黒川さんに与えるデモニカが決定したので公表したいと思います。
―――魚沼シェルター防衛部の本拠地内部。
ガチガチに固められた霊的結界やオカルト素材で作られた防衛部は、いざとなったら大悪魔の攻撃や核から人々を守るシェルターの役割も果たしているため、事務員の未覚醒者、様々な作業を行っている低レベル覚醒者や未覚醒者たちも安心して忙しそうに活動をしている。
この内部には「人外ハンター協会」も存在しており、防衛部所属のデビルバスター……といえば聞こえはいいが、実際は冒険者顔負けのならず者たちも多く存在している。
だが、そんな覚醒者であり、デビルバスターのならず者たちも暴れまわったり未覚醒者たちをいじめるような真似はしない。それは……。
「ほむら姐さん!! うっす!!」
「ほむらの姐さん!! おはようございます! 新しく入った新入りはきっちりしつけますんで!! ほむらさんや黒札様たちには非礼させません!! ウス!!」
それは、防衛部トップのほむらの存在である。 ほむらはDLV160オーバー……ガイアレベル50の文字通りの人型の怪物であり、気が強い性質のほむらに逆らえばどうなるかは、防衛部の皆が誰もが知っている事である。「女だから」と舐めてかかったチンピラがほむらの威圧で死にかけるのは恒例行事と言ってもいい。ようやく防衛部に慣れてきた千秋を連れながら、ほむらはそんなデビルバスターたちに声をかけていく。
「あーもう姐さん言うの辞めなさいよ!! ウチは元自衛隊やら人外ハンター協会メンバーやらいるから民度が極端に高かったり低かったりするからなぁ……。黒川さんもセクハラやらなにかされたらアタシにいいなさい。何とかするわ」
防衛部は上は元自衛隊のエリートたちから下は人外ハンター協会のチンピラすれすれのデビルバスターたちやら非常に多種多様な人材がごった煮になっている。そして、当然チンピラすれすれの人間は民度が低い荒くれものたちでもあるが……少なくともほむらに対しては絶対に逆らうことはない。
「見ろよ……ウチのトップ、めっちゃ可愛い女に見えるだろ……外見だけで中身あれゴリラなんだぜゴリラ。DLV100オーバーの大悪魔たちと真っ向から肉弾戦するなんてゴリラ以外の何物でもねぇぜ。」
「ゴリラなんて生易しいものじゃねぇよ。ゴジ〇だよゴ〇ラ。DLV100オーバーの『天使ヴァーチャー』*1やら『メシア教徒メイガス』*2やらを刀や手刀で一刀両断にして一切灰燼にした姿にワシは心底痺れたね……。新入りも拝んどけよ。あれがウチの守護神だぜ?」
「だーれがゴリラでゴジ〇か!!いい加減なこと言うと最前線に放り込むわよ!!アタシはいいけど黒川さんに変なこといったらマジでやるからね!!」
そのほむらの言葉を受けて、うわーとデビルバスターたちは蜘蛛を散らすように逃げ去っていった。ともあれ、千秋はそんなほむらの片腕……とまではいかずとも、信頼できる部下としての役割を順調に果たしていた。レベル5という現地民としては有望株であり、外の事情にも詳しいキャラバン上がり、さらに防衛部として悪魔と戦ってくれる気概もある。防衛部であるほむらからしたらマジで有能な部下そのものなのだ。
現状では、新入りからそれなりに馴染んできて、防衛部内部でも認められる存在となっていた。
「私も沖縄支部の「『
「……千秋さん。あんまりそれを防衛部内部で言わないほうがいいわよ? 人外ハンター協会のデビルバスターたちが血涙流すから……」
そんな風に防衛部内部で様々な仕事をこなしている彼女は、防衛部内部の色々な仕事にも慣れていった。
変わったところでは、九重家と共同で「出向治安維持部隊」としてほかの黒札シェルターの治安維持に当たったりもしていた。名家が存在せず一般人のクレームやら何やらが直接黒札に来るようなシェルターで、ピックアップされた名家をシェルター上層部として配置。その名家に九重家のノウハウを教えると同時に防衛部が戦力を見せつけて現地の人々を黙らせて統治機構を整えていくシステムである。(なお逆らった人間は名家たちによって排除される)
