──とあるシェルター。ここは武装商人「キャラバン」たちが出入りする街道の要衝。いわゆる『キャラバンシェルター』である。このシェルターにはキャラバンたちが立ち寄るため、またはキャラバンたちの武器補充のために様々なオカルトアイテムが集まり、それらを再利用して簡易オカルト武器が闇市などで販売されている。
そして、覚醒したばかりで何もツテも金もない人間たちは、それらジャンク品の山から作り出して簡易オカルト武器などで武装して悪魔を倒すための活動を行ったりするため、日々ジャンク品漁りを行っているのだ。
「はあ、失敗したなぁ……」
そんな中をとぼとぼと歩く一人の新入りデビルバスター(ガイアレベル2)彼はジャンク漁りをしている際に「デモニカコア」を二つ発見。喜び勇んで購入したのはいいが……そのデモニカコアは不活性であり、うまくすればジャンクデモニカが組めるかもしれない! という彼の目論見はあっさりと失敗した。
お金はほとんど費やしてしまったし、このデモニカコアを転売できないかなぁ……と彷徨っている中、とある場所に不可思議なドアがあるのを彼は発見した。
わりとこのキャラバンシェルターに長い彼ではあったが、こんなところにこんなドアあったっけ? と首を傾げながら、彼はそのドアノブに手をかけてみた。
「ようこそ!! ウェルカムでぁああある!! この吾輩の(超簡易型)霊装販売店に来れるとは運が良いな!!」*1
「ようこそロボ~。ここに入れるとか運がいいロボね。せいぜい買いだめをしていくがいいロボ!!」
手にしたギターをかき鳴らしながら入ってきた現地民を出迎えるのは白衣を身に纏った緑髪の青年。そして少女の姿をしたアンドロイドのような少女。それは黒札の技術班の一人である『ウェストニキ』と彼のシキガミである『エルザ』である……が彼は黒札である事を隠して(隠せているとは言っていない)キャラバンシェルターの現地民たちに対して低レベルの武器や装備を販売しているのである。
ともあれ、黒札であることを隠しながら、ウェストニキは迷い込んできた現地民の男性に、店内の武器を紹介していく。ずらりと並んだオカルト金属で作られた「大盾」や多数の「マチェット」を紹介していく。
「まずは、金属樹(鋼)から作り出された『金属樹大盾』に同様に金属樹から作り出された『金属樹マチェット』この辺は癖のない武装であるから貴様ら現地民……げふんげふん、新入りデビルバスターには適した武装と言えよう」
金属樹(鋼)から作り出された大楯やマチェット、棍棒などは呵責鋼などとは異なり、特定の相手に特攻を与える金属ではないが、特別性がない分スタンダードで極めて使いやすい武装であり、新入りハンターには適した武装といえるだろう。*2
次に彼が取り出したのは、独特な色合いをした金属で構築された警棒……つまり『呵責鋼警棒』である。
「そして、お次は『呵責鋼警棒』*3であるな。これは対アンデット・亡者であるから物理攻撃が通じにくい亡者の類でも通用しやすい霊装武器であ~る!! 『金属樹武器』とはどちらが良い? それは貴様の好みやシェルター周囲に出てくる悪魔次第だな。悪霊や屍鬼、アンデット系が出るのが多いのなら『呵責鋼警棒』のほうがお勧めであ~る!! まあ低レベル帯では悪霊や屍鬼が出ることが多いから『呵責鋼警棒』の方が良いような気がするがその程度だな」*4
ふむ、と彼は武器を見ながら頷く。今までジャンク品に慣れている彼は、やたら品ぞろえのいい店に思わず不信を覚えてしまうが、シェルター内部なら悪魔の陰謀というわけでもないだろう……と判断し、開き直って武器の選定を行い、天使たちに対して効果的な「怨嗟鋼」武器はないのか、とウェストニキに対して聞いてみる。
「む? 怨嗟鋼系武器であるか? あるはあるがもう少しレベルアップしてからのほうがよいぞ? 貴様のレベル(ガイアレベル2)では怨嗟鋼の影響を受けかねんからな」
ほかにも様々な武器を紹介したあとで、ウェストニキは今度はいわゆる「遠距離武器」の解説を始める。当然のごとく、様々な遠距離武器があるが、ウェストニキは低レベル現地民向けの(失敗作の)銃を紹介していく。
