魚沼シェルターの存在する総合オカルト学園『鳥煮亭総合学園』
その中には様々な学科が存在し、通常の学生だけでなく、老若男女問わず色々な人々がオカルトや霊能力などの勉強に来ており、自らの霊能を覚醒・あるいは自分の霊能をより高めるために努力を行っている。終末後の世界では霊能こそが人権そのものであり、現地民たちは例え戦闘用の霊能でなくても、自分の個性を生かして農業・結界維持・オカルト装備生産・霊薬生産・霊薬の素材培養など様々な分野で活躍して自分たちの食い扶持を稼ぐために努力を行っているのだ。
(なお余談にはなるが、桜子も対メシア教対策講義を開いており、沖縄支部の用意した(トラウマにならない程度の)メシア教の悪行の映像を元にメシア教の悪質なやり方やその対策などを現地民に教えたりしている)
様々な学部の中には神々を称え、あるいはMAG操作によって土地のMAGを鎮めるための「巫女」を育成するために活動する『アイドル巫女科』も存在している。とはいえ、黒札ではない現地民の女性たちに、そんな超人的なMAG操作は難しい。また当然のことながらルックスやスタイルなども重要視されるということで、アイドル志望よろしく非常に厳しい学科である。
そして、そんな学園内部に「外」から二人の絶世の美女とも言えるような容貌のお互いそっくりな双子がやってきて挨拶を行う。だが、それも現地民たちからしたらまるでジャミングをかけられているように姿どころか声すらはっきり認知できない状況だ。これは彼女たちが『反ミーム』の効果を持つ認識阻害のある装備を身にまとっているからである。
「こんにちわー」
「こんにちわー。今日も教師をやりに来ました。よろしくお願いします。」
それは、『アイドル巫女科』にやって来たのは人魚ネキの分身体である『歌』と『舞』である。黒札の分身であるスライム(仮)には普通に見ることはできるが、LVの低い現地民たちにはその姿も声もジャミングがかかっているようにしか見えまい。
彼女たちはガイアレベル60にも匹敵し、『全門耐性』『物理無効』『肉体状態異常無効』の装備でガチガチに固められているため、並大抵の人間や悪魔では手出しできないほど強い。
だがそれでも、彼女たちが出勤する際には学園内の警備レベルはガチガチに高くしている。
大事な人魚ネキから預かった子たちに傷一つでもついたら人魚ネキが怒りかねないと凍矢は警戒しているため、出来る限り厳重にしているのだ。そして、そんな彼女たちを出迎えるのは、凍矢の分身であるスライム(仮)である。
「ぷにっ! (ようこそ! いつも来てくれてありがと。人魚ネキの庇護下のシェルターに食料送っておくわ)」
少し前、人魚ネキは死蔵していたシェルターたちに避難民たちが自然に集まってしまい、なし崩し的に人魚ネキはシェルター運営を行うようになっていた。*1基本的に人魚ネキはシェルター住民に関してはあまり干渉しないし興味もないようだが、人魚ネキに対して色々懇願されるのも困るだろう、と歌と舞を送ってくれた礼にキクリ米や様々なオカルトで培養した食糧などをシェルター住民に供給しているのである。
「ぷに……。(ともあれ彼女たちのお陰で志望者が山のように増えたんだよな……。何なら外様神の信者まで来てるし)」
以前歌と舞が人魚ネキとリンクして「芸能神の権能を用いた同調動作」……権能範囲内の人間全員に同じ動きをさせて連動して巫女たちに直接舞いを教えたことで、その評判からさらに様々な神々から注目されるようになってしまった。*2「失われた歌と舞」や「神楽舞」など大和神のみならず、外様神でも喉から手が出るほどほしい物だ。大和神の氏子やイズンの氏子たちも優先的には入れてはいるが、競争率の高さがさらに跳ね上がったのは必然といえるだろう。
……そして当然のことながらそれを聞き付けた外様神の信者もこの学園に入学しようと企んでおり、彼らの目的は歌や舞たちの動向、あるいは大量にこの学校に黒札が潜伏しているという噂を聞き付けて彼らの動向を探る事であり、「ここは学校だぞ?真面目に学べ」と凍矢が苦言を呈するほどである。それに対して、スライム(仮)きちんと入学テストを受けさせて、霊的契約を結ばせて何かあったらすぐアウトになるように警戒はしている。(外様神のアレっぷりは有名なため)
……ちなみにさらに性質の悪い外様神の中には「彼女たちを攫えば一石二鳥!! 攫ってこき使えばいいし人質として脅せばいい!!」と考える輩も存在し、氏子の生徒たちに指示を出したりする事もあるが、大体生徒として入学する際の霊的契約によりアウトを食らって無効化されて取り押さえ……何ならガイア連合に連絡して外様神ごと『滅っ!』されることもあるのは秘密である。
