【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち   作:名無しのレイ

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救護:困っている人や悩んでいる人などを、助け、保護すること。

今回はタマヤさんから許可をいただきました。

・マカーブルさんから救護ネキのイラストをいただきました!
どうもありがとうございました!!


魚沼支部医療部『救護騎士団(仮称)』

 ──―山梨支部医療部。

 山梨支部の中でも重要な拠点である医療部の中、一人の少女が詰まらなそうに歩いていた。

 彼女の名前は『幼女ネキ』*1。少女でありながらその豪快さと自らの独自の信念を持ち、それに添わない行動をした人間は同じ黒札であろうと殴りに行くある意味『暴君』とも言える女性である。

 デビルシフターでもある彼女は、定期的な健康診断のためこの医療部へと訪れて健康診断を受けるため、自分の嫁たちと離れて行動しているのだ。だが、毎回毎回健康診断に出るのは正直面倒くさい。必要性は理解してるけどそれはそれとしてやってる間遊べもしないしお菓子とかも食べられないので好きではない。そこで、彼女の中でとある考えがむくむくと育っていった。

 

「ううむ……。しかし、こう毎回律儀に健康診断に出るのも面倒くさいな……。一度ぐらいサボっても……いいのでは!?」

 

 デビルシフターは健康診断が必要な事は彼女も理解している。だが毎回毎回律儀に出る必要などないのでは? という考えが出るのは不思議ではあるまい。しかも運の悪い事に普段は常に彼女の傍にいる嫁たちも存在していなかったのだ。彼女たちがいればストッパーとなってくれただろうが、久しぶりに一人だけになった彼女は、一人の自由を楽しもうと医療部近辺からこっそりと脱出しようとしていた。

 

「救護~」

 

「む?」

 

 む? とどこからか聞こえてきた女性の声に、こっそりと逃げ出そうとしていた幼女ネキは思わず足を止めた。

 それはどこか彼女にとって不吉な響きを持った声だったからだ。しかもその声だけでなく、何やら破壊音や振動音もこちらに対して真っすぐ直線で向かってくるのが、優れた直観を持つ幼女ネキには感じられた。

 

「救護ぉおお……」

 

「ま、まさか……」

 

「救護ォオオオオオオ!!!」

 

 轟音と共に星霊神社の医療部周辺の壁をブチ破りながら破片と共に現れた白衣をモチーフにした霊衣を纏っているスカート姿の可憐な女性。水色の髪をお下げにして、背中に青色の翼、そしてその衣装からまさに「可憐」を絵に描いたような美少女ではあるが、『絶対不壊』の概念を込めたライオットシールドに象徴されるように、その「救護」という鋼の信念を心に秘めた姿は、まさに鋼鉄で作られた鋼の信念を連想させる出で立ちだった。

 四角いライオットシールドをふんぬ! と床に突き刺した*2彼女は、それに手を置きつつ、威風堂々と幼女ネキに対して胸を張って宣言する。ブルーアーカイブのキャラ『蒼森ミネ』そっくりの姿をした彼女はガイア連合医療部担当であり、フェイスレスニキやブラックジャックニキたちと一緒に黒札たちの医療に当たっている『救護ネキ』である。

 

「幼女ネキ!! まさか健康診断をサボるとは……。特にデビルシフターである貴女は健康診断が大事だと自覚しているはず!! 私は悲しいです!! これは……相当”強度の高い救護”が必要なようですね!!」

 

 救護(狂気)バフが乗っている救護ネキの力は、幼女ネキと互角に殴り……もとい、渡り合えるほどの力に匹敵する。彼女にとって「銃を使うことは手加減」なのである。健康診断をさぼりがちな問題児たちに対して無理矢理力づくで健康診断を受けさせたり治療させたりする救護ネキは、まさに畏怖の象徴である。

 

「げえっ! 救護ネキッ!? ど、どうして……。私はいまサボろうかな? と思ったのに駆けつけるの早すぎだろ!?」

 

「問答無用ッ!! 救護仕ります!! チェスト救護ッ!! *3

 

