異界【黄泉比良坂】
すでに二重に封印されたその異界は、ガキが出没する以外はほぼ安全といえる異界だった。
そして、その異界に数人の人間が滞在していた。
一人は、黒騎士【バッシュ・ザ・ブラックナイト】のデモニカを纏って、高級アガシオンを傍に侍られせて湾曲状の双剣を手にした静。
そして後ろの三人は、簡易量産試作型デモニカ【ベルリン】手にAK-47カラシニコフと、対魔武器である【旗槍ランス】や【けん玉フレイル】を手にした覚醒した部下である。さらに予備武器として各種ストーン系も装備している。*1
いくらなんでも(武装的に)過保護すぎでは?と式神の破裂の人形も突っ込んでいたが、低レベルとはいえ、貴重な手駒を保護するためなら(なお彼の借金はさらに増えた)
「ガキ五体接近!フォーメーションを崩さないように!
私が前線に立って敵を食い止めます!!」
「り、了解ッ!!」
静が纏った黒騎士は、手にした湾曲状の剣を振るうと敵に衝撃破を叩き込む。
さらにもう片手の剣をガキに投げると、その湾曲状の剣……というかブーメランは回転しながらガキを切り裂き、そのまま黒騎士の手の中へと戻ってくる。
これはFSSで出てきた武装「バル・バラ」である。
近接格闘戦もこなせ、しかも中距離に対しても攻撃を行うことができる優れものだ。
それに怯んだガキに対して、アガシオンの魔術が叩き込まれ、ガキが混乱状態に陥る。
「今だ!撃て!」
その混乱に乗じて、後方部隊は手にした銃、AK-47カラシニコフの一斉射撃をガキへと叩き込む。
これはガイア連合で銃身をオカルト加工して作られた要は【ガイア銃】である。
ガイア連合で作られる退魔銃は、猟銃やガスガンなどを加工して製造されることも多いが、
AK-47のような簡易で作りやすい銃ならば、という事で製造が開始されているのである。
銃弾は【ガイア弾】ではなく通常弾ではあるが、それでも十分に通用する威力である。
銃身のオカルト素材から込められた霊力は、ただの弾丸であろうともガキの肉体を引き裂いていった。
「よし!止めの【ザン】【ザン】ッ!!」
その混乱に乗じて、黒騎士の刃から放たれる衝撃波によってガキはついに消滅していった。
その消滅を見て、AK-47を構えた静の配下は感動の声を上げる。
「おお!まさか銃で悪魔を退治できるとは……!!何度見ても信じられん!!」
「さすがガイア連合の武装!そしてそれを持ち込んでくださった凍矢様よ!!」
今まで悪魔と直接戦うなど全く考える事もできないほどのほぼ一般人でしかなった彼ら。
それが直接悪魔と戦うことができるなど、到底信じられない出来事だった。
自らの血を分け与える事によって覚醒を誘発させるよう努力し、さらに悪魔に対して物理的な攻撃を与えられる武器、そして簡易量産試作型とはいえデモニカを与えてくれるとは、彼らにとって、まさに救いの神そのものだ。
そして、この周辺の異界は、デモニカを纏った静がリーダーとなり、彼女の覚醒した配下たちが実働部隊として周辺の異界探索などを行っている。
そして、それらの異界の情報を凍矢に流し、凍矢が異界を潰すというローテーションである。
これによって魚沼地方の村々に沸く異界を片っ端から潰しにかかっている彼女たちは「黒騎士部隊」*2として周囲の霊能組織から畏怖と敬意の目で見られている。
「運よく黒札のツテがあるだけ」「黒札の脛を齧ってるだけ」などのやっかみもあるが、実際に功績を上げている上に、魚沼神社の石油利権を手にして、大きく経済的にも発展している彼女たち「九重家」に足を舐める勢いで媚を売ってくる霊能組織は多い。
「よろしい、良いですか?皆さん。
我々がここにこうしていられるのは凍矢様のおかげです。
あの方が不愉快にならないように我々は最大限努力しなければなりません。
自分たちの事だけ考え、種乞いなどもっての他。
他の勢力がもしそのような事をしてきたときは……分かりますね?」
「はっ!了解しました!!」
「全ては凍矢様のために!」
