あと真女神転生TRPG覚醒版も真女神転生3TRPGもゲットしました!!やったぜ。
──我が家は先祖代々誇り高き『メシアン』である。
正確に言えば、先祖代々江戸時代から『隠れキリシタン』であり、日本の敗戦時からはずっと『メシアン』を続けてきた誇り高き『メシアン家系』である。*1我々はメシアンであることに誇りを持っていた。母は行方不明だったが、優しい敬虔なメシアンである父の育てられた私は、正義感溢れる子供へと育っていた。
世界に蔓延る悪徳を行う悪魔どもを平定し、唯一神様に選ばれた聖戦士たち!! 我々こそが衰退してしまった日本名家*2に代わり、荒れた日本*3に霊的秩序をもたらし、そして世界に平和と愛をもたらすのだ!!
もちろん『頑迷』で『分からず屋』の日本名家や霊能者には苦労しているが……だがそれも我々メシアンが頑張っている姿を見れば考えを考えてくれるはず!! この半終末で悪魔が跳梁跋扈するなか、我々メシアンこそが人類守護の刃なのだ!!
そう教え込まれ、覚醒を迎え、この世のものとも思えない美しい天使様に祝福され、聖別された武器を手にした私のテンションは最高潮に達していた。そして、天使様に祝福を受けて父親に大いにお褒めの言葉をいただいた私は、案内されるがまま地下の部屋へと向かった。
……そしてそこでは父親が少女にのしかかって腰を振っていた。
「……は?」
現状が理解できずに私は固まった。それだけではない。私を祝福したこの世のものとも思えない天使たちも皆揃って少女たちに対して腰を振っていたのだ。エンジェル様、アークエンジェル様のみならず、ホーリーゴースト様までいわば「ゴブリンみたいな子供」のように女性にへばりついて腰ヘコを繰り返す有様だ。
そんな固まっている私に対して、父は言った。天使様の命令により、お前は『聖母』になるのだと。
まずは優れた霊能を持っている父親である私と優れた霊能を持った娘であるお前との間でより優れたメシアンの子を生み出すのだと。
それだけではなく、天使たちの間に優れた子を生み出すのだと。
そう笑いながら叫ぶ父親の頭には『無数の小型の天使が生えていた』
耳から目から頭から無数の天使がうじゃうじゃと生えて蠢いている姿はまさに悍ましいの一言だった。
それは脳に埋め込まれた「天使の羽根」が相性が良すぎて成長してしまい、脳自体が「天使」になってしまったらしい。天使たちの乱交、父親の乱交、そして父親に犯されそうになる自分。今の父親の惨状。
そんな悍ましい地獄のような光景に気絶しかかっていると、ギィとドアが開けられて『何か』がコロコロと音を立てながら数個のボール? のようなものが部屋へと入ってくる。
「?」
現実逃避気味にそれを見ていると、そのボール? からカシャッと音がして表面のあちこちスライドして穴が開くと同時に、振動音と共に霧のような物体がブシュー!! と排出されていく。複数のボールから噴出されたその煙はたちまち部屋内部へと立ち込めていく。
「ギ……ギィイイイ!!」
その煙? を吸った瞬間、ゴブリンみたいに腰ヘコを繰り返していたホーリーゴーストたちはたちまちバルサンを食らったゴキブリのように倒れて次々と消滅していく。この時の私は知る由もなかったが、それは「ノロイ酒」と呼ばれる特殊なムド系列の力が込められた酒をミスト化して大気中に散布するシステムだったらしい。使い勝手を高めるためにボール状にして内部にノロイ酒を入れて転がして使用するのだとか。
ともあれ、そんな予想外の事態にエンジェル様たちが混乱している中、全身を金属製のヨロイ? に包んだ兵士たちが次々と突撃してきた。
「制圧開始!! GOGOGO!!」
「女性は焼くなよ!犠牲者の可能性がある!そのほかは……汚物は消毒だぁあああ!! 」
