「犠牲者偽装型天使人間」はそ……その発想はなかった!と思わず使わせていただきましたw
「破ッ!!」
「ぬぅうううん!!」
ここは一神教調和派の修練場。そこでは必死になってメルキゼデクと格闘戦を繰り広げている一人の筋肉質なマスクを被っている男が存在した。彼の名は『アタル・ソルジア』*1
一神教プロテスタント系の牧師であると同時にレスラーとして前線で戦う戦力として蟲毒都市横浜で活躍している人物である。*2ここ一神教調和派はカトリックやプロテスタントなどの区別などは存在せず、彼らカトリックやプロテスタントに欠けている悪魔や天使と戦う力を与えるための場所として活躍しているのだ。
メルキゼデクとアタルは修練場のリングの上でがっつり手四つになってぶつかりあっている。
牧師とは思えないほどの筋骨隆々たる鍛え抜かれたその肉体は、レスラーとしてだけではなく、純粋な戦闘に対しても十分な実力を発揮できるほどの肉体だった。お互いに掌を握り合う拮抗状態になりながら、アタルはメルキゼデクに対して話しかけていく。
「サレムの王にしてアブラハムにカバラを預けた存在……メルキゼデク!! まさかそれほどの人物と真正面から戦えるとはな……。光栄の極みだ」
「フッ、口先の賛美など無意味。貴様も戦う者ならば……その技を持って尊敬の念を示すがいい!!」
メルキゼデクは普段の打撃技だけではなく、アタルに対して次々と固め技や投げ技などを繰り出していく。アタルの使用する『プロレス』スキルを磨き、それに対して「ヤコブ神拳」……「ヤコブの手足」スキルを叩き込むためにメルキゼデクが直々にアタルの相手を行っているのだ。*3
「ヤコブ神拳の神髄は打撃技のみに非ず!! 天使との格闘……組打ちを行ったことからなる固め技、投げ技などもヤコブ神拳なり!! 我が戦いを通してその神髄を掴み取れ!!」
その言葉に従い、アタルはメルキゼデクの背後を取ると、自分の両足で相手の両足をフックし、両腕はサーフボードのように相手の両腕を固定し、そのまま回転しながら上空へと高くあがっていきながら、その後急下降して相手を固定しながら床へと叩きつけていく。
「食らえぇええっ!! ヤコブ神拳『ナパーム・ストレッチ』!!」
そのあまりの空気抵抗と大気摩擦により、相手の胸にAの文字が刻まれていく。しかもこれにはサクラコたちから習った『ヤコブ神拳』による『ヤコブの手足』スキルが組み込まれているのだ。
固められたままメルキゼデクはリングの床へと叩きつけられていく。だが、床に叩きつけられたメルキゼデクはピンピンしながら立ち上がってアタルへと助言していく。
「うむ!! 見事!! 見事なり!! 「ヤコブの手足」スキルを覚えたならば天使相手にも十分戦う事はできよう。だが奢るなかれ。貴様のその『プロレス』スキルは一対一の戦いならば優れているが、物量で攻め込まれたらその特性は生かしずらい。それを心に秘めて天使どもと戦うがいい!!」
アタルはこうして桜子やメルキゼデクから「極めれば大天使すらも倒せる」と言われる『ヤコブ神拳』を習い、それを独自に昇華。『アタル版マッスル・スパーク』や『ナパーム・ストレッチ』を繰り出せることに成功したのだ。
カトリックのエクソシストであるロゼット=クリストファーもやってきて鍛えるために調和派の修練場で鍛えている。一神教調和派はカトリックもプロテスタントも差別はなく受け入れている。そのため、ここはカトリックやプロテスタントたちとの情報交換の場にもなっているのだ。
「うーん、向こうは派手ですねぇ……。私もああいう派手な特訓を受けたほうがいいのでしょうか?」
「ほらよそ見しない。しっかりとウンディーネを制御しなさい」
