「……私に講座を開いてほしい、ですか?」
凍矢が拠点としている旧公民館内部。そこには静専用の作戦本部とも呼べる部屋が存在し、霊的防御を施されたパソコンを通じて静はガイア連合の事務方のトップでもある「ちひろネキ」と遠隔会話を行っていた。
ガイア連合の事務方トップとはその職場上の関係で話すことは時々あるが、こうした指定を受けて直々に対面するとは珍しい状況である。しかし、相手はガイア連合の大幹部であり、静から見たら遥か上位の存在だ。非常に丁寧に彼女は対応を行っていく。
『はい! 我々ガイア連合としても貴女の有能さは非常に評価しています。で、その貴女のノウハウを他の名家にも教えていただけましたらと……。今我々が困っているのは『一般市民を纏められる存在がいない』ということです。そのため、一般市民が好き勝手言って黒札を疲弊させて、結局黒札たちが山梨へと撤退してシェルターが滅ぶ……。せっかくやる気がある黒札が無気力になるのは我々にとっても好ましくありません。そこを名家の皆さんが一般市民たちのまとめ役をやってくれて黒札たちをガードしていただけたらと……』
終末後、静率いる九重家のように、黒札の手によって復興した名家、または何とか終末を潜り抜けて生き残っている名家はまだそれなりに存在している。そして、それらの名家の役割は【組織運営】メイン、【ガイア連合の支部&シェルター運営】が主な任務となり、実際静の九重家もそのルートを辿っている。*1
そしてその名家の中でも、何とか終末を潜り抜けて生き残った名家を黒札の下につけて【組織運営】【ガイア連合の支部&シェルター運営】を行わせて黒札たちの負担を減らしたい、というのがちひろネキの本音である。
ふむ、と静は指を頬につけて考え込む。確かに最近では「一般市民たちが黒札たちに直接文句を言う→結果黒札が山梨支部に撤退」というパターンが多いらしい。これはショタおじはともかく、せっかく外に出ている黒札たちがやる気をなくすのは、ガイア連合にとっては好ましくない状況である。
そこでちひろネキたちが考えたのは「名家」を活用することである。黒札と一般市民の間に名家を挟み込ませて、名家たちに一般市民の統率を取ってもらう。それがちひろネキの考えであるが、当然のごとく問題はあった。
「……名家の私がいうのも何ですが、名家って皆死ぬほどプライドが高いですよ? 黒札様たちならともかく、同じ名家の私が講義しても聞いてくれるかどうか……」
『まあそういうプライドだけ高いの名家は終末でほとんど滅んだので……。黒札の血を取り込んだ名家としては勝ち組となった静さんなら他の名家も「聞く価値はある」と判断してくれるでしょう』
ふむ、と静はさらに考え込む。どの道、ガイア連合の黒札……事務方トップの依頼を「断る」という選択肢は彼女には存在しない。それは純粋に「断れない」ということもあるか、静自身も他の名家に対して影響力を強められるという実利的な理由もある。黒札の血を取り込み、黒札の子を産んだ彼女の家は千年の栄華は約束されているといってもいい。だが、それであまりにも恨みや妬みを買いすぎるのも良くはない。自分のノウハウを他の名家や、他の名家たちにメリットを与えれば、その恨みなども反らすことができるだろう。
「分かりました。けれど、タダで聞くほど名家も甘くはないでしょう。彼らにはそれなりの飴玉を……」
『ええ! 分かりました! きちんと【予算】をつけて講習を受けた人たちにはそれなりの褒美をあげるということで!! ……まあただ「講習まともに聞かずに適当に聞き流してアイテムゲット!」という輩も大勢いるかもしれませんが……』
「そうですね……。講習を受けたものたちには【傷薬】配布はいかがでしょうか。【傷薬】なら即時に役に立つ代物ですし、名家たちも大喜び。ガイア連合もそんなに困らないと思いますが……」
『マッスルドリンコも天使の数が少なくなった以上、そんなにポンポンあげれませんし……。受講した名家には【傷薬数個プレゼント!】【受講後には特別なプレゼントも!?】で釣ってみましょう。プレゼントは私と静さんで考えるということで……。通信講座よりも直接講座のほうが他名家も舐めてこないでしょうし……。慣れてきたら通信講座も考えてみましょうか。こちらでターミナルを使用してそちらに名家の受講メンバーを送る形にしますのでお願いします』
