──―新潟市、命蓮寺。新潟市に存在し、新潟市自体を守護する名家『命蓮寺』そして、その命蓮寺と協力体制になっている黒札である『鑑定ニキ』『大宙実槻』*1凍矢と静は魚沼市からこの二人の元へとやってきたのだ。きちんとガチガチの霊的結界で守護られている命蓮寺の中で鑑定ニキたちは凍矢たちを迎え入れる。
「久しぶり鑑定ニキ。元気してた?」
「まあね。そっちも元気そうで何より」
挨拶もそこそこに、彼らは『命蓮寺』の中の作戦会議室で、机の上に資料や地図を広げてとある終末事案への会議を始めた。それはいわゆる【大洪水】についての対策である。
メガテンといえばICBМはお約束ではあるが、【大洪水】もメガテン世界ではお約束とも言える終末事案である。*2生き延びるのに相応しい者たちのみ厳選し、汚れたものたちを一掃して、世界を浄化する。特に海に接している新潟市にとっては真っ先に大洪水で飲み込まれてしまうので、その対策をどうしようか、と鑑定ニキも頭を悩ませていたところである。
「ふむ……。『大洪水』か……。やはりそれに対する対策は必要だよな……。特に海に接している新潟市はな……」
鑑定ニキは地図を見ながら腕を組んで大洪水についての対策を考え出す。世界最大の大津波はリツヤ湾大津波でその高さは500mにも匹敵するとされている。こんなものが襲い掛かってきたら流石の黒札でも防ぐことは難しい。海岸線の都市は壊滅し、長野・岐阜・群馬・栃木といった非海岸線すら水没する可能性すらある。……だが、ここに水操作に長けている黒札が存在する。そう、今回は大洪水対策についての超巨大魔力装置の設置について田舎ニキは鑑定ニキと相談をしに来たのである。
凍矢は机の上にとある大規模魔力装置の設計図を広げる。直径5mほどの巨大な魔力石を設置した迫り出し式の魔術塔。これこそが凍矢が考え出した大洪水対策兵器『マハアクアダインストーン』である。
「俺の魔力を込めた大規模魔力装置『マハアクアダインストーン』を開発して新潟市の海岸線に設置する。これなら大津波に対抗するために大津波を生み出して相殺させるなり、海を操って大津波自身を鎮静化させることも可能……なはずだ。多分」
波には重ね合わせの法則があって、お互いに通り抜けるという特性もあるらしいが、マハアクアダインの魔力ならMAGが込められた超巨大な水壁を作り出して防御するなり、津波自体を鎮静化させたりすることも可能なはずだ。襲い掛かってくる大洪水に何らかのMAGが含まれているのなら、凍矢の魔力がこもった大津波でも迎撃できるはず……である。多分。とはいうものの、やはりどうなるかわからないため、防御用の超巨大水壁を構築して大洪水を防御するという案も凍矢は考え出していた。
「パピヨンニキのいる佐渡支部の事も考えて、日本海沖に『マハアクアダインストーン』で高さ600m、厚さ100m、新潟県の湾岸部全長330kmの三重水壁でガードして大洪水を受け止めて相殺する。まあ、正直大洪水ではこれでも対抗できるか分からないけど、それでも威力を弱める事はできるだろうからな……」
とはいえ、いかに超巨大な水壁であろうとも、それ以上の負荷がかかればたちまち粉砕してしまいかねない。ただ受け止めるだけではなく、何らかの工夫が必要か……と考えた凍矢は一つの提案を行う。
「……もう「移動多重防壁」型でいくか?」
「移動多重防壁?」
鑑定ニキの疑問に対して、凍矢は地図に対して線を引いて自分の考えを開設していく。
「三枚の内最前線の水壁自体を動かして大津波にぶち当てる。そして次に水壁を作り出しつつ、二枚目の水壁を動かしてさらに津波にぶち当てていく。こうして連続で水壁を作りつつ津波に当てていけば大洪水の威力はかなり軽減される……はず。多分」
