い取った銀……を大量に搬入してくるとの事らしい。その量においおい……ときくりネキたちも思わず驚いた顔をしていた。
【コバルト】技術開発班ロボ部【最高!】Part.500
81:名無しのロボ部
んほ~!! コバルトしゅごいのぉおおおお!!
82:名無しのロボ部
銀よりもコバルト! コバルト! コバルトをくれぇえええ!!
83:名無しのロボ部
コバルトは紛争鉱物で日本にはほとんど存在していなかったもんねぇ……。
コバルト鉱山はほとんど外国にあったし。なお終末。
84:名無しのロボ部
コバルトは合金素材として必要不可欠だからうちらはぜひ欲しい!!
近くにコバルト化できる人材がいるのは助かる! 豆柴ニキ様様やで!!
85:名無しのロボ部
神様仏様豆柴ニキ様ァ!!
86:名無しのロボ部
コバルトはどれだけあっても足りないからねぇ。コバルト合金は、高温でも磨耗しにくく腐食に強いため、ガスタービンやジェットエンジンといった高温で高い負荷が生じる装置にも不可欠だし。
87:名無しのロボ部
以前開発したマルエージング・ヒヒイロカネ合金にもコバルトはめっちゃ必要やで!! コバルトマジ助かる!! ぶっちゃけ豆柴ニキのためだけでうちらロボ部は福島支部に投資する価値があるで!!
88:名無しのロボ部
投資!投資!福島支部に投資!さっさとしろ!!
89:名無しのロボ部
というわけで……大量のコバルト! 君は何に使う!?
90:名無しのロボ部
合金作成
91:名無しのロボ部
合金作成
92:名無しのロボ部
顔料……塗料作成。
93:名無しのロボ部
……間抜けは見つかったようだなぁ!!
94:名無しのロボ部
ナマモノネキたちに塗料を供給してる横流し野郎がいたぞ!! 取り押さえろー!!
95:名無しのロボ部
ま、待ってくれ!! これは!! 機体の装甲を塗るために作っているんだ!!
塗料をインクにオカルト加工して横流ししているなんてそんな!!
96:名無しのロボ部
お前コバルトブルーだけじゃなくて他の塗料も加工して横流ししてるだろ!!装甲塗装用の塗料をわざわざ作り変えてるんじゃねーよ!!
97:名無しのロボ部
はいお前横流し禁止な!じゃないと装甲担当から外すやで!!
98:名無しのロボ部
そんなー。(´・ω・`)
99:名無しのロボ部
話を元に戻すで!!ともあれ福島支部に投資・支援するのは我々としてもやぶさかではない。
ではどういう支援をすればいいのかというと……。
100:名無しのロボ部
というわけで農業部カモン!!
101:名無しの農業部
えぇ……。まあしゃーないなぁ……。
とりあえず福島にキクリ米のデータ! 霊酒作りのデータ! 霊的農作物生産のデータと種をシュート!!
超エキサイティング!!
102:名無しの農業部
宮城でもキクリ米をベースにした独自のコメを作っているらしいし、後は福島の土地に合わせて調整してもろて……。まあ農業部が福島に行ってもいいけど。
103:名無しの農業部
まあ、福島でも独自のコメや霊的農産物を作っていると思うけどデータはあったほうがいいだろうしね。
何かの役に立てばそれはそれで。
104:名無しの農業部
豆柴ニキは地酒のほうが好みなんだっけ? まあそれは向こうのほうで作ってもろて……。
105:名ありのきくりネキ
うぉおおお!!! 酒や! 酒を寄越せぇええええ!!
飛露喜(ひろき)、冩樂(写楽・しゃらく)、廣戸川(ひろとがわ)全部寄越せぇええ!!
106:名無しのロボ部
うぁあああ!! 何か襲来してきたぞぉおおお!!
107:名無しのロボ部
ええい酒作りや農業のことは他のスレにいけ!!ここはロボスレだぞ!!散れ散れー!!
108:名無しのロボ部
というかそういうのはそっちで作ってくださいよ姐さん!!ノウハウはそちらに渡すからァ!!
109:名無しのロボ部
あーもう滅茶苦茶だよ。