「まあ、それはともあれ、貴様ら現地民……げふんげふん、新入りハンターには適した遠距離武器はこれとかどうかな? 『FP-45リベレーターMAG銃』だ!! コイツは空気中の気体やMAGを概念物質化して霊力で撃ち出す銃(単発)である!! コイツならば銃弾の問題はない! 銃弾の問題はないのだが……超簡易型MAG無限銃にした結果『一発撃ったらしばらくチャージ時間が必要』になってしまってな……実質的な単発銃だな!!」
『FP-45リベレーターMAG銃』これは雑魚散らし用の『MAG無限弾銃』を極限までコストを削減&簡略化して銃弾問題で悩む現地民たちに対するために作られた銃ではあるのだが……簡略化しすぎて『一発撃ったチャージ時間が必要』という実質的な『単発銃』になってしまった代物である。
低レベルの現地民に対してこれくらいでいいだろ! と考えたのだが、さすがに単発銃はうーん……と考え込む彼に対してウェストニキは他の銃を推薦する。
「ふむ、ならばロボ部の廃材を流用……もといリサイクル……いや作成した『M3サブマシンガンMAG銃』とかはどうかな? これはMAG無限弾銃を単発ではなくコストを削りながら」
その特徴的な形状から「グリースガン」と言われているM3サブマシンガンの形状をしたMAG銃であり、こちらは連射が可能、しかも実質弾切れが存在しないMAG銃である。非常に単純化・合理化されたメカニズムであり、実戦で試してみたらその実用性が証明され、取り回しが良く、信頼性の高い銃で愛用されることになるが、試作品状態である現状ではまだまだその実用性は不明である……のでこうして現地民で実験を行っているのだ。
(キノネキ*5はあまりMAG銃には興味なさそうであるからな……。こうしてMAG銃の試作・実験も行っておかねばな。シェア確保もあるが……ま、吾輩が面白そうだからであるな!! 巨大化すればロボ部の兵装にも使えそうだし!!)
しかし、巨大ロボが使うほどの巨大なMAG銃では逆に小規模の人間が使う分のMAGが吸い取られてMAG銃が撃てなくなる可能性もある。ロボと兵士たちの味方の間でMAGの奪い取りになるのはよろしくないし、いざとなったときに撃てなくなるのもよくない。やはりロボの大型MAG銃はあきらめるべきか……。と思いながら現地民からしたらまさに宝の山に目を輝かせながらあれもこれも! と手にしている彼を見ながら、ウェストニキはうんうんと頷く。
(外見だけジャンクにした中身は新品のデモニカを与えてもいいのだが……。毎回だと面白味がないであるからな!! たまに与える程度にしておくか!!)
ともあれ、そうして色々な武器や大盾、MAG銃を手にしてほくほく顔の現地民の彼は、そういえば金が全くなかったことに気づいて思わず絶望の顔になる。運よく掴んだこのチャンス。何としても逃すわけにはいかない彼は土下座しながらお金は借金で後払いで何とか! と頼み込む。とはいえ、現地民はいつ死んでしまうかも分からない。後払いや借金など論外である、とふん、とウェストニキは鼻を鳴らす……がその代償としてウェストニキが求めたのは彼が手にしていた「デモニカコア」だった。
「ふむ、では貴様がもっているそのデモニカコア2つと代償に貴様が望む武器や大盾を販売しよう! それでいいであるな?」
彼からすれば役立たずの起動しないデモニカコアでジャンク品以上の良質な武器を手に入れる事ができるのだ。手放さない理由などどこにもなかったのである。
仲間のために金属樹大盾、金属樹マチェット2つ、そして、M3サブマシンガンMAG銃と他のデビルバスターたちが知ったら驚くほどの武装を購入できてほくほくの彼は、せっかくだから低レベルでも簡単に強くなれる方法はないのか? と聞いてくる。これほどの武器を大量に所有しているウェストニキに対して只者ではない、と判断したのだろう。それに対して、ウェストニキはふむ、と考えながら言葉を放つ。
