三次でキョウジさんビッグウェーブが来たのはびっくりしました。皆さんありがとうございました。
終末が終わってしばらくした後。いわゆる神様の中にも勝ち組もいれば負け組も存在していた。黒札や現地民たちからの信仰を得てウハウハな神霊。あるいは信仰を取り戻した神霊など様々な復権した神もいれば、その一方で最早消え去る寸前の神々なども存在していた。
「うう……。辛い……。」
それはかつて北関東で行われていた『ササカミサマ』と呼ばれる信仰から生まれた神である。
主に茨城県や栃木県などの関東地方で、年中行事の「事八日」に行われる日本の民間信仰によって生まれた、農作業の始まりを見守ったり疫病を防いだりする神だったが、時代の変化や伝承者の高齢化に伴い、現在ではほとんど行われなくなっている貴重な消滅危惧習俗である。
そして、半終末から終末の間の大混乱により、人々は皆それどころではなくなり、信仰してくれる人々もなくなり、もはや消え去るのを待つしかないであろう弱小神。
それが今の『ササカミサマ』である。
神が信仰を失った場合は妖怪に零落したり消え去ったりするパターンもあるらしいが、自分はどうなるのだろうか?そんな風に考えていた。自分のテリトリーの中でMAG不足で苦しみながら、ササカミサマはひたすらごろごろしていた。だが、そんな彼女の家に、とある強大な存在の気配が近づいているのを彼女は感じ取っていた。
「ひっ!何!?借金取り!?か、返せるあてはないから!!」
茨城県伝承では「ササガミサマは貧乏で借金まみれの神」とされている。借金取りから身を隠すため、年の暮れには家の裏に隠れ、正月が明けて借金取りが来なくなった頃に表へ出てくるとされている。
そのため、彼女は借金取りの姿に殊の外怯えているのだ。
コツン、コツンと足音を立てながら、ゆっくりと長身の青年が姿を現す。
そして、彼の傍にはしずしずと付き従う銀髪のロングヘアでまるで人形を思わせる白い肌に切れ目で怜悧な容貌をした美女。そして、その二人から放たれる凄まじい霊的な威圧感を感じ取り、ササカミサマは思わずへたりこんだ。
これほど高いレベルからなる霊的威圧を持った人間など、ササカミサマが知る限り一種類の人間たちしかない。
「ひぃあああああ!!く、黒札ぁああああ!?し、借金催促ですか!?わ、私はガイア連合には借金してませんよ!?ですからどうかお助けを!!」
借金を抱えた消え去りそうな弱小神の前に高位の黒札が現れる。それが何を表すのかはササカミサマも理解していた。以前のガイア連合に借金して踏み倒したスカサハ神の末路は神々の中でも広く知れ渡っている。
それだけでなく、やらかした神々が奴隷のように働かされているのも同様に知れ渡っている。
やましいところがないのなら堂々としていればいいのだが、ササカミサマは借金をしている貧乏神の側面もある神だ。ガイア連合から借金しているわけではないが、それでもやましいところはあるといえばある。
そんな怯えて平伏するササカミサマに対して、呆れた顔をするのは黒札の一人……『碧神凍矢』と彼のシキガミである『破裂の人形』が女性体に変化した『高峯のあ』である。
ともあれ、凍矢がここにやってきたのは別にササカミサマの借金のためではない。……というか彼自身も莫大な借金を抱えているので、ササカミサマに思わず共感してしまうのは必然だっただろう。
「ああ……借金催促辛いよな……。分かるよ……。分かり見が深い……。とそうじゃない。実はササカミサマに対していい話があるんだ。」
「い、いい話ってなんですかぁ!?そ、そもそも私はMAG不足で消えかけなんですよ!?そんなことが……。」
どんどんどん、とササカミサマの前に積み上げられるのは『超大容量MAGバッテリー』が5つである。
膨大な魔力を誇る凍矢にとって、この程度のMAGバッテリーに充電するなど休んでいても可能な出来事である。その膨大なMAGを使用して、幼女ネキと同じようにMAGをMAGバッテリーに充電して販売する『売電』もよく行っている。ともあれ、『破裂の人形』……もとい、『高峯のあ』は無表情でMAGバッテリーから電線を引っ張り出すと、バチバチと音を立てているその電極をササカミサマに突きつける。
