───新潟県の隣、富山県のとある村。そこは終末を運よく潜り抜けた小さな村だったが、そこで異質なのは、村人たちはほぼ全てが病人だったことだ。
ぜいぜい、苦しい苦しい、とほぼ全ての村人たちが病気で苦しんでいる中、村の中をスキップしながらイエーイ! と喜んでいる一人の少女の姿があった。
それは当然普通の人間ではない。彼女はいわゆる『疫神』『疱瘡神』が人間のカタチを取った存在である。
疫病の神である彼女はほかの悪魔たちと違って人の命を奪う事を良しとはしない。
だが、その分自分の権能……すなわち『疫病』によって人々が苦しむのを見る事をこの上ない娯楽としている。
『生かしたまま延々と病気で苦しむ。生まれてから死ぬまでずっと!』というシチュこそ、疱瘡神がもっとも娯楽として楽しめるシチュエーションである。
疱瘡……すなわち『天然痘』は唯一人類が根絶に成功した伝染病であったが、それはあっさりと終末によって覆された。特にこういった『疱瘡神』の出現によって、その伝染はさらに加速していた。
そしてその人々を楽しむために、わざわざ疱瘡神は小さな村一つをシェルターとして、村人たちを保護しているのだ。村を病気の結界……『パンデミアブーム』で包み込んで、人間を苦しめながら、同時の他の悪魔たちが立ち入られないようにする。
さらに「人間を保護している(苦しめていないとは言っていない)」ということで、ガイア連合から食料を受け取り、村人たちをきちんと生かして保護しているのだ。
「うんうん、今日も皆元気に苦しんでくれてますね! 良きかな良きかな。
人間たちの命を奪うなんてとんでもない!! きちんと生きてくれないと病気で苦しんでもらえないですからね!! 頑張って生きて頑張って病気で苦しんでくださいね!!」
にこにこと笑う疱瘡神に対して、げほげほと弱った長老が彼女に懇願してくる。それは食料が少ないということである。ガイア連合からの供給を受けているが、金札も銀札もいないこんな村への食糧は当然のことながら少ない。
そんな懇願に対して、疱瘡神は、ぱんと両手を打ち合わせて明るく答える。
「ああ! あるじゃないですか食べ物!! 死体の肉を食らえばいいんです!!
貴重な肉ですから皆喜んでくれるでしょう!!
(病気で苦しんでくれるために)きちんと元気になってくれないと!!」
ヒュッと村長が息を飲んだのを見て、少女はニコニコしながらさらに言葉を放つ。
彼女からしてみたら「食糧難に苦しんでいる人間たちに食料を与えた。いいことをしたなぁ!」という意識でしかない。病気にかからなくなった死体はただの物体。そんな物体が食料になるんだからとってもお得! 程度の感覚でしかないのだ。
「うん! それがいい! 死体を埋めるための労力削減にも燃やすための燃料節約にもなる!!
さらに食料まで手に入る!! 食べて埋葬の概念も世界にはあるから埋葬しないと出てくるイツマデも出てこなくなる!! みんな幸せですね! 頑張って生きて病気で苦しんでください。それが貴方たちの存在意義です!!」
良きかな良きかな、と満足気に頷く疫神。
葬儀の習慣として死者の肉を食べる行為はよくある。葬儀の場面でお骨を食べる『骨食い』もある意味一緒! 人間の肉はまずいとかよく言われてますが、はんばーぐ? とやらにすればいいでしょう! と楽しそうに疱瘡神は人間たちを説得にかかるが、絶望に心をへし折られた大人たちはただひたすら泣きわめくだけである。
人が泣きわめく&苦しむ姿を見るのは、疱瘡神の少女にとって極めて楽しい喜ぶべき娯楽シーンでしかない。
心をへし折って絶望に泣きわめく人間たちの姿は、まさに疱瘡神にとって愉悦そのものだった。
(ふふ! いいですねぇ楽しいですね!! おやおや、大人たちはあんなに泣きわめいて。まだ泣きわめく力があるのなら苦しませる事もできますね!!)
