【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち   作:名無しのレイ

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第35話 妖怪たちとの融和作戦。

 

ーーー新潟魚沼の山脈の一つ、権現堂山。

その山頂にある江戸時代の住居を思わせる小さな異界があった。

異界マヨイガ。それを極端に小さくしたこじんまりとした異界である。

その内部で、凍矢と人間形態になった破裂の人形の前に銀髪に純白の和服を纏った美女と畳の上で座りながら会話を行っていた。

 

「ふむ、なるほど。我々とさらなる協力をしたい、とそういうのじゃな。」

 

彼女は魚沼近辺の妖怪の纏め役で穏健派のユキジョロウ、もとい「弥三郎婆」である。

全国的には知名度はないが、少なくとも魚沼では有名な妖怪であり、山形県や富山県にまで伝わっている。

元は普通の老婆だったのが、自分の孫を飢え死にさせてしまい、その肉を食らって鬼女へと変貌した存在とされている。

風の強い吹雪の夜には、悪い子や言うことを聞かない子がいると、弥三郎婆が風に乗ってやって来て取って食うという伝承が残っており、その知名度補正により、GPのレベル半減が軽減されている状態(LV20)であるためこの辺の妖怪を束ねる顔役を行っているのである。

 

もっとも今の目の前に座っている彼女は弥三郎婆とは言われているが、その姿は老女ではなく、ユキジョロウそのままの姿だ。

本来の伝承からすれば、老女の姿になるのが正しいがそちらだと人間の子供を浚う彼女の暗黒面全開になるため、「弥三郎婆は改心して“妙多羅天女”という神になった」という伝承を活用しているのである。

“妙多羅天女”は『神仏、善人、子供の守護者、悪霊退散の神、縁結びの神』として伝えられているため、人間たちと会話をするのなら、こちらの方が遥かにスムーズにコミュニケーションが取れるのだ。

 

そんな彼女は、凍矢たちと真正面から対面しながら言葉を放つ。

 

「事情は理解した。そちらも我らもメシア教に散々やられて痛手を負っている者同士だ。

人間どもの状況は理解はできるが、しかし、妖怪たちの人間に対する反発、反感は大きい。

『またいいように人間どもに利用されて捨てられるのではないか』これが我ら妖怪が抱いている本音だな。

それがあるからこそ、過激派連中が沸いて出てくることになる。」

 

今までのメシア教の所業や、それによる今の日本の霊的組織の惨状を聞いて弥三郎婆は頷いたが、確かに凍矢もその妖怪たちの本音は理解できる。

向こうからしてみたら、せっかく大日本帝国に協力したのに、アフターフォローもなしでポイ捨てされたようなものだ。

人間社会、というか日本全体がメシア教にいいようにされてしまっていて、妖怪たちに対して何もできなかったのは理解できるが、それで感情的に納得できるものではない。

 

「だがまぁ、このMAGや異界の発生速度からして、我らでも異常事態が起きているのは理解できる。過激派どもは「これに乗じて人里を乗っ取るべき!」とうるさいがな。何じゃったか?あいしーびーえぬ?とかよく分からん物が飛んできてる以上、そちらに協力したほうが得策じゃろうな。」

 

そんな弥三郎婆(ユキジョロウ)に対して、凍矢は彼女に一つの提案を出す。

 

「まずは、そちらに対してマッカはきちんと払うから、人里に対する用心棒……護衛の仕事を依頼したい。

そうすれば、そちらはマッカを儲けることもできて、人々の畏怖や敬意のMAGが獲得できる。うまくすれば喜ぶMAGも手に入れることができるだろう。悪い話ではないと思うけど?」

 

今の魚沼地方はある程度は名家たちも戦力にはなっているが、やはりようやくガキなどを倒せるようになってきている程度だ。

凍矢一人ではこの地方を守るのに心もとないため、どうしてもさらなる戦力が必要になる。

その点、GPの関係でLVは落ちているとはいえ、妖怪たちは十二分な戦力になりえる。

以前倒した妖鬼ヤマワロもおよそLV15。LV5あれば街を滅ぼせるのだがら、逆に言えば彼らが用心棒になってくれれば街や村を守ってくれる大きな力になる。

 

「なるほど。我らに用心棒になってほしいというわけか。それならば妖怪どもも理解しやすいじゃろうな。」

 