ともあれ、歌と舞たちが生徒たちに「神楽舞」や神を称える歌などを教えながら生徒たちの才能を引き出していくが、歌や踊りを教える先生は彼女たちだけではない。当然他の先生役も存在する。
「ふふん! ともあれ、私たちだって負けないわ! ここで私たちの権威を見せて信者を増やすのよ!!」
そう言うのは、シキガミ義体を用意して分霊を内蔵している『イシュタル』こと『花海 咲季』である。*3
上田鉱山*4を諦めた彼女たちであったが、それでも「何か一枚噛ませて!!」とうるさい上に「アイドル巫女科」を設立した事を聞きつけて「それなら相性のいい私たちが!!」としつこかったので、「アイドル巫女科」へと配置したのである。
そして、一方のビーナスもアイドル巫女科などという自分の美の権能が生かせる美味しいポジションを逃すはずもなく、学園アイドルマスターのキャラである『十王 星南』*5の義体を用意して教師役を行っていた。
ビーナス……ローマ神話の愛と美の女神ウェヌスは、愛と美の女神として美と関連があるアイドル巫女科とは相性がかなり良い。イシュタルも言わずもがな、である。化粧の仕方、美しく見えるポージング、ルックスやスタイルがよくなる「美」の加護(代償を払ったり、見どころのある生徒のみ)を与えたりして生徒たちの才能を引き出している。
(まさか「失われた歌や踊り」を再現できる黒札の使い魔たちがここにくるなんて……最大のチャンス!! 古代メソポタミアの失われた歌や踊りを再現してもらうのよ!!……まあ人魚ネキ様は怖いので、きちんと報酬を払って正式な手続きを通して、歌や舞に依頼するのがベストかしら?)*6
(とはいえ、神嫌いの黒札の使い魔である彼女たちに下手に小細工やら丸め込むやら「親しくなったから頼むよ~」的な交渉は下手。きちんと報酬を用意して正式な申し込みを……ですね。彼女たちに人魚ネキ様に注意すべきことを聞くぐらいなら問題はない……はず)
とはいうものの、外様神である彼女たちは自らの忠誠を証明するために、同じく外様神の信者の悪干渉から夢や歌を防衛する任務も霊的契約を結んで行っている。外様神の生徒たちが歌や舞たちに干渉しようとしているのを防いだり、何ならそのまま生徒たちを「魅了」で無効化しながら密かに二人を守る仕事もしている。(ついでに魅了した信者を保護……もとい、溢れる美とカリスマで信仰NTRしていたりしている。)これは凍矢の信頼を得るためでもあるし、歌や舞からの信頼を得たいからというのもある。
「む、何か企んでますか?」
「悪いこと企んでますか?」
「失敬ね! (悪い事は)企んでいないわよ!!」*7
「そうそう。(悪い事は)企んでいませんわよ?*8さあ、生徒たちの授業頑張りましょう!!」
シキガミクリエイター科。*9
そこは文字通り現地民たちがシキガミを作り上げようと試みている学科である。
……だが、当然のことながら現地民である彼らに高位シキガミをいきなり作れ、と言っても無理がある。
現在はキョウジが一反木綿式神を見て作り上げた『超劣化式神』の術式を元にしてDLV5の一反木綿式神の生産を行っている。そして次なる目標は『DLV20(大体ガイアLV6)』の『妖鬼シキガミ(一反木綿)』の安定生産を目標として努力している所である。(大体LV1かLV10の生徒が大半。LV10~20の生徒は上澄み層)
「よし! 今回の術式はうまくいった! これなら行けるはず……!!」
死ぬほどの訓練によって、最近では彼らも『DLV20』の『妖鬼シキガミ(一反木綿)』の生産もできるようになってきたところだ。現状はこのDLV20シキガミの安定大量生産、そしてさらなる課題目標は『DLV66(ガイアLV20)の大型シキガミ製造』である。そして、今シキガミクリエイター科内部で流行しているのは、自分たちで作り上げた超簡易シキガミパーツの一部を自分たちの肉体に埋め込む技術である。
「ふっふっふ……見よ! 我が魔眼を! 簡易シキガミ移植手術とか言われたら受けない方が馬鹿だよなぁ!!」
当然、黒札たちのシキガミパーツではないので、上限突破など不可能だが、それでも現地民である彼らによっては極めて便利な技術である。例えば超簡易シキガミパーツの眼球に「アギ」のスキルカードを入れて『燃焼の魔眼』やら「シバブー」やら入れて『束縛の魔眼』やらを作り出したり、指を超簡易シキガミパーツ&エイハのスキルカードを入れて『霊丸』などを気取っていたりする。レベル上限を突破こそしないものの、彼らにとってはかなり便利なため志望者は多い。将来的にDLV66(ガイアLV20)の人型式神ができたら脳以外全身移植するなどと口走る強者もいるほどである。