 幼女ネキを捕えようと、救護ネキは床を破壊しながら跳躍して幼女ネキを捕えようとする。幼女ネキほど強者ではさすがの彼女も手加減はできないのだ。いや、幼女ネキと互角と殴り合いができる救護ネキが看護関係なのに頭がおかしいと言わざるを得ないのか……ともあれ、両者とも手加減ができないほど本気を出さざるを得ない状況だった。ともあれ、ここで捕まる訳にはいかない、と幼女ネキはライオットシールドに蹴りを入れて距離を取ると、そのまま自身の得意技である「螺旋丸」を牽制代わりに救護ネキに向かって乱打する。

 

「救護救護救護救護ォオオッ!!」

 

 幼女ネキが牽制に放ってくる数十発の螺旋丸を手にしたライオットシールドによるシールドバッシュ乱打によりオラオラオラ!! と全て叩き落して轟音と共に消滅させていく。幼女ネキの螺旋丸を真正面から受け止めて傷一つつかないライオットシールドもそれを行ったミネの猛攻に、さすがの彼女も驚きを隠せなかった。

 

「ええい! 私の螺旋丸をまともに受けて傷一つついていないとか何で出来てるんだその盾!!」

 

「この盾は私の信念と誇りの象徴!! そうそう柔にはできていません!!」

 

「絶対不壊」という概念が込められたライオットシールドは、幼女ネキの螺旋丸を弾き返して無効化できるほど頑丈ではあるが、当然それ以上の概念が叩きつけられれば必然的に壊れてしまうので、無敵ではない。それを見て、幼女ネキは跳躍して自らの拳を直接叩き込もうとするが、教護ネキも一直線に突っ込んでくる幼女ネキの拳を、ライオットシールドを突き出して真正面から受け止める形になる。

 

「救護ォオオオオオオッ!!」

 

 真正面からぶつかり合う拳と盾。だが救護ネキの盾はいかに幼女ネキでも破壊できずその強靭さは、幼女ネキの拳を痺れさせるほどだ。幼女ネキはいてて……と盾とぶつかり合った自分の手を振りながら顔をしかめる。

 

「いてて……だから何で出来ているんだその盾は! ええい! これ以上付きまとわれてたまるか!!」

 

 幼女ネキは自らの小柄さとその機動性を生かして、高速移動で救護ネキの追跡を巻こうとする幼女ネキ。だが、それに対して救護ネキの出した判断は『最短の一直線で進む』である。

 ターミネーターのごとく見事な疾走を行いながら、立ち塞がる壁に対しては、ライオットシールドを構えて脚部から凄まじい跳躍力で前に突き進む彼女はまさに「人間砲弾」とでも言わんばかりである。ガチガチの多重結界で防衛されている星霊神社医療部周辺の壁という壁を轟音と共にブチ抜きながら、ただ一直線に進撃していく救護ネキの姿はまさに暴れまわる暴走列車そのものだった。

 

「うわぁあああああ!! 大悪魔の襲撃かぁあああ!?」

 

「た、助けてぇえええええ!!!」

 

「救護波*4って何!? いや本当に何!? 何なの!? 怖いよぉっ!!」*5

 

 その破壊に巻き込まれかけている黒札たちに対して、(自分が巻き散らした)破片を防御したり、怪我を負ってしまった黒札たちに対してディアラハンをかけて傷を回復させながら、茫然としている黒札たちを他所に、救護ネキはあらゆる物を粉砕しながら、ただ一直線に突き進む彼女は、まさに破壊の権化だった。

(なお全てきっちりと回復呪文をかけまくっているので怪我人はいない。……怪我人は)

 

 そんな中、彼女が壁をブチ抜いた先はベッドが存在している「休憩室」だったが、壁が破壊された轟音と共にベッドで休んでいた一人の男性が思わず飛び起きる。

 彼の名前は『漢方ニキ』*6本霊が神農の上位勢であり、医療班の薬学チームのエースとして活躍している彼は、本霊が神農であるため、体内で濃縮された薬効のせいで中毒……つまり多大な毒素を貯めこんでしまうという特質を持っている。普段は上がったレベルやタバコに似た中和剤で何とかしているが、あまりに体内に蓄積されすぎた際には、霊的透析を受けて体内を中和するために山梨支部の医療部へと足を運ぶ事もある。今回はそのために休んでいたところに救護ネキの暴走に巻き込まれたのである。

 

「むっ! 漢方ニキ! チェスト救護ッ!! 