ともあれ、そんな忙しく仕事をこなす中、とある交渉が終わった後、ほむらは防衛部の自室内部のソファーにドガッと不機嫌そうに身を投げ出す。
「あークッソ腹立つわね……」
見るからに不機嫌そうにイライラしているほむらに対して、千秋はほむらに対してお茶を入れて彼女の前に差し出す。それを飲みながら何があったのか? と問いかけてくる千秋に対してほむらは不機嫌そうに吐き出す。
「世俗派のクソどもとの交渉よ。あいつら鑑定ニキ様*5からの庇護もあるからってデカい顔しやがって……。静さんや師匠から止められてなくて、鑑定ニキ様からの庇護もなくなれば殴りつけに行きたいわね。まあ、私も以前やらかしたことあるけど。うん」*6
世俗派。それはメシア教の一派であり、簡単に言えば『金こそ全て!!』という俗物極まりない派閥だ。「金! 綺麗な異性! 上手い食べ物!!」という三大欲望に忠実であり、金を稼ぐための経済活動やこの週末世界でも物流輸送などを行ってどううまく美味い汁を啜るかを考えている一派である。
だが、その欲望に忠実な面もあって、天使に仕えるメシアンたちよりも腐敗している彼らのほうがガイア連合に遥かに信用されているのはまさに皮肉といってもいい。(少なくとも商売の関係では世俗派はガイア連合を裏切らないだろう。忠実な寄生虫ともいう)
だが、当然のことながら反メシアからは嫌われており、幼女ネキからは「そもそもメシアである必要はない」と言われる始末である。そして、それは当然メシアンの被害にあったほむらも同様だった。しかし、防衛部担当として青筋を立てながらも交渉をきちんと行ったというのは、直情的な彼女の進歩といえるだろう。
「今回は仕方ないけど、基本的には桜子さんの一神教調和派や静さんの九重家や部下たちに世俗派との交渉は任せているわね。別に私自身が出る必要ないし。……正直言えばクソむかつくし!!」
ほむらは他の犠牲者から比べれば軽微ではあるが、メシア教の被害を受けた犠牲者であることは間違いない。
そんな彼女から見れば「私たちは過激派とは違いますよ? 何の罪も犯していません」としれっと自分たちのやらかした事を棚に上げてのうのうとしている穏健派は当然腹が立つ。
しかも、鑑定ニキの庇護を受けて我が世の春と言わんばかりの顔をしている世俗派はなおさらである。(鑑定ニキは世俗派をうまく使って物流網を構築したりはしているが)
……だが、以前桜子との間でのやらかしがわりと大きな事件になって凍矢に迷惑をかけたこと。そして防衛部のトップとしての責任などもあって、きちんと自重はしているのだ。(内面の感情だけはどうしようもないが)
「個人的な考えだけど、鑑定ニキ様が下越地方を守護してくれるのは師匠にとってもめっちゃありがたいと思うわよ? 新潟県全域を師匠一人がカバーするなんて流石にキャパオーバーだもの。上越地方が……あのメシアンのクソどもに牛耳られているのが個人的にはムカつくけどね……」
今の新潟県の簡単な状況をいうと、佐渡島はパピヨンニキの支配下、新潟市を中心とする下越地方は鑑定ニキの支配下、魚沼(長岡市含む)を中心とする中越地方は凍矢の支配下、そして上越市を主とする上越市は鑑定ニキの庇護下の世俗派の支配地域となっている。
(ヒスイを産出する糸魚川市は九重家の影響が強かったり、長岡市にはぼっちちゃんネキ(なお彼女は引きこもって防衛装置になっている模様)もいたりするので大雑把な状況ではあるが)
何せ新潟県は純粋に広い。都道府県の面積ランキングでは全国第5位(本州の中では岩手県、福島県に次いで第3位)となっている。
この地域を一人の黒札で統治する、というのはさすがにキャバオーバーである。そのため、凍矢も喜んで新潟市の下越地方は鑑定ニキに、佐渡島はパピヨンニキに管理を任せ、お互い協力体制を取って統治という形にしている。それはいいのだが、ほむらからしてみれば、上越地方を支配する世俗派は極めて目障りな存在……まさに目の上のたんこぶである。メシアンなんぞに任せずにさっさと侵攻して統治下におけばいいのに……とは思っているが、鑑定ニキのことも凍矢のキャバオーバーも理解しているため、なかなか言い出せないのも事実だ。
