──―異界「黄泉比良坂」内部。最上階はすでに制圧され、色々なインフラなどが運び込まれている(この地点ではまだ街になってない)中で、数人の九重家の未覚醒者たち……パイロットスーツを纏った未覚醒者たちがその場に立っており、その前には跪いている4mはあろうかというデモニカと士魂号との間ともいえる大きさのパワードスーツにも見えるその三体の機械。その前に立っている未覚醒者たちに、ほかの周囲にいる数人たちが、パイロットスーツの裾を捲って中に何か入っている注射を用意する。
「よし行くぞ! 『覚醒血清』投与開始!!」
「了解ッ!! 『覚醒血清』投与開始!! 血液型を間違えるなよ!!」
『覚醒血清』それは凍矢……黒札たちの血を採取してそれを霊的に弱めて非覚醒者に投与するものである。
強力な覚醒者の血を投与されたら、それだけで大きく覚醒の可能性は向上する……が非覚醒者にそのまま投与した場合、当然の事ながら強力なMAGに耐え切れず『パァン!』の危険性が非常に大きくなる。
そのため、血を薄めるために黒札たちの血を少量、ほかは主に静たち『黒騎士部隊』並びに九重家たちの戦闘班や覚醒者たちの血などを多量に混ぜる事によって覚醒を促す仕組みになっているのだ。
……まあ実質凍矢や九重家の血統に組み込まれているといえばそれはそう、という事になる。(こうしておけばデビルサマナーやデビルバスターたちも九重家には頭が上がらなくなる)*1
そして、それを受けた九重家の非覚醒者たちは次々と新造された覚醒特化型デモニカ『戦術甲冑改 震電』に乗り込んでいく。震電はまだ出来上がったばかりで危険性が確認できないため、まずは九重家の非覚醒者たちで実験、そしてそれが上手くいったのなら、覚醒修行代わりに魚沼市の非覚醒者たちにも搭乗させて次々と覚醒させていく予定である。
さらにそれが上手く言ったのなら、欲しがる黒札、または他地方都市などに販売していく予定である。
「搭乗ッ!! 起動しろー!!」
その声と共に、パイロットスーツを身にまとった未覚醒の九重家の人間がコックピット内部に乗り込んでいき、ハッチが閉められると通常のデモニカよりも遥かに大型である『戦術甲冑改 震電』はズシン、ズシンと音を立てながら黄泉比良坂 の内部をゆっくりと歩いていく。そして腕に装備されている大型のガイア銃を装備しながらそのまま黄泉比良坂 の第二階層へと足を進めていく。このガイア銃はモビルワーカーが使用している大型機関砲をそのまま流用しているので、十分互換性もある。そして、震電三体は第二階層に到達すると、こちらに対して群がってくるガキに対して大型機関砲の銃口を向ける。
「ガイア銃構えー!! 撃てーっ!!」
ガガガガ!! と震電は構えたモビルワーカーの大型ガイア銃を構えながらガイア弾を乱射していく。乗っている人間は未覚醒で普通は悪魔は見ることができないが、この機体には『エネミーソナー』も装備されている上にデモニカでもあるため、普通に未覚醒者でも悪魔を視認できる。となれば、後はそれに対して銃を乱射するだけである。
……とはいうものの、言うは易し行うは難しである。乱射しても小型で素早いガキ相手に初陣の人間が的確に当てるなどかなり難しい。
「この!! この!! 来るな!! 来るなぁああ!!」
「バカ! きちんと狙え!! 狙わんと当たらないぞ!!」
いかにレベルが低いガキといっても愚かではない。乱射している震電に対してその素早さを生かして射撃を回避していく。もちろん、その弾丸によって倒されていくガキたちはほとんどではあるが、それでも回避しきり、機体へと張り付いていくガキも存在する。
「この!! 張り付くなぁああ!!」
震電の一撃により、張り付いたガキは瞬時にぶちゅる! と潰れて肉塊となって消滅していく。
この震電は普通のデモニカと異なりLVの成長はできないが、LVは固定制であり内部に悪魔を利用した【人工筋肉】を使用しているため、ガキ程度なら十分に叩き潰すことができる程度の戦闘力は所有している。何なら素手で真正面から殴りかかってもガキ程度ならば殲滅できるだろう。
