今年もよろしくお願いします。
〇余談1
「冬将軍の権能に病魔の権能?」
最近発表された論文の中で、30万人超のナポレオン軍はなぜ壊滅したか? というネタで、ナポレオン軍は「野営熱」(今日で言う発疹チフス)と「塹壕熱」によって壊滅したという定説だった。
だが、最近の研究によればボレリア菌「パラチフス熱」など多種多様な細菌によってナポレオン軍は敗れたらしい。それを利用すれば病魔の権能を引き出せるのではないか……というほかの黒札からの提案も出たが、凍矢はふーんでそれを受け流した。
「いやまあ黒死ネキ*1辺りに弟子入りして勉強すれば使えるかもしれないけどね……。やる気はないかなぁ」
自室でそんな風を論文をネットで検索していた凍矢だったが、本人的にはやる気は全くないようである。『冬将軍』が本霊である彼ならば、そこからの逸話から力を引き出し、努力して力を伸ばして権能にすれば黒死ネキのような【シリリッカ】を発動できるかもしれない。だが、氷系から派生して水系、さらに浄化系に対しての権能を有している彼がその正反対の権能を覚えるのは、非常に苦労がかかりそうで、努力に見合った成果がないといえた。
「ちなみに……他にも何か理由があるのですか?」
そんな風に人間になっている破裂の人形は、凍矢に問いかけてくる。
「ヒント:救護ネキ」
「あっ(察し)」
そう、一番の問題は『救護ネキ』の存在である。凍矢は救護ネキが暴走した場合抑え込む役目を持っている。現状ならともかく、抑え込む役であるはずの凍矢が病魔の権能を持ったら、却って逆効果になる、と彼は考えているのだ。
「下手に病気の権能とか持つと救護ネキがヒートアップして抑えられなくなりそうだし。何かあればボコられそうな気もするしメリット少なそうだし……まあなしだろうなぁ。無し無し」
〇余談2
ぐぬぬぬ……と救護ネキは頭を抱えながら悩んでいた。それは、人魚ネキが作り出す『安産の守護結界』*2である。
救護ネキ的にはもっとどんどん生産してほしかったが、凍矢からこれ以上人魚ネキを『説得』はNG! というお達しも出てしまった上に、定期的に生産してくれる、という事で我慢するしかない。(下手に説得して作ってもらえなくなるという本末転倒は犯したくない)
ならば破魔ネキを! と頼もうと思ったら、先んじて凍矢に釘を刺されてしまい、詰んだ状態になった彼女は、「ツカレトレール」を飲みまくって疲労状態を誤魔化している心身疲労状態である結論を出して立ち上がった。
「こうなったら……タマヨリヒメ神に働いてもらって『安産の結界』*3の大量生産を! (お目目グルグル)『安産の結界』も十二分に有用!! あれさえあれば……!!」
「はい【氷棺封印】」*4
ツカレトレールで無理矢理動いて疲労困憊である救護ネキが暴走状態になりかかったのを探知して、凍矢は自らの権能である氷系の術式【氷棺封印】で救護ネキを封印する。
「フリージングコフィン」そのままに氷の中に封じ込まれた救護ネキは、目を開けながら熟睡……冬眠状態へと陥っている。疲労状態を「ツカレトレール」の大量摂取でゴリ押ししていた彼女だったが、やはり肉体に疲労は溜まっていたらしい。救護ネキの暴走を防ぎ、なおかつ彼女を休眠状態にして休ませた凍矢はふう、とため息をつく。
「このままだと、テンパった救護ネキがタマヨリヒメ神に無理矢理『安産の結界』の大量生産とかやりかねないからね……。止めるのも俺の仕事だから……」
氷棺に封印された救護ネキは、そのまま冬眠状態……休眠状態になって自動的に眠りに入っている。このまま頭を冷やして(比喩ではない)と疲労回復させて正常な判断力を取り戻させる。それが凍矢の狙いである。
「それに、ツカレトレールガブ飲みで対応してるけど、流石に救護ネキも疲労が限界だったらしいし。普段の彼女なら、「ふんぬ!!」と氷棺破壊して這い出てくるだろうし。それをしてない事はよっぽど疲労してるって事だしね。」
「それはいいのですが……。休眠が終わったら元気一杯の救護ネキ様が復活するのでは? 抑えきれますか?」
「……い、いざとなったら俺が押さえ込むから……。それでもダメなら幼女ネキとか人魚ネキとか黒死ネキとか協力体制で押さえ込むから……。」