「さあ蘇るのです。このMAGバッテリーで!!」
「ち、直結!?直結はやめ……ウボァー!!!」
バリバリバリとMAGバッテリーから直結でMAGを流し込まれたササカミサマはたちまちMAG不足は解消したが、まるでギャグマンガにように髪の毛がパーマになってしまう。
ともあれ、それを一瞬で直しながら、ササカミサマは本格的に一体なんのためにここに来たのか、と問いかける。
「ササカミくん。君には協力してもらおう。そう……『笹団子』作りにな!!」
えっなにそれこわい。とササカミは思わず呟いた。
―――笹団子。それは、よもぎを練り込んだ団子にあんこを入れ、熊笹の葉で包んでイグサなどで縛って蒸し上げた新潟県を代表する伝統的な和菓子である。
元々は年貢に収めた後のいわゆる「クズ米」を粉にしてヨモギを混ぜ、笹で包んで蒸すことで、風味豊かで美味しい主食やおやつに変える工夫から生まれたものである
この笹団子は魚沼地方でも有名な和菓子であり、凍矢はその保全のための活動を始めていた。
これには、低レベルの覚醒者や非覚醒、半覚醒たちの雇用を作り出す目的もあり、低レベルの魔女や戦えない低レベルの人間たち、さらには非覚醒者が栽培した霊草ヨモギを使用し、あちこちから集めた霊的クズ米をもち米に使用。それらを混ぜ合わせてあんこを入れて笹に包んで作り上げるのだ。これぐらいの過程なら非覚醒者でもできるだろう、という考えである。
ヨモギは非常に強い植物であり、育てるのも簡単だし、野生でもいくらでも生えている。生命力の強い霊的ヨモギの栽培は非覚醒者でも簡単にできるほどた。さらにそれらを団子にする作業もそんなに高度ではないため、非覚醒者でもできる貴重な仕事だ。(さすがに団子を霊的な力が籠ったササを包むのは覚醒者でないとダメだが。)
そして、凍矢がササカミサマに要求したのは実に簡単な要求である。
つまり『笹団子を包むササの殺菌作用を強めてくれ』という事である。ササの葉は様々な抗菌作用があり、昔から特に保存食を包む為に使用されていた。
だが、この終末の時代では、ただのササの葉ではオカルト的に無防備であり、何の役にも立たない。
そのため、凍矢はササカミサマの力によって、ササの葉にササカミサマの力を付与し、霊的な力のこもったササの葉を作り出し、それによって終末でも保存食を包み込んで保存できるようになったのである。(とはいってもあくまでも長期保存のためであり、腐敗の神などに真っ向から勝てるほどの霊的防御力はない)
ササガミサマの力が籠もったササは殺菌作用も抜群、それにより長期間保存も可能、缶詰などの金属も使わず極めてローコスト、ヨモギ栽培もローコストであり、もち米もクズ米を使用するためローコストという優れた食べ物である。砂糖も今の時代は貴重ではあるが、そこは『餡子創造スキル持ちのアガシオン』というアガシオンも存在する。このアガシオンをレンタルして餡子をどんどん作らせればわざわざ高価な砂糖を輸入する必要もない。*1
「魚沼名産『笹団子』!!皆さん買ってくださいね!!」
宣伝のため(&人件費節約のため)に凍矢の女性体である「田舎ネキ」を使ってDDS内で笹団子の宣伝も一応は流しているが、正直凍矢自身からすれば「これ売れるのかなぁ……」と大いに疑問があるのが実際のところだった。こんなお菓子買わなくても黒札たちはいくらでも高級品を買えるだけの財力がある。現地民向けに値段は安めにしてあるし、終末後の貴重な甘味だしまあある程度は売れるやろ……というのが正直なところだ。
「……まあ売れなかったら売れなかったでそれはそれで。甘味だし最低限は売れるだろ多分……。」
正直、これ売れるのか?と疑問符を浮かべていた凍矢だったが、それは別方面でヒットした。