ともあれ、ガキを殲滅した震電は唸りを挙げてガキを叩き潰して大気中に拡散した大量のMAGを吸収し、それを吸収して未覚醒の着装者へと流し込んでいく。そのプログラムこそが一番苦労した部分である。当然この地点でMAGを大量に注ぎ込めば『パァン!』だし、少なければ覚醒はしない。その微調整は各個人にもよるのでこの部分が大変だったのだ。そして送られてくる身体データを見ながらロボ部に所属黒札の一人【ウェストニキ】はギターをかき鳴らしながら声を張り上げる。
「ふむふむ! 半覚醒状態確認!! やはり医療部から貰ってきた医療データがここで役立つとはな!! さすが吾輩!! まさに天才でぁああある!! そしてそしてぇええ!! ついに三人とも覚醒!! 吾輩やっぱり大天才でぁああある!!」
ジャカジャカとギターをかき鳴らす【ウェストニキ】と同時に、震電に搭乗していた未覚醒者が覚醒したのを確認して、ロボ部や九重家の皆も歓声を上げる。これで後は震電さえあれば使いまわすだけで覚醒者を大幅に増やすことが可能である。(100%ではないが)どこもかしこも覚醒者不足の中、使い回せて覚醒者を増やす事が可能な覚醒補助装置などどこもかしこも欲しがるに違いない。そしてこれはロボ部や凍矢の大きな資金源になるはずである。そして、この震電のキモともいえるMAG注入システム&プログラムのブレイクスルーになったのは医療部の【半覚醒の健康診断データ】である。*2
半覚醒かどうか確認し、感覚器やその他が覚醒状態に移行したか確認を行う。このデータによって注ぎ込み過ぎで『パァン!』になる可能性をかなり減らせたのだ。才能的な意味でロバである名家の未覚醒者が覚醒できたのだから、一般人ならばより覚醒しやすいだろう。そして、その覚醒者たちは当然デモニカ使用代など支払えないので『借金』で縛り上げて、人外ハンター協会や生産業などで忠実な労働力として働いてもらう予定である。だが、データ自体はいいのだが、使用された無駄撃ちされたガイア弾の消費量にウェストニキは軽く眉を顰めた。
「ううむ……。しかしいくら何でも無駄弾を撃ちすぎであるな……。これなら素手か武器を持たせてガキの群れに突撃でも……いや、素人に悪魔に突っ込めというのも無理があるか……」
まあその分も何か改造していかないとなぁ、と思いながらも彼はこの実験データを生かすために震電の元へと向かっていった。
──―新潟県のとある神社。ガイア連合や自衛隊の共同作戦で大まかな日本神は解放され、ガイア連合との協力体制を築きつつあった。大体の神々は(主に事実上の裏切り者である根願寺に)大いに不満は持ちつつも、自分たちを解き放ってくれてなおかつ黒札という強大な存在は好感(色々思惑はあるが)を持って受け入れられていた。
だが、それでもごく少数ではあるが暴走する神々も存在した。……それは皮肉にも人間や氏子に対して情愛が深い、いわゆる『セドさやかちゃんタイプ』の分霊神だった。*3
「ニクイ! ニクイ! ニクイ!! 全部滅ぼす!! メシア教ホロボス!夷荻ホロボス!!南蛮ホロボス!!全部ホロボス!!」
>鬼神 コトシロヌシ(ガイアLV31)*4
神霊『コトシロヌシ』。大国主神と神屋楯比売命の間の子であり、建御名方神の兄ともされる神である。最後まで戦い抜いた建御名方神と異なり、コトシロヌシは国譲りの要請に従い、抵抗することなく受け入れた。コトシロヌシ神は託宣を掌る神として捉えるのが有力であり、国譲りで大人しく従ったのは。呪的宗教的支配力の譲渡を意味するとされる。
太った人間が腰に布を巻き付けて小槌を纏ったような容貌の存在。普段は落ち着いているであろうその神霊は怒り狂いながら神気を放出しながら周囲を威嚇していた。国津神に属する神『事代主』その分霊である『鬼神コトシロヌシ』は、国津神よりも鬼神としての属性が強く、そして氏子たちによる情愛が強かったため「国のため」として自らの氏子たちがいなくなってしまったのに耐えられなかったのであろう。氏子たちが全滅したと聞いた彼はその情愛ゆえに暴走を開始してしまったのだ。同じ国津神の重鎮である静の『国津神スクナビコナ』もコトシロヌシに対して説得を試みるも全く受け付けなかったらしい。