そんな風に楽しんでいる疱瘡神だったが、次の瞬間、彼女の支配する村一帯が何らかの特殊な結界に覆われる。自分の力とは真逆の力である圧倒的なその力に、疱瘡神は対応しきれず茫然と呟く。そして、村が結界に覆われた瞬間、巨大な大剣を持った看護婦の幻影が上空に浮かび上がり、状況に理解できない疱瘡神は茫然としていて反応できない。
「……は?」
『
瞬間、疱瘡神のほぼ全身が消し飛んだ。肉体が消し飛ばされた彼女が残っているのはただ首だけである。何が起こっているか理解できない彼女は、首だけのままになって床に転がりながら思わず叫びを上げた。
「な……なんじゃこりゃああああ!!」
首だけになった疱瘡神は思わず叫び声をあげるが、それに構う人たちはいなかった。何故ならば、今まで病気に苦しんでいた村に人々はまるで魔法のように病気が消え去って皆大騒ぎになっていたからだ。自らの楽園が崩壊していく様を見て絶望に歪む疱瘡神(首)そんな彼女の元に、大量の人員を連れてきたクラシックナース服で青髪のロングヘアーをした女性が建物内に入ってきて言葉を放つ。
「何か起こったか? それは一声で言えます」
「それは……『救護』です!!」
そう、それは周辺の大小のシェルターを回ってシェルター内の衛生環境を高めている「救護ネキ」である。小さな村でイキってる疱瘡神ごときが、高位のレベルに達した救護系の黒札に勝てる道理などない。そして、救護ネキ率いるナース服を纏っている治療の力を持った看護士たち、「救護騎士団」は、一斉に村人たちの救助に当たる。
彼女たちの力によって、疱瘡神の楽園はいともあっさりと崩壊した。次々と彼女たちは元気になった元病人たちに食事や水分補給、健康チェックなどを行っていくが、自分の楽園が崩壊した疱瘡神(首)は絶叫した。
「何故だ! きちんと人間たちは保護している! 生かしたまま苦しめているがそれ以上はしてない! 死んでいたのも自然死しただけだ! きちんと人間たちの保護をしているとガイア連合は報告しているのに!!」
「なるほど。ガイア連合は許すかもしれません。だが私は許さない。それが答えです」
ぎろり、と救護ネキは、地面に転がっている疱瘡神(首)を睨みつけながら言葉を放つ。
「ちょうど良いので貴女には実験台になってもらいます。古来より、疫神は病気を司るが逆に病気を退けるためにも祭られていました。その権能を使用させてもらいます」
例えば、牛頭天王は疫病から身を守る際に祈願をかける存在として信仰されるが、いっぽうで疫病をもたらす存在ともされていた。このように、病気をまき散らす力を持つ疫神に祈願をかけて疫病から身を守ることは呪術的にはよくあることである。
凍矢の「エストマ」の浄化の力を帯びた「エストマアクアストーン」から出される大量の「霊水」を村人たちに飲ませることによって、村人を体内から浄化させて病魔を退ける。
村人の救護は救護騎士団たちに任せて、地面に転がっている疱瘡神の首を救護ネキはじろりと睨みつける。
「さてと。まずは『疱瘡神は犬や赤色を苦手とするという伝承』がありますのでそこから試していきましょうか。
『椿説弓張月』においては、『源為朝が八丈島から痘鬼(疱瘡神)を追い払った際、「二度とこの地には入らない、為朝の名を記した家にも入らない」という証書に痘鬼の手形を押させた』という話もあるので、そういった手形や証文も書いて病気が退散できるかも試してみないとですね。これが大量生産できたら大いに救護のためになります!」
COMPを見て情報を集めながら救護ネキはうんうん、と頷いた。純粋な医学技術だけでなく、こういった昔からのオカルト伝承で病気が退けられるというのなら、研究する価値は十分にある。それが救護ネキの考えである。
