「怪異、ターボばあちゃん?」
拠点である元公民館で久しぶりにくつろいで疲労を癒している凍矢は、その静からの情報に思わず眉を潜めた。その名前だけは彼でも知っている。高速道路を中心に出没する老婆の姿をした霊。
一説では都市伝説がそのまま怪異化したとされるその存在は、本来ならば危害を与えないでただ人々を驚す無害な存在だ。
だが、どこにでも例外は存在する。
東京から新潟を繋ぐ高速道路の出没するこのターボばあちゃんは、人々に危害を与え、しかもこちらの攻撃を全て回避してしまう特異体らしい。
「ふむ……。確かにこれは放置できないな。新潟と東京を結ぶ高速道路とか流通の動脈だし、今のうちにそういう悪魔は排除しないと」
金持ち俺たちから引き出した金によって、山梨→長野→新潟の霊道は完成しているが、新潟から東京に渡る高速道路は霊道化はまだ行われていない。
それは、ガイア連合は東京は重要視していない(他のところと比較して)のと純粋に金がないためである。
新潟としては東京との物流をスムーズに行うための高速道路などは確保しておきたいところだが、そういった事情もあって、簡易的な結界である程度守っているのが精一杯という感じだ。
半終末とあって動かなくなる車もあるが、そこはガイア連合が開発した半終末でも動く車に変わりつつある。
未だに車による輸送は、物流にとって重要なのだ。
(ターミナルが本格稼働すれば話は別だろうが。)
「了解。久しぶりにウチのバンを動かしてみるか。 物障石……いや、物反鏡と魔反鏡を用意してくれ」
そうして、彼らは久しぶりに凍矢のハイエースに乗る事になった。
静が運転を行い、人間形態になっている『
普通のターボばあちゃんは、恐らく人間たちの驚き、そこから発生する恐怖から発生するMAGを食料としているため、供給源である人間を襲うことは少ない。
だが、「ジェットババア」としての伝承では『驚いて横を向けばそのまま首を固定して事故を起こし、止まれば近づいて首を掻っ切る』という危険な性質を引き継いだ者もいる。
恐らくは、その危険な伝承から生まれたターボばあちゃんなのだろう。
高速道路をハイエースで疾走しながら、ほむらは疑問を凍矢へと投げつける。
「でも、こうやって高速道路をウロウロしてるだけじゃ非効率じゃない? いつ来るかわからない敵を走りながらいつまでも待ってるわけにもいかないし、どうするの?」
「いや、悪魔にとって高レベルの覚醒者が自らのテリトリーに入ってくるなんて、鴨が葱を背負って来るようなものだ。俺たちの存在自体が囮となってくるはず。それでもダメなら、ほかの悪魔を引き寄せる危険性があってもMAGを垂れ流して……」
その瞬間、バタバタバタという異質な音が響き渡る。
それは車の音ではない。高速道路を裸足で疾走している音だ。
それと同時に、ハイエースの横に裸足で疾走する着物を着た老女の姿が現れる。
>怪異 ターボばあちゃん(Lv24)
変異体なせいか、人々のMAGを食ってきたせいか、GPによるLVの影響は受けていないらしい。
ともあれ、DLV79もの存在が襲い掛かるようでは、安全な流通など望めない。
それを見た瞬間、ほむらは自分のベレッタF92に似せた退魔銃、凍矢は、ショットガンの退魔銃を取り出し、横にいるターボばあちゃんへと射撃を仕掛けていく。
だが、その銃撃をせせら笑うように、ターボばあちゃんは高速で華麗に回避していく。
とあるターボばあちゃんは、全ての攻撃を回避し、テトラカーンを張って相手の攻撃を反射しての攻撃を与えないと倒せなかったという。恐らくは、その属性も引き継いでいるのだろう。*1
凍矢の冷却魔術……全体範囲魔術すらターボばあちゃんは容易く回避した。
そして、そんな彼らをせせら笑うように、彼女はさらに速度を増して疾走してハイエースを引きちぎっていく。
ターボばあちゃんは、時速140kmは出せるという伝承にはあるが、あのターボばあちゃんは、それを軽々と上回る速度を叩き出している。その時速はおよそ200kmはオーバーしている。