『ええい落ち着け!! コトシロヌシの奴め! 分霊のくせして氏子に入れ込みおって!! こりゃ一度殴るしかないか!! 構わん!! 国津神スクナビコナの名の元許可する! ボコしてええぞ!!』
何をしてもその強さで踏みつぶせる黒札と異なり、彼女たちが神と戦うにはそれなりの大義名分があったほうが後々色々スムーズに進む。この場合、大国主のブレイン役であったスクナビコナの許可があるという事は、国津神上層部から許可が出たのと同じである。……分霊なのでちょっとややこしいがともあれ、何か他の神々から突っ込まれた時にはそれを大義名分として使用するつもりである。
『黒札の腹心』『スクナビコナの許可』『そして暴走している』これだけの大義名分があれば神霊を殴ってもどこからも文句は来ないと判断したのだ。
「アナライズ完了!! 呪殺反射! 火炎にやや弱し!! DLV測定不可能!! ガイアLV31!!」
それを聞いて九重家の戦闘班たちは動揺する。相手は紛れもなく神霊。
この国を治める国津神(今は鬼神だが)の一柱である。神霊クラスの相手と真正面と戦うなど、名家的にも到底恐れ多くて戦意を失ってもおかしくないほどだ。DLV測定不可能の神気を浴びれば、いかに戦闘班といえどLV5~10程度の人間たちではパニックになって味方を同士討ちしかねない。そう判断した戦闘班たちの隊長は特別な通常では禁じられている方法に出ることを決断した。
「静様!! 『戦闘薬』の許可を頂きます!! 総員『戦闘薬』*5キメろぉおおおお!!」
その隊長の言葉に、戦闘班たちは次々と『戦闘薬』を服用し、ハピルマ状態になって畏怖と恐怖から自らを開放する。この薬は『戦闘中』にのみハピルマの効果を及ぼすという『戦闘薬』としては極めて優れた効果を及ぼす薬である。*6
戦闘中のみ、ということは普段の生活でこれを使用してもハピルマの効果を発揮しない……つまり中毒になりにくいという優れた効果も持っているのも大きい。
むろんハピルマの効果で言うことを聞かない、あるいは恍惚になる人間たちもいるだろうが、それでも戦闘中にパニック状態、または棒立ちのままでいるよりは遥かにマシである。
他の名家では悪魔の戦闘で部下たちにこれを多用して突撃させるという、セツニキが見たら顔を顰めかねない大日本帝国真っ青な名家もあるらしいが、あくまで九重家では使用は固く限定されており、このように強大な神霊に対して身動きができないピンチの時ぐらいにしか使わない(中毒者が出ると大変)だからである。
「切り札を放て!! 秘石投擲開始ー!!」
おおお!! と戦闘班たちは破魔ネキが作り出した『火炎の秘石』『氷結の秘石』『衝撃の秘石』を手で投げたり、スリングで投げつけたり、あるいは石が放てるように改造されたクロスボウでコトシロヌシへと次々と叩きつけていく。神霊にこんな攻撃を仕掛けるなど、『戦闘薬』でハピルマ状態になってなければ到底無理だろう。
さらに、それに呼応して黒騎士部隊も戦闘を仕掛けようと鬼神コトシロヌシを取り囲む。いかにガイアLV30を超える神霊だろうが、黒騎士部隊もガイアLV30に到達している者たちは数多い。囲んで棒で殴るのは最高の戦法である。
『タルカジャ!! ラクカジャ!!』
静のフレイミーズも味方に補助呪文をかけて皆を強化し、ほかにも補助呪文をかけれる者たちは次々とタルカジャやラクカジャの呪文を唱えて重ね掛けして強化していく。だが、それに対してスクナビコナは注意しろ! と鋭い言葉を投げつける。
『気をつけろ!! 奴の切り札は恐らく……!!』
『《サバトマ》ッ!!』
そのコトシロヌシの叫びと共に、彼の目の前の空間が歪み、その空間からぬうっと新たな神霊が姿を現す。彼の前に似たような姿をした太った人間が腰に布を巻き付けて小槌を持っているような存在が姿を現す。だが、コトシロヌシと似た存在はコトシロヌシと同じ国津神ではあるが、全く同個体ではない。
>鬼神 ヒトコトヌシ(ガイアLV21)*7