水壁自体を前進させて大洪水にブチ当てていき、さらに次々と水壁を作り出してどんどん前進させて大洪水と相殺させていく。こうすれば大洪水も比較的平穏に無効化できるのではないか? というのが凍矢の考えである。
だが、問題は『マハアクアダインストーン』のMAGが持つが不明ではあるが、こんなことを実験することなどできない。MAGは大規模MAGバッテリーを大量に所有することでカバーするしかないだろう。
そもそも凍矢自身が出撃して大洪水に対して極大規模の冷気魔術……【大冷界】や【大氷河期】を連打して凍り付かせてしまうという案もあるといえばある。だが、凍矢がいざという時に動けない可能性も十分にある。そう言った時の対策として大規模魔術装置が必要になってくるのだ。それを見ながら、静はぽつりと言葉を放つ。
「……「多分」とか「なはず」ばかりですね……」
「仕方ないだろ! さすがに大洪水に対しての防衛策なんて試したことないんだから!! で、これに対する大きな問題としては……」
ふむ、と静は顎に指を当てながら引き継いで発言をする。
「奪い取られて悪用される事案の発生ですね……。これだけ大規模なオカルト装置になると目立つでしょうから。普段は地下にしまっておいて、いざとなったらせり出してくる方式でも大規模工事でも情報は洩れるでしょうし」
そう、問題は『マハアクアダインストーン』を悪用されてテロや破壊行為を行われることである。大洪水の危険を知りながら凍矢が今まで提案しなかったのは『悪用される』『テロに使われる』という危険性を恐れての事である。大洪水を防げるほどの水操作が行えるという事は、逆を言えば悪用して大洪水もどきを引き起こせるという事でもある。
わざわざ巨大な魔力石にして固定化したので、これを盗むというのいうのは難しい。後は警備をガチガチに固めて、オカルト防備も行う、さらにMAG登録をした二人以上がお互いMAG認識をしないと動かないというシステムにすれば悪用は防げるはずである。
「……もう思い切って複数個設置する方向で考えてみては? 複数個あるのなら一つ悪用されても他のマハアクアダインストーンで被害を防げることはできるでしょう」
そうかな……そうかも……と凍矢は腕を組んで考えこむ。要は一つだけではなく複数個設置してお互い監視体制におく核抑止力と同じシステムである。万が一暴走しても他の『マハアクアダインストーン』の力で抑え込む事もできるだろう。
同じ黒札がいる都市で『テロ行為をしない』『悪用や侵攻のために使用しない』という霊的契約を結んでがっちり防備を固めたら沿岸部の都市に設置するのはいい案かもしれない。例えば鑑定ニキがいる新潟市、例えばパピヨンニキがいる佐渡島、例えば幼女ネキがいる宮城県の〇〇村に近い仙台市などである。大洪水もどきを引き起こせる【マハアクアダインストーン】はICBМ並みに危険な大量破壊兵器になりうる代物である。ガチガチに防備を固めてもらって、二人のMAG登録指令がないと起動できない。いざとなったら俺のMAG命令で自壊する自壊機能もつけておくべきか……これぐらいやっておけばいいかな……と考え込んでいる凍矢に対して、静はさらに地図に書き込んでいく。
「それに、これだと新潟・佐渡は防衛できても秋田・金沢方面は防衛できませんからね。津波が水壁を回り込んで秋田・金沢方面から入り込んで浸水してくる可能性も十分にあります」
大津波というのは当然水である。それは大洪水でも例外ではない。大津波の一か所を食い止められても、水が回り込んで流れ込んでくる可能性は十分にありうる。その辺の対策も行わなければならないのだ。
……とはいえ、そこまでの規模になると、いかに黒札といえど彼らでは手に余る。ガイア連合の上層部やヤンニキ、ラインハルトニキなどといった戦略に長ける黒札たちと相談しながら防衛案を考えるのが一番だろう。東日本太平洋沖には地震計と水圧計が一体となった観測装置を海底ケーブルで接続した『日本海溝海底地震津波観測網』が存在するが、それをオカルト装置化して日本海側にもセットするかなど地図を見ながらうんうん唸っている凍矢や鑑定ニキを見ながら、黒札の超絶的な力に目を見張りながらもふと根本的な質問を二人に投げかける。
