【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち   作:名無しのレイ

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『借金』は止まらない……まだまだ加速していく!!
(ジュネスも地下基地もまだ作ってないしね。)


九重静の終末対策2

 あれからしばらく後、凍矢は自らのツテを頼ってのアガシオンの一種である『アガシオン・スパルトイ』*1を購入して九重家へと提供していた。

 このアガシオンは竜牙兵の姿をしているいわゆる『近接戦闘用アガシオン』の一種である。いわゆるHFO「ヒューマン・ファイター・男」という感じであり、悪魔たちとの近接戦闘を十二分に行えるという強みはあるが、逆に拡張性が低いという欠点がある。

 だが、優秀な人間が刈り取られ、いわゆる『ロバ』ばかりの名家の人間にとって、まさにスパルトイは守護神と言っても過言ではなかった。

 

「うおおこのスパルトイ凄い!! まさに守護神だよ!」

 

 異界内部でガキやスライムたちを手にしたグラディウスで縦横無尽に切り裂いていくスパルトイを見ながら、九重家の戦闘班たちは歓声を上げる。彼らもガイアレベル1から5までの覚醒を果たしており、格安ヘンテコ武器で武装しているが、やはり悪魔との近接戦闘は苦戦することもあれば、重症を負ってしまう事もあった。

 それでもガイアレベル1ですら苦戦していた頃と比べると、彼らは名家の中でも上澄みといえた。

 スパルトイに前面で戦ってもらい、後ろの九重家たちの人間たちは連射式機械弓、つまり連弩を使ったり、簡易ガイア銃で援護を行っていくのが王道手段となりつつあった。

 

「最近黒札様から譲っていただいた簡易ガイア銃も凄い威力だ! これなら悪魔なんてイチコロだぜ!!」*2

 

「この矢もとんでもない威力だな……! これで失敗作とかマジかよ!! 一撃で高位悪魔(レベル10)が吹き飛んだぜ!! *3

 

「ヒャッハー!! 弥彦神社から産出された霊的石油*4を加工して作成された『火炎瓶』を食らえー!! 天香山命神様のMAGが籠ってるから他の火炎瓶より遥かに高威力だぜー! *5

 

 こうして、スパルトイたちとガイア連合の装備で身を固め、悪魔を倒していった彼らは、いわば『ロバ』でもLV5程度の悪魔程度ならば倒せるようになっていた。

 レベル1の悪魔でも名家総出の決戦をしなければならなかった頃に比べればまさに雲泥の差である。

 

「よし!! それじゃ新しい『切り札』を出すんだ!!」

 

「ワッショイ! ワッショイ! ワッショイ!」

 

 彼らが作り上げた新しい切り札、それはいわゆる『山車』『移動神輿』である。車輪のついた屋台に神輿を載せて、それを縄で男たちが引っ張るというシステムだ。

 そしてこの神輿に祭られているのは、彼らの神である竈神『三宝荒神』である。

 未だ日本神たちは封じられており、完全な力は発揮することはできないが、神輿などを通して多少なりとも力は発揮できる。

 三宝荒神は不浄や災難を除去する神であり、この力は異界に対しても多少なりとも力を発揮でき、異界の陣地の一部を不浄を除去して「自分たちの陣地」としてバフ(ごくごく微量)を九重家の人間たちに付与する。

 そして、山車を移動させて陣地を広げていく事によって異界を破壊するという「陣取りゲーム」を彼らは行っているのである。

 ここで編み出されたノウハウが戦艦内部の『艦内神社』や霊道強化などに使用される『移動神輿』などに繋がっていくのだ。それを後方から見ていたデモニカ【バッシュ・ザ・ブラックナイト】を纏った静は一安心した。

 

「この状況なら私が動かなくても異界は何とかできそうですか……」

 

 後方から飛び出してきたガキに対して、手にした大盾で殴りつけるシールドバッシュを行って殴りつけて消滅させながら、静は考え込む。

 静もデモニカを装備してLV10以上になっている。彼女が動けばこの異界や悪魔なども撃破できるだろうが、九重家の戦闘班たちの底上げのために後方で待機していたのである。彼女一人が強くなるのではなく、黒札様の手足になるためには九重家全般の底上げが必要、と彼女は考えているのだ。