全身を覆い隠すようなヨロイを身にまとって火炎放射器を背負っている兵士たちは、連携の取れた行動でエンジェル様たちに対して容赦なく呪炎ともいえる業火を叩きつけて焼き尽くしていく。女性にのしかかっているエンジェル様たちは、引きはがして銃剣で刺し殺したり、銃撃を叩きこんで殲滅していくその姿は、兵士としての訓練が取れた動きである。閉鎖空間で火炎放射器は実に効率的な殺戮兵器となりうる。特に強力な呪詛の力? を秘めているその呪炎は実に効率的にエンジェル様を次々と火達磨へと変えていったが、犠牲者である女性たちには不思議と影響を与えていないようだった。
だがそれでも酸素不足と熱波までは別である。しかもおそらくは可燃物である酒をミスト状にしておいて、閉鎖空間で火炎放射器などただですむはずはない。エンジェル様たち以外のそんな彼女たちを、その兵士たちは効率的に連携を取って救出していった。
そして、いきなりの乱入者に怒り狂ったのは槍と盾を持っているアークエンジェル様だ。
「貴様らぁ!! 我らの楽園に土足で入り込むとは!! その愚かさを……ぐばぁ!!」
そのアークエンジェル様を一刀両断で叩き切った日本刀? を持った丸メガネの青年? はアークエンジェル様を鋭い瞳で睨みつけると、懐から呵責鋼製の小さな『鋼鉄の処女』を取り出して、アークエンジェル様を吸い込んでいく。
「俺の目の前で女の子を凌辱しようとは……いい度胸してるネお前。貴様は沖縄支部に引き渡して地獄を味わってもらうヨ」
……それを最後にして、私の意識は途絶えていった。聞いた話によるとこの戦闘部隊はガイア連合のメシアンスレイヤーである『人誅ニキ』様の『人誅組』とのことだったらしい。次に目を覚ましたガイア連合系列病院内で治療を受けている中、今まで教えられてきたメシアンの教えとのあまりの落差。エンジェル様たちの乱交。悍ましい姿に変貌した父親の姿とその行為。そして私たちを救助してくれた『人誅ニキ』様から見せられた、沖縄支部の方たちが集めたメシアンたちのやらかしを映した『黒の章』の一部を見て、私の出した結論はこうだった。
「やっぱり……メシアンってクソですね」
こうして「私」はメシアンを捨ててメシアンを憎む『メシアンスレイヤー』になることを決意したのだ。
ともあれ、そんなこんなできちんと棄教術式や霊的契約でメシアンを捨てる事を宣言した「彼女」は人誅ニキのコネを使って、魚沼シェルターの「鳥煮亭総合学園」へと放り込まれる事になった。
覚醒したばかりの彼女にはまだまだ戦うための力がない。この学園でメシアンを倒すための力を身に着けろ。人誅ニキの言いたいことはそういうことらしい。確かに覚醒したばかりのレベル1の人間にはまずはレベル上げと戦うための力を身に着けるのは、メシアンたちと戦うためには絶対に必要である。
しかし、ここで「彼女」はメシアンスレイヤーとして一つの大きな問題を抱える事になってしまった。
……「彼女」の前に突き立てられているのは一種の妖刀とも呼べる剣。それは沖縄支部が作りだした『怨嗟刀』である。彼女からしたら近寄れないほどの凄まじい怨嗟の霊力を放つ一振りの刀。それはまさに『妖刀』『魔剣』の類そのものだった。普通の覚醒者なら振るうことも簡単にできないが、近寄ることすらできないのが彼女の霊的才能の偏りを表していた。
「……!!」
それでもどうにか死に物狂いで近寄って握った瞬間、彼女の掌の皮膚がジュオッ! と焼けただれ、ぐずぐずと腐れ落ちる。怨嗟刀の呪詛が柄を通して彼女自身へと流れ込んでダメージを与えているのだ。試しに手袋をして握って見ても、その切断力は包丁以下。むしろ手袋自体が焼け落ちて、握っている彼女にダメージを与えているほどである。それは、怨嗟刀の力が持ち主自身である彼女を「敵」と認定しているからに他ならない。
これは怨嗟刀だけではない。ほかの呪詛系装備……蟲毒皿やノロイ米などといった装備もほとんど手にすることができない。これこそが彼女の悩み『強い呪詛系の装備を手にすることができない』ということである。
呪詛系の弾丸など、彼女に反発して銃を握った瞬間弾丸が暴発するレベルである。
「これじゃメシアンや天使たちをスレイ出来ないじゃないですかヤダー!! 全然メシアンスレイヤーじゃないじゃないですかヤダー!!」