本気を出せば、300kmは出すことができるだろう。
遅い遅いとせせら笑いながら、どんどん前方へと疾駆していくターボばあちゃん。
まずは自分の実力を見せてから、ゆっくりとなぶるつもりなのだろう。
それを見ながら『
「静様、ついに”アレ”の出番だと判断します」
「えっ?」
全く何も聞いていない凍矢は、思わず自分の式神の言葉に聞き返す。
その彼の声を聞き流しながら、静は『
「ええ、凍矢様のハイエースに(勝手にロボ部が)取り付けたスーパーチャージャーの出番ですね」
「ちょっと待って? なにそれ? 俺聞いてないんだけど?」
凍矢の言葉を流しながら『
「これを発動させれば、時速300キロは出るとのロボ部のお墨付きです。本当はロボに改造したかったようですが、さすがに無理だったようですね」
「なにそれこわい」
その場のみんなの意見を代弁するような凍矢の言葉を流しながら、『
その瞬間、ロボ部特製のスーパーチャージャーに火が入り、まるで爆発するかのようにハイエースは猛烈な速度を開放する。
ギャギャギャ!! とスキール音を立てながら、まるで弾丸のように疾駆する。
その速度は瞬時に時速200kmを軽くオーバーしていた。
そのあまりの速度と勢いに、思わずほむらは本音を叫ぶ。
「前々から思ってた事言っていい!? 貴方たち皆揃って頭おかしいわよ!!」
「失敬な! 俺は黒札の中ではかなりまともな方*2……ぶきゃ!?」
そのあまりの加速と振動に思わず舌を噛んでしまう凍矢。
だが、そんな彼らに構わずに、静はさらにアクセルをベタ踏みにして猛烈な加速を行う。
「正気にて悪魔退治はならぬですよ。声援を力に! そして速度に!」
「「ああああああああ!!」」
さらにアクセルを全開にしてどんどん加速していくハイエース。その速度は時速200kmから時速300kmに至っていた。
まるでゲームのように他の車を見事なハンドル操作で回避しながら、みるみるうちに前を走っているターボばあちゃんに追いついていく。
そのあまりの加速に、舐めていた彼女も予想外だったのか思わず驚きの感情を見せているのが分かる。
再度、ほむらと凍矢は激しい振動の中で必死に狙いを定めて銃撃と魔法攻撃を行うが、それらは全て弾き返されてしまう。
「くそっ! あいつテトラカーンにマカラカーンまで張ってるのか! 無敵か!?」
その言葉に、ハンドルを操作しながら静はふむ、と考えて言葉を放つ。
「なるほど。つまりは……吶喊するしかないようですね。今の高速道路の下は田んぼですし落下しても被害は少なくても大丈夫でしょう」
「ちょっと待って。今吶喊って言った?」
助手席に座っている『
「ついにこのボタンを押す時が来たようですね。時速400キロオーバーは軽く出せるが、車体が持たないから押すなよ? 絶対に押すなよ? とロボ部の人からは言われております。
押すなよ? ということはつまり”押せ”ということだと私は学習しました。ぽちっとな」
「や、やめ──―あああああああああ!!」
ただでさえ猛烈な速度を出しているハイエースは、エンジンから火を噴きだしながらさらに速度を増す。
とっさに物反鏡と魔反鏡を使用して、ハイエース自体にテトラカーンとマカラカーンを張りながら、静が操るハイエースは400kmオーバーでためらうことなくターボばあちゃんへと突撃していった。
「食らえ! 名家秘儀、ダークサマナー殲滅アタック!! 吶喊ッ!!」
「「「ああああああああああああああ!!」」」
テトラカーンを張ったターボばあちゃんと、テトラカーンを張ったハイエースがぶつかり合う。
テトラカーン同士がぶつかり合って、お互いに結界が消滅する。*3
必死になって逃げだそうとするターボばあちゃんだったが、猛烈な速度で吶喊してくるハイエースを回避しきれずに、彼女へとブチ当たっていく。
そして、ターボばあちゃんを巻き込んだまま、高速道路の防音壁を突き破って、ハイエースは下の田んぼへとエンジンから火を噴きながら落下していった。