───学園のとある一教室。
そこには、ターミナルを使用してガイア連合から選出された様々な各地の名家の代表者(ガイアレベル1~5)たちが続々と集まっていた。彼ら彼女らは、黒札たちの活動しているシェルターに所属している名家の人々であり、一般市民たちを統率する役割を期待されている人間たちである。基本的に黒札の下について働くことを期待されているガイア連合が選んだメンバーのため、名家の中でもわりとマシな人々ではある……が、その中にはろくでなし寄りの人物も存在する。
それは、九重家の非常に低い「家格」を問題にするメンバーである。終末以前は非常に高い「家格」を持っていたメンバーたちは、静を見て反発をし出したのだ。
「我らはこんなクソ田舎の無名の名家など及ばない「家格」があるんだぞ!? 教えるだと? むしろそちらが土下座をしながら「教えさせてください」と言ってくるのが筋だろうが!!」
確かにそれは一面の事実ではある。名家と一言でいっても、その中でも「家格」が存在し、こんなド田舎の中のド田舎の九重家など家格としては吹き飛ぶような存在でしかない。
(なお余談ではあるが、静はこれを利用して根願寺の生き残りからの凍矢に対しての宮様の家族の警護の要請などを全て断ってシャットアウトしている)
だが、それも半終末までの話である。終末を過ごして黒札の妻となった彼女にとってはもはや名家間の家格など関係ない……というよりも一発大逆転した事実をまだ彼らは認めたくないのだ。
それを聞いた静は、その男性たちににっこりと微笑んで横凪の手刀を振るい、漆黒の衝撃波を叩き込む。
「ベノンザッパー!! (手刀&手加減)」
家の中の竈……つまり清浄を司る『三宝荒神』を奉じる静ではあるが、清浄を奉じるのならば当然その逆に蓄積された「穢れ」の排除にも向き合わなければならない。つまり、大気中の呼吸から体内に蓄積された汚れや穢れのMAGを排出する際に斬撃に纏わせて叩きつけるのは静の『ベノンザッパー』の原理である。
(当然ながら限度があり、黒死ネキと対面したときなど黒死ネキが霊力制御をちょっと揺らいだだけでも死にかかってしまうのは、この受け入れ量を軽く超えてしまうため)
ともあれ、静のベノンザッパーを食らった名家の人間たちは、悲鳴を上げながら吹き飛ばされていく。
シキガミパーツ移植によって、デモニカなしでもDレベル100オーバー……ガイアレベル30に匹敵する静の攻撃を、根切りされた名家の人間たちが防げるはずもない。
悲鳴を上げながら静を小馬鹿にしていた名家の人間たちは吹き飛ばされていく。正直、木っ端みじんに粉砕されていないのが不思議なぐらいである。しん、と静まり返った教室内で、静は皆に向かってにっこりと微笑みながら宣言する。
「……で? 他に何か言いたい方はいますか?」
その静の言葉に、皆は首を振るって否定する。溜息をつきながら、静はベノンザッパーを食らった人間たちにディスポイズンと傷薬をつけて治療しながら講義を再開する。
「私の私感ですが、外で活動されている黒札様はそれぞれの「大目標」があることがほとんどです。例えば「故郷を守りたい」「自分の身内が頑張っているので支援したい」「大事な人たちを守りたい」などが多いですね。
この「大目標」に対して粉骨砕身を行い、黒札様たちに徹底的に献身しフォローする。これがこれからの名家に必要不可欠だと私は考えています」
「強い黒札様がいれば「黒札様を決戦兵器とし、私たち名家がそれを徹底的にフォローする」という形も可能ですが……そうでない時も変わりません。黒札様はシェルター防衛の要と位置付けて「黒札様はシェルター運営の要、それを私たち名家が徹底的にそれをフォローする」という形が一番シンプルで分かりやすいでしょう。物事は何事もシンプルにやるのが一番です」
もっとも、自分自身で支部運営を行う魔人ネキや、協力して支部運営を行う琉球ニキたちはいるが、それは例外的だといえるだろう。黒札たちは上に存在してもらうだけ、実際の支部運営は名家の人々が行うのが大赦支部などでもメジャーではあるし、ガイア連合的にもそうなってほしい、というのが本音のところだ。