疱瘡神を悪神と見なさず、疱瘡のことを人間の悪い要素を体外に追い出す通過儀礼とし、疱瘡神はそれを助ける神とする信仰もあった。例えば、新潟県中頚城郡では、子供が疱瘡にかかると藁や笹でサンバイシというものを作り、子供の頭に乗せ、母親が「疱瘡の神さんご苦労さんでした」と唱えながらお湯をかける「ハライ」や、沖縄のほうでは疱瘡神に対して祭りを行って出て行ってもらう儀礼もある。それらを全て彼女を使用して試してみようというのだ。だが、病気をまき散らして喜びを感じる疱瘡神にとっては、自分の力を逆利用して病気を退けようとする行為はまさに尊厳破壊である。えぐえぐと泣きながら首だけになった彼女は叫ぶ。
「そ……尊厳!! 私に対する尊厳はないんですか!? 悪魔をいじめて楽しいんですか!?」
「別に楽しくはありません。やらなければならないからやっているだけです。貴女が人間の尊厳を重視するタイプでしたら考えましたが……まあ因果応報ということで」
もしかして……私はとんでもねぇ女に捕らえられたのでは? それに気づいた疱瘡神は、絶望の表情になった。(この後、簡易シキガミボディに入れられて無茶苦茶実験させられた)
そして、色々なシェルターの中には多神連合に属してはいるが、当然ながら人間に危害を与える悪性の神……すなわち『邪神』である外様神も存在していた。『魔王ツィツィミトル(LV50)』
元はアステカ神話の邪神である彼女は、夜と恐怖を司る女神であり、災いの日食を引き起こす死と悪の象徴で、52年ごとに生贄を求める、嫉妬深く邪悪な神であるともされる。そして、彼女のシェルターにいる『生贄』に選ばれた人間たちは悲惨の一言だった。ツィツィミトルの呪いでぶくぶくの肉塊だけに変貌させれて、ただ苦痛と苦悶の呻きを出すだけだ。そして、その生贄たちを生かしたままひたすら苦しめてMAGや『マガツヒ』を搾り取り、自分の力とする。そして、最終的には今の不完全顕現ではなく、本来のレベルであるLV80*1まで霊器を上げる。これが彼女の目的である。……無論、人々を苦しめて、だ。
「ほほほほ!! 人間ごときが!! 貴様らごときに妾が従う理由などどこにもない!! 家畜ごときが妾の力になれるのだ!! 感謝するのが当然であろう!!」
魔王でありダークロウ属性の彼女は、人の苦痛のMAGを殊の外好む。特に彼女は『人々に犠牲を強いる神』として伝承で明言されているので、人々を当然のように犠牲にする。その地点で、救護ネキとの交渉など不可能と言わざるを得なかった。救護ネキは目を細めると、救護騎士団を下がらせて戦闘態勢に入る。
(ふん! 妾のスキルの【暗闇の星】*2と【暗黒の予兆】*3はHPが50%以下で固有スキル! 数発程度は殴らせてやるか……。妾は【食いしばり】スキルも持っている! 一回倒された程度では問題もあるまい!!)
そう、彼女のスキル【暗闇の星】と【暗黒の予兆】はHPが半分になって発動するスキル。つまりある程度ダメージを受けなければツィツィミトルは本気を出せないのだ。だが、いかに黒札といえど一撃で自分を滅ぼせるはずはない。食いしばりスキルも所有しているので問題はない! とツィツィミトルは自分の懐にあえて救護ネキを飛び込ませてダメージを受け止める防御態勢に入る。それが彼女の判断ミスであった。
「救護救護救護救護救護救護救護
救護救護救護救護救護救護救護
救護救護救護救護救護救護救護ッ!!」
ツィツィミトルの懐に飛び込んだ瞬間、救護ネキの両腕が掻き消えたと思った瞬間、凄まじい光の連打が彼女の両腕から解き放たれ、その【ハマダイン】の連打はゼロ距離でツィツィミトルへと凄まじい勢いで叩き込まれる。
秒速50発の【ハマダイン】の連打。分速3000発の【ハマダイン】の光弾は弾幕と化して彼女の前方のあらゆる存在を「浄化」する。例え『破魔吸収』の敵であろうと、限界以上の破魔エネルギーを叩き込んで風船のように膨らませて破壊する。
救護ネキが行ったのは、『ショタオジ特製反撃術式』*4を見た彼女が独自にそれを模倣した術式である。
ドドドドドドドドド! とゼロ距離からの猛烈な光弾の射出により、ツィツィミトルは「は?」という声だけ残して、その圧倒的な光弾の雨に瞬時に消滅していった。(当然食いしばりで復活はしたがそれも全て消し飛ばされた)【マハンマダイン】ではなく【ハマダイン】なのはハマダインは単体効果なので、周囲に被害を与えたくない、という救護ネキの判断である。*5