 


 

 人では攻略不可能と言われる異界を複数破壊したという事で、九重家の名前は名家の中でも知れ渡りつつあった。だが、それは全てガイア連合の装備あっての事で、自分たちではLV1の悪魔ですら壊滅することは静たち自身がよく知っている。

 そのため、黒札である凍矢にさらなる忠誠を誓うべく、静は独自の行動を取っていた。

 

「と言うわけで黒札様、これを……」

 

 静が凍矢に差し出したのは、ガイア連合でもよく使われている霊的契約書である。

 最近では名家などでも普及しており、あちこちで使われるようになってきている。何十枚という霊的契約書を差し出されて思わず凍矢の顔に疑問符が浮かぶ。

 

「……? 何これ」

 

「? 『死ぬこと以外絶対服従』の霊的契約書ですが……? 九重家皆の署名で、当然私の分も入っています」

 

「ファッ!?」

 

 いきなりそんな左斜め上のガンギマリを見せつけられて、凍矢は思わず愕然とした表情を見せる。

 それを渡されてさらに頭を下げながら静は凍矢に今までの装備代の少しでも足しになれば……何なら我々を装備代としていかに使いつぶしていただいても結構です、と彼女は頭を下げる。

 

「これほどの装備を潤沢に与えていただけるなど……。残念ながらもう支払える金額が……。どうぞ代金として我々を使い潰していただけたら……。おまけにこれはメシアンスパイ対策にもなりますし」

 

「いらないよこんなの! そっちで管理してよ! 渡されても困る!!」

 

(弱いのに覚悟ガンキマリだとすぐ壊滅する危険性があるしなぁ。せっかくの役に立つ名家なのに壊滅してロクデナシの名家が新しく来ても困る。やはり装備強化……か)

 


 

 そんなこんなでひぃひぃ言いながら活動していた凍矢だったが、そんな彼を追って? 一人の黒札が魚沼市へとやってきた。

 その「女性」は信じられないほど巨大で女性とは思えないほど巨体で筋肉の塊のような女性だった。

 彼女の名前は『ババァネキ』。*6山梨で修行をしていたが、常識のネジがわりと飛んでいる凍矢を心配してやってきた黒札の一人である。

 彼女は凍矢に再会した瞬間、いきなり凍矢の脳天に強烈なチョップを叩き込んでくる。

 

「全くこのアホは!! 何でもかんでも『とりあえず借金!』で片づけるんじゃないよ!! もっと必要な出費かきちんと考えてやりな!! 苦労するのは将来のアンタなんだよ!!」

 

 何故彼女がわざわざ安全な山梨からここに来たのかというと、『危なっかしくて放っておけなかったから』の一言である。変人の彼が何かの拍子でやらかしをしないかとわざわざ面倒を見にやってきたというのが本音だ。

 

「で、でもこれは必要だし!! ガイア連合の装備がないとすぐ壊滅しそうで不安で仕方ないし!!」

 

「きちんと計画を立てて注文しろと言ってるんだよ!! 全く……。はい山梨から『ガイアカレー』大量に持ってきたよ!! バンバン食いな!! 後は体力と魔力を回復させる『霊湯の元』も大量に持ってきたからきちんと毎日入れて回復させるんだよ!!」*7

 

「うう……。ママァ……じゃなくてババァ……」

 

「誰がババアだい!? 全くもう……。お嬢ちゃんも黒札の事で悩んだらアタシのところにおいで。きちんとアタシが黒札に対してビシッと言ってやるからね。アンタらだと黒札に対して強く言えないだろうしね」

 

 どうやら彼女はほかの黒札と違い、こちらを『現地民』と見下さずにきちんとコミュニケーションを取ってくれるタイプの黒札のようである。静としては立場上黒札に物申すことなどできるわけがない。