静は、ホワイトボードにマジックでキュッキュッと「黒札」と「一般市民」と書き込んでいく。
「終末後、黒札様たちと一般市民の間には大きな問題が出てきました。それは「一般市民が全ての不満を黒札様にぶつけていく」ということです。これによってシェルター運営を諦めて山梨に帰還した黒札様も少なくはありません。ガイア連合もこれには多いに頭を悩ませているところです。我々、名家に求められる新しい役割はこの部分「これら一般市民たちの統治&支部運営」にあります」
静はホワイトボードの「黒札」と「一般市民」の間に「名家」と書き込んでいく。つまり、黒札と一般市民の間に名家が入ってお互いの調整を行え、という意味である。そんな中、講義を受けている名家の代表の一人が手を挙げて静に質問を行う。
「……すみません。それは「どこまでOK」なんですか?」
「良い質問です。皆さんご存じの通りですが、我々名家のやっていることはヤクザも真っ青です。そして、終末以後の警察は単に民衆の統治機構となる……我々名家が警察として運営していく必要すらあるでしょう。つまり……「シェルター運営のためならば不穏分子の排除は問題ない」ということです」*2
その地方の名家は警察などにも強い影響を持ち、オカルト絡みの色々な事件を揉み消せるほどだった。
終末以後は、それぞれの警察は名家の指揮下に置かれ、民衆を統治したりオカルト犯罪に従事する事が多いだろう。つまり、「警察が名家の下につく」ということである。そうなれば名家のストッパーとなれるのは黒札ぐらいしか存在しないという形になる。
「つまり先ほどの質問の答えですが……「村八分や脅迫ぐらいなら十分許される」ということです。何なら「不穏分子ならばシェルターからの排除・始末」を行ってもどこからも文句はこない。そういうことになります」
むしろ中途半端に村八分にするとメシア教のテロの手先などになる可能性もあるので、排除してもどこからも文句はこないでしょう。大きな声では言えませんが、と静は小声で付け加える。実質的な恐怖政治としての側面もあるが、シェルターが崩壊&黒札がシェルターから撤退するよりは遥かにマシで人道的である、という考えである。
「とはいうものの、やりすぎてディストピア真っ青のシェルター運営を行うと、市民の不満もため込みますし、黒札様もドン引きしてシェルター運営をやめるかもしれません。ここはバランス感覚が重要になりますので要注意ですね。黒札様の価値概念からすると、基本的に一般市民への多大な弾圧・粛清は不評を買うのでやめておいたほうがいいでしょう。……やるならばれないように「事故」などを装いましょう」
なるほど、と名家の皆はメモを取ったり頷いたりしている。「不穏分子の排除」「一般市民の統治」は名家のお得意といっていいだろう。終末以前、名家はダークサマナーたちを活用したり、逆に邪魔なダークサマナーたちを秘密裏に排除を行っていた。その技術を応用して声を上げる市民たちに活用すれば、声を上げる市民たちは黙り込むだろう。そして、文句を言う市民たちを黙らせて、ほかの一般市民たちを名家の権威で統治し、シェルター内の円滑な支部運営を行う。これを行ってほしい、というのがガイア連合の考えである。
「締め付けばかりでは一般市民も不満を抱えてクーデター(無謀)を起こして黒札様を追い出す最悪の可能性もあります。ストレス解消なども必要になるでしょう。つまり「パンとサーカス」ですね。ここで問題になるのはCOMPやガイア連合製スマホを持っていない下級の一般市民になります。彼らは不満を抱えて黒札たちへの文句をいうかもしれません。そのため、ネットに頼らない娯楽を彼らに与えるのがいいと思います」
そこで静が出したのは『陰陽寮の日常』*3のTRPGルールブックである。TRPGならばCOMPがない人間たちでも十分に楽しめる娯楽となり、オカルトの勉強にもなる一石二鳥になる。(なおこれを見てそこに書かれたオカルト知識に白目になる名家が多数出た模様)
これを各地のシェルターに格安で配布するのがガイア連合……ちひろネキの考えである。
あとは、ショタおじ監修の【ヨガ教室】も映像媒体として各地のシェルターに配布され、ラジオ体操代わりや娯楽として行うシェルターも存在する。*4