異界を攻略したものの、静の話だけでは半信半疑だった彼ら「九重家」の人々も凍矢の度重なる異界攻略やガイア連合との繋がりによる様々なオカルト武装やデモニカなどを見て、全面に彼に協力することにしたのである。
「九重家」の昔から積み重ねた信頼、そして最近の石油利権での金、さらに黒札である凍矢の強さの三本柱によって、彼らは政治家たちにも自分の意見を通せるほどの発言権を手に入れていた。
それにより、魚沼市のシェルター建設、大規模結界構築、魚沼全体に大小様々なシェルターを準備し、魚沼市の都市計画に食い込み、大規模結界を構築、各種の街や村、街道なども結界で覆う手助けをしている
いまや「九重家」は魚沼近隣の霊能組織のまとめ役といってもいい。
だが、それに対して黒札への種乞いなども仕掛けてくる霊能組織もあるが、全て彼女たちによって叩き潰されている。
下手に種乞いするよりも、凍矢の信頼を得て、彼の手足となって動いた方が遥かに効率的だ、と考えているのである。
余談ではあるが、凍矢の家や彼の両親の周辺は彼ら、九重家の手によって厳重な警備が敷かれており、他の霊能組織が助けを求めて、あるいは種乞いの土下座しようとするのを全て排除している。
「しかし異界……【黄泉比良坂】を修行場にするなど聞いたときは流石に正気かと思いましたが……。まさか実現するとは。」
「【終末】などが来るとは信じられないですが、あの方の実力は事実……。
ガイア連合の力を恩恵を我々に与えてくださった以上、何としても役に立てねばならぬ。
我らの命など、そのためになら安いものよ。」
黒札の実力、そして彼がいるからこそガイア連合からのつながりとその恩恵を受ける事を自覚している九重家の人々は、半ば凍矢の狂信者と言っても過言ではなかった。
しかも、身内である両親のボディーガードを依頼したとは、もはや完全に向こうからの信頼を獲得しているに違いない。
彼が望めば躊躇いなく自らの命を捧げる。彼ならばこの地を守護してくれると狂信的に信じているのだ。
そんな彼らに対して、デモニカを纏ったままの静は声をかける。
「よし、では一旦撤収。【黄泉比良坂】内にあるコメの苗をチェックして、コメができているようなら刈り取って特別に分けておく事。これを加工すれば、呪怨効果のある【ノロイ米】ができるのではないか、と凍矢様はおっしゃっています。誤飲しないように黒く塗料で塗って苦味をつけておきなさい。」
これは【黄泉比良坂】で作られた米を食べると【ヨモツヘグイ】になるのではないか、という意見を受けて研究中のオカルトアイテムである。
呪怨の力があるその米を特殊な加工を施して、【ムド】の効果を付与し、【施餓鬼米】とは対極の効果のある【ノロイ米】を作成できないか現在研究中なのである。
静が言っているように、誤飲・普通の米と混じらないように塗料で黒く塗られ、苦みをつけてあるその米は実用化されればこの地方名産のオカルトアイテムになるはずである。
「了解しました。しかし、まさか生身で【黄泉比良坂】に足を踏み込むとは……。いやはやぞっとしませんな。」
「しかも、あの方はこの異界の主である【地母神 キクリヒメ】と盟約を結んだと聞く。
この新潟の地を守護する新潟総鎮守であるキクリヒメ様と盟約を結ばれたとは……。」
「まさか人の身で神霊と会話できることができるとは……。やはり、あの方は我々が守護らねばならぬ。」
「……所でこれは噂ではあるのだが、ご両親を拉致しようとしていた輩、判明したようだぞ。
とある名家が黒幕らしい。まだ確認中だが。」
「……では、首謀者どもは”失踪”していただきましょう。凍矢様にはご内密のままに。あの方に精神的負担をかけるわけにはいきませんから。」
その静の言葉に、その場にいた九重家の者たち皆頷いた。
凍矢「いい感じで地元名家と関係を結べているな!ヨシ!せっかく育った戦力が失われると困るからガンガン課金するやで~。(なお借金)」
九重家「我々が守護らねばならぬ。(鋼の決意)」