「あとは手にした武器で悪魔を200体か300体ぐらい倒すことだな。これによって武器熟練度が上がればその分攻撃力も増加する!! 最大で最大23%ほど攻撃力が上がるはずであーる!! え? そんなに倒せない? まあそこは気合と根性で生き延びてもらって……。*6」
そんな感じでデモニカコアと代償に武器や防具を手にして帰っていった彼を見ながら、エルザは不思議そうにウェストニキに対して問いかけていく。
「でも博士、何でこんな事するロボ? 利益っていうか儲けなんて出てないところか大赤字ロボよ? それでいいロボ?」
「フッ! そもそも吾輩は『面白そう』だからやっているだけの話であ~る!! あんな貧乏人に出せるものなどないのは承知の上!! 面白武器もあんなよわよわな奴らに押し付けたら使いこなせずにあっさり死にそうであるからな!! もう少し強くなってまた来店したら面白武器でも売りつけてやるとするか!!」
ウェストニキは手にしたデモニカコアを上機嫌そうに眺めながら、それを工房の内部にある特殊なオカルト機械へと放り込む。現地民からしたら単なる不活性のデモニカコア。だが技術者の黒札から見たらまた違うのである。
「フッフッフ……。現地民たちでは不活性で不要とされるシキガミコア……。だが吾輩たち技術班にとってコイツの使い道は十二分にある!! コイツはな、つまり『中身がパンパン』……MAGが溜まりすぎていて再起動できない状態だ。ならば話は簡単!! 溜まったMAGを全て抜いてやれば『まっさらなシキガミコア』の誕生であーる!!」*7
デモニカとして悪魔と戦ったり、破損してデモニアコアとしてジャンク店で販売されているデモニカコア。
これは普通に不活性になって起動しない場合も多いが、大半はデモニカコアに多数のMAGが溜まりすぎて起動しない状態であることが多い。そして、ここからMAGを抜いて再起動する技術は現地民たちは普通持っていない。
その不活性……正確に言えばMAGが溜まりすぎて起動しなくなったシキガミコアを、ウェストニキは特殊な大型オカルト機械……MAG抽出機にかけて、スイッチを入れる。
シキガミコア内部に蓄積されたMAGや概念は無理矢理初期化しようというオカルト機械に抗い、吸い上げられた概念は『悪魔に対しての恨み』をコアにして初期化に無理矢理あらがおうとする。
そして、バチバチバチ! と火花が飛び散る中、その想いをコアにして概念が物質化する……つまり『魔晶変化』と原理としては似たような現象が起こっているのだ。
この原理は元は凍矢がもっていたのが黒死ネキに所有権が渡った『ジャッカルP』のようなレアな兵器が生まれることがあるので、決して軽視していいものではない。
そして、やがてMAG物質化装置からデモニカコアから抽出したMAGが物質化され、ボン! と爆発するように機械の中から濛々とした煙と共に物質化した武器を見ながらウェストニキは満足げに頷いた。
「ふむふむ……。今回は『スクレップ』*8と『死神コルト』*9であるか!! わりと大当たりであるな!!」*10
こうしたデモニカコアやデモニカを初期化する際に発生する武装は、かなり強めの武装になることになるため、黒札たちの間でも重宝されている。『死神コルト』は修羅勢が手にしても十分に役に立つ武装のため、高く売れる可能性もある。それだけで十分この店の赤字垂れ流しがペイできるほどだ。
現地民たちは武器を手に入れてウハウハ、吾輩たちは強い武器とまっさらな再利用できるデモニカコアを手に入れられてウハウハ。まさにウィンウィンであるな! とウェストニキは呟いた。
(なお普通に動かないデモニカコアもある模様)
ともあれ、こうやって地道にデモニカコアを回収→レア武器製造→デモニカコアの再利用は十二分にガイア連合の戦力の底上げになる。現地民も侮るべきではないな! とウェストニキはそう考えていた。
「やあ、お邪魔するけどいいかな?」
そんなあれやこれやを行っているウェストニキの工房の中にあっさりと入りこんでくる一人の人間がいた。
怪しい商人の格好した彼の名前は黒札の一人である『MMTニキ』*11