我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)』ッ!」*7

 

「ぐああああっ!!」

 

 ミネは漢方ニキを見た瞬間、問答無用で自分の権能『我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ』を叩き込んだ。巨大な半透明の看護師が大剣を振り上げ、その刃を漢方ニキに振り下ろされる。その刃が叩き込まれた瞬間、漢方ニキの体内に溜め込まれた毒素は一瞬のうちに浄化された。

 我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)。

 これはあらゆる毒素・病気・怪我などを治療・浄化する「絶対安全圏」を作り出し、効果範囲内のあらゆる毒性と攻撃性は無視されるという権能である。これによって漢方ニキの体内に蓄積された薬効は、薬効ではなく『毒性』と判断されて浄化されたのである。とはいうものの、これは一時的に毒素を無効化する対処療法でしかない。一時的に毒素をなくしてもまた毒素が溜まっていくという事の繰り返しになってしまっているのだ。

 

「漢方ニキ! 医療従事者が中毒とは本末転倒! あまり毒素を溜め込むとまた強制運動で毒素を抜かせますよ! ワンモアセッ! それではお体をお大事に!!」*8

 

 ミネは漢方ニキに対して問答無用で「ナイチンゲール・ブレッチ」を叩き込んで漢方ニキの内部の毒素を中和・昇華させて彼の体調を改善をさせると、そのままダッシュで幼女ネキを追いかけるためにその場から猛烈な勢いで走り去っていった。

 轟音と共に平気で壁をブチ破りながら一直線に走り去っていく彼女の後ろ姿を見ながら、漢方ニキは思わず呆然と呟く。

 

「……野生の辻ヒーラーかカマイタチか何かかな? やっぱり頭おかしいなあの女……。*9

 

「幼女ネキ!! 貴女が逃げれば逃げるほど被害が増えますよ!! 大人しく投降して健康診断を受けなさい!!」

 

「ええい! 被害を出してるのはお前だろうが!! お前がまず止まれ!!」

 

 うおおおおおお!! うぁああああ!! とこうして周辺被害を出しまくった地獄の追っかけっこは修羅勢やショタおじが駆けつけるまで続けられる事になった。

 


 

「……で? 言いたい事があったら聞くけど何かある?」

 

 結局、霊視ニキの拳によって鎮圧された二人は、大きなたんこぶを作りながら二人並んで正座されられていた。

 人的被害やケガは(救護ネキが回復魔術連打や破片から彼らを守っていたしていたため)全くなかったが、それでも多数の壁に大穴が空いて破片が飛び散りまくっているのを見て、さすがにショタおじも呆れる顔を見せるしかなかった。霊視ニキとショタおじの前でたんこぶを作って正座しながら、救護ネキはそれでもきっぱりと答えを返す。

 

「救護のためです! 救護のためなら仕方ありません! (キッパリ)……きちんと壊した分は弁償しますが」

 

 そんな彼女に対して呆れた声と表情を出したのは、同じ医療班の一人である『フェイスレスニキ』である。いかに同じ医療班といえどこれだけやらかしたらフォローはできない、というのが正直なところだ。

 

「あのさぁ……。健康診断を一回さぼっただけでここまでやる? まあデビルシフターには健康診断は重要だけどここまでされるとねぇ……。流石に被害が大きいので完全弁護はちょっと無理かなーって……」

 

「まあねぇ……。落としところとして山梨支部から一時追放が妥当な所かなぁ。……またやらないと誓えばやらないけどその気はないでしょ?」

 

 当然です! 私はいついかなる時でも救護を行います!! ときっぱり断言する救護ネキの言葉に、その場にいた男性陣ははぁ~と思いっきり深いため息をついた。

 

「私的にはアマッカスニキみたいに海外の追放でも別に構わないのですが……。なぜかショタおじから海外渡航禁止の通達が言い渡されているのは大いに不満です!!」

 

「……ちなみに、海外に行ったらどうする気?」

 

「本来はヨーロッパのマルタ騎士団*10と合流して救護活動を行おうと思いましたが……。さすがにそれはガイア連合やショタおじからNoが出されるでしょう。ですからヨーロッパに『救護騎士団! 私! 総勢1名参陣ッ!!』してちょっとヨーロッパを「救護」しようかと」