手のひらの治療を受けながら「彼女」は呪詛系装備と極端に相性が悪い霊質の自分自身を呪っていた。そんな彼女の手のひらを霊水で癒すのは「鳥煮亭総合学園」のトップで守護神ともいえる存在「スライム(仮)」である。元々は凍矢の分身体作成の失敗作であったが、捨てるのも勿体ない、とそのまま「鳥煮亭総合学園」の守護者兼教育者としての役割を本体である凍矢から命じられた存在である。「彼女」が怨嗟刀からダメージを受けているのを見て、スライム(仮)は冷静に状況を分析した。
「ぷに。(うーん。これは怨嗟刀が君自身を「敵」としてターゲットしているね。多分呪詛系やムド系のアイテムは無理そうな予感)」
ともあれ、「彼女」からすればメシアンや天使を倒したいのにこのままでは話にならない。しかも神道や仏教や魔術系列なども習ってみたが、どれを取っても「彼女」にはその才能がなく頭を抱える状態だった。そこで頭を悩ませたスライム(仮)はとある女性を呼び寄せることにした。
「私をお呼びになりましたか? ああ、こちらは初めましてですね。よろしくお願いいたします」
そうして、スライム(仮)が呼び寄せたのは「一神教調和派」に所属する元メシアンである「歌住桜子」である。(黒札サクラコとは別人。というか黒札サクラコから直接指導を受けた弟子ともいえる存在)今は完全に棄教しているが、それでも元メシアンということでメンタルケアをしてるくれるだろうという考えと「とある事」を試してもらいたくてスライム(仮)は彼女を呼び寄せたのである。かくかくしかじかと説明すると、桜子は眉を僅かに歪めて言葉を返す。
「……なるほど。分かりました。ですが今の私は棄教術式の際に「アレ」も完全封印しています。スライム(仮)様の権限でその辺の術式を緩めていただけると……」
「ぷに。(了解。何かあったら俺に言ってくれればカバーするから。本体にもきちんと伝えておくから)」
元メシアンでありながら完全棄教を行い、一神教調和派として懸命に働いてきた桜子は黒札たちの中でもそれなりの信頼は置かれている。今回は下手をすればその信頼が揺らぎかねない事にもなりかねないので、黒札の分身であるスライム(仮)ときちんと打ち合わせを行っているのである。
そして、スライム(仮)は黒札権限で桜子にかけられている「完全棄教」の術式を一部弱める。
「ぷに。(それじゃ「アレ」やってみて。もしかしたら「アレ」に才能があるかも)」
「……正直あんまりやりたくないんですけどね。事実上封印していますし、棄教術式にも反応しますし。まあ本格的に使用するのではなくて、相性を見る程度なら大丈夫かな……」
そして、一部術式を弱められた桜子は「とある術式」を「彼女」へと教える。そしてその術式を教えられた「彼女」は、桜子に差し出された聖書の一文を詠唱する。
「そのとき、【主】は硫黄と火を、天から、【主】のもとからソドムとゴモラの上に降らせられた。こうして主は、これらの町々と低地全体と、その町々の全住民と、その地の植物を滅ぼされた。」*4
その術式を使用して聖書の一部を詠唱した瞬間、「彼女」から力が迸り、それは「万能」の力……つまり「メキド」の力となって目標を破壊した。今まで何をしても全く力を発揮できなかった自分がいきなりこんな凄まじい力(レベル一桁基準)を発揮できるなんて!! その力に思わず酔いしれても何も不思議ではなかった。
「す、凄い!! 私にこんな秘められた力が!! この力があればメシアンなど!!」
しかし、それに反してスライム(仮)と桜子はあちゃーという感じで頭を抱えていた。え? もしかしてこの力は何かの厄ネタ? 一神教寄りの力でもかまわない!! この力ならばメシアンを狩れる強力な力になれるはずだ!! と思っている彼女に対して、スライム(仮)は言い放つ。
「ぷに……。(君の才能は……『メシアン』です)」
「……は?」
そんな「彼女」に対して桜子は悲痛な顔で再度事実を宣言する。
「貴女の才能は『メシアン』です。しかもずば抜けたメシアンの才能を持っています。メシアンならば貴女はまさにエースオブエースになれるでしょうね」
「いや────!!」
