【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち   作:名無しのレイ

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今回の聖者ニキの力は「凡庸でありふれた転生者たちの小話」様の作者様から設定をいただきました。どうもありがとうございます。

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マカーブルさんからとても綺麗なヴィルトゥオーサのイラストをいただきました!ありがとうございます!!



九重静の終末対策12

 一見スローライフで理想的な暮らしに見える田舎暮らし。だが、そこには当然のごとく大きな罠があった。それはいわゆる「陰湿なムラ社会」やら「噂」である。

 集落を基盤とした排他的な地域社会は他の余所者たちを排除し、あるいは陰でこそこそと噂を広めて住みにくくさせたりさせていたりする。……だが、『名家』という地域に根付いた巨大な権力があればたちまち一変してしまう。

 

 静が一言「私がこう決めました。異論は認めません」と言えば「「「名家様の仰せのままに」」」と従う住民たちがほぼ100%だ。(内心は思うところあれど地方では絶対的権力に逆らう人間は普通いない)田舎であり山に囲まれた魚沼地方では自然が非常に多く、自然と様々な怪異や悪魔たち、あるいは悪魔化した猛獣たちの脅威から人々を守る名家は非常な信頼感を得ている。特に実際に悪魔を目撃している例も多くなっている半終末ではなおさらだ。それに反発するものたちもいたが、「何故か名家に守護されていなければ」「破滅したり悪魔被害にあったりする」事例が反発する人たちの間で多発し、反対勢力はほぼ沈黙している。

 さらに大多数の人たちはこんな物騒な世相の中、自分たちの平穏な生活さえ守れたらそれでいい、と思う人たちが大半だ。

 

 ともあれ、静はそうして、名家の権威を利用して排他的な村社会の環境を変えて凍矢に住みやすい地域へと変えていった。(白魔女や海外の避難民たちの受け入れもそうやって静が目を光らせているからこそ受け入れがスムーズにいっている。なお避難民たちが好き勝手やらかした時には話が別の模様)

 

 だが、そんな彼女の力でも防ぎきれないものはある。それは「噂」である。特に最近黒札である凍矢に対しての悪い噂をバラまいている人間がいるらしい。普通の住民たちは相手にもしていない……むしろ避けられているタイプではあるが、それでもどこからか金が出ているらしく、彼はネットでもリアルでも熱心に悪い噂をバラまいていた。

 

「へっへっへ。儲かった儲かった。ネットでもリアルでも適当な事言っておけば金が貰えるんだからありがたいもんだぜ。さて、もっと……モガガ!!」

 

 適当な噂をリアルでもネットでもばらまき大金を手にしてご満悦の彼は、買い物をするべく外を散歩していた。だが、普通に散歩をしている彼にすーっと窓が黒塗りにされたハイエースが近づいてきて、瞬時にその男を連れ去って走り去っていったが、誰もそれを気にする人たちはいなかった。

 そして、車の中で目隠しと口枷をされた彼の耳元で透き通るような女性の声が響き渡る。

 

「この地は別段ディストピアではないのですから言論の自由はあります。ええ、ええ。黒札様の悪口も多少は見逃しましょう。ですが、それが度を過ぎれば……分かりますね?」

 

 声が離れたと次の瞬間、バイオリンのような音が響き渡ってそれが男の鼓膜に入った瞬間、男の脳内を砕かんばかりの大音量にも似た音波が彼の脳内を揺さぶる。実際に音波で揺さぶってしまうと、瞬時に脳がシェイクされた豆腐のようになってしまうため、あくまで脳内の神経を音波で刺激しているだけにすぎない。(必要とあれば実際にやる)

 音楽をエンドレスで大音量で聞かせる「拷問」に一番近いだろう。そしてそんなものに耐えられるほど一般人である彼は強くはなかった。穴という穴からあらゆる液体を垂れ流し、完全に心がへし折れて白目を向いている彼に対して、さらにその可憐で冷たい声は鼓膜に響き渡っていく。

 

「さて、これから「誰から指示されたのかどうか?」を全て吐いてもらいましょうか。あとは「噂を広めない」を霊的契約させていただきましょう。嘘をついたら……わかりますね? ああ、この後警察に駆け込んでも無駄ですよ? 警察も全く話は聞いてくれないでしょうから」

 