 

 この女は……「やる」と言ったら「やる」……。そんな「凄み」があるッ!! と言わんばかりのセリフに、さも「ちょっとコンビニ行ってくる」程度の気軽さで言い放つ彼女に対して、さしものショタおじも「絶対ダメ」と霊的に契約を結んで、彼女を海外に行かせないようにするのは当然だった。

 もし彼女がヨーロッパに行ったら狩人ニキのように大規模な活動をするのは目に見えていた。彼女の行動力ならば初めは一人でも、そのうち狩人ニキみたいにガイア連合自体を動かしかねない危険性がある。ショタおじも第二の狩人ニキをそうほいほい生み出す気などそうそうなかったのだ。

 

「絶対ダメ。霊的契約できっちり縛ってあるでしょ? 君海外行かせると絶対狩人ニキ以上の勢いで欧州救おうとするから……日本国内で我慢しなさい。とはいえ、どこか適当な支部あるかなぁ」

 

 そこで、ショタおじは田舎ニキの所にでも左遷……もとい配置転換するかぁ、と彼に対してテレパシーで連絡を取っていく。今の凍矢は、何か急に生えた強酸性と強アルカリ性を混ぜて無理矢理中和化……ニュートラル化させた地脈の修復にひんひん言いながら飛び回っているらしい。*11

 

『えっ? (ウチの支部の扱いが)酷くない? いやまあ……いいけど……』

 

 いいんかい、と思わずショタおじは突っ込んだが、いやそっちが振ってきた話じゃん? と凍矢も思わずツッコミ返す。ともあれ、その話を聞いて思わず凍矢はえぇ……という反応を示しながらショタおじに答える。彼としては自分の支部が左遷場所とされるのは不本意ではあったが、医療系に極めて強い高レベルの黒札が欲しい、というのは事実である。

 

「……田舎ニキ正気? ホントのホントにこの子の面倒見るの? マジの暴走列車だよこの子。……まあ、医師としても看護士としても優秀だけどさ」

 

「まあねぇ。シキガミ移植手術やら普通の手術やらオカルト手術やらも完璧にこなせるし、普通の医療技術にもオカルト医療技術にも詳しい。優秀なオカルト医者であると同時に看護師でもある。高度な回復魔術もバンバン使える……ちょっと性格に問題がある以外は。できればねぇ。医療部としても手放したくないんだよ? いやホントホント」

 

 ともあれ、こうして救護ネキは魚沼支部に左遷……もとい配置転換になったが、それはそれとして魚沼支部でも彼女は精力的に働き、医療関係で大きな功績を出す事になった。

 


 

 ともあれ、魚沼支部の病院にやってきた彼女がまず行った事は、魚沼支部のオカルト医療器具の導入や、オカルト医療のさらなる発展・研究だった。まずは山梨支部の医療班たちと合同で開発した痛みを感じさせない「無痛メス」。痛みを感じさせない注射針の「無痛注射針」。また覚醒者にも聞く「デビルスリープ麻酔」などの導入。

 また、終末対応のために使いまわしができるように針が存在せず、「吸血」のスキルで直接血管から血液を採取できる「吸血注射」*12

 そして、マッパーを人体に応用して人体内部をマッパーとアナライズ、超能力の「霊視」で直接人体内部を見ながら手術できる「外科手術支援システム」。またスキルカードに霊視ニキの霊力を込めて開発した人体も霊的構造も全て霊視して悪い部分を正確に診断できる「霊視CTスキャン装置」、また人魚ネキがイズンシェルターに与えた『安産の守護結界』*13など、これら山梨支部の医療部と合同で開発した装置を自前で魚沼シェルターの医療部へと導入していったのだ。

 

 そんな中、彼女が目をつけたのは「霊糸」である。

 霊糸を縫合糸として作り直し、痛みもなく、抜糸をしなくてもそのまま皮膚と融合するという糸を作り上げたのだ。さらに、白魔女たちが作り上げた「癒しの水」「傷薬」「解毒の乳液」「ディスポイズン」などの積極的な購入、より効率的な作成方法の提供、そして素材の提供、傷薬作成器具の提供など、白魔女たちとお互いに共存関係になることのも成功した。