その言葉に「彼女」は思わず頭を抱えた。
……黒札たちに才能があるように、現地民たちの中にも霊的な才能が存在する。その霊的な才能を生かして伸ばせば黒札ほどの強さになるのは難しいが現地民でも「準黒札」になれるほど強くなれる者たちも存在する。いわゆる「ゴトウ」や「トールマン」「ワルボウ」たちもこのタイプであり、分かりやすい例だと現地民の「エレン」がそのタイプだろう。彼はいわゆる「僧侶」としての資質が強く、その霊質を伸ばすことで「せがきまい」を作り上げて黒札たちにも一目置かれるほどである。(本人の希望はともかくとして)
そして、多種多様な霊的才能を持つのならば、当然「メシアンに最適な霊質」を持った人間たちも存在する。この「適性メシアン」な人間が運悪く? 「彼女」だったわけである。
桜子が「彼女」に教えたのはメシアンたちが多用する『メシア流戦闘術』である。それは基本的には一神教をベースとして独自の解釈を行って作り上げられた術式である。*5
『聖書の言葉に、力を加える』『力ある讃美歌』や『聖書に奇跡を部分的に再現』を行うことによって様々な術式を行うことができる。
信仰心で威力ボーナスはいるし、他ともに神に選ばれた特別感や正当性がすごい。そして何より派手! メシアン異能者ならやり得! と言わしめるほどである。普段の桜子はメシア流戦闘術も封印しているが、「彼女」の力を鑑定するため・術式を教えるために一時的にスライム(仮)に術式を緩めてもらったのである。(なお今はきちんと術式を元に戻して完全封印している)
「あ……あの……霊質って変えられるんですか?」
「ぷに。(霊質がそんな簡単に変えられるのなら誰も苦労しないんだよなぁ……)」
霊質とは魂の属性そのもの。魂がそんな簡単に変えられるのなら誰も苦労しないのである。そして、簡単に変えられないのならそれを生かしてレベリングしたほうが楽に強くなれるのである。
「まず一つ目の手段、それは『メシアンとしての才能を伸ばす』です。「メシア流戦闘術」を活用してメシアンとしての霊能を伸ばせばガイアレベル30オーバーになれる可能性があります。デモニカも装備せずにこれだけの力を振るえるのなら、メシア教会のまさにエースオブエースとも呼べる存在ですね。テンプルナイトは間違いないでしょう」
「やだ───!!」
それに対して「彼女」は思わず絶叫した。何が悲しくてメシアンを棄教したのにメシアンとしての才能を伸ばさなければならないのか。確かに『メシア流戦闘術』は自分自身の霊質にあっているとは直観で理解している。これを使用して悪魔を倒していけばたちまち強くなれるだろう。天使やメシアンたちには効果は薄いが、普通のハマ系に弱い悪魔たちはまさに効果抜群で簡単にレベリングできるだろう。
「……別にメシアンの素質がとびぬけているからといっても天使に仕えなくてはならないという理論はありません。メシアンとしての力をメシア教徒に振るうことも十分に可能です」
「でもメシアンとしての力って天使たちに効きが弱いんでしょ? メシアン達にも効きが弱いんでしょ?」
その「彼女」の言葉に桜子は否定せずに素直に頷く。
「まあ……はい」*6
「やだ───!!」
それに対して「彼女」は頭を抱えながら絶叫した。天使を倒すのにメシアンの力を使うなど、それこそ某スレイヤーズの魔術のように「お前を滅ぼしたいからお前の力を貸してくれ」と言わんばかりである。頭を抱える「彼女」に対して対して桜子は頷きながら次の手段を提案した。
「わかりました。同じ元メシアンとしては貴女の気持ちはよくわかります。では「第二の手段」を行うことにしましょう。これなら貴女も満足できるはずです。」
ともあれ、メシアンとしての戦い方が嫌だというのなら次善の策を行うしかない。しかし、メシアン以外の才能がない彼女が他に使用できる戦い方があるのか、と言われたら普通はない……はずではあったが、一神教調和派には「切り札」ともいえるシステムが存在した。桜子は「彼女」にそのシステムを使用させて戦わせる事にしたのである。
「主よ、悪魔を打ち払う力を!