弥三郎婆(ユキジョロウ)は大きく頷いた。確かに凍矢の提案は分かりやすいし、妖怪たちにもメリットがある。

長い間(妖怪的にはほんの少しの間)人間社会から離れて自然に身を隠している間、人類社会は異常に進歩してしまっているらしい。

妖怪のタイムテーブルでは、人間たちと違ってそんなに簡単に人的被害が補われる訳ではない。彼らにとって、今がちょうど大戦で負った人的被害の真っ只中という状況なのだ。

 

まずは何をするにも情報収集、今の現世の人間社会がどうなっているか確認してからどう動くか判断してもおかしくはない。

封印されて「ぼっち・ざ・ろっく最高!」などと言っている日本神と異なり、隠れ潜んでネットにも接続していない弊害が出てきているのだ。

 

「そうなると、ツチグモなどと言ったヒトガタからかけ離れた形状の妖怪は人間どもも恐れを抱くか。ならば『妖鬼オニ』ならばどうじゃ?オニはヒトガタで分かりやすい上に、人間どもの伝承にもよく表れているから、恐れを抱かないし理解しやすいじゃろう。」

 

「それこそ、美女であるユキジョロウとかもお勧めだが、逆に舐められたり口説かれたりしたり、ユキジョロウが普通の人間を攫って持ち帰ることもありうるからのぅ……。しばらく様子を見てみるか。」

 

元が人間の老婆であるという伝承から、弥三郎婆は人間の機微は純正妖怪たちよりも理解できる。

それも彼女が人間である凍矢との折衝役に選ばれた理由だろう。

交渉役である凍矢も、妖怪視点ではなく、人間と親しい視点から話してくれるのは話しやすい。

彼女も、数少ない仲間を葬った凍矢には複雑な思いがあるが、それ以上に手を組んだほうが妖怪たちが生き残れると判断した結果だろう。

 

「とはいうものの、人間どもは異形の存在を排斥する物。きちんとそこらへんを考えてもらばねば困るぞ?

侵略者の悪魔を倒そうと思ったら、敵と勘違いされてこちらの妖怪を倒されてしまってはたまったものではないし、より人間不信も高まってしまう。慎重を期すことじゃな。」

 

悪魔は人間には見えないが、無自覚に見えてしまう者や、敵と戦う際に見えてしまうこともあるだろう。

そうなったら、一般人たちは異形の存在を排斥するに決まっている。

そこらへんは、名家の力を借りて、名家からしっかりと一般人を「説得」してもらう必要があるな、と凍矢は心の中で頷いた。

 

「とはいうものの、先ほども言った通り、妖怪たちの人間に対する不信は大きい。

しかも、こちらも先の大戦での人的被害が大きいのじゃから正直これ以上の武闘派妖怪の手が取られてしまっては困るという事情もある。

それを押して用心棒になりたい、という妖怪がいるかどうか……。」

 

「ふっふっふ。こちらには秘策がある。それは……これだ!」

 

そういいながら凍矢が取り出した大量の本、それは「ゲゲ○の鬼○郎」である。

とある黒札が本霊通信の際にコミックスを使って権能をゲットしたという故事にあやかり、妖怪たちを人間側に付かせるために漫画の力を借りようというのである。

しかもそれだけではなく、「うし○ととら」も全巻用意してある。

これを妖怪たちに布教して、妖怪たちに人間側についてもらおうというのだ。

 

「……なんじゃこれ。漫画?鳥獣戯画とかその辺の奴か?」

 

「まぁまぁ。とりあえず読んでみて。妖怪たち主役の作品なんだから。」

 

そして、それを読み進めた弥三郎婆(ユキジョロウ)はその面白さに驚愕する。

妖怪たちが主役の作品なので、思い入れしやすいというのも大きかったのだろう。

 

「な……。なんじゃこれ!めちゃ面白い!もっともっと持ってくるのじゃ!!」

 

やったぜ。流石水〇御大だぜ。と彼は心の中でガッツポーズを決めた。

 

……余談ではあるが、その後「ゲゲ○の鬼○郎」は妖怪たちに大ヒットして、人間に対する過激派も大分数を減らしたらしい。

まあ、大ヒットしたゆえに。大量の妖怪たちの要望に対して、凍矢自身が大量に「ゲゲ○の鬼○郎」を配達する羽目になってしまったが。

 




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