 

「こ、こんなに……い、いいんですか!? それに専用の薬の開発器具や薬効の抽出器具まで……!」

 

 大量の依頼とそれに応じての大量のマッカは、白魔女筆頭である「わたし」ですら白目を向くほどだった。救護ネキからすれば、彼女たち白魔女は「傷薬」や「ディスポイズン」などを製造してくれる貴重な労働力である。彼女からすれば、そんな労働力を大事にしないはずはなかった。ガイア連合の製造機やより効率のよい生産方法のやり方なども教えたため、ガイア連合が出す傷薬の効果とほぼ変わりないものを作成してくれるはずである。

 

「構いません。後は病院周辺に『サクラメント』の栽培もよろしくお願いします」

 

 また、どんな人間に対しても輸血が可能な「サクラメント」にも目を付けた彼女は、即時にそれを取り入れ、病院周辺で大々的に栽培することも行い、それを育てるのも白魔女たちに任せた。これは彼女が忙しすぎてそれどころではないためである。

 また、それだけでなく疱瘡神に感謝を捧げながら天然痘ワクチンを打った時の研究、地方によっては疱瘡神を悪神と見なさず、疱瘡のことを人間の悪い要素を体外に追い出す通過儀礼とし、疱瘡神はそれを助ける神とする信仰もあったので、それら疫神の参拝とオカルト医療との組み合わせ、鍾馗や牛頭天王など疫神を追い払う神の信仰の研究、『半人半石鹸』『歩く消毒液』*14と揶揄される沖縄支部から取り寄せた天使の『脂肪』を利用した『天使石鹸』の試作など、彼女は寝る間も惜しんで医療の推進を行っていた。

 そんな中、救護ネキは凍矢に対してとある施設の建設許可を求めてきた。それは、いわゆる『バイオセーフティーレベル4』*15の実験研究施設である。さすがにちょっと引きながらも、凍矢は何故この施設を建てるのか、と病院内で面談しながら聞き取りを始める。

 

「これから終末にかけて大量の致命的なオカルト疫病が大流行するでしょう。その対策のためです。まず第一目標は、黒死ネキ*16の血による霊的黒死病対策です」

 

「ふんふん……え? 黒死ネキの血ィ!?」*17

 

「はい、彼女の血と探求ネキが開発した彼女のワクチン。それらを研究することによって、ヨーロッパや日本で霊的黒死病が流行した際の専用の抗生物質の開発を行っています」

 

 病そのものといえる黒死ネキ自身の血液。そして以前探求ネキ自身が作り上げた黒死ネキの動きを封じ込めた特殊ワクチン。これらを研究する事によって、もし日本やヨーロッパに霊的黒死病が流行した際に、それに対する特効薬を研究して作り上げようとしているのが彼女の目的である。このワクチンはすでに耐性を得た黒死ネキには通用しない。だがこれを流用すれば、黒死ネキ由来ではない耐性を持っていない霊的黒死病は封じ込める事は十分可能だろう、と救護ネキは考えているのだ。それらを研究して作り上げようとしてるのは『霊的ストレプトマイシン』であり、これは黒死病だけでなく、結核に対しての特効薬にもなる。

 恐らくは出てくるであろうペイルライダーに対しての大きな特効薬になるはずである。

 

「まあそれはそれとして……。田舎ニキ。貴方はもっと浄化の霊水を出してもらえますか? 田舎ニキの霊水とキクリ米から作りだしたアルコールを混ぜて『消毒用霊水』を作り出します」

 

「……えっ? た、助けてぇええ!! 普通にアクアストーンでいいじゃん!! 直接搾り取ろうとしないでぇええ!!」

 

「ほら!! もっと出しなさい!! もっとです!! 今日は(霊水が)出なくなるまで返しませんよ!!」

 

 そんな風にどったんばったんしてるのを聞きつけたのか、ちょうど通りかかった天使人間である『下江コハル』はアレな想像をしたのか、顔を真っ赤にしながら部屋へと乗り込んでくる。

 

「いくら黒札様でも真昼間で公共施設の中ではエッチなのはダメ! 禁止!! ……えっ? 何か違わないこれ?」

 


 

我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)』ッ!」

 

