異界【黄泉比良坂】の報告を行うため、彼、碧神 凍矢は山梨支部へと来ていた。
あの後復活した大岩によってしっかりと黄泉への道は封印されて、ヨモツシコメたちも出てこなくなったらしい。
さらに、ショタおじが直々に力を込めた巨大な注連縄を大岩に巻き付ける事によって、封印をさらに強固な物にしたらしい。
キクリヒメに加え、ショタおじ直々の封印ならばそうそう解けることはない……はずである。
「あのさぁ……。事情は分かった。状況的には仕方ない。
けど野良悪魔の契約とか危険すぎって言ったでしょ?」
呆れた顔のショタおじに対して、彼は土下座してマジ謝りする。
かなりマジで切れているのが発生するプレッシャーからビンビンに理解できたからだ。
「すいません!したっ!」
そんな彼を見ながら、ショタおじははあ、とため息をつく。
「まあいい……いやよくないけど仕方ない。
一応君とキクリヒメの契約内容を確認したけど問題はなさそうだね。
向こうもギリギリだったんで余計な契約内容をねじ込んでくる余裕がなかったと見える。
地母神だからまだマシとはいえ、相手は悪魔で厄介な存在なんだから油断しないように。いいね。」
今は一応仮として封魔管に封じてあるキクリヒメは抗議のためか、じたばた動いている気配がするが、ショタおじはそんなこと気にもしてないらしい。
悪魔召喚プログラムとかCOMPとかあればそっちに移すんだけどねぇ、と言いながら封魔管から開封してキクリヒメを渡す。
封魔管という手もあるが、実際に操るためには数年単位の修行と腕がはじけ飛ぶほどの修行が必要なため、今はそんな手間暇も時間もない、という状況である。
そこで、ふと凍矢は気になった事をショタおじに対して聞いてみる。
「そういえば、あの【黄泉比良坂】の異界は封じなくていいの?
潰すのは難しくても、異界自体に封印を施して誰も入れなくすることは可能なんじゃ?」
「いや、それだと今回みたいな状況には対応できないでしょ?
こういう厄ネタは
そのショタおじの言葉に、彼は思わず驚いた顔を見せる。
「
「君以外に誰がいるのかな?キクリヒメと契約したんだから当然の役目と思わなきゃ♪」
―――類感魔術。
類似したもの同士は互いに影響しあうという魔術の基本となる理論。
つまり異界であってもそこが【黄泉比良坂】なら本物の【黄泉比良坂】にもお互い影響を及ぼしあう。
異界の【黄泉比良坂】の封印が堅固になれば、それは当然本物の【黄泉比良坂】の封印も堅固になり、異界の【黄泉比良坂】で何かがあったという事は、本物の【黄泉比良坂】も何か危機的状況に陥ったということになる。
それを監視するための監視員に、キクリヒメと契約した彼は選ばれたのである。
ショタおじと相談した結果、あの【黄泉比良坂】は二重の堅固な封印のため、【ガキ】がちょくちょく出るだけの異界へと変貌したが「これ初心者向け異界に使えるんじゃね?後終末環境適応用のコシヒカリ実験とかにも使えるかも?」という案のため、現在は異界を潰さずに小さな入り口を凍矢の公民館の拠点近くに作ってもらう予定である。
(そして、凍矢が【黄泉比良坂】の
「そうだ。ついでにショタおじに聞いておくけど、ウチの【
「ええ?まあ大方予想はつくけど……ふむ、とりあえずは【タロス】か。まあ無難だね。それとそれを作り出した【ヘファイストス】いや【ヴォルカヌス】か……えっ?なにこれ?【デウスエクスマキナ】*1……?なにこれ、怖い、知らん……。あっ、後これは地雷だね。ガチ地雷。こっちで本霊通信遮断しておくわ。」
占術で本霊を占っているショタおじの言葉を聞いて思わず嫌な予感を覚えてしまう凍矢。
ショタおじがこういうという事は、かなりまずい案件という事だ。
「……一応聞いておくけどどんな存在なんですか?」
「……【チクタクマン】。君の式神がカヲルくん案件になるのは嫌でしょ?