 音楽に親しい彼女は、心拍数やその呼吸から対象が嘘をついているか分かるいわば天然のウソ発見器だ。何もかも垂れ流ししている彼は必死になって洗いざらい話して言われるがままに霊的契約も行った後で、暗部の他の人員がかけた『ハマ』で奇麗にされた男は、ハイエースから出されると必死になってその場から走り去っていった。例え警察に逃げ込んでも九重家の支配下に置かれている警察がいうことを聞くはずもない。逆らうようなら悪魔に食わせるなりなんなり始末する予定だったが、心が折られた彼はもう逆らうことはしないだろうと、九重家の汚れ仕事を行う女性……『ヴィルトゥオーサ』は判断したのだ。

 

 


 

「ご苦労様でした。ヴィルトゥオーサ」

 

 黒髪ロングに姫カット、まるで人形のように整った九重家暗部トップ『ヴィルトゥオーサ』は九重家の拠点の一つへと帰ってきた際に静から直接出迎えを受ける。

 元々ダークサマナー上がりの彼女ではあるが、そのどんな汚い仕事でも平気で行う活躍と忠実ぷりは、静から暗部のトップを任せられるほどの信頼を得ていた。(霊的契約できっちり縛り付けられているのもあるが)

 別に好んで人の命を奪うわけではないが、やるとなれば何の良心の呵責もなく多数の人の命を奪えるヴィルトゥオーサは今回の静の「脅すだけでいい」という依頼に少し疑問を抱く。

 

「ですが、あの程度の人間さっさと始末しても良かったのでは? このご時世別に人が一人消えても誰も騒ぎませんよ?」

 

 その言葉に、静は首を振って否定する。

 

「いえ、これは生かして返して抑止力としての『噂』を広めてもらうのがメインですね。「余計な事を言えば名家や暗部が襲い掛かってくる」と知られればそうそう悪口の噂も出せないでしょう。……しかし、この世界では「噂」も力を持つ世界らしいですから……この辺もきちんと目を光らせておく必要がありますね」

 

 この世界では「噂」は実際に力となって発動する。静自身も知らないが何やら噂を媒介にする大悪魔などもいるらしく、それは決して軽視していいものではない。むしろ最優先で警戒すべき対象である。ましてや認知異界『黄泉比良坂』と極めて近しい異界『黄泉比良坂』が存在するこの地ではなおさらだ。このあたりは以前メシア教から救出したペルソナ使い『アリウススクウッド』たちが中心となったペルソナ使いが警戒・対象に当たっているが、それでも不安ではある。

 

「やはりペルソナ使いである『アリウススクウッド』たちと協力体制が必要になりますか……。分かりました。『アリウススクウッド』たちとは連絡を取り合うようにいたします」

 

「頼みます。……あの娘たちに汚れ仕事はメンタルにダメージが入るかもしれません。ペルソナ関係以外はできる限り汚れ仕事は暗部でよろしくお願いします」

 


 

 ヴィルトゥオーサとの会話が終わった後で、静は九重家のほかの幹部を呼び出し会話を行っていた。それは魚沼地方で行われているとある事項についての話である。

 

「そういえば『献血』の方はどうなっていますか?」

 

『献血』これは正確な意味ではなく、静たちが行っているのは、未覚醒者・半覚醒者たちから吸血鬼用の血を集める『献血(実際は売血)』である。一般人たちから血液を徴収し、それを輸血パックに入れて凍結保存して「保存」の魔術がかけられて長期保存可能な状態にする。

 これら集められた血液は、闇の眷属が非常に多い月架手町*1などの吸血鬼たちの肉体維持用の血液パックとして供給される。

 吸血鬼たちはガイアポイントやマッカでその血液を購入し、一般市民たちはそのガイアポイントやマッカを受け取るシステムだ。いわゆる「売血」制度である。

 

「ええ、無覚醒者や半覚醒者たちでも献血すれば実質現金のガイアポイントがもらえるということで大盛況ですね。ただ……やっぱり献血のし過ぎの「黄色い血」をもった未覚醒者たちも出てきていますが……」

 

 そして、かつて売血が一般的だった時のように、同じ問題も出始めてきている。それは『黄色い血』問題である。金銭を得るために過度の売血を繰り返している人間の血液の赤血球の数が減少し、血漿の割合が増加しましてしまうのだ。もちろん、ディアによって回復は可能だが、売血によって稼いだ金は生活費で消えてしまう、という人間も少なくない。

 

「まあ闇の眷属が多い町からは定期的に購入はされていますが……。やっぱり彼らもどうせ飲むのなら高位覚醒者の血のほうがいい、ともっぱらの評判ですな」

 