 ──―山梨支部のダンジョン深層に作り上げられた決戦場の一角。そこでは救護ネキと黒死ネキが二人で一対一の対決を行っていた。救護ネキは、問答無用で黒死ネキに対して自らの権能を叩き込む。そのあらゆる病魔を消滅させる絶対安全圏。だが、それも黒死ネキを完全に封じ込めるには至らなかった。黒死ネキと救護ネキの権能の力……概念強度はほぼ互角の状況であるため、その状態では以前ワクチンを打たれたように黒死ネキの動きを封じ込めるには至らない。

 黒死ネキから放たれる穢れや病気の概念は全て浄化され、黒死ネキ自身にも浄化の権能が常に襲い掛かり、いわば重圧がかけられている状態だ。この状態では彼女も本来の力を発揮できないし、一時的な足止めすら可能だろう。

 

「ク……ククク……。絶対安全圏とは笑わせる。どうした救護ネキ。この程度では私は浄化できんぞ? いや、ここまでやれるだけ大したものか、と褒めるべきか。この私とほぼ互角の権能とは恐れ入る」

 

 ギギギ、とその浄化の重圧の中、黒死ネキはゆっくりと足を進めていく。お互いの浄化の概念と疫病の概念が激しくぶつかり合う中、それは黒死ネキに対する『重圧』として襲い掛かってきた。その重圧のせいで、黒死ネキは普段のような華麗な大鎌捌きを見せるのは難しい、と判断した。そこを懐に飛び込まれて救護ネキ得意の肉弾戦に持ち込まれればいかに黒死ネキといえど苦戦は免れないだろう。

 

(なるほど……それが狙いか。ナイチンゲール・プレッジを展開してこちらに重圧・ステータスダウンをかけながら肉弾戦に持ち込む。確かにこの状態ならば向こうが優位になるだろう。だがそれをさせるほどこちらも甘くしてやる必要はないな)

 

「この重圧状況、しかも相手が救護ネキとあれば近接戦闘では若干不利か……。ならば、こうするとしよう」

 

 ジャキッ、と黒死ネキは自らの銃であるジャッカルPを取り出し、その銃口を救護ネキへと向ける。その中には沖縄の【銃火暴風怨嗟域】から出土したスクラップで作られた【呵責鋼】を〝穢し尽くして〟作った薬莢にアリスニキから仕入れた【疫毒鋼】*18を加工した弾頭が装填されている。【疫毒鋼】の弾丸は極めて攻撃的であり、様々な肉体系状態異常とボツリヌス菌入りの呪毒を対象に叩き込む極めて危険な弾丸である。

 

「さあ、踊れ踊れ。豚のような悲鳴を上げろ」

 

 ドドドド!! とまるでマシンガンのようにジャッカルPから乱射される乱射される【疫毒鋼】の弾丸。それらは通常の直線ではなく、まるで魔弾のように縦横無尽に変化し、曲がりくねりながら全方位から救護ネキへと襲い掛かってくる。その無数の弾丸の雨に対して盾を構えた救護ネキは、その場でギュルルルル!! と猛烈な回転を開始した。四方八方全方位から襲いかかってくる魔弾と化した疫毒鋼の弾丸はその回転によってキンキンキン! と小気味いい音を立てながら弾き返されていく。

 地面にめり込み、下から飛び出してくる魔弾も上から襲いかかってくる疫毒鋼の魔弾もキンキンキン!! と全て弾き返されているのを見て、流石の黒死ネキも呆れた顔を見せる。

 

「やれやれ、私が言うのも何だがとんでもない女だな。だがそれでは完全に防御はしきれまい?」

 

 黒死ネキのいう通り、彼女の肉体には数発の【疫毒鋼】の弾丸がめり込んでいる。たった数発といえど、それは十分に致命傷ともなりうる弾丸である。だが救護ネキは慌てる事なく、自らの手のまるで魔法のようにバッ! とメスや管子などと言った医療器具を自分の指の間に出現させた。

 

「──―簡易手術、開始」

 

 救護ネキは凄まじい速度で、自分にめり込んだ疫毒鋼の弾丸を周囲の組織ごと抉り取り除去、そして消毒液である霊水で傷口を消毒し、霊糸で縫合していく。

 バババ! と目にも止まらぬ速度で自分の肉体にめり込んだ弾丸を除去したのを見て、黒死ネキは、パンパンパンと拍手をして彼女の技術を称賛する。

 