一応念のため、【チクタクマン】&【ニャー子(仮称)】については干渉できないようにプロテクトしておくから。」
うわぁ、と凍矢はあからさまに嫌な顔をする。
チクタクマン。それはニャルの化身の一つで他の機械を操る権能を持つ半人半機の存在である。
自分にふさわしい器である機械の体を作り上げる。ほかの機械を支配できる権能を持つというまさしくロボ部にとって不倶戴天の敵そのものである。
本霊がそんな存在になってしまったらこちらもたまったものではない。
ありがてぇありがてぇ、と思わずショタおじをんでしまう彼だった。
「うーん、感覚的にはやっぱり【タロス】が本命かな。
タロスなら主人を守護するという本能がインプットされてるし、他人にそんなに危害を与える危険な存在じゃないし当たりでしょ。」
確かに、タロスは【闘鬼タロス】としてメガテンに登場しているが、【ヘファイストス】もとい【ヴォルカヌス】はペルソナでの登場、【デウスエクスマキナ】に関してはメガテンで登場していない漠然とした神でどんな存在であるか全く理解できない。
その点、タロスならばこちらに力を与えてくれるだろうし、危険な存在でもないし安牌だな、と考えているうちに、ショタおじが何らかのテレパシーを受け取ったらしい。
「ふむふむ……えっ?マジ?まあ、そういうのは個人の自由だし……。分かった。伝えておく。」
「?」
「ああ、その……ミナミィがこっちに向かってるからよろしくとのことだ。それと「約束覚えていますか?私は一度約束したことは守る主義です♪端的に言うと食う」って言ってたよ。ご愁傷様。」
その言葉に以前のミナミィの言葉「私が貴方を食べちゃいます♪色仕掛けやハニトラでメシアンに絡めとられるよりは遥かにマシですからね。」という言葉が脳裏に蘇る。
地元の案件があれやこれやと忙しくて、悪魔娼館に行ってる余裕がなくなってすっかり忘れてしまっていたのだ。
「えっ?あ、ああの、悪魔娼館に行けなかったのは仕事で忙しいっていうか。」
「言い訳は僕じゃなくてミナミィに言ってね♪それじゃ乙~♪」
やっべ、とりあえず逃げるか。逃げ切れるか分からないけど、とその場から離脱しようと彼の耳に、コンコンという音が聞こえてくる。
恐る恐る振り返ると、その窓の外にはにこにこと笑っているミナミィが窓を叩いている姿だった。
ああ!窓に!窓に!
その彼の叫びは声にならずに消えていった。
―――そしてそれからしばらく後。
悪魔娼館内部の個室のベッドで裸で横たわっている二人の姿があった。
満足げにツヤツヤしたにこやかな表情を見せる彼女とは異なり、凍矢は自分の顔を手で覆ってしくしくと涙を流していた。
「しくしくしく……。もうお婿にいけない……(二度目)」
裸のまま彼に抱き着いているミナミィは妖艶な笑みをそんな彼に向ける。
「まあまあ♪互い気持ちよくなれたからいいじゃないですか♪
またご希望ならお相手しますよ♪ウチの子たちもよろしくお願いしますね♪」
まあそれはそうだけど……ミナミィみたいな美人とHできたのは嬉しいけど……なんかこう罪悪感が……。
それを聞いて、ミナミィは抱き着いたまま言葉を放つ。
「罪悪感は快楽を高めるとてもいいアクセントですよ♪私を恋人と見立ててNTR斡旋してみますか?
それとも貴方の式神もHできるようになったんですよね?やっぱり式神とHしてそのあとでNTR斡旋を……。」
「いえいいです。(真顔)」
めっちゃ美人でHなのは素敵だけどこういう所なんだよなぁ、と彼は心の中で呟いた。