「とはいうものの肉体維持のための必要な要素と考えれば購入せざるを得ない……。未覚醒者たちにとっては貴重なガイアポイントを購入できますしお互いウィンウインな関係に持っていけるでしょう」

 

 いかにあんまり美味くない、薄い血と言っても肉体の維持、理性の維持と言った観点で血がなければ生きていけない彼らにとっては必須の食料である。手放すことができない以上多少の味は目をつぶるという吸血鬼がほとんどのはずだ。吸血鬼たちにとっては味のある、美味しい高レベルの血がほしいだろうが、そこは自分たちで何とかしてほしい、というのが静たちの本音だ。ともあれ、こうして売血制度は一般人たちが貴重なマッカやガイアポイントを稼ぐ貴重な手段になっているのである。

 


 

 ──新潟県、糸魚川市。

 ここでは古来より霊石の一つにして宝石としても取り扱われている「翡翠」が多く産出されている。

 残念ながら、ヒスイは宝石ではあるが、ステータスアップの効果があるわけではない。

 それでも探求ネキの手による霊的効果上昇実験により、日本を象徴する石になったと幅広く認知されるに至った状況では、ヒスイ特有の力が生まれても当然だった。そしてこの霊的能力が向上した翡翠によって探求ネキのところなどで作成されているのが『大和の首飾り』である。*2

 簡易式神なども併用したその首飾りは、『肉体系状態異常耐性(使用する翡翠の等級と勾玉の品質により、耐性の強度が変動)」『精神系状態異常耐性(使用する翡翠の等級と勾玉の品質により、耐性の強度が変動)』『勾玉を依り代とした簡易式神防壁』などといった非覚醒者でも十分力が発揮できるようになっている。その原料である翡翠を取って、探求ネキやガイア連合の生産部に販売することが九重家の大きな収入源になっているので、静としても力を入れている分野である。

 

 そして、その天照大神などに捧げたという認知が作用したのか神がそれに乗ったのか不明ではあるが、ヒスイの中から新しい鉱石「アマテラス石」*3が発見され、このアマテラスの名前を冠された新しい霊石には、性質の異なる2種類の構造要素を有しており、陰と陽、荒御霊と和御霊の両方を内包している要素があるとガイア連合も注目し、現在霊的な効果を研究中である。

 

 ともあれ、海に面している糸魚川市では海から魔除けの塩や海産物が取れるなど多大な恩恵もある反面、面倒事、厄介事なども多く存在する。その厄介事の一つが海岸に漂着した『船』である。

 ウラジオストクや中国などから必死になって荒ぶる日本海を必死になって逃れようとしてくる難民たち。その大半は荒ぶる日本海を超えられず沈んでいくが、こうして航路を大幅に逸れても運よく日本に辿り着ける船もあった。海岸に漂着する船を探索するべく連絡を受けた九重家の人間たちは慎重に船内に潜り込んでいった。そして発見したのは数多くの船員、避難民たちと……。

 

「て……天使人間だぁあああ!!」

 

「静様に連絡!! ならびに避難民を病院に搬送! 急げ!! 天使人間の方は静様の判断を仰ぐ! それまでは手出しするな!!」

 

 天使人間は取り扱いが難しい。敵戦力として出てくるのが大半ではあるが、かなりの確率で半ば無理矢理天使と融合させられた「被害者」も存在する。いくら天使が主敵である彼らであってもサーチアンドデストロイとはいけない。ましてや翡翠採取係は基本的に非覚醒者や半覚醒者がメインであり、天使人間と対抗できるほどの戦力は存在しない。慌てた彼らはトップである静に対して連絡を取った。

 


 

「……わざわざ農業ニキ様がついてこられなくても……。いかに天使人間でも私一人で何とか……」

 

「そうはいかない。君は田舎ニキが魚沼を支配するのに必要な最重要人物だ。護衛につくのは当然だろ?」

 

 糸魚川市の病院の一つ、天使人間が発見されたと聞いた静は、護衛としてついてきた農業ニキと急いで向かっていた。聞いた話だと大人しくしているため、恐らく被害者としての天使人間だろうと思われるがそれをきちんと判断すべく静自身が来たのだ。

 

 そして、病室のベッドで横たわっている可憐な顔だちをしたボロボロなピンク髪のロングヘアー少女を見た瞬間、農業ニキは一瞬で見惚れて顔を赤くした。

 