一方、現地民桜子は黒札サクラコから習ったデビルサマナーとしての講習をロゼッタに叩き込んでいる最中である。凄腕のデビルサマナー教官から手ほどきを受けた現地民桜子は同様に凄腕デビルサマナー教官としての教官としての教育も可能だ。ロゼッタには『精霊ウンディーネ(レベル30、真・女神転生Ⅰ)』を与え教育しているところだ。
ウンディーネは、『ディアラハン』『メディアラハン』という極めて優れた回復魔術を覚えているうえに『ジオンガ』まで覚えている。これだけの高位回復呪文が使えるのなら回復役として大活躍できるはずだ。おまけに精霊であるため自我も薄く、制御がかなり簡単というメリットもある。黒札サクラコも始めはそれなりに強くて制御もしやすい精霊を与えることが多いとのことで、桜子もその教えに忠実に従っているのだ。*4(当然の事だが天使系列の悪魔は同士討ちやら何やらの問題で渡す気はない)
さらに彼女には銃使いということで、以前開発した『ラグエル弾(天使を高い確率で混乱状態にする)』や上田銀山*5から出た銀によって作られた天使以外の悪魔用の『銀の弾丸(破魔効果を持つ)』、そして対天使用に魚沼シェルターに存在する「黄泉比良坂」の瘴気が込められた『呪いの弾丸(呪殺効果を持つ)』なども与える。これで後方役としてはばっちりなはずだ。
黒札サクラコから教わった「『信仰の力』を『退魔の力』に変えることができる結界」を発生させる十字架を生産してアタルやロゼッタに渡したり、デビルサマナーであるロゼッタに黒札サクラコからもらった「高性能COMP」を与えて戦力強化などを行っている。
えっ? 穏健派? 知らない子ですね……。(現地民サクラコはメシアン上がりなので、メシア流戦闘術の『聖書の言葉に、力を加える』『力ある讃美歌』とか『聖書の奇跡を部分的に再現』は可能ではあるし教えることもできるが教えることはない)そんな風に話をしていると、牧師服を身に纏ったアタルがメルキゼデクに問いかけてくる。
「……ところで、「ヤコブ神拳」よりもさらに上位の『極・ヤコブ神拳』*6があると風の噂でお聞きしたが……?」
「うむ、あれはなぁ……。(遠い目)黒札様でも高レベルでなければ制御できない高レベル極まりない秘儀だ。*7まずはその技を自らの技にするまで精進せよ」
「で、例の件は大丈夫でしたか?」
「はっ! きちんと『犠牲者偽装型』天使人間の判別は済んでおります!!」
桜子配下のシスターフッドの部下の一人のシスターは敬礼しながら桜子の疑問に答える。彼女はシバブーと特殊性の拘束具で束縛された傷ついた天使人間たちの写真を手渡していく。深く傷ついた天使人間たちをさらに束縛するなど人道的には許されない。だがそれら天使人間たちは特殊な事情があってこうして束縛されているのである。それを見ながら桜子は深くため息をつく。
「全く……。犠牲者に偽装した天使人間を「初音郷」*8に潜り込ませて「初音郷」の位置探知・内部工作を行おうとは……聖者ニキ様が知ったらまたメシア教に対するヘイトが上がりそうですね……」
『犠牲者偽装型天使人間』
これはメシア教たちが新しく開発した極めて質の悪い天使人間たちである。
「初音郷」や沖縄支部は天使人間の犠牲者たちを庇護・治療するという事が多いと聞いたメシア教たちは、わざと犠牲者のふりをした傷ついた天使人間を作り出し、それを「初音郷」に潜り込ませる事で正確な位置・並びに内部破壊工作を行う事を考え付いたらしい。(危うくそれは防ぐことはできたが)
このため、例え傷ついてボロボロの天使人間でもすぐに「初音郷」に送り込むことが不可能になり、必ず十戒システムを通さないといけなくなってしまった。