今回の交渉というのも、上越市を起点とし、十日町市を経由して南魚沼市を結ぶ、全長約60kmの主要幹線道路「国道253号」の簡易霊道化の件である。直江津港を所有している上越市との直結ルートは『霊能物流協会』*7の下部組織『新潟連合』からの依頼であり、この近辺の物流を活性化させることで鑑定ニキや各地名家にも良い影響を与えることができるし、魚沼シェルターとしても物流の流れがさらに良くなる……良くなるのだが、ほむらから見たら「『世俗派との直結ルート』を作ってるようなもの! 世俗派が狂ってこのルートを攻め込んできたらどうするの!?」というほむらの意見も採用し『簡易霊道』を作成することで話が纏まったのだ。
「師匠からすれば「メシアンとの戦いは終わっていない。今はただの休戦期でしかない」らしいけど、アタシもその意見には賛成ね。……まあこっちのほうでも世俗派や周辺の穏健派の監視はしているけどね。何かあったらすぐに殴れるようにしておけばすぐに対応できるし。……ともあれ、千秋さん。防衛部のデモニカ試験に合格した貴女には簡易デモニカではあるけれど、特殊なデモニカが与えられる事になったわ。そのために『救護ネキ』様の授業を受けてきてね。」
「ようこそいらっしゃいました。貴女が防衛部所属の衛生兵の方ですね? 歓迎します」
魚沼シェルターの医療部へと派遣された千秋。彼女はそこでロングスカートのワンピースにビブエプロンを備えた看護婦姿の水色のロングヘアの女性と対面することになった。彼女の名前は『救護ネキ』。幼女ネキや黒死ネキですら口をそろえて「「あの女はちょっとどうかと思う」」*8と言わしめるほどのアレな高位黒札である。実質的に衛生兵となった千秋は、救護ネキの元で戦闘中の救護について勉強を行う事になったのだ。
高位黒札ですら「アレ」と言わしめる救護ネキの授業に、どんな事をされるのだろう、とガチガチの緊張状態の千秋だったが、基本的にはごく普通の授業型スタイルである。医療部の一室でホワイトボードにキュキュっと書き込みながら救護ネキは千秋に授業を開始した。
「いいですか? 衛生兵において大事なことは「前線での応急処置(命をつなぐ治療)」と「部隊の健康管理(防疫・衛生指導)」が主になります。両方大事ではあるのですが、千秋さんには、前線での応急処置を徹底的に叩き込んでいきます。健康管理は後方で時間があるときに行えばいいのですが、応急処置は一秒を争いますからね」
「まずは戦場での応急処置で最も大事なのは当然『ディア』です。最悪、命だけ保っている状況で運び込んでくれれば医療部でなんとかします。ディアは衛生兵にとって最も大事な切り札でもあります。MP……精神力には常に注意を払っておいてください」
救護ネキが作り出した医療特化簡易デモニカには、当然ながら『ディア』『メディア』のスキルカードが内蔵されているが、それだけではなく、万が一のことを考えて自前の生身でも『ディア』を使えるようになることが推奨されている。
さらにそれだけではなく、人体の構造、止血処置、輸血の方法やオカルト治療アイテムの使用方法など実戦的な救命処置に絞って救護ネキは千秋に医療方法を教えていく。
黒札たちと違って現地民がディアを覚えろ、と言われてはいそうですか、であっさり覚えられるほど簡単ではない。この部分は千秋の地道な修行に任せるしかない、と救護ネキは割り切っていた。
「そして、我々救護班にとって最も大変なことはわかりますか? それは……『状態異常』です。これは我々救護班にとって非常に厄介な代物であり、天敵とも言えるものです」
メガテンには多種多様な状態異常が存在する。「睡眠」「幻惑」「毒」「封技」「魅了」「混乱」などなど。そして、さらに特殊な状態異常では「鏡化」「カード化」「爆弾化」「蛙化」「蠅化」「狂気」なども存在する。