 ──人が恋をする瞬間を初めて見てしまった。

 そして、それを見た静の心の中は思わずガッツポーズが決まったほどである。

 黒札たちは特に縛られるものがないので何かあったらすぐに本拠地である山梨支部に帰ってしまうことが多い。

 黒札に頼るものたちは、常にその危険性に冷や冷やしながら過ごしている。

 だが、その黒札に気になる人ができれば(そしてそれを庇護できれば)黒札が簡単に山梨支部に帰る可能性はぐっと減少する。

 農業ニキも海面との大悪魔との戦いで片手片足を失い、大悪魔の呪いで傷の治療も難しいところを、わざわざ自分のシキガミ権利を使用して半シキガミ人間にしたほどである。*4

 

 このままでは命が危うい、と山梨支部まで運ぶ余裕がなかったので大至急、魚沼支部の医療班の手でミカのシキガミ手術が決行。山梨支部からのシキガミパーツ輸送と派遣されたフェイスレスニキの手によって無事手術は成功した。

 ……なおシキガミ手術を受ける前、穏健派の大幹部であるメトフィエス大司教が「天使人間ならば私たちの方が大量の治療データをもっています。我々のところに預けていただければ大切に治療させていただきますよ?」という提案が来たが、静、笑顔のダブル中指立てお断りを決行してこれを撃退した。

 

(しかし、天使人間の治療に対するデータなんてないというのもまた事実。ここをカバーするには……あそこを頼るしかないですか……。あちらもメシアンに対しては苛烈の一言ですが、被害者枠には優しそうですし……)

 


 

「なるほど……。それで我々を頼ったと。いや実にいい判断だ」

 

 シキガミ手術を受けてまだ療養中のミカのため、田舎ニキや農業ニキのツテを頼って呼び出したのは、沖縄支部の黒札の一人「聖者ニキ」である。*5

 沖縄支部は天使たち……穢教鳥の解体・破壊・構造研究は盛んであり、そこから派生して『天使やメシアン、そして天使人間の治療研究』にも繋がり、天使人間にされてしまった被害者達の身体ケアなどにも優れている支部である。噂では、沖縄や初音郷に『天使人間化した被害者の療養施設』もあるという話ではあるが、そこまで静は詳しくない。

 

 人間にシキガミ手術を行った例はあるが、天使人間に対してシキガミ手術を行った事例は少ない。フェイスレスニキの腕を信用しないわけではないが、天使人間治療の専門家たちにも見てもらった方がいいという静の判断である。

 

「誤解されがちだが、我々アンチメシアンは穢教鳥は苛烈だが、被害者枠である人々には極めて優しくしようとは務めている。それは天使人間と言っても同じだ。いやまあ敵の天使人間にはアレだが……」

 

 そうした沖縄支部の天使人間の治療データを全て覚えている聖者ニキは、ミカの肉体を霊的・肉体的にもチェックしていく。基本的には問題ないが、やはり霊的な衰弱が激しく彼女と親和性が高い霊的に優れた食材が必要との事だ。だが、衰弱している彼女に霊的な肉やら野菜やらを大量に食べろ、と言っても無理がある。それを予想していたのか、聖者ニキは予め用意していた、本露が乾いたあとに残る薄い鱗もしくは霜のような外見の食べ物を容器から取り出すと、それはたちまち膨れ上がり、ふわふわの綿菓子のような外見に変化する。

 

「ともあれ、これは俺がペルソナの権能を利用して作成した『マナ』だ。これなら天使人間たちと親和性が高いため、弱っている彼女にはいい栄養になるだろう。……唯一神なんぞに祈りを捧げるのなんて真っ平御免だから俺が気合いで産み出したものだが」

 

 ……マナを作り出せるペルソナとは一体。それは名前通りの聖人枠なのでは? と静は思ったがお口にチャックをして静はそれを受け入れた。マナは、イスラエルの民がシンの荒野で飢えた時、神がモーゼの祈りに応じて天から降らせたという食べ物だ。天使人間であるミカに対しては親和性の極めて高い最高の栄養食品だと言える。

 

 

 聞いた所によれば、被害者の天使人間たちは彼らの秘密基地「初音郷」で癒してくれる事もあるという事だ。

 しかし、彼女が初音郷に行くという事は農業ニキ様も向こうに行く可能性が高い。静はその提案をやんわりと断り(聖者ニキも静の魂胆を知っているためちょっとジト目になりながらも)それよりも重大な問題に取り組む事になった。

 