正直、これで現地民たちが覚醒するのはちひろネキも期待はしていないが、まあダメ元である。……また、変わったところとしては、手足を切り取られて半死半生のエンジェルを脳缶ニキが作り出した何一つできない代わりに何があっても食いしばりが成功しつづけ絶対に死なない生存特化デモニカ【★サンドバッグ】*5に封印した「天使サンドバック」もあるが、これは一般市民の娯楽にするには皆ドン引きするため、実質封印状態になっている。(名家のストレス解消に愛用されるかもしれない)
「さらに、魚沼シェルターで作り上げたキクリ米の支給、並びにお菓子としてキクリ米をポン菓子*6化した『キクポン』を望むのなら格安で支給させていただきます。また魚沼シェルターの山内で作られた様々なオカルト食糧なども供給しましょう」
「後は、十日町シェルターの麻績屋媛神様*7たちが作り上げた「簡易霊服」も供給いたします。雪国であるこの地では霊服がないと凍死してしまうので……。高位の黒札様たちが作り出した霊服とは真逆の「低位霊能者を大量に使用した大量生産」*8によるものですが、少なくとも防寒性と着心地には特化したものになっています。これで衣食住のうち衣と食はカバーできるでしょう」
当然この食料・衣服支援を受け入れるということは九重家の強い影響力を受ける形になる……支配下に置かれるも当然という形になる。だが、それは各々の名家たちが判断することである。ともあれ、静は大事な事をホワイトボードへと書いていく。それはすなわち「黒札のリサーチ」である。
「とにかく一番大事なことは「黒札様のリサーチ」です。黒札様の大目標、好み、思考、好みの女性、食べ物などを徹底的に調べ上げ、それに沿った組織運営、シェルター運営を行い、黒札様の手を煩わせない。これが一番の大事なことです。黒札様の信頼を得られればもしかしたらその血も分けていただけるかもしれません」
実際、静は黒札専用の掲示板は見れないが凍矢から他の黒札たちの情報をそれとなく聞き出し、それをプロファイリングすることで、ほかの黒札たちに合わせた対応を行ってそれぞれの黒札の不詳を買わないように立ち回りを行っている。*9
そんな中、一人の名家の人間が手を挙げて発言を行う。
「はい! 一気に黒札様と仲良くなれる手段はないんですか!」
「そんな魔法のような手段があるわけないでしょう……と言いたいところですが、実はあります」
「「「!?」」」
ガタガタガタガタッ!! と一斉に名家の人間たちは立ち上がる。黒札とお近づきになれる手段など各名家が血眼になって探し求めている(そしてやりすぎて嫌厭される)情報である。それをここで聞けるとあれば、それは目の色を変えるのも当然であった。
「まず、黒札様は基本的にエンターテインメントを好む傾向があります。漫画、ゲーム、アニメなどなど……。それはガイア連合が娯楽作品に非常に力を入れていることからも明らかです。各名家にもいわゆる「オタク」と呼ばれる人間がいると思いますが、そのオタクの人間に黒札様が好む娯楽作品を見せて、お互い共通の話題で盛り上げさせる。こうすればより黒札様と仲良くなれる可能性が高いですね。……まあ相性にもよりますが。それぞれの黒札様がどんな作品を好むかはそれこそきちんとリサーチしてください、としか」
とはいうものの、静が言っているのも別に特別な魔法でも何でもない。つまり「共通の話題で盛り上がって親しくなる」という実に基本的なことである。それに加えて「黒札はエンターテインメントを好む」というのを付け加えただけだ。もちろん、これは黒札に対しての無礼や非礼を行わないということが前提になる。そして、次に当然名家が考えるのは「親しくなればその血を取り込めるのでは?」という考えである。
「まあここで「じゃあ美少女にオタク知識を詰め込めば!?」と考える人も多数いるでしょうが……正直ギャンブルですね。オタクは付け焼刃知識のオタクを好まない傾向にあります。専門家には専門家。きちんとしたオタクを差し向けたほうがいいと思いますが……その辺は好きにしてください。(投げやり)」
いかにもオタクという外見よりも、整った外見のほうが惹かれやすいのは事実。しかし付け焼刃オタク知識では嫌われる可能性もある……が、その辺は各々で考えて好きにしろ、というのが静の考えである。*10