 だが、彼女を通せば(彼女が理があると思えば)黒札から黒札へと意見が伝わる事になる。そうなれば同じ黒札のいうことを無下にはできない……ある程度いうことを聞いてくれるはずである。

 

「は、はぁ……。ど、どうもありがとうございます……。*8

 


 

 ともあれ、そんなこんなで凍矢は借金返済のためにあちらこちらと悪魔退治に走り回っている際にも様々な変化は訪れていた。

 まずは魚沼市に農業に詳しい黒札の一人『農業ニキ』である『北条悟志』*9がやってきたことである。

 彼の尽力と凍矢と新たに契約した『キクリヒメ』の力によって「魚沼産コシヒカリ」を霊的なコメへと変えた「キクリ米」が完成したのである。

 

 さらに呉支部とはまた別なロボ好きな黒札たちが自然と集まり、ロボ部同好会を開いていたが、大型武器の試作はできても、呉支部とは異なり本格的なロボの開発には着手できなかった。そこに一気にブレイクスルーを起こしたのはスケベ部が開発した『人格排泄ゼリー』である。

 

 これを使用すれば悪魔の意思を排出させて、悪魔の肉人形を作成する事ができる。それはすなわち悪魔の肉体を利用した『人工筋肉』が作成できるという事である。

 それに歓声を上げたロボ部の皆はさっそく協力して試作として巨人族の腕を模した人工筋肉入りのシリンダーなどで構築された巨大な金属の腕を作り出した。

 だが、これだけでは不十分である。筋肉を動かすためには、それに指示を与える電気刺激、そしてプログラミングがなければならない。

 

 そこでロボ部が頼ったのはプログラミングの専門家といえる黒札の一人『フリスビーニキ』*10である。彼は試作された金属のフレームやら人工筋肉が納められたシリンダーやら人工神経やらがむき出しにされた『右腕』の前で、その『右腕』にケーブルで接続されたパソコンに一心不乱にプログラムを打ち込んでいた。

 

「悪魔召喚プログラムにはそのプログラミング内部に『悪魔使役』の契約が存在する。その『使役』の部分の術式プログラムをコピーして人工神経を経由して人工筋肉へと流し、人工筋肉へと指令を出す。これで理論上は動く……はず」

 

 そして、フリスビーニキがプログラミングの術式を人工筋肉へと転送し、指示を出した結果、『右腕』はその指示通りに指を動かしたり、掌を握ったり開いたり、手首を回転させる事に成功したのだ。

 その動きを見て、人工筋肉系の巨大ロボの完成の大きな第一歩を歩んだと確信したロボ部の皆は大歓声を上げることになった。そこでギターをかき鳴らしながらハイテンションで叫ぶ緑髪で白衣を纏った黒札の一人『ドクターウェストニキ』は笑いながら歓声を上げた。

 

「ファーハハハ!! 勝った!! これぞ吾輩たちの大勝利でぁああある!! この成果さえあれば呉支部のロボ部どもにデカい顔はさせないのでぁああある!! 吾輩たちここにあり! と天下万民に知らしめてやろう!! ……まあ吾輩の破壊ロボは呉支部から材料取り寄せて作ったものではあるが」

 

 そんな風にウェストニキやロボ部の技術班が大喜びで歓声を上げている中、凍矢は大きな一歩を示してくれたフリスビーニキに対して握手しながら感謝の言葉をかける。

 

「ともあれ、ありがとう。フリスビーニキ。これで人工筋肉系のロボ作成が大きく進みそうだ」

 

「いやぁ……。元々オレの作った対悪魔用デーモンの【ロストパワー.x】のデータが【人格排泄ゼリー】開発に繋がってそれが巨大ロボ開発に繋がるとはなぁ……。しかもその技術にオレの電子技術が役に立つとか面白いな。多分近接戦闘用とか遠距離戦闘用の種類によってプログラミングも違ってくるからまたオレの技術が役立そうだな。まあよろしく頼む」

 


 

・【デモニカ】技術開発班ロボ部【人工筋肉】Part.25

 

110:田舎ニキ

と、言うわけでデモニカを30機……いえ、20機いただけましたらと……。

 

111:名無しのロボ部

おまえ

アホ

か!? (ブラックジャック風に)

 

112:名無しのロボ部

いきなり20機とか無茶ぶりするんじゃねーよボケ!! 