連打した結果、彼女のナース服の霊服の両腕の部分が大気摩擦とハマダインの連打により弾け飛んでしまい、しゅうしゅうと煙を上げる白い細い両腕をぷらぷらとさせながら彼女は呟く。
「ふむ……。やはり分間16000発とはいきませんか……。とりあえず目指すべきは『秒速100発』ですかね。完成したら『ペガサス流星拳』みたいになりそうですが……」
ともあれ、ツィツィミトルを消滅された彼女は、すぐさま「救護騎士団」と共にそのシェルターの人々に対する救護処置を始めた。黒札たちから見たらアレな人間ではあるが、現地民たちからすれば魔王を打倒し、治療や携帯食料を与えてくれる彼女はまさに救世主そのものだった。治療が終了した彼らは、そのまま近くの安全なシェルターまで運ばれて新しい生活が始まるが……問題はツィツィミトルの生贄として『肉塊』にされた人間たちである。大悪魔の呪いを受けた彼らはディアなどでは治療をすることはできない。
そのため、救護ネキはビビアンと同じように『3Dプリンター簡易式神作成装置』によって簡易シキガミボディを形成。人魚ネキが作成した『治療用一反木綿』*6にヒントを得て、同じ能力を簡易シキガミボディにセットした『治療用簡易シキガミボディ』*7を救護ネキは作成。
そこに肉体を失った魂たちを封入して、ビビアンたちと同じ『簡易シキガミ人間』へと変貌させたのだ。
(『治療用一反木綿』は救護ネキ自身でも作成できるので、人魚ネキに迫ることなく自分自身で量産している)
ディア、メディアなどを所有している『治療用簡易シキガミボディ(コスト削減のためにほぼ女性体)』に封入されたツィツィミトルの犠牲者たちはそれに驚いたが、当の救護ネキの反応は非常に淡々としていた。
「ふむ。これで良さそうですね。ディア系統が使えるのなら食い逸れることもないでしょう。それではお大事に」
救護するまでは自分の仕事。後は色々仕事やシェルターでも案内するか、と救護ネキに対して、簡易シキガミボディを与えられた人々は自分たちを救ってくれた彼女に土下座しながら、自分の体にかかったお金を返したい、と言ってくるのは予想外だったらしい。救護ネキからしたら「緊急事態だから仕方ない。当然全部私の自腹」と考えていたので、新しい肉体を得たお金を返したい、という彼らにとっては至極当然のことを失念していたのだ。
「……だったら、この子たちを「救護騎士団」の看護師たちとして働かしたら? 救護ネキは人手が増える。この子たちは給料で肉体の借金が返せる。お互いウィンウィンじゃない?」
そんな困っていた救護ネキに対して、ちょうどそれを見ていた凍矢は救護ネキに対して提案する。それだ! とその発案に救護ネキも乗っかり、こうして彼女の「救護騎士団」の人数が増えていったのである。
───山梨支部に時折やってくる幼女ネキ。だが、彼女の存在は黒札の未覚醒者にとっては大きな恐怖の存在になっている。「この時期になっても未覚醒のままだと危険だ。さっさと覚醒しろ」と未覚醒者に対して暴力を振るうことによって、彼らの覚醒を促しているのだ。だが、やはり未覚醒者に対して暴力を振るうのは問題があり、これに対しては彼女に思うところがある人たちはそれなりにいる。
そして、幼女ネキに暴力を振るわれた未覚醒者を治療する医療班である救護ネキも、やはり幼女ネキには思うところがあるらしい。
「幼女ネキ! あまり未覚醒者に暴力を振わないでください! 覚醒してないまま重症を負うと医療班が苦労するんですよ?」
覚醒さえすれば問題ないのだが、覚醒しない未覚醒のままではディア一発では治らない場合はよくありえる。そうなった場合は、当然のことながら医療班がオカルト治療もできない未覚醒者たちの治療にあたることになる。
「うむ! それはすまん! だが一番医療班に苦労と負担をかけているのは救護ネキじゃねぇかな!?」*8