それはシェルターからシェルターへと旅を行う『キャラバン』たちである。ササカミサマの力が込められたササは、包まれた団子を長期保存できる。普通の団子は常温なら1日。ササに包んだ状態なら3日程度だが、ササカミサマの力が籠ったササは一週間ほど食べ物を保存できる。一週間旅をしながらいつでも片手で手軽に食べられるというのはキャラバンの人間にとって非常に大きいのだ。
過酷な旅をする彼らにとって、これは最適ともいえる「優れた携帯保存食」だったのだ。しかもそれが甘味となればそれはもう引っ張りだこになるのは決まっていた。
そのヒットぶりは、『あんこ生成アガシオン』を雇ってあんこを生成してもペイできるほどの賑わいだった。
それならば、とあんこ以外の戦国時代でよく食べられていたという、長期保存に適したきんぴらごぼう、冬場に干しておいた大根の皮や、山で採れた山菜(ゼンマイなど)を甘辛く炒めたもの、醤油やみりんでしっとり炒りつけたおかかや味噌など入れたいわば『携帯おにぎり』である笹団子を生産したのだが……当然のことながら、これもバカ売れすることになった。
道端にコンビニなどない状況で長時間の過酷な旅。そんなところに長期保存が可能で片手で簡単に食べられるいわば「おにぎり」にも似た携帯食料。これが求められないはずもなかった。
元々、笹団子は上杉謙信やその家臣たちが、戦場へ持っていく兵糧(携行食)として活用したという説が濃厚であり、その戦国時代の携帯保存食に逆戻りしたといっても過言ではない。
このある意味『携帯食料・携帯おにぎり』である笹団子は、キャラバンたちの大きな人気食品となったのだ。
「うーん。これルーツの『戦国時代の携行食』に逆戻りしてるよなぁ。まあ売れてるんだから……ヨシッ!!」
他にも凍矢の影響を受けてかアクア系の能力者たちもそれなりにはいるので、中に彼らが作ったアクアストーンが入っている『飲料用霊水湧き出し水筒』やキクリ米を加工した『干し飯』も作成したが、そちらもキャラバンたちに飛ぶように売れて、(黒札たちではないのでそんなに儲けにはならないが)それなりの売り上げが上がって凍矢は満足していた。
【妬ましい……】氏子生存作戦212【パルパル】
456:名無しの小神
ああああああああああああああああああああああああ!!!
457:名無しの小神
黒札様が訪ねてきてスカウトして一発大逆転!?
どこからどう見てもシンデレラストーリーじゃねーか!!
458:名無しの小神
おのれ……おのれぇえええ!!
459:名無しの小神
妬ましい……妬ましい……パルパル。
460:名無しの小神
本気で呪詛を送っている奴がいてワロタ。
461:ササカミ
いや偶然というか本気で私は何もしてないから……。ただ黒札様の求めるものにマッチしただけだから……。
462:名無しの小神
「だけ」だとぅ!?
463:名無しの小神
超絶幸運すぎてワロタ。こんなことある!?
464:名無しの小神
変われ……。変われぇえええええ!!
465:名無しの小神
何でササに力込める以外はほとんど何もできないお前がそんな好待遇受けるんだ!!おかしいだろ!?
466:ササカミ
じゃあ皆役に立ちそうな権能とかある?
467:名無しの小神
(そっと目そらし)
468:名無しの小神
そんな……ちょっとお菓子を美味しくする程度の能力しか……。
469:ササカミ
というか!!みんな氏子が生き残ってるだけいいじゃないですかー!!こっちは氏子もなにもないんですよ!?
470:名無しの小神
うるせー!!終末で何人こっちの氏子が亡くなったと思ってるんだ!!
471:名無しの小神
俺たち小神に氏子を終末から守れる力なんてあるわけないだろ!!
目の前で氏子を助けられられなかった気持ちが分かるか!!
472:名無しの小神
生き残った氏子にいい生活させたいんだよ~!!
473:ササカミ
そんな貴方達に朗報です!!それぞれ特技の権能などを上げてみてください!!
運が良ければ黒札様の連れ合い*2が能力に適正した仕事やシェルターを紹介してくれる……かもしれません!!
474:名無しの小神
うぉおおおお!!以前のロリショタニキ様以来じゃね!?
475:名無しの小神
こんな餌に釣られくまー!!
476:名無しの小神
これはいくしかねぇ!!