 

113:名無しのロボ部

で? 代金は? 

 

114:田舎ニキ

借☆金。ほら試作機!試作機のデモニカでもいいからさ!頼むよ頼むよ~。

 

115:名無しのロボ部

こいつはさぁ……。本当にさぁ……。

 

116:名無しのロボ部

はぁ~。仕方ねぇ。やるとするか……。

 

117:名無しのロボ部

でもよぉ、デモニカの試作機とか平気で関節が逆に曲がったりする夢と希望に現実を叩きつけていくスタンスだぜ? 

 

118:名無しのシノさん*11

ふふふ、私にいい案がある!! 静ちゃんのデモニカ【バッシュ・ザ・ブラックナイト】の内部をG3(人工筋肉併用型)に換装して試験運用してほしいのさ!! 

これを行ってくれるのなら、私の権限でデモニカをそちらに優先的に差し上げよう! もちろん全て内部はG3型だけどね!! 

 

119:名無しのロボ部

やったぜ。

 

120:名無しのロボ部

おお!やるやん!!

 

121:名無しのシノさん

試験運用・実戦テストは何より大事だからね~。ここで得られたデータをフィードバックしてG3シリーズデモニカの量産!! 誰も損しないウィンウィンさ!!これを元にしてハイエンドモデル……デモニカ『G4』を作り出す第一歩になるのさ!!

 

123:名無しのシノさん

さらにデモニカG3に人工筋肉を取り入れた試験機も作り出したいから、その試験運用もしたいな!!外装はええとMHの『ベルリン』に換装してあげるから!!頑張ってね!!

 

124:田舎ニキ

ありがてぇありがてぇ……。俺頑張るよ!(`・ω・´)(キリッ)

 

125:名無しのロボ部

頑張るのはお前じゃなくて静ちゃんだけどな……。

 


 

 そんな中、デモニカも少しずつ九重家へと配給されていったが、ガイア連合の武器やこれらの悪魔の力によってレベル10までの悪魔なら九重家の人員でも対処できるようになってきた。

 レベル1の悪魔でも名家総出の戦いだった頃に比べればまさに雲泥の差である。

 それより上の悪魔は静直轄のデモニカ部隊【黒騎士部隊】で対処する。静のデモニカもレベル15になってきたのでまさにこの地域のエースだと言えるだろう。凍矢の力によって少しずつではあるが、【黒騎士部隊】のデモニカの数も増えてきており、そのLVも上がりつつある。

 ガイア連合の装備やデビオクによる悪魔を仲魔をできるシステムもあって、何とか九重家の戦闘班でもレベル10以内の悪魔ならば何とか対処できるようになった。

 そして、それ以上の悪魔たちは静直轄のデモニカ部隊【黒騎士部隊】が対処する。静を初め、デモニカを使用してレベル15に到達している者達も出始めている。

 デモニカの最大レベルのガイアレベル30に到達すれば(しかもそれが複数人いれば)かなりの所までの悪魔の対処が可能となる。

 さらに最近の『人外ハンター協会』に属するデビルハンターたちは、レベル10(Dレベル33)からレベル20(Dレベル66)に達するデビルハンターたちも増えはじめてきた。

 正直言ってメシアンたちに血筋を刈り取られた名家のロバ(静含む)よりも一般人たちの方が遥かに霊的素質を秘めている人間が多い。

 それ以上の高位悪魔となったら、ごく一部の例外か黒札を頼るほかないだろう。

 

「とは言ってもやはりデモニカを注文するのにも金がかかる……。糸魚川の翡翠は順調ですか?」

 

「はっ、きちんと糸魚川市は九重家の者によって直轄管理されています。翡翠採取も問題ないかと」

 