「ぷに(一応言っておくけど、【写輪眼】なんて入れたら君たちの眼球や頭どころか体パーン! するから気を付けるように。あくまで自分のレベルに見合った魔眼にしなさい)」
そのスライム(仮)の言葉に、生徒たちははーい、と返事をする。魔眼には探求ネキが開発した【写輪眼】を付与する体質追加術式などもあるが、それでもレベル10……DLV33でなければ入れられない魔眼である。彼らの力量でそんなものを入れたら眼球や頭がパーン!しかねないので入れてもいいけどきちんと自分たちの力量にあった魔眼にしろ、とスライム(仮)は皆に忠告する。
「ふっ、確かに「燃焼の魔眼(アギを放てる)」は下手すればあちこち燃やしかねない危険性がある。だが! 俺の「観察の魔眼」は簡易アナライズ能力!! これなら見るだけで相手の実力を見抜くことができる!!」
そんな中、生徒の一人は誤射の危険がある「燃焼の魔眼」ではなく簡易アナライズ能力を持った自らの魔眼を堂々と自慢する。確かにアイテムなしで即座にアナライズできる魔眼は極めて便利ではあるが、それでも欠点は存在する。それはあまりに高位の悪魔やら高位黒札やらをアナライズした結果、彼らの超簡易シキガミパーツの眼球では耐え切れずに眼球や脳がパーン!してしまう危険性である。そのため片目だけ、いざとなったら目を閉じてシャットアウトしろ、とスライム(仮)は口を酸っぱくして彼らに教えている。
「ぷにぃ……。(まあ……あんまりお勧めできないんだけど……。高位悪魔や高位黒札とか見たら情報量で眼球や脳パーン! もありえるから、頭痛や血涙が流れだしたら即目を閉じなさい)」
そんな風に『超劣化式神』の作成が上手くいった彼らには『劣化式神』作成の課題が与えられるが、彼らのやっている事はもう一つある。それは『生体式神パーツ培養』である。
細胞分裂を促す特殊な液体に生体式神パーツ……この場合はツチザメシキガミパーツを浸し、特殊なディアやリディアをかける事によって式神パーツを培養していく。こちらはどちらかと言えば回復魔術に長けた人間たちが配属されており、その中にはセフィロスニキそっくり……あるいはセフィロスニキの女性体である「セルベリア」を従えた現地民たちが必死で頑張っていた。実際、自分たちでシキガミパーツを作り出すよりも、すでに存在しているシキガミパーツを培養したほうが手軽なため、課題である『DLV66(ガイアLV20)の大型シキガミ製造』に一番近いのはこの部門である、と皆から期待されている。
そしてその中の一人が『横島忠夫』である。わりと上澄み(LV20代)であり彼自身の特殊霊能スキルがあるため、(欲望に塗れてはいるが)ほかの生徒から一目置かれている生徒である。そして、そんな彼に対して、シキガミクリエイター科の加入褒美として与えられたセフィロスニキの女性体シキガミ……『セルベリア』が横島の背中に胸を押し付けながら耳元で囁いていく。
「横島。私はお前に期待している。お前ならこの程度のノルマは軽々とこなせるだろう。ノルマをこなしたらきちんとご褒美を……な」
「うぉおおおおおお!! 尻!! 乳!! ふとももぉおおおお!! 待ってろ今すぐにノルマのシキガミパーツ培養してやらぁ!! 俺ならやれる! 俺ならできる!! いくぞぉ!!」
そう言って横島は自分の霊力……MAGを振り絞って式神パーツ作りを再開し始めた。現状では自然と『超劣化式神』作成班と『生体式神パーツ』培養班と二種類に分かれているが、彼はその両方をこなせるシキガミクリエイター課期待の星である。燃え上がる自らの欲望からMAGを活性化させ、『文珠』を作り出せる。その『文珠』は現地民であるため威力こそ低いがアギ・ブフ・ディアなど様々な効果を発動できる万能選手だ。横島は『文珠』を二つ使用して『培』『養』という文字列を作り、その霊力をシリンダーの中の培養シキガミパーツへと叩き込んでいく。それと同時に「リディア」の効果が発動し、みるみるうちにボコボコと音を立ててシキガミパーツの細胞が活性化されパーツがみるみるうちに膨らんでいくのを見て、生徒たちはおお!と歓声を上げる。
「ぷに……。(能力は優秀なんだよな……能力は……。)」
「いや、実際優秀だぞ? ……現地民にしてはな。現在はシキガミパーツ培養可能だが、超簡易シキガミ作成も可能、その内簡易シキガミ作成すら可能になるかもしれん。む?……ああ、そんな心配そうな顔をするな。きちんと私たちの好感度が本体に伝わらないよう霊的なラインは遮断されている。いわば本霊通信はほぼ完全にシャットアウトされているから私たちの感情が本体に伝わることはない。」