「なかなか面白い大道芸を見せてもらった。だが完全に毒素までは消しきれまい?」

 

 だがそれにも関わらず、彼女は盾を手にしながら、敢然と黒死ネキの肉体に対してシールドバッシュの連打を仕掛けていく。だが、完全に毒素を消さずに黒死ネキに対してシールドバッシュを仕掛けたのはまずかった。

 

「【ワーシングオート(状態変異・強制悪化)】」

 

 その瞬間、彼女の腕の簡易手術を行った傷口から猛烈な勢いで漆黒の疫病が彼女の腕を覆いつくして腐らせようとしてくる。しかも無数の弾丸を受け止めて、黒死ネキに対して無数に殴りつけたご自慢のライオットシールドも、流石にボロボロになりつつある。その状況に、流石の救護ネキも思わず膝をつく。 

 ボツリヌス毒素は最も強力な既知の毒素の一つで、約1マイクログラムの吸入が人間にとって致死量となる。そのボツリヌス菌を発生させる弾丸が一発でも肉体にめり込んだのなら、それだけで未覚醒者なら死亡、覚醒者でも猛毒状態になるはずである。この毒素には、体性神経系にある神経筋接合部のシナプス前膜から出る刺激神経伝達物質アセチルコリンの放出抑制を介して、神経機能を遮断する作用があり、これが麻痺を引き起こす。重度のボツリヌス症は、胸筋を麻痺させることで呼吸不全を引き起こす可能性があり、これは呼吸停止にまで至りうる。それが最大限にまで引き上げられたのだ。通常ならば即死しても不思議ではあるまい。

 

「腕が腐れて落ちる寸前だな。ご自慢の盾ももはやボロボロで砕け散りかねない。銃弾も尽きるだろう。さあどうする? 救護ネキ? お前は人間か? それとも犬か?」

 

「……人は弱い。ちょっとした風邪に苦しみ、黒死病にバタバタ死に、凶悪な流行病にその弱さのため容易く命を落とします。だが、それが何だというのですか。一歩でも医療が前進している限り、人間の魂が病に真に敗北する事など断じて無いッ!!」

 

 その何のためらいもない彼女の言葉に、一瞬驚いた顔をした黒死ネキは、次の瞬間にこり、とほほ笑んで彼女を心の底から賞賛した。

 

「……素敵だ。やはり人間は、素晴らしい」

 

「誇りと信念を胸に! 適切に必要なところに救護を!! 救護騎士団! 蒼森ミネ! 参りますッ!!」

 


 

 ──―その後、散々お互い全力での戦いを行った後、救護ネキと黒死ネキは和気藹々とお互いの入れた紅茶に対して舌を打っていた。元々、ミネ団長はトリニティ学園でも屈指の紅茶通。その因縁は救護ネキにも引き継がれており、美味しい紅茶を入れてくれる黒死ネキと仲良くなったのは当然といえる。

 ……あれだけ血みどろの戦いをしておいて、その後で普通に仲良く紅茶を飲んでるとかどういう思考してるの? と周囲から引かれたり、紅茶好きで有名な現地民の『桐藤ナギサ』が土下座してお茶会に入れてほしいと懇願したのはまた別の話である。

 


 

「まあそれはそれとして健康診断は受けてもらいますが」

 

「……健康診断?」

 

「はい」

 

「……マジで?」

 

「マジもマジ。大真面目です」

 

「……実質、病そのものである私が健康診断? 悪い冗談だろ?」

 

「私は救護に関する事では冗談は言いません。ショタおじだろうが、脳缶ニキだろうが、黒死ネキだろうが、誰であろうが健康診断は受けてもらいます。例外はありません」

 

「……嫌だと言ったら?」

 

「「強度の高い救護」が発動します。しかも一回だけでなく何十回と発生します」

 

「ああ……分かった分かった……。前向きに考えるから……。」*19

 

 