 新潟県糸魚川の翡翠は昨今大きな注目を浴びつつあった。それはガイア連合の黒札の一人『探求ネキ』の尽力によって政界ニキネキや富豪ニキネキなどに根回しして、日本を象徴する宝石として認定させたり、縄文時代の翡翠文化なんかのPRを始めた事である。*12

 日本国を象徴する石として翡翠を制定する事による、国民の認識による霊的効果上昇実験を行うとの事で、今はその下準備としての宣伝を始めるとの事だ。これが上手くいけば未覚醒者に対しても霊力を発揮できる翡翠ができるはずである。

 そうでなくとも、翡翠は古来より力を秘めており、古くから「奇跡の石」と呼ばれ、魔除けやお守りにされてきた。現在では九重家の息のかかったものたちが糸魚川市で翡翠を採取してアクセサリーへの加工を行っており、悪魔に対する(微弱な)魔除けやお守りの効果を発動している。そして、それが新しい展開を始めたのは、凍矢と同じ黒札の『脳缶ニキ』*13から新しい情報を得たときだった。

 


 

「翡翠なぁ……。何か使用方法はないかぁ……」

 

 他の魔力の籠った宝石はステータスアップに使用できて引く手あまただが、翡翠はステータスアップ効果は存在しない。*14

 確かにお守りやら魔除けやら、あとは探求ネキの実験がうまくいけばそれこそ貴重な収入源になるが、今はそこまで大きな儲けになっていない。何かいい活用方法がないものか……と考えている凍矢の元に、一人の少年が訪れた。それはメシアンたちの脳缶から復活した【高館絶徒】、つまり【脳缶ニキ】だった。

 

「ふっ、田舎ニキ。私にいい考えがある! それは『魔晶合体』だ! ヒスイは『妖鳥』と『幽鬼』と魔晶合体することができる。おすすめは現地民でも育てられる『未熟なハーピー』や『ポルターガイスト』、『非凡なグール』かな。現地民にとっては破格の強さだから広めたらヒスイの需要が高まるかもよ」*15

 

「そのお礼としてヒスイを大量にもらえると嬉しいかな。ヒスイを使った魔晶合体で色々と試したいことあるし」

 

「ありがとう脳缶ニキ!! 喜んで翡翠を送らせてもらうぜ!!」

 

 そして『脳缶ニキ』から翡翠の活用方法……『魔晶変化』を教わった九重家では独自の制作班が誕生する事となった。

 まずは、COMPにダーク系悪魔でもTALKをすることができる『ダークマン』ソフトを入れて、『ポルターガイスト』や『非凡なグール(LV1)』とトークをして仲魔にする。そしてガキに対して『ニワトリの死体*16』をプレゼントし、さらに霊的なコメ(施餓鬼米を食わせてしまうと成仏してしまうので別のコメ)を食べさせる。(これはコメを食べさせることで施餓鬼法要を疑似的に行っているという魔術的意味である)

 グールやポルターガイストの性格は『愚鈍』であるため何を贈っても忠誠度はアップする。

 そして忠誠度がマックスになった地点で、親密度が一定以上に達した仲魔を宝石……つまりグールやポルターガイストと翡翠を融合する事によって『魔晶』を生産しているのである。

 ポルターガイストの魔晶の場合【速さ+1、魔力-1】か【ラッシュの威力+10%】、グールの魔晶の場合【魔力高揚+1%】の効果が出る。

 またヒスイは妖鳥にも有効なので『未熟なハーピー(LV3)』を仲魔にして魔晶化させ【速さ+1、力-1】の魔石の生産も行っている・

 これらの魔石は黒札にとってはあまり意味のない物ではあるが、現地民にとってステータスが+1されるのは非常に大きな力を持つので、相性のいい現地民からはどんどん注文が殺到している。こうして九重家は周囲の名家からも一目置かれるような名家へと変貌していった。

 


 

「という訳で……。『実銃愛好部』様との縁もできましたので、魚沼に『実銃密造部』の拠点を設立しようと思います」

 