「……ところで、何で黒札様たちは『大洪水がある』という決定事項で動いているんですか?」
その静の訝し気な言葉に、ぎくり、と凍矢と鑑定ニキは肩を竦める。まさか現地民である彼女たちに「ゲームで知った」などということを言ったらどうなるか分からない。『この世界はゲームの中の世界だった!?』と今までの現実が仮想現実だと思い込む事すらありえる。現地民がそんなことを知っても何の得もならない、と凍矢と鑑定ニキは必死で静の疑問に答えようとする。
「い、いや~ほら! 聖書とかでノアの大洪水はお約束じゃん! つまりそういうこと!!」
「いやあ、我らが盟主の占術でね。盟主様は占術は得意だから終末事案も予測できる。『大洪水』もそのうちの終末事案ってことさ。そうだろ田舎ニキ?」
静の疑問に対してあわあわとする凍矢に対して、鑑定ニキはすんなりと嘘ではない言い訳を出していく。
確かにショタおじは占術も長けているし、終末事案も占える。別段嘘はついてない言い訳で鑑定ニキは静の疑問を誤魔化していく。
はあ……と二人の黒札の返答に対して静はそう答えるが、実際彼女にとって「どこで知ったか」はどうでもいいことである。魚沼市は内陸部ではあるが、そこまで大洪水が襲い掛かってくるとなれば静としても他人事ではない。ましてや湾岸部である聖にとっては最重要課題でもある。黒札たちやガイア連合が大洪水対策を行ってくれるとなれば心強い。それに比べれば「なぜそれを前提で動いているのか」というのは意味のないことである。
……なお、鑑定ニキが上越市の「穏健世俗派」に色々力を貸している*3のは凍矢は全く知らないため、後で色々知って「な、なな、何ですってー!!」と某アルちゃん並みのリアクションになったのは余談である。
大洪水対策に対する作戦会議を行った後、九重静と聖はお互い対面しながら会話を行う。お互い情報は知っているが実際に対面して話をするのは初めてだからだ。『命蓮寺』は名家から時々生まれる血が濃くなり過ぎて生来から霊質に異常をきたした者、穢れを持った者の押し付け地であるが、九重家とは直接的には関係はない。
さらにメシア教の粛清を恐れ、存在が隠匿されていたことと、認識を阻害する結界のお陰で『命蓮寺』はメシア教の粛清を逃れている上に、静からすれば一番大きいのはかの『葛葉』の血を引いているということだ。
家格からすればどこの馬の骨であるか不明な九重家と、傍流ではあるが一流の血統である彼女は、静からしていれば、殿上人ぐらいの家格を持っているといっていい。……何か宮様関係の問題などがあったときはこちらに全部丸投げしようか……*4と静が考えている際にも、聖は口を開く。
「貴女が言いたいことは分かります。『何故クズノハの血を引く者たちが隠れていたのか』『貴女たちが率いていたらもっとこの県の霊的被害は最小になっていたのでは?』でしょう?」
とは言いつつも、同じ名家である静にも理解はできる。隠れていたから粛清を免れたのであって、表に出てくれば間違いなくメシア教がどんな手を使ってでも命蓮寺を粛正して他と同じような名家に変えていただろう。
「いえ、それはメシア教の粛清を逃れるためなので理解はできます。表に出てくれば間違いなく粛清されていたので、それも仕方ないでしょう。それで、九重家と友好関係を結びたいということですが……こちらはもちろん大歓迎ですが、そちらへのメリットが……」
「いえ、メリットはあります。それは『人手』です。確かにこちらのオカルト戦力は豊富ですが、いかんせん数が少ない……いざという時に備えて信頼できる筋の『人手』は必要です。ほかの岩手県の『鬼手一族』などにも頼りたいのですが、多少距離がありますし……ほかの県内の名家は実力も信頼性もちょっと……」