これらを上手く使用すれば自分よりも格上の敵をハメ倒すことも可能である。だが、それは逆に言えば自分たちも油断したら格下にハメ殺される可能性も十分にある、ということである。
これら全ての状態異常回復アイテムを持ち歩き、状況に応じてそれらを使用して回復させる。それができればもちろんベストではあるのだが……そもそも普通はそんなアイテムなど大量に持ち歩けないし、過酷な戦場でそれが行えないのは当然といえる。
「そこで衛生兵たちには裏技……『状態異常の優先度』*9を使用してもらいます。もし不明な状態異常があった場合『石化』させて救護班まで持ち運んできてください。運び込んでさえしてくれれば後はこちらで何とかします」
その救護ネキの言葉に、千秋は思わずえぇ……と困惑の声を上げる。それはそうだ。衛生兵が味方を「石化」させるなど普通なら何をやっているんだ、と言われてもおかしくはない。だが、これにはきちんとした理由があるのだ。
「状態異常には『優先順位』が存在します。一番軽いのは「睡眠」一番重いのは「死亡」で「石化」は二番目に思い症状になります。そして「石化」すれば優先順位の関係上、それ以下の状態異常は「無効化」されます。例えば「爆弾化」「狂気」なども「石化」すれば無効化できますし、本人が暴れるのも防ぐことができる……つまり「石化」は救護班からしたら「コールドスリープに放り込む」のと同じなのです」
例えば重症を負って大量出血した状態でも、ディアでHPを回復させて「石化」したのならそれ以上の傷の悪化も大量出血による死亡も防ぐことができる。毒、出血多量、臓器不全、内臓破裂など、あと数分で死亡するような重症であっても、石化させることで細胞の活動が完全にストップするのだ。
そして、その状態で後方に運んで石化解除→治療魔術をかければ問題なし、という考えである。そのオカルト的治療方法に、千秋はなるほど……と感心する。
(なるほど……でも何でそんな「世界法則」が存在するのかしら……? 普通石化したからって爆弾化が無効化できる道理とかある……? いえ、そもそも「爆弾化」や「鏡化」なんて物理法則もへったくれもない状態異常……「世界法則」だからそういうものなんでしょう。うん)
もちろん、それが通用しない状態異常もあるだろうが、ともあれ石化したまま安全を確保し、そのまま後方の医療部まで運び込めさえすれば、後は医療部が何とかするだろう。
だが、そこには大きな問題があった。それは『石化……つまり石像は重い』という極めてシンプルな問題である。
「しかし、ここで問題が発生します。それは『石像は重い、壊れやすい』という至極シンプルな理由です。激しい戦場で重い石像を持ち運んで退避するのは現実的ではありません。しかも複数人となればなおさらです。そのため、私はそれに対する「回答」を用意しました。千秋さんにはその回答……私が作り出した「治療用簡易デモニカ」を使用していただきます。」
「衛生兵ー!! 衛生兵ー!!」
地球が魔界と融合した影響により、当然魚沼市周辺の土地も広がり、防衛隊はその土地を開拓すべく複数の悪魔と戦っていた。悪魔の群れはその分通常の悪魔よりも強く、防衛隊でも弱い人間は耐えられずに倒れてしまうこともある。現れその兵士たちの叫びと共に後方からデモニカを纏った人間が飛び出してくる。
それは通常のデモニカではなく、救護ネキが提案して試作された『治療用簡易デモニカ改【ホスピタルザクウォーリア】』である。特徴的なのは目立つような白と赤の装甲の配色と、その背中に背負っている三つの巨大のバックアップである。このデモニカは、以前救護ネキが作り出した治療用デモニカにさらなる改造を加えて、戦闘能力をほぼ諦め、特化型にした代物である。
通常のデモニカではなく、レベル上限は半分の15。そしてアドバイスに従い戦闘能力はほとんどオミットされ、その分を回復能力・輸送力に大幅に割り振った単体では扱いに困るデモニカではあったが……こと軍隊の中の『衛生兵』としてはまさに獅子奮迅の大活躍を見せていた。