 魚沼の九重家の私有地の一角に九重家たちの人員で固められた工場が存在していた。

 それと同時に、探求ネキが開発した『弾薬ドングリ』や『火多栗の木』を近くの山中にも植えてすぐにオカルト火薬の採取を可能にし、そこから取れたオカルト火薬を使用して簡易ガイア弾並びにガイア弾を製造する。

 今は簡易ガイア弾・凍結弾しか製造できないが、そのうちガイア弾並びに様々な各種属性弾の製造、そしてゆくゆくは製造の簡単なAKシリーズを始めとした実銃の製造を行っていく予定である。

(これら作られた弾薬などが実銃愛好部などへと送られていく)

 

「キノネキ様からはアメリカや欧州からの銃メーカーの人材を保護してほしいと言っておられますし……。今のうちから彼らにもオカルト銃やオカルト弾の製造のノウハウを身に着けさせれば必ず役に立つはず。きちんとガソリン供給も行わなければ……」

 

 いうまでもない事だが、名家である九重家は表社会に対して凄まじい権力を誇っている。ここの上層部から警察まで完全に抑え込んでいて、実銃製造に文句をつけられる人間は存在しない。

 何なら彼らに対してもオカルト装備を提供する契約すら取り付けている。だが、問題は銃作成のための機材、銃身材(金属棒)に穴をあけるための深穴加工専用の「ガンドリルマシン」、銃身荒磨き・銀ろう付けの機械、銃身元部・リブ加工、フレーム加工など様々な機械や専門家たちが必要になる。

 それら人の流れや特殊な機材の流れなどでこの秘密工場を嗅ぎつけてくるマスコミやら探偵やらメシアンやらまたは偶然にここに侵入して撮影してしまう一般人やらが時たま存在する。そういった者たちへの対処が必要になる。

 

「問題はマスコミや一般人ですが……。侵入してきたら『説得』と家族に対しての『説得』・マスコミ本体への『説得』を行なって情報器具の録音映像などを完全に消去しなさい。もしそれでもダメなら、『ダークサマナーの手下』として『処分』を行います」

 

「……初手『処分』ではないのですか?」

 

「黒札様はそういうのはお嫌いみたいですから……。できる限り『説得』でいきたいと思います。それでもダメなら『ダークサマナーの手下』としての処分を許可します。黒札様の御心を乱すことのないように」

 

 秘密工場の資材搬入や結界構築(ごく低レベル)などを見届けた彼女は自分たちの拠点である公民館へと帰ってきていた。そして、そこで彼女を出迎えるのは一匹の猫だった。

 

『あんまり悪い事しちゃダメニャよ? まあこれは必要な事だとミイには分かっているけどにゃ……。全く孫がこんなしっかりした子になったのは嬉しいのか悪いのか……』

 

 ゴロゴロと静に甘えてくる一匹の猫……。正確にいうとネコマタ(LV4)が猫になっている存在、通称『ミイ』である。*17彼女は静の祖母が育てていた猫が猫又へと変化した存在であり、静の事は自分の孫のように思っている。何だかんだで九重家もLV4程度の悪魔なら対抗できるようになってきたし、静自身もデモニカである程度の悪魔は対処できるか、と思って九重家の飼い猫としてゴロゴロする道を選んだのである。

 

『正直老人たちを一切迷いなく粛清したのはドン引きだったにゃ……。もうちょっと手心という物か人の心を言うものをだにゃ……。でもあの老人たちもミイから見てもろくでもなかったからやむなしかにゃ……』

 

 うーん、と猫モードになって体を伸ばしながら呟くミイ。ミイは静の祖母によって育てられてきており、静の大祖母と自分自身を位置付けている。

 その祖母たちの血を僅かに引く老人たちを他ならぬ静が粛清していくのは思う所あるが、まあ仕方ないかにゃ……静のほうがよっぽど大事にゃ……と彼女は納得していた。

 

『フッ! ミイには『九頭竜権現』以外恐れる物は存在しないにゃ!! 猫岩になったミイの祖先様の影響か『九頭竜権現』だけは苦手にゃ……』

 