国津神ではなく「鬼神」の分類である二体もの神霊。そんなものが目の前に現れたら逃げ惑うかひれ伏すのが普通の人間というものだ。だが、この場にいるのは皆普通の人間ではない。黒騎士部隊の半分はヒトコトヌシへ、そしてもう半分は静と共にコトシロヌシへと戦いを仕掛けていく。何よりも恐れるべきは『サバトマ』によってさらに悪魔を呼び出されることである。これ以上増えてしまってはさすがの彼らでも勝つのは難しい。いざとなったら『煙幕弾』か何かで逃げ出すしかないだろう。
コトシロヌシは手にした小槌で静に対して殴りかかっていく。それに対して静は大型のラウンドシールドで防御するが、その威力に思わず手が痺れるほどだ。九重家の戦闘班ではこの一撃で何人が死んだか分からないだろう。
それに対して、静も『魔神インドラ』と『妖鬼トゥルダク』を使役して攻撃を仕掛けていく。
『食らえ!! ジオンガ!!』
『菩薩掌*8!!』
インドラのジオンガとトゥルダクの菩薩掌で攻撃して隙を作った瞬間、静は自らの切り札のスキルを放つ。
「食らいなさい!! 『ベノンザッパー』*9ッ!!」
インドラのジオンガで麻痺した隙をついて、静が刀を振るうと同時にその毒を纏った剣風はコトシロヌシとヒトコトヌシを直撃する。ベノンザッパーは敵『全体』攻撃であり、それは二体であろうが複数であろうが例外はない。そしてその特徴としては『毒付着』を相手に行えるということである。
メガテンの『毒』は格上相手でも戦える強力な状態異常である。メガテンの毒はHPの割合ダメージと共通して『物理攻撃力を半減させる』仕様になっている。それは神霊であろうが何であろうが例外ではない。それに乗じて、戦闘班も今度は毒薬瓶を投げつけたり、クロスボウに毒矢を装填して放ったりする中、静はもう一発ベノンザッパーを叩き込んでいく。
「もう一発!! 『ベノンザッパー』!!」
静のHPを削った毒を纏った剣風により、コトシロヌシもヒトコトヌシも『毒』状態へと変化する。先ほども言ったが、『毒』は極めて強力であり『物理攻撃力を半減させる』効果が存在する。
このベノンザッパーによってコトシロヌシもヒトコトヌシも二人とも毒状態になってしまったので、かなり弱体化されてしまったともいえるだろう。さらに切り札ともいえる破魔ネキの秘石に加え、特殊な攻撃アイテムたちも次々とコトシロヌシたちに対して叩き込まれていく。
「食らいやがれ!! 混乱ナパーム!! *10緊縛ナパーム!! *11」
「破魔ネキ様から与えられたとっておきの切り札の秘石を使ったのにくたばらないとは……!ならこちらを食らえ!!『スティンガー』*12『ドラゴンATM』*13に『ハンドグレネード』*14だ!! さらに各種状態異常弾の雨あられを叩き込んでやるぜ!! くたばれぇええ!!」
これら秘石や各種攻撃アイテムの連打、そして『毒』や状態異常弾、インドラの雷撃や静の攻撃などにより集中的にフルボッコにされたコトシロヌシは耐えられるはずもなかった。残ったヒトコトヌシもブフーラなどで攻撃は仕掛けていたが毒を食らってからのこれだけの波状攻撃を食らっても耐えられるはずもなかった。
肉体がボロボロになっている中、スクナビコナの力で何とか肉体を維持しているコトシロヌシはそれでも世界に対する怨念をまき散らしていく。
『ニクイ!ニクイ!我が氏子を滅ぼしたメシア教がニクイ!!この身もろとも……「保護しています」は?』
静の冷静な一言に、コトシロヌシも思わず真顔になる。そんな彼に対して、静はデモニカを纏ったまま書類をコトシロヌシに手渡していく。静はコトシロヌシと戦う前にスクナビコナの助言を受けて、九重家の組織力を使って彼の氏子の末裔を捜索した結果、氏子たちは名家をやめて一般家庭として世俗に馴染んでおり、その結果メシア教からの粛清も逃れて細々と生き延びていたのである。(一応細々とコトシロヌシは信仰している)
「貴方の氏子……正確に言えば氏子の末裔はこちらで保護しています。見つけるのは手間暇はかかりましたが……貴方の氏子の本家は名家をやめて普通の家になっていましたので、メシア教の粛清を逃れたようですね。今は我々の手で保護しています。あとは保護するなりする前に氏子たちと話し合いをするのがいいでしょう。」