「彼女」は光で構築された弓矢を構成し、その矢を射掛ける事によってガキに対して攻撃を仕掛ける。そしてその矢がガキに命中して見事にガキは消滅していく。それを見ながら、桜子とスライム(仮)はうんうんと頷く。
「一神教調和派が導入した『滅却師システム』*7は彼女にも相性がよさそうですね。これなら「メシア流戦闘術」を使わなくても十分に戦えるでしょう」
名古屋支部を運営していく本霊『ズルワーン』の黒札「山田優羽」。彼が生み出した四文字の力が(勝手に与えられた)込められて作り上げられた『滅却師システム』
これは高いメシアン適正を持った「彼女」にはまさに福音とも言えた。四文字の加護が込められたこのシステムを使用すればメシアンに特化された霊質でも十分「滅却師」として戦うことがことが可能なのである。
『滅却師システム』には使用者の霊力負担が少ない「武装生成術式」が組み込まれており、この術式から「
今回はレベリングではなく戦う手段を身に着けるために、念のために桜子やスライム(仮)も近くにいるが、これならガキ相手には彼女単独でいいだろう、と二人は判断する。
「アイテム作成能力もどうやらメシアン系列に偏っていますね。「聖水」*8はまだしも「ロザリオ」*9を作れたときは流石にびっくりしましたが……。これがメシアンに流れたら絶対ろくでもないことになるので、「聖水」作成だけにしてもらっています。これなら流れても問題ありませんですしね。穏健派も聖水普通に作れますし」
>HPが0になったときに自動でHP最大値の1/2まで回復する/人間1人のエナジードレインを一度だけ防ぐ
こんなアイテムが大量に生産されて穏健派に流れ込んだら? どうなるかは火を見るよりも明らかである。
穏健派だけではなく、過激派すら流れ込んだらさらにまずいことになるため、「彼女」は一神教調和派できちんと確保して一神教調和派の戦闘員として活躍してもらう予定である。
「ぷに!! (滅却師システムも呪詛系アイテムに比べたら対天使攻撃能力は下がるけど、メシア流戦闘術よりは遥かにマシだからね。これで何とかなるでしょ!!)」
そんな風にうんうん、とスライム(仮)が頷いていると、そこに一人の黒札が訪ねてくる。それは沖縄支部の一人である「聖者ニキ」である。わざわざ沖縄からここまで来るなんて珍しい、と思いながらスライム(仮)は彼を出迎える。
「やあ、噂で「面白い霊質」を持っている人間がいると聞いてね。ちょっと会わせてもらっていいかな?」
「ぷにぃ……(えぇ……)」
沖縄支部はメシアンスレイヤーたちの最前線基地ともいえる場所であり、多種多様なメシアンに恨みを持つ者たちが集う場所だ。彼らからしたら「メシアンに高い適性を持ってるだけで害虫!!殲滅すべき!!」となってもおかしくはない。それを考えるとスライム(仮)が「彼女」に合わせるのを渋るのは当然ともいえる。だが、聖者ニキは「彼女」に危害を与えるつもりはなく、むしろ力を与えたいというのだ。それを聞いて、スライム(仮)は「彼女」と聖者ニキと会わせる事にした。そして、聖者ニキが差し出した「とあるもの」を見て「彼女」は目を見開く。
「こ、これは……?」
「まずこれは沖縄支部で開発された『体内融合型シキガミ』である『
「それは俺たちが新しく開発した『メシアン霊質改善術式』だ。この術式が発動すればメシアンの霊質から一神教寄りの霊質になれる……はず。時間はかかるし実験段階だから何ともいけないけど」
この術式は黒札たちの内部に宿った魂……悪魔の超高度分霊の魂を強制する【魂矯正具】*10の術式を応用したものである。実際にヘパイストスのTS分霊転生者がこれを使用して【不細工】から【一般受けではない体型】にまで肉体と魂を矯正した事例も存在する。この【魂矯正具】の術式を応用し、黒札の魂ではなく、現地民の魂や霊質を矯正するために作成されたものである。
……だが、当然のごとく矯正するということは本人に対して過負荷がかかるということでもある。下手をすると魂にダメージを与えたり、変な成長をすることもある。それに黒札ではなく現地民ではどれくらいの矯正強度が必要になるかまだデータが全然ない状態でもあるのだ。
「適性メシアンなんて滅ぼすしかない害悪だけど、さすがに俺たちもそこまで非人道的ではないからな……。きちんとメシアンを棄教してくれてるのならまあうん。……それにちょうどいい実験体……いや失敬。ともあれ、これでメシアンと戦ってくれるのならこちらとしても文句はない。後はデータさえ渡してくれればね。」