「了解ッ!!【メディア】【ディア】!!」
ホスピタルザクから放たれた味方全体のHPを小回復する全体回復魔法【メディア】により、その場にいる戦闘員たちは回復され、さらにそれでも危なそうな人間には【ディア】をかけていく。
強力な全体回復魔術は当然MPも消費する。継戦能力も考えてそんなにバンバン強力な全体回復は使えない。それが千秋の判断である。
「おい! 隊員が変な状態になったんだけど!? 何だこれ!?」
「【アナライズ鑑定】!! 混乱と緊縛の幸福の状態異常ね! 【ちゃいろのこびん】!!*10 これで大丈夫なはず!!」
「助けてくれ!! 仲間が……仲間が死にかけてるよぉ!!」
「DYING……【瀕死】の状態!! アイテムからこれを……【きんたん】*11投与!! そしてディアをかけてそのまま異界病室へ!!」
ホスピタルザクを装備した千秋は、デモニカにスキルカードで内蔵されている回復魔法で味方たちを次々に回復していく。さらにホスピタルザクはキャンピングカーのキャビン部分を思わせるコンテナ型バックパックを三つ背負っているが、それは疫病退散の福島支部の生み出した金属である【赤べ鋼】*12で作り出された『壺中天地』の技術を応用して作られた『異界病室』そのものである。その異界病院には多数のベッドが備え付けられており、傷ついた兵士たちをそのまま格納して帰還するための異界である。これこそが救護ネキが用意した「回答」である。*13
ホスピタルザクは、その大容量のバックパック内部に大量の回復アイテムや状態異常回復アイテムを所有している。メガテンでは非常に幅広い状態異常が存在しており、それら多種多様な状態異常回復アイテムを持ち歩くなど無理に決まっている。……だが、『壺中天地病院異界』バックパックを三つ背負っているこのデモニカならできる!! できるのだ!! 大量の状態異常回復アイテムや回復アイテム、それに加えて傷病者の兵士を大量に格納してそのまま安全地帯まで移動できるこのホスピタルザクは、まさに文字通りの意味での「動く病院」なのである。
一つの病院異界バックパックでおよそ負傷者を百人収容可能なため、フルならば三百人兵士を収容してそのまま安全地帯まで避難可能なこのホスピタルザクは「動く病院」の異名は伊達ではないのだ。*14
千秋……もといホスピタルザクはバックパックを下すと、その内部の『異界病院』に瀕死を回復した負傷者を収容していく。この異界病院には一つにおよそ最大百人は収容できる大きさとベッドが備え付けられている。しかも異界であるため、外部からの揺れや振動などは一切届かない仕様である。さらに【赤べ鋼】で作られたその内部は、疫病や雑菌、最近や病気などを排除できる病院内部の正常な空間を再現しているのだ。
このバックパックの『異界病院』に重症や未知の状態異常により石化させた戦闘員や負傷者たちを収容して、そのまま帰還させる。応急手当さえ受けてシェルターに帰れさえすれば後は救護ネキ様が何とかしてくれる。
この「動く病院」であるホスピタルザクは、そういった大量の怪我人たちを何とかシェルターに帰還させるための切り札なのである。様々な呪いやら特殊な状態異常になった隊員たちをペトラで石化させながらバックパックの病院異界バックパックへと積み込んでいく。
「心火を燃やしてぶっ潰す!行くぞ悪魔ども!!」
そして、そんな中防衛部の切り札ともいえるデモニカ部隊は次々と敵を蹴散らしているが、その中でも最も活躍していたのは、無惨ニキが作った防衛部所属の高級デモニカ『仮面ライダーグリス』である。
凍矢のデモニカ『グリスブリザード』に似せて作られたそのデモニカを纏う事は、防衛部的にも魚沼シェルター的にも非常に光栄なことであり、それを纏って敵悪魔に無双することはまさに魚沼シェルターの皆にとっての憧れだ。実質黒札の代行者として力を振るい悪魔を倒せるなどまさに光栄そのものである。
(私もああやってカッコよく悪魔を倒したかったけど……これが今の私の仕事!! きちんと怪我人をシェルターに連れて帰らないと!!)