 権現堂山に大きな黒い猫又が現れるようになり、人の死体をさらう悪事を働いた。その悪事に怒った権現堂山の神様の九頭竜権現によって猫又は懲らしめられた。

 そして、猫又は石に変えられ、その石は「猫石」と呼ばれるようになった。

 ミイはその猫又の血を引く猫であり、その影響か九頭竜権現に対して苦手意識があるらしい。

 でもこの時代に九頭竜権現……神霊クズリュウが現れるはずなんてないニャ! 勝ったなわはは! と彼女は心の中でほくそ笑んでいた。

 


 

「……シキガミパーツ移植?」

 

 そんなこんなで九重家の底上げやデモニカ部隊【黒騎士部隊】を率いて新潟各地で活躍している静に対して、凍矢は一つの提案をしてきた。

 デモニカ【バッシュ・ザ・ブラックナイト】を使用する事によって、デモニカのLVも上がっている静ではあったが、その欠点はデモニカを纏っていない時に高位悪魔に襲われたらひとたまりもない、という事である。

 九重家のトップであり、凍矢のブレインとして活躍してくれている静が失われると凍矢も大きく困る事になる。そう考えた彼は、元々の静の限界LVを向上させるために『シキガミパーツ移植』を静に提案してきたのである。

 

「よ、喜んで!! お願いいたします!! 何でもしますから!!*18

 

「いやいいから……そういうのいいから……ともあれ、君は俺にとってブレイン役として必要不可欠なんだ。これはそのための底上げと考えてほしい。だからこれからもよろしく頼むよ」

 

 ともあれ、シキガミパーツ移植は基本的に社外秘(秘密とは言っていない)である。静と彼女の身内(一応?)であるミイは機密を話せないという霊的契約を結び、ガイア連合の本拠地、山梨支部へと入るために霊的契約を結び、その内部の医務室へと入る事になっていた。

 そこで医療班の一人である『フェイスレスニキ』からシキガミパーツについて詳しい話を聞くことになった。

 

「聞いた話によれば高級シキガミパーツと普通のシキガミパーツがあるようですが、やっぱり当然高級の方がいいのでは?」

 

「それがそうとも限らないんだよーん。強くなるため一番重要なのは【本人の霊質】と【パーツの相性の良さ】だ。例え【パーツ】が安物でも、強い人は強いし 【高級パーツ】でも【そもそも覚醒しない】人が多い点には注意だよ。高級シキガミパーツ……【魔王】や【鬼神】【女神】含む、複数の高レベルの悪魔のフォルマに加えて【魂】に干渉するレベルの、野心的だが不安定でもある霊的手術を行って移植しても、普通は不活性で活性化するほうがヤバイし」*19

 

「つまり【やってみないと分からない】ってコトさ。さて、それでどこの部分を移植するのかね? もちろん、その部分は手術で切り落とす必要があるわけだが……」

 

 そういうフェイスレスニキに対して、ふむ、と自分の顎に指を当てて考え込み、その後静は迷いなく言葉を返した。

 

「わかりました。それでは……脳以外全て移植でお願いします」

 

「「ファッ!?」」

 

 いきなり初手から自分の肉体を棄てる選択をした静に対して、ミイと凍矢は驚いた顔をする。だが、静はさらにきゅぴーんと何かいいアイデアを閃いた顔をした。

 

「いえ、ガイア連合の科学力なら『人格移植』『記憶移植』も……? それなら脳も全て式神で作っていただいてその脳に私の魂と人格、記憶を移植すれば完璧なのでは……!?」

 

 つまり、脳移植ですらなく脳まで完全なシキガミボディを作ってもらい、そこに自分の魂を移植するアイデアである。これなら理論上完全なシキガミとして準黒札並みの力を持ち事ができる。

 現地民とシキガミが融合したいわゆる『シキガミ人間』は、ハルカくんや0能力ニキのシキガミなど事例は多数存在する。

「私自身がシキガミになる事だ」を実現すれば、九重家千年の栄華すら夢物語ではない。むふーと自慢気な静を静止するのは、彼女のネコマタの『ミイ』だった。

 