「分かりました。その代わりそちらからも人材派遣をお願いできましたら……よろしくお願いします」
こうして聖と静はお互い握手して強い協力体制を結ぶ事になったのである。
──―話は少し戻り。九重家には、九重家分家の少年、静の弟分である『重下稔』という少年が存在した。*5
多少霊能力があるだけのショタであったが、BSSを拗らせてショタ好きの姥石明神と契約。それをきっかけに『ミナミィネキ』に彼を紹介したのだが、【性癖を拗らせたショタ】というのはスケベ部の黒札たちのお気に召したらしく、凍矢に一つの提案をしてきた。
「ところで田舎ニキ。一ついい案があるんですが、彼をスケベ部に預けてみませんか? 何悪いようにはしません。私の試案ではロバである彼をレベル20ぐらいに上げることができるはずです!! まあ……試案なのでどうなるかは分かりませんが……きちんと私が面倒見ますから!!」
そのミナミィネキの嬉々とした言葉に対して、凍矢はジト目で彼女を見ながら言葉を返す。こういうノリの彼女は大抵ロクでもない事をするからである。
「……具体的には何をするつもりなの?」
「……ところで田舎ニキは結嵌学園*6という学園はご存じですか?」
「あっ。(察し)」
その一言だけで大体察した凍矢であるが、それでもミナミィネキは嬉々として言葉を続けていく。
「ふふふ、結嵌学園では例え黒札たちから愛されて(意味深)黒札たちからの愛を注がれれば(意味深)シキガミパーツ移植なしでも限界突破をしたことが確認されましたからね!! きちんと私が『パァン!!』しないように細心の注意を払えば現地民でもLV20程度には引き上げることはできるはずです!! 『性癖拗らせたショタ』は黒札人気も高いですし、たちまち人気者になれるでしょう! ついでに仲魔の要望にも応えて【永久ショタ】にすれば彼は強くなれて黒札との縁ができる、黒札はお気に入りのショタに愛を注げる、仲魔はずっとショタと気持ちよくなれるで皆幸せですね!!」
でもそれって戦闘能力のない欠陥レベルアップですよね? と凍矢は心の中で呟いた。
多分その路線でいくと三好ノアみたいに、【一分の魔脈】とか【一分の活泉】 【値切り】【蛇の道は蛇】や【狸寝入り】、【誘惑】などといったスキルがつく代わりに【魅了弱点】とか【吸魔弱点】がつくことになるだろう。
そして、一番の欠点は【戦闘能力・戦闘経験が全くない】ということである。『マリンカリン』ぐらいは覚えるかもしれないが、それでもLV20で戦闘能力が全くない・自分の身も守れないとかまさしくカモでしかない
そして何より、知り合いの少年が姥石明神と愛し合いながら(意味深)黒札たちに愛されて(意味深)愛を注がれる(意味深)のはいくらLV上限が上がるからと言っても何かこう……アレだろ!! と凍矢は心の中で叫ぶ。だが、そのミナミィの言葉に、近くにいた静はなるほど!とぽん、と手を叩いてミナミィに対して提案する。
「なるほど! つまり人身売買……じゃなかった捧げ物……じゃなかった。いい感じのショタを集めてマッチングさせればいいとそういうことですね!! かしこまりました。早速リスト作成に取り掛かります!」
やめろやめろやめろ、勝手に話を進めるなお前ら。ちょっと待ておい、と凍矢は頭痛を感じながら、二人の説得にかかっていった。なお、「田舎ニキいいショタ持ってるじゃん。ショタくれ」とスケベ部から言われて彼は思わず頭を抱える事になったのは秘密である。
BSSで熟女趣味ショタとか黒札がお気に召しそう。(こなみ)
ミナミィネキ&スケベ部「なかなかいいショタありますねぇ! もっとショタくれ」
静「ハイヨロコンデー!!」
田舎ニキ「人身売買じゃねーかこれ!!」