そして、この「ホスピタルザク」は『ディア』『メディア』『パトラ』などの回復に能力が割り振られてるが、そのほかにも別の機能が存在している。それは、悪魔との戦いで取り残された隊員で活躍することになった。
「畜生!! 悪魔の奴ら隊員を釣り餌にしていやがる……!スナイパーと同じ手口かよ……!」
敵悪魔は取り残された隊員の手足を次々と遠距離攻撃で打ち抜いていく。そこから出る苦しみのMAGを楽しそうに悪魔は吸収していき、さらにおびき寄せられた人間もまた餌にしていくという悪循環である。これはスナイパーがよく行う手段だが、今の千秋たちには十分対抗策があった。
「念動(サイ)ッ!!」
ホスピタルザクは、念動のスキルにより悪魔の中に「おびき寄せ餌」と化している兵士を触れずにこちらに引き寄せていく。そうはさせじと悪魔たちも攻撃を仕掛けていくが、それも怒り狂った隊員の防御と攻撃によって無意味である。
ホスピタルザクの念動は攻撃としての念動は弾き飛ばす程度しかできないが、こういった手の届かない所にいる要救護者を手元に引き寄せるのに極めて便利なのである。
そして、引き寄せられた兵士はディアで回復されて、『病院異界』の中に搬送されていく。こうして、また一人兵士の命が救われたのだ。
「いいかお前ら!! 何としてもアイツだけは生かして帰すんだ!! 「切り札」を切れ!!」
「了解ッ!! 食らえ!! 「PZファウスト」*15ッ!! そして「えんまくだん」*16ッ!!」
「こちらもだ!! 「PZファウスト」ッ!! そして「えんまくだん」ッ!!」
兵士たちが繰り出した「万能」効果を持つパンツァーファウストは、風切り音と共に次々と射出されて、敵悪魔の陣営に突き刺さり、万能効果で悪魔たちを吹き飛ばしていく。
そして、その援護とえんまくだんの効果により「ホスピタルザク」は安全に撤退することができ、ホスピタルザクの優位性が実証されたのである。
〇小ネタ1、突っ込み御免状
その日、魚沼シェルターには一人の変わった客が訪ねてきていた。それは人魚ネキ*17のペルソナ……元シャドウである『夢』である。
一体何をしにきたんだろうか?と不審げなほむらとコハルを夢はふむふむ、と見ながら満足気に頷いた。
「なるほど……。二人ともなかなかいい「突っ込み力」を持っているわ。流石黒札じゃなくて外部の人間たちね。それじゃ、貴女たちにはこれを上げるわ。『突っ込み御免状』よ」
「……『突っ込み御免状』?」
夢から渡されたその許可状を見せられて、ほむらもコハルも不審げに顔になった。何なのだこれは!!どうすればいいのだ!!というのが二人の本音である。
「そう、この許可証があれば、例えば黒札たちに対して全力で攻撃を仕掛けても全部『突っ込み力』に変換されるわ。ある意味黒札たちに対する安全装置といえるわね。」
この許可証は、黒札に対して全力で攻撃を仕掛けても攻撃は全て『突っ込み力』に変換されて、黒札に対して一切のダメージが与えられなくなる。(代わりに突っ込みを入れられた黒札は凄い勢いで吹き飛んだりする)
これは黒札たちに対する安全装置でもあり、ガイアレベル50のほむら、そして『天罰』を使用できる彼女は、黒札たちに対して危害を与えられる可能性のある存在である。(実際低レベルの黒札ならば倒すことができるだろう。なおその後)
だが、これがあれば彼女たちが黒札に対して危害を与えられる可能性はほぼゼロになる。ほむらたちに対しても黒札たちに対しても、お互いにとっての安全装置でもあるのだ。……まあ、実際のところはボケしかいない黒札たちに業を煮やした夢が、一人でも多く突っ込み役を増やさないと!!と判断して作ってもらったものである。