これにより、善意に付け込まれた形になってしまった沖縄支部並びに「初音郷」の人々はさらにメシアンへのヘイトが増幅し、まともな被害者の傷ついた天使人間が一番割を食ってしまうという形になってしまったのだ。
「ともあれ、偽装型は脳缶ニキ様かKSJ研究所様のところに出荷を……ああ、そんなに行きたいのなら送り届けてあげましょうか? ただし「罪人」認定で……ですね。……しかし彼らも忙しいでしょうから、ほかのところに預けますか」
まあ、別に天使たちが心底恐れる沖縄支部に罪人扱いで送ってもいいのだが、彼らも忙しいしほかのところに送って「資材として活用」してもらうか……と桜子は腕を組んで考え込んでいた。
次に、桜子たちは捕らえられたメシアンたちの少年たち、いわゆる捕らえられて一神教調和派へと連れてこられた『少年十字軍』たちへと向かい合う事になった。そして彼らが手にしていた紙切れのような物を見ながら思わずため息をつく。
「さて、それで少年十字軍ですが……当然のごとく『ヘルズ・クーポン』*9つきですか……。どこからどう見ても使い捨てですね……」
ヘルズ・クーポンを使われる前に捕らえられた形で結果的に命拾いした彼らだが、それでもそれを知る由もなく、彼らは自分たちがいかに選ばれた民であるかという戯言をひたすら壊れたレコードのように再生している。自分たちが単なる鉄砲玉でしかない事実を知らずにそんなことを言っている彼らの姿は哀れを通り越して滑稽そのものだった。
「……サンダルフォン様」
桜子は、黒札サクラコによって与えられたサンダルフォンを召喚して、その神威で彼らを黙らせながらも、にこりと微笑んで彼らに告げた。
「さて、それでは説法のお時間です。まずは24時間ぶっつけ説法といきますか」
そして、表面上の選民知識しか植え付けられていない彼らは綺麗に心がへし折られ、何もかも失って追い詰められた空白の中にきちんとした一神教の教義を叩き込んでいく。神に背いている自らの罪を認め、神に立ち返る個人的な信仰体験を学ぶ、いわゆる「回心」である。……まるでカルト集団のマインドコントロールではあるが、それでもマリンカリンやら洗脳やら精神を魔術でいじられるよりはよほどいい。ここで心が折れなかったら「処分」されてしまうため、それよりは人道的である、と元メシアンである桜子は一人でも多く脱メシアン化させたいのである。
「それにしても……。これだと一般覚醒人たちがメシアンたちに一矢報いるために「ヘルズ・クーポン」を使用する事もありそうですね……。そんなものに頼らないようにもっと安全な薬を作ったほうがいいのでは? とガイア連合には提案してみた方がいいかもしれません。」
過激派の間ではこの薬をさらに強化した薬『イグナイター』*10などの開発も行っているらしい、と桜子は元メシアンの特殊な情報網で聞きつけていた。
(薬にはあまり詳しくないのですが……ヘルズ・クーポンを改良して副作用をできるだけ無くして、魂を燃焼させて寿命を削る代わりに一時的にレベルを上げるような薬……『フルムーンライト』*11のような薬を作れないか提案してみましょうか。それなら追い詰められてヘルズ・クーポンを使うよりはマシなはず……多分。)
ともあれ、これら「ヘルズ・クーポン」の生産拠点は今のうちから一つでも多く潰しておく必要がある。桜子はメルキゼデクや一神教調和派のシスターフッド、コハルなどを動かして生産拠点を叩くための行動を起こした。
○余談
「こらー!貴様らまーた子供たちに夕食前に腹一杯菓子を食わせおってからにー!!」
「ゲッ!メルキゼテク!!バレてしまったか!」
「よし!逃げるぞ!主にコイツを盾にして」
「ちょ!酷すぎません!?」
メルキゼデクと三羽烏はこんなこと延々とやってそうw