*1
【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策」様の主人公

*2
このシールドは四角い形状をしているので地面に普通は刺さらない。

*3
チェスト救護とは、救護騎士団の隠語で「ぶち救護せ」の意味である。

*4
「救護の構え」がある時にノーマルスキルで放たれる、円形の謎の衝撃波。やたら禍々しい色をしている

*5
本当になんなんだろうねアレ……。

*6
「【カオ転三次】今更転生ごちゃまぜサマナー」様、閑話1:ある半終末のボーイ・アンド・ガール

*7
FGOのナイチンゲールが使用する宝具。戦場を駆け、死と立ち向かったナイチンゲールの精神性が昇華され、更には彼女自身の逸話から近代的にかけて成立した「傷病者を助ける白衣の天使」という看護師の概念さえもが結び付いたもの。効果範囲内のあらゆる毒性と攻撃性は無視される。強制的に作り出される絶対的安全圏。

*8
漢方ニキは医療班の薬学チームのエースなので同じ医療班ということでお互い面識はある。娘で毒物大好きな【妖鳥 チン】のデビルシフターらしいので、そこからチンの毒などをもらって薬に転用できないか研究もしてそう。

*9
同じ医療班からもこの言われようである。

*10
ミネ団長は原作ではヨハネ分派……つまりヨハネ騎士団と縁が深いらしいのでそこからのネタ

*11
【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~」様の「番外編 子供は遊んで泣いて、皆と賑やかに騒ぐものだろう?」でロウ化された地脈をニュートラル化させるために黒死ネキが「穢した」ため。

*12
スキルの逆転……逆吸血で色々な薬を血管内に直接注入もできる。これは終末環境で使い捨ての注射針の補給ができなくなったときに備えるため。

*13
「【カオ転三次】 終末に向けての準備するとある転生者の話」様、外伝18話:神殿建築のあれこれ話です? から

*14
「アビャゲイルの投下所」様から。

*15
天然痘ウイルスやエボラウイルスなどを研究する最高度安全実験施設。

*16
【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~」様の主人公

*17
多分黒死ネキと戦いあった報酬として分けてもらったと思われる

*18
艶のない黒紫色の地金にくすんだ肉色の波模様が走るこのやたらと毒々しい色合いの金属は呪鉄90%、水銀9%、アダマントス1%の比率で合成した幻想金属の合金に、以前アリスニキがウインナースの失敗作として製造したボツリヌス菌入り株から抽出した疫毒の概念を融合させた代物。

 通常の金属と比べても相応に高い強度と、そして段違いの硬度を併せ持ち、刃として鍛造すれば非常に高い切れ味を発揮するのに加え、その素材の成り立ちからアダマントスほどではないが強い死の属性を帯び、また武器や術の媒体として用いれば毒・風邪・麻痺などの肉体系状態異常と呪殺属性の即死に高い補正を与える、攻撃的な合金素材。

*19
受けるとは言っていない





 ・救護ネキ。
 医療部の秘密(にしておきたかった)最終兵器。ブルアカの言わずもがなの頭救護な女傑かつ狂戦士な女性『蒼森ミネ』
 同じ医療班の漢方ニキからも「あいつは頭がおかしい」と言われる始末。救護バフがかかると幼女ネキとすら互角の殴り合いをするほどの身体能力を発揮する。
 問題児たちは救護波や拳などで無力化させて医療室に叩き込むことがある。チェスト救護!! 
 何だかんだと言って田舎ニキには感謝はしているが、それはそれとして救護はする。
 左遷……もとい部署移動であり、アマッカスのように追放はされていないため、別に普通に山梨支部にこれるし、山梨支部から救援要請が来れば普通に力を貸す。「救護」の二文字が聞こえてきたら用心せい。こんな女がフリーダムを得てヨーロッパに向けて射出されると第二の狩人ニキになるのは目に見えているため、契約で海外に行けないよう縛られている。恐らく本霊はミネルヴァか英傑ナイチンゲール。幼女ネキの子供の「美音」とは「今夜は私とあなたでダブル救護騎士団ですからね」していい師匠になってそう。
 なお、最新話では悪徳企業を粉砕していたり、黙示録の天使(トランペッター)の精神攻撃を退けて単騎で粉砕していた。なんなのこの女。

・マカーブルさんから蒼森ミネ、救護ネキのイラストをいただきました!
どうもありがとうございました!!

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