「……まあそれはともかく! 幼女ネキとしては別に暴力を振るいたいのではなく『まだ未覚醒でいるのはまずい。何とか覚醒させたい』これでいいですか?」
あっ話を反らして目を反らした、と幼女ネキは心の中で呟いた。救護ネキ自身も医療班の皆に負担をかけている自覚はあったらしい。ともあれ救護ネキとしては幼女ネキのやりたいことのベクトルを反らして落ち着いたところに着地させたい、というのが本音である。彼女の本霊、テュポーンはスサノオなどと同じ暴風神である。暴風神は喧嘩っ早く、気まぐれな特性があるため、下手にやめさせるよりもベクトルを反らしたほうがいい、と判断したのだ。それに対して、幼女ネキは腕を組みながらむう、と不満げに唸りを上げる。
「むう。まあな。暴力に頼らない手段があるのなら、それをやるのもやぶさかではない。では聞こうではないか」
それを聞いた救護ネキは、自分の考えをかくかくしかじか、と提案を話すが、それを聞いた幼女ネキは、思わずえぇ……と引いた反応だった。
「……本当にそれでいいのか? その程度で覚醒できるとは到底思えないが……」
「まあ何事も実験・研究です。とりあえずやってみましょう。ダメならそれはそれで」
そして、それからしばらく後。修行場には幼女ネキとセツニキ、そして救護ネキと田舎ニキ……凍矢の四人の高レベルを持つ黒札たちである。セツニキと凍矢が呼ばれたのは、セツニキは指導者としての実力のため。凍矢はいざとなったらセツニキと協力して幼女ネキと救護ネキを抑え込むための役である。
ともあれ、幼女ネキが黒札の未覚醒者に対して時々暴力を振るっているのは知られているらしく、思わず怯えるがそれでもセツニキ、救護ネキ、凍矢の三人がいるということで、不安な顔ながらも即座に逃げ出すことはない。そんな不安がっている未覚醒者たちに対して、セツニキは落ち着かせるために彼らに声をかける。
「あー、とりあえず安心していいぞ。今回は幼女ネキが暴力は振るわない……振るったら俺たち三人で抑え込むからな。それは心配しなくていい。よし、幼女ネキやってくれ」
「よし。行くぞ。───破ァッ!!」
その瞬間、幼女ネキは未覚醒者たちに咆哮と共に本気の殺気と闘気を叩きつけた。それだけでなく、彼女の本霊であるテュポーンの咆哮も加わっている。テュポーンは神々ですらその恐ろしさでパニックになって逃げまわったほどの存在であり、その力を引き出した幼女ネキの殺気は、並の人間では魂が消し飛ばされる可能性すらあるほどだ。その威圧感を浴びせられた未覚醒者たちは、文字通り魂が消し飛ばされるほどの死に直面していた。
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
───死!!
そんな彼らの様子を伺いながら、んーと自分の頭を掻いてセツニキは呟いた。
「んー……。やっぱりダメかな……。これ以上やるとヤバそうだし、田舎ニキ防壁を展開して……」
「「「ああああああああああ!!」」」
幼女ネキの威圧によって魂的にギリギリまで追い込まれた彼らは、極限まで生存本能を刺激され、生き延びるために魂が押しつぶされそうなほどの威圧をはじき返すために、彼らは何とか覚醒を行うことができた。
体のあらゆる穴からあらゆる液体を垂れ流して地面に倒れて気絶している彼らに対して、セツニキはハマの術符を投げて彼らを浄化する。そんな彼らを凍矢が持ち上げたり背負ったりしながら、救護室へと運び込む。……まあ、今回のトラウマで【弱点:幼女ネキ】になるかもしれないが、ともあれ覚醒できれば儲けものだろう。どうにか覚醒した彼らを見て、幼女ネキはおお、と声を上げる。
「おお、本当に覚醒してる……。暴力に頼らなくてもこの程度で覚醒できるんだな……。いや悪かった! すまんな!!」
「それは私じゃなくて幼女ネキが今まで殴ってきた人に言ってくださいね」
そんないやー悪い悪い!とあっけらかんに言い放つ幼女ネキに対して、救護ネキは深いため息をついた。