黒札様と何がトラブルがあっても、全てそちらの責任で私には関係ありませんので、ときちんと静は念を押すが、それに対しても質問が来る。
「あの、エンターテインメントに興味のない黒札様のパターンは……?」
「……他にも何か好みがあるのでそれを探し出してください、としか。何度もいうようですが、「きちんと黒札様のリサーチをしろ」これが答えになります」
「……ともあれ、ここまで講座を聞いていただいた皆さんには約束通り褒美を与えましょう。まずは私の(強調)黒札様から作成していただいた武器『凍刃』*11を皆さんに一振りずつ供給させていただきます。こちらは特殊な調整を行って冷気を放って相手を『FREEZE』と呼ばれる状態異常にする事に特化されています。役に立ててください」
うぉおおおお!! とその場にいる名家の人々は大盛り上がりする。黒札自身が作り出した武器など、ガイア連合の量産型武器でも神器なのにそんな武装を喜ばないはずがない。
この武器は以前イギリス支部に供給したものと同じであるが、『マハブフ』を放てる事、そして相手を極めて高い確率で『FREEZE』の状態異常にさせることに特化された武装である。これを使用すれば、これ一本だけで一般市民の反乱などは軽く鎮圧できるだろう。黒札直々に鍛え上げた剣など、まさに神器中の神器である。(実際はただの数打ちの量産型)
しかも、静が彼らに与えるのはこれだけでなかった。
「それに加え、それぞれに一人ずつ一個(一般市民鎮圧用の)霊的武装が与えられます。これをどうぞ」
まずは、メシア教の防魔スーツ*12を参考にしてガイア連合が作り直した【ガイア連合性防魔スーツ】装甲を呪鉄に換装し、さらにムド系列の効力を持つ漆黒の呪殺塗装で塗り替え。メシア教の対魔スーツと識別するために、両肩にガイア連合のマークをデカデカと彫り込んであるが、それだけではなく悪魔にも効果を持つ神経ガス発生装置……シバブーの効果を持つガスを発生させる『デビルパライズ』が装備されており、一般市民鎮圧に特化された武装だ。
「そして【呪言拡声器スピーカー】これは「動くな」ということで多方面に【シバプー】をかけることができます。これも一般市民鎮圧用に開発されたものです。あとは……」
うぉおおおお!! そいつをよこせー!! と一斉に名家の人間たちは静の元へと押し寄せてくる。こんなアイテムなど喉から手が出るほど欲しいのが名家の状況なのだ。そんなものを目の前にして我慢などできるはずもなかった。そして、そんな暴走する彼らに対して、静は再び手刀を振るい、漆黒の衝撃波で彼らを鎮圧していく。
「ベノンザッパー!! (本日2回目&手刀&手加減)」
暴走する名家たちにベノンザッパーが叩き込まれ、わーぎゃー騒いでいる彼らに、静は思わず深いため息をついた。
「言っておきますが……凍刃を乱用・悪用して民衆を苦しめるということは私の黒札様の名誉に泥を塗るということ。その時は問答無用で粛清にかかりますので、そのつもりで運用してくださいね」
にっこりと威圧をかけながら微笑む静に対して、他の名家たちはアッハイ、と答えるしかなかったとさ。
〇今回とはあまり関係ない余談。(ニュースで見かけたので)
「……糸魚川で翡翠やアマテラス石だけでなく「ラピスラズリ」が発見された?」
ヒスイだけではなく新たな鉱物である「アマテラス石」も発見され、九重家の重要な資金源にもなっている糸魚川のヒスイ海岸。そこでさらに新しく「ラピスラズリ」すらもヒスイやアマテラス石抽出作業中に発見されたのだ。
探求ネキが作り出した肉体系・精神系状態異常の無効化と、簡易式神による防壁を展開する三つの勾玉で構成された大和の首飾り*13などの原料としての翡翠生産やアマテラス石*14生産などを行っている。
「うーん。確かラピスラズリは強い魔除けの力*15もありますし、翡翠との親和性も高いですから、ラピスラズリと翡翠で魔除けのネックレスとか作ってみますか……。いわゆるステータスアップ宝石でないのが残念ですが」
なおこの後、脳缶ニキたちと一緒にいるいわゆるエジプト勢力*16からラピスラズリを物凄い勢いで求められて困惑する静の姿がありましたとさ。