セフィロスニキは自分の肖像権フリーをしてシキガミクリエイター科の生徒たち多数に対して自分の分身ともいえるシキガミ製造を許可したが、本霊通信の要領でそれら分霊シキガミの好感度が一気にセフィロスニキに流れ込んできたら彼自身がエライ事になってしまう。そのため、ほぼ完全に本霊通信を遮断して、好感度が逆流しないように設定されているのだ。それなら安心かな……と思っている中、そんな中でもひときわ異質な存在である女性が目に入った。
それはシキガミクリエイター科の最大課題である『DLV66の大型シキガミ製造』……『ガイアLV20のツチザメシキガミ』をぽんぽんと複製・生産している黒髪で小柄の女性である。その信じられない光景に、周囲のシキガミクリエイター科の皆は彼女を恐れの目で持って見守っていた。
「うーん……。ここはこうした方がいいかなぁ……。あ、ここはこうしてと……。これならLV20のシキガミなら簡単に大量生産できるよ! ブヘヘヘ……。そうすればセフィロスニキ様のシキガミを……デヘヘ……」
「ぷにぃ……。(なにやっとんねんもこっちネキ……)」
そう、それは同じ黒札の一人である「もこっち」こと『黒木智子』*10である。現地民であるシキガミクリエイター課のみんなと異なり、高位の黒札ならばこれぐらいの式神量産は別に難しくはない。むしろなんで黒札が生徒やってんねん、と突っ込みたくなる状況だった。彼女の本霊は『ヨモツシコメ』であり、魚沼シェルターに存在する異界『黄泉比良坂』と非常に相性が良い。彼女からすればここはかなり住み心地の良い場所なのだろうし、黄泉比良坂を通して黄泉から魔力を吸い上げてシキガミやらアイテムやらの大量生産も可能だろう。だがそんな彼女が好き好んで「生徒」をやっているのを見て、スライム(仮)が呆れ顔になるのも当然だった。
「すいません!黒札なのにシキガミ学科入学希望ですいません!でもセフィロスニキ様☆に一目ぼれしちゃったんです!!!セフィロスニキ様☆の肖像権がフリーの今こそ大チャンス!!この機を逃す手はない!!」
その智子の声を聴きながら、スライム(仮)と彼女のシキガミである執事セバスチャンは、揃ってはぁ~……と呆れたような深いため息をつく。黒札なのに何やってんだよ……と愚痴りたくなるが、実際純魔であり極めて優秀な彼女がシキガミクリエイター科に入ってくれるのは、シキガミ生産的にもとても良い事ではある。だが、せっかくの黒札を生徒にしておくなどというもったいない事を放置しておくことは出来ない。そこでスライム(仮)は一つの提案をした。
「ぷに! (ええいもう生徒じゃなくてシキガミクリエイター科の先生になってクレメンス!! それぐらいできるだろ!?)」
セフィロスニキの分身シキガミゲットの基本的な要件は「シキガミクリエイター学科の定員が満員になるまで」だがこれを別に「シキガミクリエイター科の先生になること」に変えてもKSJ研究所からは文句はでないはずである。だが、こと先生となるともこっちネキは途端にめんどくさがりだしてしまった。
「えぇ……。めんどくさいなぁ……。まあ教師としての知識はありますけど……。実際やれるかは……」
「ぷにゃ。(ところで……シキガミクリエイター科でもそれなりの美形はいるけど……まあ先生と生徒の自由恋愛はウチは気にしないし……美形の生徒を優遇するのも大目に見るから生徒ハーレムも……。)」
「やります!!先生やれます!!やらせてください!!」
自分のシキガミに加えてセフィロスニキのシキガミ、さらに大勢の女性たちを保護してキャッキャウフフしてるのに、さらに美形生徒に慕われたいとかいう欲の深さに、全くもーほんまにこいつは……とスライム(仮)は呆れたように深いため息をつく。もう美形だけど才能があんまりないシキガミクリエイター科の生徒押し付けたろ、これでお互いウィンウインやな!!とやけくそのような考えまで出てくる始末である。*11
ともあれ、こうしてシキガミクリエイター科の先生(臨時講師で山梨支部からちょこちょこ通ってくる感じ)も出来て、どうやら軌道に乗りつつあるとスライム(仮)はほっと一息ついたのだった。
「隣の席の優秀だけどムカつく生徒が次来たら先生になっていた……。どういうことなの……?」
なお、隣にいた優秀な生徒がいきなり先生になっていて横島が困惑していたのは秘密である。
「歌と舞はガチガチにガードするぞ!人魚ネキ怒ると怖いし!」
「え?もこっち?自分で何とかできるでしょ?頑張ってね。」
大体これぐらい差があります。