「静様グッジョブです。実にいい仕事ですね」
落下しながら、『
それに対して、凍矢は落下するハイエースの中で思わず突っ込みを入れる。
「言ってる場合か──―ッ!!」
「「「「あ──―ッ!」」」」
落下しながら、『
そして、【飛行】スキルを使いながら滞空してゆっくりと地面へと降りていく。
一方、ターボばあちゃんを巻き込みながらエンジンから火を噴きながら落下していくハイエースは、地面に突き刺さり、そのままターボばあちゃんを巻き込みながら爆発炎上した。
メガテンにおいて、落下は万能ダメージである。
しかも、物理に弱いターボばあちゃんがあれだけの攻撃を食らって無事ではすむまい。
実際に、そのダメージによって消滅していくのを、地面に降りていく彼らは確認した。
「グッバイ。マイカー……」
『
今まではトラポートによってあまり使用できていなかったとはいえ、自分の車があんな風になってはやはり悲しいのはどうしようもない。
そんな彼を、『
「? 車一体で悪魔を退治できたとか、超絶大戦果では? 九重家としてはニコニコですよ?」
(そういうところだぞ名家)
その静の言葉に、そう言い返したいところだったが、凍矢はぐっとそれを我慢した。
碧神 凍矢 男・20歳 転生者・覚醒済 Lv47
ステータスタイプ:【魔】中心の魔術師タイプ
耐性:破魔無効、凍結無効、衝撃耐性、精神無効(装備)、呪殺無効
スキル:マハブフダイン、ブフバリオン、マハブフバリオン、復讐の氷拳、コンセントレイト、吸魔、氷結ハイブースタ、大魔脈、氷結貫通、
特殊スキル:ブフストーン作成、凍結弾付与作成、低レベル覚醒者への教育スキル
装備:無銘の刀(予備)、退魔銃(猟銃・ショットガン型)、カジュアル装備一式、電撃の鞘、火炎弾
COMPソフト【ナース・コール】【Mr.サプライズ】【百太郎】【ギボ・アイズ】
仲魔:式神【破裂の人形】 Lv44
ステータスタイプ:パワー型前衛
耐性:物理耐性、精神状態異常無効、呪殺無効、氷結無効、火炎耐性
スキル:怪力乱神、万物粉砕、モータルジハード、トラポート、物理貫通、挑発、かばう、食いしばり、防御形態、物理ハイブースタ、メギドラ、猛反撃
汎用スキル:会話、食事、調理、性交、人型変化A、飛行
装備:試作型プラズマソード、モーフィング装甲(現在はカジュアル系装備一式と同程度の防御力)ラウンドシールド、バスターランチャー
人間形態:シンデレラガールズの高峯のあ。
仲魔:霊鳥ホウオウ→霊鳥スザク(元アガシオン) Lv37
物理耐性、火炎無効、衝撃耐性
マハラギオン、アギダイン、ムドオン、マカカジャ、トラエスト、ラクカジャ、タルカジャ、エネミーソナー、テレパシー、火炎プレロマ
仲魔:地母神キクリヒメ Lv37
雷撃弱点、衝撃無効、破魔耐性、魅了耐性
ザンダイン、ジオンガ、マハタルンダ、メディラマ、サマリカーム、ディアラマ、マカカジャ、乙女の仲裁、*4
事務員:九重 静 LV8(デモニカLV18)
スキル:ザンマ、 ベノンザッパー、掃射、突撃
装備:バッシュザブラックナイト(デモニカ)
『GM-01 スコーピオン(調整済み)』『GS-03 デストロイヤー』
イヌガミ(LV13)
高級アガシオン(LV13)
転生体:秋葉ほむら LV18(LV上限35)
【ホノカグヅチ】の転生体だが、彼女にはその自覚はあんまりない。
神の転生体の中でも現地民にしては優れた素質(LV35上限)と豊かな生体マグネタイトを所有している。
ステータスタイプ:パワー型前衛
耐性:火炎耐性、精神無効
装備:【無名の刀】【雷撃の鞘】【退魔銃(ベレッタ M92FSのモデルガン改造銃)】【凍結弾】【アルメーブラウス】【アルメースカート】【お守り】
スキル:アギラオ、マハラギ、ポムズディ、紅蓮の手刀(剣に炎を纏わせる) *5火之迦具土
*6火炎ブースタ
イヌガミ(LV13)
高級アガシオン(LV13)