『ち、ちょっと待つニャ!! そうなると九重家の血統が途絶えちゃうニャ!! 祖先として流石にそれはどうかと思うニャ!!』

 

 彼女の祖父たちに飼われていたミイは静の『家族』として振舞っている、そんな彼女からしてみれば、静が自分の肉体をさらっと捨てるのは見過ごす事はできないのだろう。そんなミイに対して静は不思議そうに首を傾げながらミイに対して答える。

 

「……? では、この体の子宮だけ移植と……? そうなると生まれてくる子供の霊的素質が劣るのでは……?」

 

『だから! どうしてそう覚悟ガン極まりなんだニャ!! 言いたいのはもっとこう自分の体を大事にしろという事だにゃ!! 平然と自分の肉体を捨てるような事を言うんじゃないにゃ!!』

 

 そんなミイはちらりと凍矢に対して視線を向けて(お前が何とかするにゃ!!)と目で訴える。そしてそれを受けて凍矢は静に対して言葉を放つ。

 

「そ、そう! お金!! お金がないから!! さすがにそこまで出せるお金がないから!! ね!! いや~仕方ないな~。お金がないからな~」

 

 その凍矢の言葉に対して、静は素直に頷く。そもそもこのシキガミパーツの代金は凍矢が全て賄う(by借金)だ。いわば奢りでシキガミパーツ移植を行っているので、そんな我儘を言える身分ではない。静の案はつまり『シキガミを一体丸々作ってほしい』と言う事になる。資金的にも製造班のキャパ的にも他の黒札のシキガミ順番待ち的にもそんな事できる余裕はない、と言われたら静も頷かざるを得なかった。

 

「なるほど……。確かにこれだと実質式神一体を作る事になりますからね……。分かりました。それでも霊的上限が上がるのなら私としてはいうことはありません。よろしくお願いします。」

 

それを聞いて、凍矢もミイも思わずほっと息をなでおろす。こうして静にシキガミパーツ移植が行われる事になったのだ。

 

*1
凡庸でありふれた転生者達の小話」様から。

*2
「【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅」様から。キノネキから譲ってもらった実銃愛好部で使用されなくなったお古の銃を使用している。悪魔にも人間にも通用する実銃は名家にとってはまさに神具の模様。

*3
「【カオ転三次】終末が約束された世界で生き抜きたい」様から。初期に破魔ネキの作り出した矢のうち、破魔の力が十分宿らなかった失敗作で廃棄されるものを格安で譲ってもらった。本来はもっと威力が高いが、持ち主がロバのため力がこの程度しか発揮できない。

*4
「親友が英雄の転生者だった件について」様から。

*5
当社比。黒札からすれば誤差

*6
「ファッション無惨様のごちゃサマライフ」様、魚沼TSV ~転生者バリエーション~ 02から。

*7
なおこれは彼女の自腹

*8
この後無茶苦茶ババアネキと相談した。

*9
「ファッション無惨様のごちゃサマライフ」様、魚沼TSV ~転生者バリエーション~ 01から。

*10
「【カオ転三次】滅亡を防ぐ為、汝第七の竜を狩れ」様。「【宣伝】高ランクスキルカードが欲しい方向けの新作アプリを開発しました【技 教 の 館】」から。

*11
「霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。」様に出てきた『兎山シノ』。G3デモニカシリーズの開発者。

*12
多分始めたばかりの頃。

*13
「【カオ転三次】本霊デビルなの バ レ バ レ」様の主人公。ポポァさん情報を教えてくれてありがとナス!!

*14
真・女神転生Ⅱから

*15
真・女神転生IMAGINEから。

*16
贈答品/仲魔の忠誠度を上げる(中)

*17
「【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅」様、ある黒札の故郷から。

*18
冗談抜きでマジで何でもするよ! 

*19
小ネタ 現地覚醒者の装備事情

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