高いメシアン適正能力を持ちながらメシアンに敵対的であり、なおかつこちらに協力的な人材など、そうそう転がっているわけではない。ちょうどいい最高の実験材料として聖者ニキは「彼女」にこれを埋め込んでみよう、という結論になったのである。(多分現地民用モンキーモデル版)
「分かりました!お願いします!!」
そして、その
「ぷに!!(聖者ニキ【魂矯正具】……もとい『メシアン霊質改善術式』を黒札レベルにしてるでしょ!?緩めて!!極限まで緩めて!!)」
「ん~~?間違えたかな……?」
どこぞの漫画のような事を言いながら、聖者ニキは『メシアン霊質改善術式』の縛りを極限まで緩くする。【魂矯正具】は魂に対する強制ギブスのようなものだ。強くしすぎれば魂がガチガチに縛られることになってしまう。これは全くデータにない状態でのよくある失敗例といえた。極限まで緩めて何とか動けるようになった「彼女」だが、確かに苦しいは苦しいが、今までの自分のメシアンとしての霊力が変化し、より効率よく滅却師システムに流れ込んでいくのが感じられる。これで改善されていけば、より効率よく対メシアンや対天使も行えるようになっていくだろう。
「よし、ちょうどいいし。波紋法・穢教滅も教えておくか。遠距離は
そんな聖者ニキに対して、お願いします!と「彼女」は聖者ニキから波紋法・穢教滅を教わる事にした。
(……しかし、彼女
(ぷに……(し、知らないほうがいいことってあるから……。あれならメシアンスレイヤーの大きな力になるから……))
〇小ネタ
「彼女」と聖者ニキが波紋法・穢教滅の訓練を行っているそのころ、別の場所では救護ネキと凍矢が話し合っていた。北神奈川支部やあちこちでオカルト医療の教育を行っている救護ネキはふと思いついて、とあるものを作ってもらったらしい。それはいわゆる「デモニカ」ではあるが、ほかのデモニカと異なりどこからどう見ても戦闘用ではありえなかった。
「と、いうわけで開発陣に頼んで『回復特化型簡易デモニカ』を作ってもらいました」
「というわけで、って何なんだよ……」*11
「これからの世界のオカルト医師はまずはディアが使えることが大前提。最悪の場合ディアさえ使えれば何とかなりますが、ディアすら使えない人々は非常に多い。そんなところにこれは必要になるはずです。」
この簡易デモニカには回復特化のデモニアコア……つまり【アンクのマガタマ】のデモニアコアが内蔵されている。アンクは回復特化のマガタマであり「破魔無効、呪殺に弱い」という特性を持っている。
……だが元々人間には破魔がきかない。その破魔無効を取り払って、呪殺に弱いのを取り除いたバージョンである。ディアとパトラなどはデフォで使用できるようになっているため、素質のない人間たちでも回復魔法を使用できるのは極めてありがたいだろう。レベルを上がればメディアなども使用できるはずである。とりあえず数体生産してあちこちの小シェルターに与えて様子を見るか……というのが救護ネキの考えである。
「いや、教護ネキ。回復特化型はいいんだけど……攻撃性能は?」
「とりあえず『吸収攻撃』*12を付与したので、それと過回復の攻撃しかないですね……。まあそれで頑張ってレベルアップしてください」
そんな救護ネキじゃないんだからさ……。とりあえず北神奈川支部に頼んで簡易ガイア銃でも持たせてもらったほうがいいのでは……?と凍矢は思っていた。
〇「彼女」
高いメシアン適正霊質を持つメシアンスレイヤー。
恐らく、江戸時代から隠れキリシタンたちが独自に霊的に強い子孫を作ってきたのを、メシアンたちが乗っ取った家系だと思われる。根切りされた名家と異なり、メシアンであることから根切りを逃れ、強い霊的素質を引き継いでいたいわゆる『メシアン名家』とも言える存在。
レベル上限は35……なのだが、最適性ともいえるメシア流戦闘術を使わず、滅却師システムや『隠者の紫』を使用しているため中々レベルが上がりにくい。現在レベル20ぐらい。
『隠者の紫』には【魂矯正具】を応用した『メシアン霊質改善術式』が組み込まれ、霊質矯正が行われているがデータが全くないためどれくらい改善されるかは全く不明。(というかそのためのデータを集めるための実験体ともいえる)
一神教調和派の戦闘員として、人誅組や沖縄支部などとも協力してメシアンスレイヤーを行っている。