『お、おおお……おおおお……』
コトシロヌシは地面に顔を伏せて人目を憚らず号泣した。例えいかに霊的に弱まっていたとしても、一般人になっていてもコトシロヌシにとっては大事な氏子であり存続しているだけでコトシロヌシにとっては十分だったらしい。ともあれ、何とかコトシロヌシを落ち着かせた静は大きなため息をついた。
一方、こちらはガイア連合の依頼やら何やらで忙しく走り回っている凍矢は珍しく自分の拠点である公民館で、リラクゼーションソファー(MAGバッテリー充電ケーブル付き)に座りながら書類の確認を行っていた。静たちに神と対峙させておいて自分は休んでいるのか、と思われているが実際は逆であり、静たちが自分たちで対峙できるのなら神霊とでも戦う! 黒札様は休んでくれ!! という要求を取り入れた形になる。(無理だったら凍矢自身が何とかする予定ではあったが)
「よし、静たちはきちんと何とかしてくれたようだな。これぐらいの敵を倒せるならそれなりに任せてもよさそうだな……」
基本的に【現地の霊能名家を再興】しても【霊能能力は、かなり弱い】【頼りない】というのが一般的な評価である。*15だが、デモニカ部隊がここまで育ってくれるのなら、黒札にとって雑魚敵は自動的に倒してくれるありがたいユニットになる。そうすれば弱い敵を黒札が蹴散らさなくても自動的に何とかしてくれて、黒札の手が空いてその分強大な敵に立ち向かえる事になる。非常に手間暇も根気もかかるが、地方勢によっては極めてありがたいといえる。
そして、人型になった『破裂の人形』と協力してそんな山のような資料に凄まじい勢いで目を通してサインをしていく凍矢。彼も『コンセントレイト』を所有しているため、それを利用すればこの程度は可能である。と、そんな中一枚の書類が目に入る。
「ん? 何々? オーストラリアのガイア支部……ロボ部関連支部からの要請か? え? 資源の話じゃなくて馬を保護してほしい? ……何で?」
ロボ部が馬を保護してほしいとか明らかに分野違いの事を言い出して流石の彼も首を傾げた。
日本の資源の乏しさを賄うために、あちこちの鉱山を異界鉱山へと変化させて補っているガイア連合だったが、魚沼のロボ部はそれだけで賄えるか? と疑問に持つ者たちも存在した。そのため、石炭、鉄鉱石、天然ガス、ウランなど鉱物資源の豊富なオーストラリアにガイア連合を通じて支部を作るよう働きかけていたのである。これは白豪主義で一神教……メシア教が蔓延っているであろうオーストラリアがメシア教に支配されて一大拠点にならない牽制のためでもある。(多分ユルングとはこの地点ではまた戦っていない感じ?まだオーストラリアがそれなりに落ち着いてる状況)
何か有名? な馬らしいが彼は馬の事はさっぱり分からないので、馬に詳しい馬ニキに聞いたろ! とさっそく馬ニキの所に電話をかけた。
「馬ニキちょっと聞きたいんだけど、「うぃんくす?」*16ってオーストラリアの馬知ってる? 後「からじ?」*17って馬も保護してほしいとかオーストラリアのガイア連合支部(ロボ部)からの連絡があって……」
その名前を聞いた瞬間電話の向こうで馬ニキが飲み物を吹き出した音が聞こえてきた。何か有名で強い馬らしいがあんまり興味のない凍矢からすれば、ほーんという感じであるが、馬に詳しい馬ニキからしたらまさに驚天動地の出来事だったらしい。焦った馬ニキの声を聴きながら、凍矢はふんふん、と頷く。
「え? 絶対に保護しろ? 後絶対にオーナーの一人になった方がいい? はあ……。ちなみに馬ニキの所で保護は……。ウチより専門家に預けた方がいい?ガイアファーム筑波*18に預けるなりガイアレーシングに相談しろ?よく分からないけど、まあそういうことなら……。」
ともあれ、馬の事は全然分からんから馬ニキやガイアレーシングとかと相談して何とかするか……。と凍矢は頭を掻きながら保護に取り掛かることになった。