彼は人魚ネキのシェルターである『夜神シェルター』内部で黒札ではなく金札を装いながら多脚戦車を販売している人物である。メインは多脚戦車ではあるが、いわゆる有り合わせの武装で作った『ジャンク品』なども販売しており、実質、夜神シェルターの『キャラバンエリア』の顔役であると言える。
「む? MMTニキであるか? ふむ、貴様の要望通りロボ部の廃材を再利用した『リサイクル武装』は山のように作ってみたが……これでいいのであるか?」
そんな彼に対して、ウェストニキはずらり、とオカルト金属で作られた様々な多種多様な武装を並べていく。これはロボ部で大量に出てきた劣化金属……いわゆる『廃材』を溶かしなおして再加工した『リサイクル武装』である。当然のことながら、ロボ部では装甲やフレームや部品など極めて大量のオカルト金属を必要としている。
そして、戦闘などでボロボロになった装甲などいわゆる『オカルト金属廃材』も大量に出る事になる。それら大量のオカルト金属廃材を分別、再度炉心で溶かしなおして剣やメイス、大盾などに鍛えなおした『リサイクル武装』(分類としては簡易品?)は現地民にとってまさに最適な武装といえる。
簡易品より安く、普通のジャンク品より強力な武装など、まさに現地民にとって喉から手が出るほど欲しい武器なのだ。
「ああ、感謝する。ん? 何だかやたら多くない?」
「ああ、ウチ……魚沼シェルターの黒札の一人である『スピードキングニキ』*12が呉支部と交渉してな。今度魚沼シェルターに呉支部型のロボ工場を小規模ながら誘致することになったのであーる。で、ついでに呉支部から出てくる廃材処分を引き受けて、それをリサイクル武装に改修した分であるな」
魚沼シェルターでも実験的ながらクロスボーンガンダムなどといった呉支部型のロボの運用を行っているため、どうせなら小規模でもいいから誘致しよう! と呉支部に働きかけたのがこの『スピードキングニキ』である。彼としては「これだけやったんだからもうスピードキングニキじゃなくてサナリィニキに名前変えてくれよ!」など言っているが、大半の黒札にとってはどうでもいいことであった。
これら『リサイクル武装』は武装商人集団『キャラバン』達が集まりやすい街道の要衝にあるシェルター……キャラバンシェルターの一つである魚沼シェルターにとっても重要な交易品であり、魚沼シェルターから各シェルターへと交易品として流されている。
そして、それらをウェストニキからMMTニキに渡す代償として、ウェストニキはMMTニキに『あるもの』の作成を依頼していたのだ。
「ところで、MMTニキ。例のものは作ってくれたであるか? まあ吾輩が作ってもいいのだが……やはり本職に作ってもらうのが面倒がないのでな?」
「ああ、注文受けた奴……『火炎放射多脚戦車』だろ?
人誅ニキ*13が作り上げた量産型火炎放射器霊装『煉獄招致ルビカンテ』を多脚戦車に搭載しただけのあまり面白味はない戦車であるがな。KSJ研究所がつけたように戦車に触手でもつけてみるのはちょっと……」
「火炎放射戦車」とはその名前の通り戦車に火炎放射器を搭載した戦車である。陣地攻撃、森や建物・塹壕に潜む敵兵のあぶり出しなどに使用された戦車であり、立てこもった敵を炙り出す陣地攻撃のその効果はまさに絶大であった。ではなぜ運用されなくなったのかといえば「射程が短い」という最大の欠点があるからである。
人誅ニキがよく使っている『煉獄招致ルビカンテ』をポン付けしただけの多脚戦車だが、その火炎放射の内臓量は通常よりも遥かに多い。
「……ところで、何でウェストニキはこんなの注文したんだ?自分でも作れるだろうに。」
「いや、ネットで火炎放射戦車のネタが流れてきたので何となく面白そうだったから作ってもらっただけであるな!!*14どうせなら人誅ニキに投げて試験運用でもしてもらおうかな、と。吾輩は常に「面白そうだから」以外のことでは動かない人間である!!」
さよけ、とMMTニキはウェストニキのその言葉を軽く流していった。
再利用金属をきちんと綺麗にしてブロック状に再加工して人魚ネキの双子に「ジャンクおやつ(ポテチみたいな感じ)」にするのもありかも。
でも衛生的にアレかぁ、となったので取りやめかな。