「それより……気づいていると思いますが……」

 

「ああ、匂うね。あの糞鳥どもの匂いだ」

 

 


 

 病院の地下駐車場。そこに存在している数台のハイエースからドアを開けて白衣を纏った少年たちが次々と姿を表す。少年たちは病院の未覚醒者たちを操るために「聖歌」を歌うために用意された「少年十字軍聖歌隊」である。聖なる役目、聖務を任せられた少年たちはその名誉にハイテンションになり、意気揚々と高らかに語る。

 

「そうだ!! 僕たちは天使様たちに愛されて生まれ変わったんだ!! 天使様からの『愛』を思う存分受け取った我々は選ばれた民!! 『少年十字軍』なんだ!!」

 

 元はロバな彼らは、天使たちの「加護」で霊質に歪みはあるもののそれなりのレベルになったので天使たちへの忠誠度は高い。

 

 簡単に言えば『結嵌学園』で使われた方式をそのまま天使が行い、少年たちに天使が『愛』を注ぎ込んで生まれたのがこの『少年十字軍』である。結嵌学園の方式は色々な霊装などは使われているが根本的には極めてシンプルな方式だ。そしてその情報が外に漏れれば、その情報を知ったメシアンたちがその模倣をするのも当然といえるだろう。*6

 

 天使からすれば気持ちよくなれるし、メシアンロバのレベル限界が突破できて聖歌隊も結成できるまさに一石二鳥の作戦だ。上手くすれば「種族・メシアン」になってさらにそれ以上のレベル限界突破ができるかもしれない。

 

 天使たちによって、散々『愛』を注がれた少年たちは限界突破を果たし、霊質を歪ませながらもこうしてLV20代としての精鋭を「生産」できたのだ。

 

「だが、戦闘力では劣る我々が真正面から戦うのは難しい。だから絡め手を使う。『聖歌』を使用して未覚醒を操って病院を大混乱にして、医師たちを操って周囲を騙して天使人間様を「保護」する。いいか。決して天使人間様を傷つけるなよ? その他はどうなっても構わない。全ては主の御心のままに! 行くぞ!」

 

>あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。

>汝、姦淫してはならない。

>隣人に関して偽証してはならない。

 

 その声が響き渡った瞬間、聖歌隊たちは床に倒れこんで身動き一つ取れない状態に無効化された。これは聖者ニキのペルソナ「モーゼ」のスキル名は『十戒の破片』。その名の通り『十戒』に纏わるスキルでありモーゼを降魔した状態である聖者ニキの周囲では『十戒に反した行いは不可能になる』という制約が自動的に発生するという非常に強烈な空間が発生する様になる。

 

ただ……『嘗て一度十戒の石板は壊れた』という逸話と『聖者ニキ自身の一神教不信』からその効果は『全ての天使と四文字崇拝に関わる存在全てのみ』という制約があり、形式的にでも四文字信仰をしている存在にしか効果がない代物になっている。十戒に引っ掛かった聖歌隊はたちまち無効化されたのだ。(姦淫は天使と散々やりまくったのでアウト扱い。)今回は手加減してただ無効させただけだが、本気で使えばどうなるかは全くわからない。

 ともあれ、無効化された聖歌隊を九重家のシバブー使いが更にシバブーで束縛状態にして、聖者ニキにお礼を言いながら静はため息をついた。

 

「少年十字軍なんて末路は大抵悲惨なんですよ?きちんと歴史を勉強すべきでしたね。」

 

「しかし、問題はこうした「捕虜」ですね……。メシアンだからといちいち殲滅しては面倒くさいことこの上ありませんし……。ここは桜子様がいる『一神教調和派』に輸送して『更生』のために頑張ってもらいますか。『更生』できないのなら……脳缶ニキ様のところでも送りましょうか……」

 

沖縄支部に引き渡してもいいのよ?と言わんばかりの聖者ニキの視線をあえてスルーしながら、静はそう呟いた。

 

*1
アビャゲイルの投下所様から

*2
「【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく」様、102:巌戸台の日常 四

*3
なお現実でマジに発見された模様

*4
「ファッション無惨様のごちゃまぜライフ」様、魚沼TSV ~転生者バリエーション~ 01

*5
「凡庸でありふれた転生者たちの小話」様から。

*6
なおアイデアをパクられたQBニキはブチ切れてそう。




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マカーブルさんからとても綺麗なヴィルトゥオーサのイラストをいただきました!ありがとうございます!!


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