〇余談3
「こんにちわ。幼女ネキ。*5今回は貴女の保護している少女の件で来ました」
「むっ、救護ネキか。セツナ*6に対して口出しする気か?」
シャー! と警戒体制に入る幼女ネキ。てっきり「治療させろ!」と言い出してくるかと思ったが、救護ネキは首を振って否定した。
「いえ、流石に私でも全ての病人を治療できるとは思っていません。
幼女ネキの元で、彼女の容態が安定しているのならそれでいいでしょう。知らない人間が介護してメンタル悪化、体調悪化になったら本末転倒ですからね。
とりあえずこれを。『無針点滴』です。吸血を逆作用することで直接血管に液体を注入するので、針を刺す必要はありません。
このシールを血管の上に張るだけで大丈夫ですので、点滴のケーブルすら必要ありません」
「点滴内部には田舎ニキの仲魔のキクリヒメの力が込められた『リディア補液』が入っています。
リディア状態は、MP自然回復量増加、状態異常無効化、被ダメージ減少(20%程度)という状態にしてくれますので、これでセツナの状況も楽になるでしょう。試してください」
とはいうものの、セツナの状態は「魂」自体が疲弊しているため、単純に肉体を治癒しただけでは完全回復は難しいがそれでも多少楽になるだろう、という救護ネキのが救護ネキの考えなのだろう。
救護ネキ的にも初めての症例のため、手探りで様々な治験を行いながら慎重に治療を進めていく方式らしい。
「……一応聞いておくが、セツナの酷使とかは……?」
「? 病人を酷使とかするわけがないでしょう。病人は病気を治すために大人しく寝ている物です。常識的に考えてください」
き、救護ネキに常識を説かれた、と思わず幼女ネキは唖然とする。救護ネキからしたらセツナは「病人」カテゴリーである。病人は大人しく寝てなさい、というのが彼女の考えだ。ともあれ、彼女は時間停止皿で保温&新鮮さを保たれた麦粥の入った皿と、黄金のリンゴを切った皿を差し出す。
「後これは、私が自腹で購入した「ダクザの大釜」から出た「麦粥」です。現代風にアレンジしてありますし、聖杯としての素質が高いのなら「ダクザの大釜」とは相性はいいでしょう。人魚ネキのところのイズンからもらった黄金のリンゴを剥いた「ウサちゃんリンゴ」です。良かったら食べさせてあけてください」
「ウサちゃんリンゴ」
「ウサちゃんリンゴです」
救護ネキは、スラム街の炊き出しのために「無限に麦粥を生産する」ダクザの大釜をイギリス支部のダクザと交渉して購入している。
聖杯の原型はこのダクザの大釜であるため、魂強化のためにダクザの大釜を直接聖杯であるセツナの魂に融合させる事も考えたのだが、逆にセツナを聖杯に近づける危険性が高くあまりに危険すぎる、という事で自主的に却下した。
だが、聖杯の原型であるダクザの大釜から出る麦粥ならば、聖杯であるセツナとは相性がいいし病人食にもなるだろう、という考えだ。
ともあれ、そんな風にセツナの介護や面倒は幼女ネキに任せるつもりだったが……事情が少し違ってきたのは、あることを聞いたからである。
「……妊娠?」*7
「病弱な子供」が「妊娠」。これは救護ネキの暴走スイッチを押すのに十分だった。暴走を探知した凍矢は、慌てて救護ネキの抑えにかかっていた。
「離してください! 病人が妊娠というならば! 人魚ネキに『安産の守護結界』を何としても作ってもらわねば! これは譲れません!!」
「何とかするから! 幼女ネキは人魚ネキの娘みたいなものだから、そこから幼女ネキから頼みこんで作ってもらえるようにするから! お前が口突っ込むとややこしくなるから!」
人魚ネキは幼女ネキにとって母親代わりだ。その幼女ネキの病弱な恋人が妊娠したとなれば、人魚ネキも『安産の守護結界』を宮城支部に作成してくれるだろう。自分が首を突っ込んだらややこしくなるのを知って、救護ネキは渋々それを受け入れた。
「むう……まあ作ってもらえるなら文句はありませんが……」
……なお、病人であるセツナを悪魔の餌食にしようとした黒札たちにマジ切れして、シールドバッシュ&ディアラハン&サマリカームの無限ループをしたとかしないとか。