これがあれば、黒札に対して全力攻撃を仕掛けても、黒札たちは吹き飛ばされるだけで実質ノーダメージというお互いにとってウィンウィンになるはず……である。
「……あの。流石に人魚ネキ様に突っ込みいれられるほどアタシの肝は太くないんだけど!?」
「まあまあまあ。とりあえず突っ込み役が一人でも多く増えてくれないと!!いざという時はお願い!!マジで!!(必死)」
〇小ネタ2、なんだかんだで2人はラブラブ
「全く……ウチの師匠は新婚の奥さん*18置いて外に悪魔退治の出稼ぎいくなんて偉くなったものよね。ハイお弁当に夜食ね。明日は帰ってきなさいよ。早く帰ってきて夫婦の時間を作りなさい、というか師匠は働きすぎなんだから少しは休みなさいよ!!」
「終末前とか違っていつでもどこでも食べれる場所なんてないんだから弁当はきちんと持って外に行きなさい!のあさんの弁当も作ってあげたわ。今度はのあさんが弁当作りなさいよね。こら目をそらなさい!!」
「おはようのベロチュー、行ってきますのベロチュー、ただいまのベロチュー、おやすみなさいのベロチューぐらいは夫婦の間では常識でしょう!? 師匠はそういうところがなってないわね!!きちんと毎日のハグもしなさい!ハグには、ストレスを約3分の1軽減する高い効果があるのよ!アタシのストレスケアをするのも師匠の役割なんだからね!」*19
「狙った男を落とす方法? 簡単よ。胃袋抑えつつ、師匠の故郷を守りたいという事に理解を示して、シェルター防衛と運営に携わって悪魔どもを叩きのめして師匠の負担を減らして、ケツ叩いて支えて甘やかしてやればイチコロよ。」
〇治療用簡易デモニカ改【ホスピタルザクウォーリア】
救護ネキが作り出した医療用簡易デモニカに改良を施したデモニカ。
簡易デモニカなため、レベル限界は15。
戦闘能力をほぼ完全にカットし、その分を回復能力・輸送能力などに割り振っている。
スキルカードは【ディア】【メディア】【メディラマ】【アムリタシャワー】【サイ】などなど。
その最大の特徴は背中に背負ったバックパック「ホスピタルウィザード」……「病院異界バックパック」である。
このバックパックの中は異界になっており、およそ百人を収容できる病院の部屋そのままになっている。
これを三つ背負っているので、最大負傷者三百人を収容してそのまま帰還できる。
さらに「赤べ鋼」で構築されているので、病院異界内部は疫病退散の能力を有しており、怪我人を安静させるのに最適な状態になる。
さらに、この内部に大量の回復アイテムや状態異常アイテムを詰め込んでそのまま出撃も可能。
逆にフル武装の兵士を三百人収容して、敵陣地に侵入→いきなり兵士たち出現ということもできるが、救護ネキ的には「あんまりやってほしくないなぁ~」という感じ。
現在は千秋がテストパイロットとして運用して問題点の洗い出し中。
黒川千秋に与えるデモニカは?
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仮面ライダーグリスデモニカ
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SAA(防衛部デモニカ)
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ホスピタルザクデモニカ(衛生兵用)